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154、クラスメイトと交流

「私はレーナよ。あなたのお名前は?」


 さっきは辛うじて子爵家だと分かる家名だけは聞こえたけど、名前を聞き取れなかったのでもう一度尋ねてみた。すると女の子は焦りながらも、なんとか口を開いてくれる。


「わ、わたし、は……オレリアです。オレリア・ミュッセ……」

「オレリアというのね。これから仲良くしてほしいわ」

「私ともお友達になりましょう? 私はメロディよ」

「レーナ、様と……メロディ、様……」

「そうよ。……まだ緊張しているのかしら。私たちには緊張する必要はないわよ」


 まだしっかりと顔を上げてくれないので思わずそう声をかけると、オレリアはゆっくりだけど少しずつ顔を上げてくれた。


「申し訳、ございません。私……人と話すのが苦手で、特に新しい人とは、緊張してしまって」

「そうなのね。それなら仕方がないわ。少しずつ慣れていけば良いのよ」


 オレリアの言葉を聞いてメロディがそう声を掛けたので、私も同意するように頷いて笑みを浮かべた。


「そうね。そのうち私たちのことを友人だと思ってくれたら嬉しいわ」

「ゆ、友人だなんて……私なんかではお二人と釣り合いません……」

「あら、友人なんて些細な共通点でなるものだわ。そうね、私たちなら可愛い仲間でのお友達かしら」

 

 ニコニコと笑みを浮かべながらそう言ったメロディに、私は思わず苦笑を浮かべてしまった。


 それって自分のことを可愛いって言ってるよね。でもメロディは誰が見ても可愛い容姿をしてるから、反論は全くできない。むしろ納得してしまう。

 ふんわりとしてるように見えて自分で自覚してるところが、やっぱり伯爵家の子女なのかな。


「私が、可愛いのですか……?」

「もちろんよ。とても可愛いわ」

「そうね、その髪型がとても似合っているわ」


 メロディが完成された可愛さだとしたら、オレリアは素朴な可愛さだ。


「……あ、ありがとう、ございます」


 オレリアは私たちからの褒め言葉を聞いて、顔を耳まで真っ赤にして俯いてしまった。人と話すのが苦手なだけじゃなくて、恥ずかしがり屋なのかな。


 しかし勇気を振り絞ったのか少しだけ声を張り、顔を上げて私とメロディの瞳を見つめてくれる。


「あの! お二人はもちろん、とても私には表現しきれないほどに、可愛らしくお綺麗です……」

「ふふっ、ありがとう。嬉しいわ」

「オレリアありがとう」


 オレリアとも仲良くなれそうで良かった。ミュッセ子爵家もメロディのグーベルタン伯爵家と同じく、オードラン公爵家とは仲が良かったはずだから、これで友達作りは問題なく終えられたと思う。


 席の隣と後ろの子が上手くオードラン公爵家と友好的な家の女の子だなんて、なんとなくお養父様の介入を感じてしまうけど……そこは気にしないようにしよう。

 そもそもリオネルと同じクラスというだけで、思いっきり上の配慮が明らかなんだから。


 そんなことを考えながら、もう少し二人との仲を深めようと考えていると、後ろからリオネルに呼びかけられた。


「レーナ、少し良いかな?」

「もちろん良いわ。何かしら?」


 二人に断りを入れてから優雅に振り返りリオネルに視線を向けると、リオネルが手のひらで後ろの席の男の子を示した。確かこの子は、伯爵家だったはず。


「テオドールがレーナと話がしたいらしいんだ」

「突然すみません。俺、モンジュ伯爵家のテオドールです。これからよろしくお願いします!」

「ええ、私はレーナ・オードランよ。よろしくね。それで話とは……」

「とても不躾な願いかもしれないのですが……もしよろしければ、金の精霊を間近で見てもいいでしょうか! できれば精霊魔法も見てみたいです……!」


 そう言って少し身を乗り出したテオドールの瞳は、分かりやすく輝いている。貴族にもこういう元気で素直なタイプの人もいるんだね……ちょっと嬉しいかも。


 リオネルはそんなテオドールに苦笑しつつ、悪い感情は抱いていないようだ。リオネルは大人らしすぎるところがあるから、テオドールみたいな友達がいると良いのかもしれない。


「まず、金色の精霊は見ても構わないわ。しかし精霊魔法はノヴィエ教授に確認を取ってからにしましょう」

「確かにそうですね。では俺が……教授! ノヴィエ教授〜!」


 テオドールは右手を高く上げると左右に大きく振り、教室中に響く声で教授を呼んだ。その振る舞いはこの歳の子供としては元気で良いねという感想しか抱かないけど、ここがノルバンディス学院だと思うと驚いてしまう。


 でもこれが貴族家子息として適切かは置いておいて、こういう子がいるとなんか落ち着くな。皆が貴族然としてたら疲れちゃうから。


「今行きますね」


 教室の後ろの方にいたノヴィエ教授は、笑顔で私たちの下にやってきた。


「どうしましたか?」

「急に呼んでしまってすみません! レーナ様が精霊魔法を見せてくださるそうなのですが、教室で精霊魔法を行使するのはいいのでしょうか?」

「あら、それは私も気になりますね。学院内での精霊魔法行使は誰かを害するようなものでなく、備品等を壊さなければ問題ありません」


 そういう決まりがあるんだ……じゃあ寒かったら温暖魔法を使ったり、風魔法でそよ風を発生させたりしても良いんだね。


「レーナ様、だそうです!」

「分かったわ。ノヴィエ教授、教えてくださってありがとうございます。では……せっかくですから、皆さんに見えるようにしましょうか」


 テオドールのせいで……おかげで? クラス中の視線が集まっていたので、私は椅子から立ち上がって皆の前に立った。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、初対面の人と何を話せばいいのか?とパニくる人確かにいますよね。決して人嫌いって訳でもないのに。共通の趣味とか話せるようになったら一気に仲良くなるかもですが笑 社会人になってからだと多少…
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