133、学院の制服
「では最後にノルバンディス学院の制服について、お話をさせていただければと思います」
他の服を全て注文し終えて、最後に制服みたいだ。少し疲れていたけど、制服への好奇心から体が前のめりになって背筋が伸びる。
「制服は既定のものがございますので、基本は採寸させていただいたレーナお嬢様の御身に合うものを作らせていただきます。しかし制服には色々とアレンジを加えることができるため、そちらを決めていきたいと思っております」
「分かったわ。制服はどのようなものなのかしら」
「本日いくつかのサイズで見本をお待ちしておりますので、どうぞご試着ください」
おおっ、試着できるんだ。それは嬉しいな。ロペス商会の制服を気に入ってたのにもう着る機会はなくなっちゃったから、私好みの制服なら良いけど……そんなことを考えながら取り出してくれた制服に目を向けると、それはとても可愛く目を奪われるものだった。
「基本の制服はこちらになります」
白を基調としたおしゃれなワンピースに、ウエスト部分にはボディスのようなものをつけるらしい。そして黒に金糸で彩られたボレロを羽織るのだそうだ。
ワンピースの胸元には可愛らしいフリルがついていて、その上に飾るリボンの色は赤。靴はボレロに合わせたショートブーツで、近くにはたくさんの小物が並べられている。
「とても可愛いわね……」
「王都で有名なデザイナーが作ったものでして、ご入学される皆様に評判が良い制服となっております。ちなみに男性用もイメージ補完のために準備させていただきました」
そう言って見せてくれた男性用の制服は、とてもかっこいいものだった。女性の制服と色使いはほとんど同じで、白を基調とした細身のパンツに黒地のジャケットだ。
ジャケットは前の合わせが広く重なる、横にボタンが二つ並ぶタイプのもの。靴はブーツではなく一般的な革靴らしい。
「男性はボタンを豪華なものに変えられたり、首元を飾ったりされることが多いです。女性の場合はスカートの裾や袖口にフリルを追加したり、ボディスを飾る方が多いですね」
「そうなのね。……パメラ、私は基本のものをより豪華にした方が良いのかしら。私にはこれで十分素敵に見えるのだけど」
制服の飾り付けは今の私の知識では判断できないので、パメラに丸投げすることにした。するとパメラは心得たように頷いて、一歩前に出てくれる。
「はい。お嬢様は公爵家のご令嬢ですので、何かしらの工夫は凝らすべきかと思います。派手でなくても良いので、スカート部分に飾りを付けられたりブラウス部分の生地を総レースにしたりと、特別感を演出すると良いでしょう」
「あら、それは良いわね。ではパメラに任せるわ」
「ありがとうございます。素敵な飾りを選ばせていただきます」
それからパメラと仕立て屋の女性が話し合い、私の制服はブラウス部分をレースにすることと、袖口のボタンを豪華にすること、それからリボンに宝石をつけることで決まりとなった。
「本日はご苦労様。たくさん注文してしまったけれど、素敵な服が仕上がるのを待っているわ」
「お声がけありがとうございます。こちらこそ本日はたくさんのご注文、誠にありがとうございました。仕立てはうちの職人が総出で行いますので、近いうちに出来上がったものからお屋敷に運ばせていただきます」
「ありがとう。楽しみにしているわね」
そこで仕立て屋とのやり取りは終了となり、皆が部屋を出ていくまで姿勢良く微笑みを浮かべ、公爵家の令嬢としてやり切った。
部屋の中にパメラとヴァネッサ、レジーヌだけになったところで、一気に体の力を抜いてソファーにもたれ掛かる。
「はぁ……疲れたよ」
「お嬢様、とても堂々としたお姿でしたよ。口調も全く問題ありませんでした」
「お嬢様は素晴らしい才能をお持ちですね」
「少し習っただけであそこまで貴族としての振る舞いをできるなんて、感動しました」
パメラ、ヴァネッサ、レジーヌが順に褒めてくれて、それによって少しだけ疲労感が軽くなる。かなり頑張ったから、貴族子女として及第点なら良かった。
「さっきみたいな振る舞いができていれば、ノルバンディス学院でも問題はない?」
「はい、全く問題ないでしょう。それどころかお嬢様が平民出身と知っている方々には、かなり驚かれるかと思います」
「それなら良かった」
それから私は夕食の時間が近づくまで、ひたすら体力回復に努めた。そして夕食が始まる少し前に身支度を整え直し、パメラたちと共に食堂へ向かった。
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蒼井美紗