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129、本日の予定

 美味しい食事を味わいながら、給仕を終えて近くに控えているパメラの言葉に耳を傾ける。朝食の時間は、今日の予定を確認する時間でもあるらしい。


「ノルバンディス学院へのご入学まであまり時間がありませんので、本日からは忙しい日程となっております。まず本日は四の刻から六の刻まで、家庭教師の先生の下で授業を受けていただきます」

「どんな授業なの?」

「基本的には各種作法についてです。そして貴族としての一般常識や、貴族社会特有の決まり事などについても授業が行われるようです。またノルバンディス学院で行われる授業の基礎となる知識についても、できる限り詰め込んでいただきます。読み書き計算はもちろんのこと、王国史や世界史、地理や他国の文化、他国語、精霊魔法学、魔物学、魔道具理論。これらの基礎を、貴族家に生まれた者は家庭教師から学んでおります」


 うわぁ……聞いただけで頭が痛くなってくる。それを今から入学までに詰め込むのは不可能じゃないだろうか。

 学院に入学してからは、しばらく苦労するかも。


 唯一計算だけは少し自信があるけど、それだけができてもどうにもならないよね……私の頭脳、頑張ってほしい。切実に。

 明らかに瀬名風香の頭よりは覚えが良い気がするから、頑張って努力しよう。


「私もできる限り手助けさせていただきますので、何か疑問点などございましたら、お気軽にお尋ねください」

「ありがとう。頼りにさせてもらうね」


 パメラに視線を向けてそう伝えると、パメラは綺麗な笑みを浮かべて少しだけ頭を下げた。そして次の予定の説明に入るのか、また手元の紙に視線を戻す。


「では午後の予定ですが、午後は仕立て屋が来ることになっております。七の刻にこちらの部屋へ到着し、本日は風の月に相応しい私服を十数着、室内着を数着、さらに夜着を数着、そしてノルバンディス学院の制服を仕立てる予定となっております」

「学院は制服があるんだ」

「はい。既定のものが決まっておりまして、そこからどうアレンジするのかは個々の自由となっております。したがって制服に合わせる小物なども、たくさんお選びいただくことになるでしょう」


 制服はアレンジ可能なんだ。それはちょっと楽しみかも。可愛い制服だったらいいなぁ。


「服の仕立てが終わりましたら少し休憩時間を取っていただき、食堂で皆様とご一緒にご夕食となります。ご夕食が終わりましたらその後は自由時間ですので、お好きに過ごされてください」

「さっそく今日から夕食を共にするんだったね……そうだ、パメラから見て私の食事の作法はどう? お養父様たちとご一緒して問題はないかな」


 私がずっと気になっていたことを聞いてみると、パメラは少しだけ悩みつつ口を開いてくれた。


「レーナお嬢様は平民出身と聞いていた印象と比べると、とても作法はお綺麗です。しかし公爵家子女としては足りない部分もございますので、そこは家庭教師に教えていただくのが良いかと思います」

「あっ、やっぱり足りない部分はあるんだ……パメラ、今日の昼食は私一人だよね?」

「はい。その予定です」

「じゃあその場を家庭教師の先生に見ていただくことはできない? できる限り早めに作法は直したいから」


 食事の作法は無意識でやってることも多いし、よほど気をつけて時間をかけないと直らないものだと思う。一日でも早く直したい。


「かしこまりました。では家庭教師にその旨をお伝えしておきます」

「ありがとう」


 それからは予定の確認を終えて静かに朝食を食べ進め、食後にお茶を飲みながら少し休憩して、さっそく家庭教師の先生が待っているという応接室に向かうことになった。

 その応接室は勉強専用となっていて、たくさんの書籍も置かれているそうだ。


「そういえば、皆は私とどこまで行動を共にするの?」


 パメラとヴァネッサ、レジーヌの三人が一緒に部屋を出たのを見て、ふと疑問に思いそう問いかけた。


「私たちは侍女や護衛の同行が禁止されている場所以外ならば、基本的にはどこへでもお供いたします」

「え、どこへでも……?」

「はい。それが基本でございます」


 パメラだけでなく、ヴァネッサとレジーヌも当たり前だというように頷いている。


「……皆の仕事は大変だね。休みたかったら言ってね」

「お心遣いありがとうございます。しかしお嬢様がお部屋で休まれていらっしゃる時や勉学に精を出されている時など、休める時はございますので、ご安心ください」

「そうなんだ。それなら安心だよ」


 そんな話をしていると部屋に到着したようで、パメラがドアをゆっくりとノックした。


「レーナお嬢様がお着きです」

「入って良いわ」

「失礼いたします」


 聞こえてきた声に応じてドアが開かれると、中にいたのはとても上品な微笑みを浮かべている貴婦人だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 上流貴族の侍女さんって現代の秘書の仕事より大変そうですね。私にはとても勤まりそうにありません。 自分の能力を過大評価も過小評価もしていないつもりではありますが、400~800文字くらいで書か…
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