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126、離れと顔合わせ

 渡り廊下は思っていたよりも長くて、さらに完全に建物に覆われた室内だった。外から渡り廊下内に入ることは、窓から侵入しない限りできない構造だ。


「離れへの入り口はこちら本邸側から向かう入り口と、外から離れに直接入る入り口がございます。基本的には本邸側の入り口を使用していただきますが、休日に外へ出たい時などは離れから直接外に出ていただいても構いません」


 そんな説明を聞いていると離れの入り口に到着し、ジャメルが鍵を開けて皆で中に入った。離れは予想以上に広々としていて、綺麗に整えられた空間だ。


 本邸側から入ってまず目に入るのは、シンプルながらも温かみのあるソファーセット。さらにたくさんのものが収納できそうな物入れも壁際に設置されている。

 そんなリビングスペースから左に視線を向けると、そちらには台所があるみたいだ。さらに部屋の左奥には螺旋階段があって、その下にはドアが二つ。多分お風呂とトイレだろう。


「あまり広くはない離れですが、暮らしていくのは不足はないと思います」

「い、いえ……広くないだなんて、私たちには十分すぎるお家です。ありがとうございます」

「そう言っていただけて良かったです。階段を上がった先には部屋が三部屋ございまして、ご両親、お兄さん、お嬢様の寝室となっております」


 節度を守りながらとはいえ、ここで家族皆と一緒に暮らせるのか……凄く嬉しい。この場所があるだけで頑張れそうだ。


「ジャメル、私には専属の侍女と護衛が付くと思うけど、この離れに入る時にはどうすれば良いの?」

「離れにおられる時には、下がらせてくださっても構いません」


 おおっ、そうなんだ。じゃあこの中では本当に家族だけになれるんだね。


「しかしレーナ様が中におられる時のみ、離れの外には私兵の警護が付きますので、そちらはご了承ください」

「分かりました。ありがとう」

「レーナ、良かったな」


 お父さんが満面の笑みで私の頭をポンっと撫でてくれたので、私もお父さんを見上げて自然と頬が緩んだ。


 それから皆で寝室の内装も確認し、私は家族皆と別れて本邸に戻ることになった。皆は今日一日ここでのんびりと過ごして、明日からさっそく配属が決まるのだそうだ。


「ではお嬢様、最後にお嬢様の専属となる侍女と護衛を紹介させていただきます。応接室に待機させておりますので、そちらに向かいましょう」


 そう言って連れてこられたのは、エントランスホールからほど近い応接室だった。中に入ると入り口から少し避けたところに、頭を下げた状態のまま待ってくれている人が三人いる。


 私が部屋の奥にあるソファーに腰掛けると、ジャメルが頭を上げるように声をかけた。


「お嬢様、右の者がレーナお嬢様専属の侍女でございます。挨拶を」

「かしこまりました。レーナお嬢様、お初にお目にかかります。私はパメラ・ミュラと申します。これからよろしくお願いいたします。お嬢様が快適に過ごせるよう、お手伝いさせていただきます」


 パメラと名乗った女性は、二十代前半ほどに見える綺麗な人だった。私に対してどういう感情を持ってるのか分からないけど、仲良くなれたら良いな。


 それからミュラという家名がどれほどの爵位を持つのか、あとで誰かに聞いておこう。早く貴族知識を身につけないと。


「パメラ、これからよろしくね」


 私のその言葉にパメラが頭を下げたところで、ジャメルがまた口を開いた。


「次に護衛を紹介させていただきます。護衛は二名おりまして、真ん中の者がレジーヌ・ペイエ、左の者がヴァネッサ・ラングマンでございます。二人も挨拶を」

「はっ。レーナお嬢様、お初にお目にかかります。レジーヌ・ペイエと申します。お嬢様をこの身に代えてもお守りいたします」

「私はヴァネッサ・ラングマンでございます。レーナお嬢様が憂なく過ごせるよう、全力でお守りさせていただきます」


 護衛は二人とも女性のようで、レジーヌは青色の髪の毛をポニーテイルにしている活発そうな人で、ヴァネッサはレジーヌとは対照的にふわふわと柔らかい雰囲気の可愛らしい人だ。


「レジーヌとヴァネッサ、これからよろしくね」


 私がそう言葉をかけると、二人とも綺麗に微笑んで頭を下げてくれた。私が主人で三人が仕えてくれるんだけど、現状では三人の方が圧倒的に所作が綺麗だし貴族らしさがありそうだ。


 これは……相当努力しないとかも。


「ではレーナお嬢様、私の案内はここまでといたします。本日は特にご予定などございませんので、このあとは私室にお戻りいただければと思います。これから先は何かありましたら、まずパメラにお伝えください」

「分かりました。ジャメル、今日は案内をありがとう。至らないところもあると思うけど、これからオードラン公爵家の娘として頑張っていくからよろしくね」


 できる限り貴族らしさを意識しつつジャメルに声を掛けると、ジャメルは目を細めて微笑んでから深く頭を下げてくれた。

 

 そしてそれからはジャメルと別れ応接室を出て、三人と一緒に私室へ戻った。

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