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125、レーナの部屋

 この屋敷は一番大きな本邸に離れがいくつかあり、さらには公爵家の私兵が暮らす私兵団詰所や、リューカが飼育されている厩舎など、いくつもの建物が存在しているらしい。


 あまりにも広くて豪華なエントランスに呆然としつつ階段を上がっていくと、広い廊下が特徴的な二階に到着した。

 二階は基本的に公爵家の皆さんの私室があるスペースで、私の部屋もここに用意されているそうだ。ちなみに廊下には毛足の長い絨毯が敷かれ、おしゃれな花瓶や絵画が飾られている。


「こちらがレーナ様のお部屋でございます」


 ドアを開けてもらい中に入ると、部屋の中はとにかく豪華で可愛らしかった。部屋を整えてくれた人が、女の子の部屋を意識してくれたんだろうなというのが一目で分かる。


「凄いね……」


 思わずそう呟くと、近くにいたお母さんから同意の言葉が返ってきた。お父さんとお兄ちゃんは瞳を見開いて呆然としている。


 部屋に入ってまず目に入るのは、ふかふかなクッションを備えたソファーセットだ。テーブルにはお洒落なデザインが施されていて、見ているだけで楽しめる。


 そしてそんなソファーセットがある空間から部屋は右側に長く伸びていて、奥には天蓋付きの大きなベッドが見える。

 さらにソファーセットとベッドの間にはテーブルセットもあり、お洒落なタンスも置かれているようだ。


「うわぁ……凄く綺麗」


 上を見上げるとそこには、光花のシャンデリアがあった。今はボタンが押された状態のため点灯しているので、光り輝くお花がたくさん集まっている様子には思わず目を奪われる。


「トイレやお風呂はある……の?」


 壮年の男性に敬語を使わないことに少し躊躇いつつそう問いかけると、ジャメルはニコッと笑みを深めて頷いてくれた。


「もちろんございます。奥にある寝台の横に二つドアがございますが、左がお手洗い、右がお風呂となっております」


 そっちがトイレとお風呂なんだ。部屋の中に個人用のものがあるなんて、豪華な暮らしだよね。それに魔道具も当たり前のように使われているし……さすが貴族だ。

 街中の平民の生活とは全然違う。もちろんスラム街の生活なんかとは、比べるまでもない。


「お部屋に入って左手側にありますドアは、侍女や護衛が控えるための部屋ですので、お嬢様はドアを開けられないようにお願いいたします」


 へぇ〜、そんな部屋もあるんだ。どんな構造なのか少し気になるけど、他人の部屋なら覗いちゃダメだよね。


「食事はこちらのテーブルセットで?」

「はい。ご朝食とご昼食は基本的にこちらで、ご夕食は食堂で皆様が集まられて召し上がられることが多いです。レーナ様は明日のご夕食から、食堂に席が用意されることになっております」


 食堂でのご飯は明日からなんだ。それはかなりありがたいな。今日はもう疲れたから、さっさと一人でご飯を食べて早く寝たい。


「それからレーナ様にはもう一つお部屋がご用意されておりまして、そちらでもお食事を召し上がっていただくことが可能です」

「もう一つ……って、何に使うの?」


 こんなに広い部屋があるのにもう一つの部屋なんて使い道がないだろうと思ってそう聞くと、ジャメルは私の家族にも視線を向けながら口を開いた。


「お嬢様がご家族との時間も設けられるようにと、旦那様が皆様に離れを一棟ご用意してくださっております。ご家族の皆様は使用人部屋ではなくそちらで暮らしていただき、お嬢様のお部屋もその離れにご用意されておりますので、お嬢様はこちらのお部屋と離れのお部屋、どちらで暮らしてくださっても構いません。しかし基本的にはこちら本邸のお部屋で、離れの部屋に向かうのは節度を保ってと旦那様のお言葉をいただいております」


 ということは、離れでは私たち家族四人で今まで通りに暮らせるってこと?


 お養父様……! ありがとうございます!


「とても嬉しいです。ありがとう」

「そのお言葉は旦那様にお伝えください」


 この部屋を見ても離れの話を聞いても、お養父様は私に対して最大限の配慮をしてくれているのが伝わる。創造神様の加護を得たとは言っても平民出身、というよりも最近までスラム街にいた私たちなのに、本当にありがたい。


 この恩には報いないといけないよね。私が得た力や肩書きも活用して、役に立てるように頑張ろう。


「あの、離れを貸していただけるなんて、ありがとうございます」

「これからもレーナと共に過ごせる時間があると聞いて、嬉しいです」

「ありがとうございます」


 三人も離れの話には感動したのか、顔色を明るくしてジャメルに感謝を伝えた。


「ではジャメル、離れの案内もお願いして良い?」

「もちろんでございます」


 部屋を出た私たちは、またエントランスホールに繋がる階段を下りて一階に戻った。


「一階には食堂や応接室、ホールなどがございます。他には使用人の休憩室などもございますので、そちらにはお嬢様は立ち入らないようにしていただきたいです。その辺りはここで過ごされる中で覚えていただければと思います」


 ジャメルのそんな説明を聞きながら、軽く屋敷の構造を覚えて離れへと向かう。


「そういえば、他の使用人部屋はどこにあるの?」

「基本的に使用人部屋は三階にございます。したがってお嬢様が三階に上がられることはないでしょう」


 使用人部屋は上層階にあるんだね……なんとなく上の方が身分が高い人が使うイメージだけど、確かによく考えたら階段を登るの大変だもんね。


 公爵家の方々の部屋が一階じゃないことから考えると、あまり使用階層に身分は関係ないのかもしれない。一階は防犯上の問題で避けていて、極力階段を登らなくても済む二階が皆さんの生活場所になってるのかな。


「こちらの奥に離れへ向かう渡り廊下がございます」


 そんなことを考えていたら、本邸の端に辿り着いたらしい。一階の廊下を進んだ先にドアがあり、そのドアを開くと渡り廊下があるみたいだ。

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