表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/292

106、大型展示

 大通りの屋台で冷たい飲み物を買いつつ歩くことしばらく、私たちは火の大型展示の前に辿り着いていた。石畳で整備された大きな広場に展示されているのは、巨大なキャンプファイヤーだ。


 石柱がおしゃれに組み立てられた中には木材がたくさん詰まっていて、それが凄い勢いで燃えている。天高く登っていくような大きな火は、暑い日に見ても思わず目を奪われるほどに雄大だ。


「凄いね……」

「これは感動するな」


 大きな火の周りにはたくさんの精霊が集まっていて、幻想的な雰囲気だ。売っている木材を買って火にくべることもできるようで、たくさんの人が火に近づいていく。


 その周りには何かあった時の消火要員なのか、水の精霊を連れた人たちが大きな桶に入った水と共に待機しているのが見える。


「私たちも木材を買う?」

「そうだな。せっかくだから買うか」


 いろんな大きさの木材があって、私は小さめを、お兄ちゃんは大きめを購入して火に近づいた。近づくと肌が焼けるような熱さを感じ、火というものの力強さを実感する。


「この辺から投げ入れよう」

「うん」


 私とお兄ちゃんが投げた木材は無事火の中に入り、すぐにメラメラと燃え盛る炎で姿が見えなくなった。そこまで見届けたところで、火から距離を取る。


「はぁ……凄く熱かった」

「めっちゃ汗かいたな」

「本当だよ〜。何か冷たいものを食べよう。飲み物も欲しいな」

「あそこにあるから買うか」


 商売上手な人たちが広場の入り口で開いてる屋台に向かい、冷たい水と冷えた果物を購入した。


「うぅ〜ん、生き返る」

「めっちゃ美味いな」

「早く次の水の展示に行こうか」

「そうだな。確か水の展示はあっちだったか?」

「うん。大通りを少し進んだところの広場だって」


 それからまた足を進めると、すぐに次の広場に到着した。そこはさっきの広場とは全く違い、大きな噴水が広場の真ん中に鎮座している。


 流水音がとても涼しげで、集まっている水の精霊の青色も相まってとても気持ちが良い。


「火の展示からこっちにきて良かったね」

「本当だな……めちゃくちゃ綺麗だ」

「あの水を浴びたいね」


 噴水の近くにはベンチがたくさん置かれていて、ゆっくりと休憩できるようになっている。私たちはそこに腰掛けて、さっき買った冷たい果物をゆっくりと食べた。


「暑い体に冷たい果物って最高だよね〜」

「分かる。普通に食べるより倍は美味く感じるな」


 二人してだらっとベンチに腰掛けながら火の展示の熱さで消耗した体力を回復させ、しっかりと休んだところでベンチから立ち上がった。


「そろそろ行くか」

「そうだね。時間は……もうお昼頃だ。お兄ちゃんはお店に行く?」


 私はお昼からダスティンさんと約束していて、お兄ちゃんは働いてるお店の同僚と約束しているのだ。


「そうだな。昼ご飯から一緒に食べようって話をしてたんだ」

「じゃあここで分かれようか。お兄ちゃんのお店って向こうだよね」

「ああ、レーナはダスティンさんのところだもんな。俺はあっちに行くな」

「うん、またね」

「おうっ、迷子にならないように気をつけるんだぞ」


 お兄ちゃんは最後に少し心配そうな表情でそう言って、私の頭を軽く撫でてから雑踏に紛れていった。


 私はそんなお兄ちゃんのことを見送ってから、ゆっくりとダスティンさんの工房に向かって足を進める。


「お昼ご飯、何を食べようかな」


 さっきまで色々と食べていたけど、お腹に溜まるものは食べてないので、お昼ご飯も余裕で入りそうだ。ダスティンさんが屋台飯にこだわりがなかったら、どこかのお店に入って快適な店内で食事をしたいな。


 そんなことを考えながら歩いていると、いつもの工房に到着した。ドアをノックすると、すぐにダスティンさんが顔を出してくれる。


「……暑そうだな。大丈夫か?」

「はい。意外と外が暑くて。それに火の展示も見に行ったんです」

「それは暑いな。ではお昼はどこか涼しいところで食べよう」

「本当ですか! どこかのカフェで食べたいなと思っていたのでありがたいです」


 私のその言葉にダスティンさんは僅かに笑みを浮かべ、私を工房内に入れてくれた。


「準備をするから座って待っていてくれ」

「はーい。そういえば報恩祭って、王宮や貴族様はどうやって祝うんですか?」


 なんとなく思い浮かんだ疑問を口にすると、ダスティンさんは準備を進めながら口を開いた。


「昼間は教会で祈りを捧げ、昼はそこかしこでお茶会が開かれる。そして夜はパーティーだな。とても綺麗な装飾が施されるが、特に楽しいものではない」


 そうなんだ……確かに貴族のお茶会やパーティーに楽しいイメージはない。なんとなく嫌味の応酬や蹴落とし合いが行われてそうだ。


「……私は平民で良かったです」

「そうだな。私も市井の祭りに参加できる立場で嬉しい。よしっ、では行くか」


 ダスティンさんが僅かに笑みを浮かべながら玄関に向かったのが見えて、私も嬉しくなって足取り軽くダスティンさんの後を追った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] タイトルからして何かしらストーリー的なモノがあるのでしょうが…100話を越えても何も見えてこない 流石に色々とはしょった方が良いんじゃないかな? 個人的には食べ物関連 架空の食材で作られた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ