お断りだ!
「君の様な少年が、あのランドを倒したとは驚きだね」
ルブレド子爵自らの出迎えというサプライズに驚きつつ、俺たちはかれに導かれるままに応接室へ足を運ぶ。
そこでお互い改めて挨拶を交し合ったあと、子爵の口から見ず知らずの人物の名前が出て来た。
「ランドって誰なんですか?」
「例の野盗の首領だよ。彼はランドといってね、元々はこの街で冒険者をしていたんだ。かなり腕の立つ男だったんだが、色々問題を起しすぎて私の指示で街を追放したんだが」
俺が倒したランドという男は、どうやら冒険者崩れだったらしい。
それで一人だけ強者オーラを出していたのか。
「もしかすると私の荷物だと知って襲ったのかも知れないな」
「逆恨みですか?」
「偶然だったのかもしれないけれどね」
ルブレド子爵は漫画でしか見たこと無い様なカイゼル髭を揺らす。
あの髭はどうやって固めているんだろうか。
「ところでそんな君の実力を見込んで一つ提案があるのだが」
それまで柔和な笑みを浮かべていた子爵の顔が、にわかに真面目な色を帯びる。
きたか。
夕べ、マーシュから「もしかしたら仕官を進められるかも」と聞いていたが。
このタイミングで切り出してきたと俺は身構える。
「もし君さえ良ければだが、私の元で使える気はないかね?」
予想はしていたが実際誘われると断るのが悪く思えてしまう。
これはあれだ。
モテモテのリア充が好きでも無い人から告白されて断るときの気持ちだ。
いや、そんな経験は俺には無かった気がするので完全な妄想だが。
だけど好意を向けられてそれを断るというのは思ったよりキツい。
しかしそんな気持ちも数回呼吸する内に薄らいでいく。
これが無敵の心の力なのだろうか。
「せっかくのお話ですがお断りさせて下さい」
俺は子爵の目を見返しながらはっきりと告げる。
「ほう。この街の兵士たちや私の部下の中でも最上級の給料と待遇を与えると言ってもか?」
「……はい。というかポッと出の自分がそんなに優遇して貰ったら逆に彼らに恨まれそうで受けられませんよ」
俺は冗談ぎみに笑いながらそう応えただった。
次の話はちょい長め




