出会い
「ん…は!?どこだここ!?」
何故か、俺は木々が鬱蒼と生い茂る森のようなところで寝ていた。
服も、見たことないなんか安っぽい皮っぽい冒険者っぽい…ほんとに見たことないのか?
いやいや。
そんなわけがない。
俺だって、これくらいは知ってる。
異世界転生とかいう、男なら誰でも1度は妄想した(したよね?)であろう、
人には言えない黒歴史を、小説や漫画、アニメにしたことで、爆発的に広まったジャンルのことだ。
てことは、夢だ。そうに決まっている。
確かに、最近はあのボスを倒すのに必死で、仕事が終わったら寝ずにあいつを倒す準備をしていたからな。
にしても、リアルだ。
夢ってこんなにはっきりしたものだっけかな…と、思っていると…
---目が覚めましたか---
あれ、この声どっかで。
---あなたを導きます---
あ、さっきに声だ。
---近くにあなたを助けてくれる人がいる---
すげぇリアルだな。
---今の私にできるのはこれくらいみたいです---
すげぇなぁ、俺疲れてたんだなぁ…。
---しばしの別れです---
え?もう終わり?
もしもーし。
その後は、返事が返ってくることも、変な声が聞こえることもなくなった。
夢の中とはいえ、なんか気になるけど、まぁ気にしてもしょうがない。
森なのか山なのかわからないが、全く舗装もされていないような、木々の間を無理矢理進んでいた。
前も後ろも左も右も。
どこ見ても木。ひたすらに木だ。ちなみに上は見えない。
全方向からくる枝と葉で全く空は見えない。
「ハハ…じゃあ、なんで明るいんだよ!」
意味もなく、思った突っ込みを声に出してみた。
幸いなのかはわからないが、あれから声どころか、動物や虫すら見ていない。
これだけの木々があるのに、全く生物がいないっていうのが、なんとも夢らしい。
だが、今のしょうもない一言を発した瞬間
「うわぁ!!!?いてっ!!!」
突然の声にびっくりした少女は、思いっきり近くの枝に頭をぶつけている。
最後におまけとばかりに、頭の上にりんごのような果物が落ちてきて、見事にヒット。
「あたっ!?」
「なんか、マジで異世界転生っぽい展開だな…。」
目の前で、一人で木と戦っている少女を見ながら、つぶやいていると、さすがに少女の方もこちらに気づいたようだ。
「あ!あなた!ちょっとこっち!!」
「いきなりなんだ!?」
突然、腕を掴まれた。
「あなたどこから来たの?」
「いや…なんていうか…」
「それより、さっき大きな音が聞こえたんだけど、なにか知らない?」
「あーごめん、さっきは驚かせてしまったようで…ぶっ」
「ちょっと!なに笑ってんのよ!さっきのは、あなたの大きい声にびっくりしただけ…じゃなくて、それよりもっと前よ。森の奥の方で、大きな音と、すごい光が…。」