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本日21時頃、二回目の更新をいたします。

是非、感想や評価を頂ければ本当に励みになりますので是非よろしくお願いします……!



教室の中には既にほとんどの生徒が席について静かにしていた。初登校日である為か、あまり生徒同士で話している人も見られない。見知った顔を社交場で見たことはあるものの、気安い態度で話すような仲ではないというのが大多数だろう。学校という場で、ラフに話し、友達を作るということにこの世界の人間は慣れていないのだ。



教室に入ってきた私たちに視線が集まり、過半数近くの人間は軽く頭を下げた。身分の高い私たちに礼を尽くしてくれているのだろう。ここでもこういう扱いを受けるのか、と少し残念に思う。

私たちも頭を下げると、ふと教室の窓際付近に座っているリリスと目が合う。

リリスは堅い表情のまま会釈をするとすぐに視線を逸らした。


「何なの、あれ。王族の人間とはいえ自分を助けてくれた人間に対して冷たくないかしら?」


ムッとリリスを睨むハンナを宥めつつ、黒板に書かれている座席表を確認して自分の席に向かう。

教室の中央辺りの席で、ハンナの前の席であることは有難い。リリスは私の二つ隣の席で、隣の席にならなかったことに安堵のため息が漏れる。

ちらりとリリスに視線を向けると、彼女は窓の外を眺めていた。どこかぼんやりとしていて、心ここにあらずといった様子だ。

私の平穏な人生の為にも、あまり彼女には近づかないようにしないと。


「お待たせしまして、すいません!」


勢いよく教室の扉が開いたかと思うと、二十代後半と思われる男がドタバタと入ってきた。スーツを着ているところから、教師であることが伺える。男は、ずり落ちた丸い瓶底眼鏡を上げながら、教壇に上がった。鼻の近くまで伸びている邪魔そうな前髪の隙間から眼鏡がきらりと光る。


「え、えぇと、今からホームルームを始めます。あ、私は一年間このクラスを担任させていただくシモン・レーリンです、はい」


よろしくお願いします、と頭を下げた拍子にレーリンは思い切り教卓に頭をぶつけた。

痛い。あれは痛い。


「ったたた……。えと、それじゃあさっそくホームルームの方を……____」


額をさすりながら説明に入ったレーリンだったが、黒板に向かうとチョークを忘れたことに気づいて慌てて教室を出て行ってしまった。

このゲーム攻略対象以外もキャラ濃いなー。それとも、実はあの人も攻略対象で眼鏡取ったらイケメン設定とかか?

ドジっ子属性なら既にロイがいるんだけどな。


「あの先生、大丈夫なのかしら。とんだ外れくじを引いたみたいね、私たち」


後ろからこそこそと囁いたハンナに、私は否定の言葉を思いつかなかった。







その日は登校初日というだけあって授業らしい授業はなく、何事もなく一日を終えた。強いて何か特筆すべきことを上げるのなら、リリスから度々感じた視線だろうか。

先生が話している時や食堂でご飯を食べている時、帰る準備をしている時。視線を感じて彼女の方を向くと、視線が交わる前に決まって彼女の方から目を逸らされるのだ。決して彼女から接触してくることはなく、じっと視線が向けられるだけ。


そして、不思議なことにそれは一週間続いた。

彼女から接触してこない以上は私から彼女に近寄る必要はない。不審に思いながらも、私は普通の学園生活を楽しむことにした。


休日に入る前の日のホームルームでの議題は、来月行われる文化発表会についてだった。

例年、合唱や演劇、オーケストラにアート作品展示など発表される種類は様々らしく、週明けに各自やりたいことを発表するから考えてこいというものだった。

放課後のサロンでも話題は自然とその話になり、グレイとアルグレードが来た後もそれは続いた。


「去年はお兄様とアルのクラスは演奏会でしたよね?」


サロンを出て五人で廊下を歩きながら、隣に立つグレイを見上げた。去年、グレイは招待状を私たち家族三人それぞれに渡してくれた。父は仕事で来なかったが、私と母はグレイの発表を見に行った。無論、母が私と一緒に行くはずもなく、別々に家を出たわけだが。


「うん。各々習っている楽器が一つはあるから、それを利用してね。アルがピアノで、僕がヴィオラを弾いたんだ」

「僕なんか、あんなに大勢の前で演奏したのは初めてだったから緊張して冷や汗が止まらなかったよ」

「そうなんですか? アルでもそんなことがあるのですね」


ハンナは驚いてアルグレードを見つめた。

貴族ならではの出し物だが、そのクオリティはかなり高かった。一流オーケストラのような演奏に、会場はスタンディングオベーション。私も気づけば立ち上がって拍手を送っていた。隣にいたダンは、途中から眠っていたようだけれど。


「今年は何にしようかなぁ。アルともクラスが離れちゃったし」

「俺は剣劇がやりてぇな! 男らしくてかっこいいし!」


つまらなそうに話すグレイの横から、ダンは楽しそうに剣を振り回すような動きをして見せた。


「私は可愛らしいものを希望しますわ。例えばスイーツショップとか、ファッションショーとか!」


今度は私の隣にいたハンナがうっとりとした表情で声を上げる。

やっぱり女子と男子じゃ意見分かれるよなぁ。私が高校生の時も女子と男子で意見が真っ二つに分かれて、結局どちらかが折れる羽目になったことがあった。


「ルーナは、何かしたいことがあるの?」

「え?」


アルが私に意見を求めたことで、私に視線が集まる。


「私は……そうですね、例えば……__」



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