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ローミルの参加が決定したその日から、あっという間に時は過ぎクリスマスパーティ当日。
私とグレイはロイの運転で、パーティ会場であるフォルン家を訪れていた。
ロイが車を停めてくれている間に、私とグレイは玄関ロビーで先に来ていた面々と顔を合わせた。
「今日は場所を貸してくれてありがとう」
「気にしないで。ルーナ、今日のドレスも可愛いね」
「似合ってるぜルーナ! ……相変わらずスカートはちょっと短いけど」
ローミルがアレンジしてくれた制服は、可愛らしさそのままで丈が伸びてドレスらしくなっていた。
「ロイ」
車を停めたロイが遅れてホールに入ってくる。
「今日はお招きいただきありがとうございます」
「今日は堅苦しいのは無しだよ。友人として参加するんだから」
丁寧に頭を下げたロイにアルグレードは微笑んだ。
顔を上げたロイはアルグレードの言葉に頷くと、ダンの後ろに立っていたギルデンツに鋭い視線を送る。
「……今日はよろしくお願いしますね」
「……」
ふい、とロイの言葉を無視するギルデンツ。
どうもこの二人は馬が合わないらしく、会うたびに険悪な雰囲気で睨みあっているのだ。
その後ハンナやリリスが到着し、最後に来たのはローミルだった。リリスと初対面だったローミルは、私の時と同じように彼女にインスピレーションを刺激されたらしく、リリスに「是非モデルに」と迫っていた。もしリリスがモデルになってくれれば私の負担も二分の一に減るかもしれないなと期待しながら二人の様子を見守っていると、アルグレードが私たちにパーラーへの移動を促した。
パーラーに移ると、テーブルには豪華な食事が所狭しと並べられていて、私たちの視線を奪った。中央には大きな七面鳥の丸焼きが用意されていて、一気にクリスマス感が演出されている。
私たちは部屋の端にある棚の上に各自持ってきたプレゼントを置いた。大小さまざまな包みが並べられ、いかにもより一層クリスマス感が増した。
アルグレードが使用人の男性に声をかけると、飲み物が運ばれてくる。
一人一人がグラスを手に取り、テーブルを囲むように立った。
「それじゃあ……メリークリスマス」
メリークリスマス、とアルグレードの乾杯の音頭に続く。
グラスを煽り、オレンジジュースが喉を潤した。
グラスをテーブルに置くと、ダンがうずうずとした様子でプレゼントが置いてあるテーブルを見つめる。
「……ダンも気にしていることだし、早速プレゼントを交換しようか」
「そうですね」
ダンはフリスビーを投げられた犬の様にぴゅーっとプレゼントを取りに行った。
どれだけ楽しみにしてたんだ。可愛いなちくしょう。
「じゃああの時計を基準に三十秒間プレゼントを回して、その時手元にあったものが自分のプレゼントということにしようか」
「分かりました」
「誰のプレゼントが当たるか楽しみだなぁ!」
私たちは円になると、アルグレードのスタートの合図でプレゼントを時計回りに回し始めた。
皆お互いの顔と回ってきたプレゼントを交互に見て、緊張した面持ちで回している。
いやそんな緊張しなくても、と思ったがこの人たちはこういう事をするのが初めてなのだろうからしょうがない。前世では定番の方法なので、リリスは特にそういう様子は見られなかった。
三十秒が経ち、私の手元には小さな包みが置かれていた。
それぞれ自分の手に乗っている包みや、自分のプレゼントが誰の手に渡ったか確認している。
どうやら私のプレゼントはリリスに渡ったようだ。
「俺のプレゼントグレイのところにある!」
「ギルのプレゼントは僕のだ」
「ルーナのが良かった」
「わがまま言わない」
「あ、ルーナちゃんのそれ私のプレゼント!」
ローミルさんが私の包みを見て嬉しそうに声を上げた。
「包みを開こうぜ!」
ダンがびりびり、と包みを破る。
こういう時性格出るよな、なんて思いながら綺麗に包みをはがしていくと、中から現れたのは小さな小瓶だった。
「これ……」
「それ、ちょっと珍しい香りの香水なの」
ローミルが私の隣に立ってその小瓶を指さした。
専用の可愛い香水瓶に入れられている液体は、薄緑の色透明な液体だ。光にかざすと多面体の瓶に反射してその色が光となって目に映る。
「ちょっとつけてみて」
ローミルは小瓶をちょんちょん、突つくと私にウインクしてみせた。
私は小瓶の蓋を開け、一、二滴手の甲に垂らした。それを手首と擦ると、ふわっと爽やかな香りが鼻孔を擽った。
「いい香り……」
「本当だ。それ、ルーナの?」
少し向こうでリリスと一緒に包みを開けていたハンナやグレイにも香りが届いたらしく、その香りに誘わるようにしてみんなが集まってきた。
「知り合いに調香師がいるんだけど、その人に頼んで作って貰ったの」
「すごくいい香りだね」
「……俺はそのままのルーナで十分」
「はいはい」
前世で言うマリン系の香り、だろうか。柑橘系の香りや微かにムスクの香りもする。
とてもいい香りだ。
「ありがとうございます、ローミルさん」
「いいのよ! ルーナちゃんにはいつもモデルの仕事でお世話になってるし、お返しが出来て良かったわ」
私は香水瓶を手元で転がし、満足するまで暫くそのきらめきを見つめていた。
「そのピアス、気に入って貰えると嬉しいんだけど」
「ルーナさんが選んだプレゼントを私が、身に着ける……いや、これは大事にしまって家宝にして……」
「リリス、戻ってきて。王家の家宝とか冗談でも笑えないから」




