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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
再びカザー星系とのやりとり
95/138

地球に残っている3人組とカザー星系のボスからの提案

「ねえユキ君。未来に行って確かめたいことがあるんだけど…」

 キララがユキに言う。


「なに? なんか気になることがあった?」

 僕はキララを見る。


 学校での話。もう授業はこれで終わり、少し早めに先生は授業を切り上げて出て行ってしまった。


「えーとね。Aのタイプのミッションを受けてた3人組。あのあとどうなったのかなと…

もしかして…ミッションが終わっていることを知らないで、まだあそこにいたりしてと…

考えていたんだけど…」


 キララはきつねしっぽをびたんびたんと机にぶつけて言う。


「さすがに…そこまでおバカでないと思うんだけど…」僕はキララの表情を見る。


「いや。ありえそう…だからこの後行ってみない?」

 キララは言う。


「まあ。いいよ…で。2人だけで行く? この後公園で遊んでいるララちゃんのところへ寄っていくつもりだったんだけど…」


「一緒に行こう…連れて行っても問題ないし…」


「うん。わかった」


 そのとき、ホームルームをするため先生が入ってきた。


 ユキは未来でも使える共通マネーを持ってきたかを気にした。

 帰り、未来で何か買って帰ろうかなと考えた。


☆☆☆


「おーいララちゃん」ユキは幼いウサ耳の子を見つけて声をかける。


 砂場で遊んでいたララちゃん。


 こっちを見てから立ち上がる。


 そして砂場併設の水道で手を洗う。


 とててと走ってくる。


 ララちゃんはユキ君に抱きつく。


「やっと来た」すりすりしてくるララちゃん。


 ララお姉さんにすりすりされると、うわぁとなるが、幼稚園児のララちゃんだったら大丈夫。


 等身大のウサギのぬいぐるみみたいな愛嬌の子。


「ねえ。ララちゃん。このあとね。未来へ行って、あのおばか3人組がまだ未来の地球に残っていないかを見てこようと思うんだけど…一緒にくる?」

 キララはララちゃんに聞く。


「うん。いくー。ひょっとしてまだいるの? 終わったのに…」

 ララちゃんはキララに聞いてくる。


「さあね。もしかしていたりしてと思っただけ…

じゃあ。あそこの壁に自動ドアを開けるから…」


 キララは歩いて行く。


「あたしも早くTMR使いたい。ばばんとじどうどあを開けていろいろなところへ行くの…

ニンジン畑とか…ニンジンジュースの工場とか… ニンジン饅頭を作っている工場…」


「何それ…行ってどうするの? もらってくるの?」ユキ君は言う。


「うん。先生に教えてもらったんだけど…わけあり品とか、形が崩れたのは売れないんだって…

だからもらう。宅配ボックスに入るだけいれてもらう」


 ユキはララちゃんの頭をなでる。

 うさ耳の子はなでなでされて目を細めて喜ぶ。


「さてと行くよ…まずはアパートの近くに移動するよ…そしてアパートが無人かを調べるよ…」


「うん」


 ユキ君とララちゃんはキララの開けた自動ドアを通る。

 最後にキララが通り自動ドアを閉める。


☆☆☆


 古いアパート。


 その202号室だっけ?


 キララとユキ、ララちゃんは階段をあがる。


 それにしても…よく2階なのに…ねずみだっけ? 部屋いっぱいまでぎゅうぎゅうにしたな。

 それはもちろん後で聞いた話。機械の操作をミスってそうなったのだ。


 ドアを開けてみる。


 見ると、もぬけの空だった。


 なんにもない。


「ほら。いないでしょ…気にしすぎ…」ユキはキララに言う。


「まあ。そうだよね。そこまでおばかでもないよね…」


 キララは階段を下りる。


 降りるとき。そばの空地を見る。


 あれ? 空地に大人の人が3人いる。

「ねえ。ユキ君。あのひと達って?」

階段から見える空地を示すキララ。


「あ。いた」ユキは3人組を見た。


「えー。あたしは見えない。肩車して…」ララちゃんが言う。


「うーんとね。ここだと危ないから…空地までいそいでいくよ」

 とユキは言う。


 幼稚園児ながらウサギのハーフのララちゃんは結構重いので、肩車も大変だ。

 だから肩車はやめて行くということを言ったのだった。


☆☆☆


「あんたたち。なにやっているの?」

 ララちゃんは3人組の1人。部下に向かって言う。


部下はこっちを見る。

「げっ。おまえは…」


「あー。見つかった。でもな。じゃまはさせないぞ…」


「そーだそーだ」

 3人組は言う。


「何やっているのかな?」キララはTMRの宅配ボックスから銃を出す。


「げっ。そんなもの向けて脅しても…お前たちにはあげないぞ…

せっかくのお金になるものだからな…」


「そーだそーだ。ほしいと言ってもあげないぞ。あ。そうだ見つけたら売ってもいい」


「お。それいいな…高く買ってくれ…」


 ユキとキララは3人組のリーダーに聞く。

「ねえ。何やっているの? 何かさがしているの? お金持ちが飼っているネコ探しとか?」

「それとも。落とし物をさがしてお礼の1割をもらうとか?」


「やせいのニンジンでもさがしているの?」

 最後にララちゃんが言う。


「くっくっく。小学生の情報でな。カブトムシがいるらしいのだよ…

デパートで高く売っているのを見てな… お金になるかと思ったのだよ…」


「ふーん」

 ユキはそれだけ言って3人組の姿を後ろから見続ける。


 カブトムシを探す3人組。


「ところでさ」キララが言う。


「例のミッションはどうなったの?」ひきついでユキが聞く。


 3人組のリーダーは…「金がなくて、アパートを追い出されちゃったから。今は中止だ。

住むところの目途と食い物の目途がついたら再開だ」


 はあ。

 キララはためいきをついた。


「ねえ。これ見てほしいんだけど…」

 キララはデバイスをリーダーの前へ出す。


 再生ボタンを押す。

 例の倉庫での会話と映像。


 ボスの姿が映っている。

 Bのミッションの人が行方不明のこと。Cのミッションのことがボスの口から言われる。

 そして地球を壊滅させるという話…

 彗星を地球へ落とすという話。

 その後…ボスの作戦がしっぱいしたところまで見せる。


「なんだこれ。俺たちには連絡がなかったぞ」

「これ。本物か? お前たちの作りものじゃないのか?」

「そーだそーだ。俺たちをばかにしているのか?」

 と言う。3人組。


 はあ。しょうがない。


 キララは電話をかける。ミミアへ…

「はい? どうしたの? もしかしてユキ君をあたしにくれるとか?」

 ミミアが出た。


「あ。あのね。今地球(同じ時間帯)にいるんだけど…地球にはまだAのミッションをしている3人組がいて、まだミッションは継続中だと思っているの…だからお姉さんから言ってほしくて…」

 キララが言う。


「はあ。何やっているんだか…じゃあリーダーにかわってくれる?」

 ミミアは言う。


 はい。とキララはリーダーへ電話を渡す。


「あなたたち。何やっているのよ…」


「おい。上司のミミアだ…これも偽物か?」

「きっとそうだ…」

 部下の2人が小声で言う。


「あ”? なにいっているのよ。あたしの耳には聞こえているわよ…」


「げっ」

「やばっ。本物だ」

 部下が言う。リーダーは「あのボス。タイプAのミッションですが…もうやらなくていいので?」

 リーダーが聞く。


「あなたたち。本当に知らないのね。聞いたかもしれないけど…もう終わったわよ…

帰ってらっしゃい」


「そうか。わかりました。準備とかあるので数日後には帰れると」


「もう。おばかね…じゃあ戻ったら報告書忘れずに」

 とミミアは電話を切る。


 顔を見合わせる3人組。


「おばかだねー」うさ耳っ子が言う。


「くー。幼い子にまで言われたぞ…」

「なさけねえ」

「ところで…あれ見つけないと…ばれたら殺されるぞ…」


「お。そうだ。カブトムシどころではないな…」

 なんの話だろう。


「ねえ。何か無くしたの?」感がいいキララはリーダーに聞く。


「え。ああ。アパートを出て行くとき帰還のときに使うTMRを無くしてしまってな。

始末書ものかと思ってたんだが…」

「俺聞いたことがあるぜ。TMRを無くした人は死刑だってよ」

「なんでそれを早くいわねえんだ。ばかもん。カブトムシどころではねえ」


 リーダーと部下2人の顔が焦った感じになる。


 おばか3人組なんだけど…おばあちゃんには人に親切にすると、自分が困ったとき帰ってくる(助けてくれる)んだよ。とユキは教わっていた。

「ねえ。なんとかならない? TMRで過去へ行って見てくるとか?」

 ユキはキララに言う。


「えー。こんな人のためにTMRつかうのぉ?」とキララはすごくいやそうに言う。けれどもしっぽの動きを見てみると、しょうがないなやってあげようという感じで動いている。


 部下は…「そうか。お前さんなら…時代を行き来できる。頼む。このとおり100回土下座するから…」

と部下に言われる。


 本当に土下座する部下とリーダー。


「わかった。わかった…じゃあ…最後にTMRを見たのいつ? どこにあったの?」

 キララは聞く。


「アパートを出て行く3日前にはテーブルの上にあったぞ…」

 部下の1人は言う。


「そうか。じゃあ。俺たちが留守のときに、それを持ってきてくれ…」

 リーダーは言う。


 キララは「持って行ったらだめ。どこに行ったか見るだけ…もしかしたら間違って捨てたんじゃないの?」

 キララが聞く。


 リーダーは「どうなんだ」と部下に聞く。


「そんなことはないと思うが…」と部下は考え込んでいる。


「じゃあ行ってくるよ…どの時間帯だったら留守なの?」


「そうだな…夕方19時30ぐらいか? スーパーへ行っていると思う…半額弁当とかお惣菜とかを見に…」


「そう…じゃあ。今のアパートの壁にTMRで自動ドアを開けて直接部屋の中へ入るからね」

 とキララ。


「じゃたのむわ…」とリーダーが言う。


 そして、またアパートまで戻るキララ。


 ユキとララちゃんはそのまま待っている。


「なあ。カブトムシどうしようか…」部下の1人が言う。


「うーん。そうだな。戻ってくるまでの間。探すとするか…」


「そうだな…」


 3人組はまたカブトムシ探しをし始めた。


☆☆☆


 キララが戻ってきた。

「あのね。わかったよ。おそらくゴミ。空き缶とかペットボトルのゴミの日に、まちがってその中へTMRが落ちちゃったみたいで…そのままその日の朝。ゴミを出してたみたい…

アパートの中で見て何回か時間移動したらその場面を見つけたんだよ…」


「げっ」

「それって見つけるの難しいのか?」


 キララは「そうだね。ゴミ処理場のどこかでペットボトルと空き缶の分別で、異物として分別されてどこかへ運ばれたか、焼却されたかだね…」


「まじかよ…紛失とか、壊したとかだったらどうなるんだ?」

「たしか…弁償だったな…」


「弁償って一ついくらなのだ?」


「うん。わかんね。俺たちの安月給じゃ買えない金額なのは確かだ…」


「まじか。なあ。キララさんよ。ゴミの日に戻って、回収されるまえにとってきてくれ…」


「えー。ごみをあさるのぉ とってもいやだなぁ そんな仕事… ほんとうにしなきゃだめ。

ミミアに言って怒られるのは?」


 3人組は…

「このとおり。お願いだ」

「お願いします」

「神様。キララ様…」


 ははあと頭を下げて土下座している。


 キララはためいきをついてから「わかったよ。行ってくる…ごみはどこに置いたの?」


「えーとたしか。アパートの向かいの電柱のところ。一番左側だったかな。ビール瓶が4本ぐらいと、あと一番安い外国のビールの空き缶がいっぱいはいったやつだと思う」


「そっか。じゃあ。みてくるよ…」


 キララは壁にTMRで自動ドアを開ける。

「あたしも一緒にいく…」ララちゃんもキララの後を追って自動ドアの中へ入る。


☆☆☆


 しばらくしてから…キララとララちゃんがもどってきた。


 キララは…「残念ながらなかったよ…違うゴミ袋だったのかも…回収されちゃった」

 と言う。


「なんだよ」

「まじかよ…」

「もう一回行ってきてくれ…それとも俺たちのアパートに潜入してゴミに出すまえにTMRをあさって持ってきてくれ…」 

 と3人組は言う…


 にまっとキララは笑い「これだよね…」とポケットからTMRを出す。


「おー」

「それだ」

「ありがてえ」


 リーダーは手を伸ばす。

 キララは手をひっこめる。

「あ" なにすんだ」リーダーは言う。


「えーとね。これを渡す前に言うんだけど…お願いがあるんだけど、

カザー星系の施設の異世界へ移動するマシンを使わせてもらいたいんだけど…」


「はぁ?」

「なんだそれ?」

「聞いたこともないな…それに俺たちみたいな下っ端に言われても…困るな…」


「じゃあカザー星系の施設へ潜入するから、作業着とかで小さめなのを3つほど持ってきてくれないかな」


とキララ。


「ああ。そんなことか。従業員用の部屋に余っているのがあるから持ってくといい。サイズは自動調整だから」


 と言い、手を出してくる3人組。

 キララはTMRを渡す。


 そのとき…

「ぐー」

「ぐるるる」

「きゅーるるる」

 ととっても大きいお腹の音が鳴った。


「ぷっ」ユキはふいた。

「ねえ。おじちゃんたち。お腹すいているの?」

 ララちゃんが言う。


「そーだ。俺たちは貧乏だからな…」

「まともなもの食ってねえ」

「そういえば。帰還できるのとTMRが見つかって安心したらはらへった」


 キララとユキは顔をみあわせる。


「ねえ。あたしがおごってあげる。町の製麺屋でなにかたべない? おなかすいた」

 ララちゃんが言う。


「お昼食べたんじゃないの?」ユキは言う。


「うん。ニンジンパンいっこだけ… あたしの分は、お友達でお弁当わすれてきた子にあげちゃった」


「そっか」ユキはララちゃんの頭をなでる。


「おごりだから、一緒に来る?」キララは3人組に言う。


「まじか」

「ありがてえ」

「うぉぉぉ。食い物」

 3人組と一緒に移動する。


☆☆☆


 町の製麺屋。安くてうまい。


 お店の中へ入る。


「なんでもたのんでいいよ。あたしがはらう。共通マネーもってる」

 ララちゃんが偉そうに言う。


「まじか」

「ありがてえ」

「じゃあ。そばだな。あったかいものだな」

「俺も」

「俺も…大盛で…」


 それぞれキララ、ユキ、ララちゃんの後についてセルフサービス式の麺を手に取る。

 もうゆであがっているものもあれば、自分で茹でるものもあり、店員の人に言ってもらうこともできる。


 ユキは3人組が選んでいるものを見て、トッピングの卵と天ぷらと多めにとる。

 キララは月見うどん。

 ユキは月見そば。

 3人組はあったかい素のそば。トッピングはなしだ。


 支払いはララちゃんがすませる。

 12歳のララちゃんから共通マネーを少しもらったのだ。2万円ほど。ご褒美らしい。


 席に着く。


 キララは月見うどんだったが、今日はおまけであぶらあげを3つくれたから、油揚げのうどんになっている。


 キララは、3人組の麺の上に油揚げを1つずつ入れる。


「おい」

「あぶらあげ」

「きつねっ子があぶらあげをくれるなんて。どうかしているのか?」

 3人組はキララを見る。

 そしてユキは、天ぷらのトッピングとたまごを3人にわけてあげる。

「いいのか」

「まじか」

「うまそう…本当にいいのか?」

 キララとユキを見る3人組。


「いいよ。お腹空いているんでしょ」

「私はあまり油揚げ好きじゃないんだよね。昔食べ過ぎちゃって…」

 とキララが続ける。


「ねえ。あのきつねの子。油揚げをおじさんたちにあげているよ…」

「へー」

「はじめてみた」

 近くの席の人がこっちを見て言う。


 涙を流して喜ぶ3人組。

「冷めるから食べよ」

 ユキのことばに、3人組はどんぶりを手に持ちすすりはじめる。

「まじうめえ」

「あったけえ」

「卵うまい。そして油揚げ味しみてるぜ」


 がっついて食べる3人組。


☆☆☆


「さてと帰るか…家もないしよ…荷物は入れたか?」

 例の空地の近くへ戻ってきてからリーダーが言う。


「そうだな」


 TMRも見つかったし、腹もふくれたし…もうここには用はないと言った部下の言葉に合わせて、帰ることになった3人組。


 3人は帰還用のTMRでカザー星系の施設の入り口の壁に自動ドアを開ける。


 通り抜ける。


 そして…

「あら。あなた達は…」

 ミミアの妹がいた。


「あ。見たことがある。ひょっとしてミミアの?」

 キララが言う。


「こんにちは…どうしたの?」

 ミミアの妹が聞いてくる。


「いや。地球のミッションが終わってから、しばらく地球にいたんだよな」

「そうだ。観光をちょっとしててな。帰りが遅くなった」

「うむ」

 3人組は言う。


「そう。てっきりミッションが終わっているのに気が付いてなくて、そこのキララちゃんに教えてもらった? かと思った…お姉さまは中にいますよ…ついてきてください」

 ミミアの妹が言う。


「おい。いいのかよ…そっちは高官用の入り口だぞ…」

 別の入り口へ行くミミアの妹。


「まあ。いいんじゃない?」

 キララはそのままミミアの妹の後ろについていく。


 3人組もそのままついていく。


☆☆☆


 ミミアお姉さまのオフィス。


「あなたたち…」

 ミミアがこっちを見る。


「お姉さま。外にいたので… あとお姉さまのことを3人組は鬼と言ってました」


「あ"?」ミミアが3人組を見る。


「いえ。めっそうもありません。そんなことは言ってません」

「はい」

「リーダーの言うとおりでして…」


「まあ。いいわ。報告書を出して…それと…言うことはないの?」


「ただいま」

「帰っていいか?」

「報酬は?」

 と言う3人組。


「報告書を書いたらね…今日は帰っていいわ…あたしはキララちゃんに用事があるから…」

 ミミアは3人組に言い、キララ達についてくるようにと言う。


 ミミアは歩き、ボスの部屋の前で立ち止まる。

 ミミアは自分のカードをかざして中へ入る。


「ちょうど外にいたので連れてきました…」ミミアがボスに言う。


 ボスは椅子に座って、何かを読んでいたが顔を上げた。


「おお。お前たちか…良くきてくれた…」ボスは立ち上がる。


 ちょっと警戒しつつキララとユキはボスを見る。

「なんか用事? ところでいつ戻ってきたの?」

 キララはボスに聞いた。


 例の立方体を使って白い空間へ飛ばされたはず…もう帰ってきたのか。


「おとといだ。まいった。あの手帳が無かったらまだ、あそこだったな…

ところで…例の長耳族の子はいないのか? そこの幼い子に似た…」

 ボスが言う。


「ああ。ララちゃん? 異世界から来て帰って行ったから…いないよ…」

 キララが言う。


 ボスはちょっと残念そうな顔をした「ふむ。そうか。じゃあ異世界番号はわかるか?

連れてきてもらいたい…」


 番号ね。

「ねえ。なんかたくらんでいる?」キララは警戒して言う。


「いや。例の立方体のことでお礼を言いたいと思ってな…将来わしの役に立つらしいのがわかった。

手帳の字はどうみてもわしの字だった。あと数か月後のどこかの日に起こることも…なんとなく覚えがある… この施設の異世界へ移動する機械を使わせてあげよう… 連れて来てくれ…」


「なに。それだけ? 本当は別の計画があるんでしょ」キララはしっぽをびたんびたんとユキ君のお尻をたたきながら言う。


「ふん。ばれたか。ばれたならしょうがないな… いや。今まで一方的に地球を明け渡せとか、計画の邪魔だから破壊するとか言ってたな…それだとだめだとわかったのだよ…

歩み寄ろうと思ってな…だから関係した人に…これをあげようかと思ってな。

地球だと学校が休みに入るんだろう。ミミアから聞いた。

カザー星系の企業が管轄している星系間移動用の観光用トレインのチケットだ。

レベルSの席が利用可能だ…どうだ…途中の星系でタダで宿泊もできる。

そうだ。キララ。お前は図書館を持っているんだったな。途中に水族館や図書館。

カザー星系で建設した巨大な建物があるぞ」


「ふーん。それだけ?」キララはさらにしっぽをびたんびたんする。


「ねえ。キララそんなにしっぽうちつけないでくれる?」

 ユキが言う。


「ああ。ごめん」


 キララはララちゃんと一緒に12歳のララちゃんがいる世界へと行くことにした。


 ユキも一緒に行こうとしたが、ミミアに引き留められてしまった。

「ねえ。ラウンジでジュースでも飲まない?」と強引に引き留められたのだった。


☆☆☆


「ねえ。ユキ君。キララとうまくいってる? いってなかったり喧嘩したらいつでもあたしのところに来てもいいのよ…」

 わざとユキの隣に座って、体をくっつけてくるミミア。


「あの。近いよ…」ジュースを飲みながら椅子を後ろへずらす。


「なあに。いいじゃない。さびしいんだから…」

 また椅子をユキのほうに近づけてくるミミア。


 ユキは見た。けれどもミミアお姉さんには言えないままいる。


「あの。あまりこっちへ来るのはよくないと…」

 ユキはさらに椅子を後ろへ下げる。


 ミミアお姉さんはまた、椅子をユキ君のほうへ近づける。


「あのぉ」

 後ろから声がする。


 ユキはミミアお姉さんの後ろを見た。

 例の3人組だ。


 ユキはミミアの後ろを指さす。

 ミミアはやっと後ろを向く。


「あなたたち。まだいたの? 報告書は?」

 ミミアは立ち上がり、報告書を受け取る。


「きったない字ね」なぜか手書きの文書を受け取る。

 そして読む。


「もういいですか?」リーダーは言う。


「だめね。きちんと書いてないじゃない。ほら。こことか…ここ。中途半端ね。

やり直し。明日でいいから…」

 と言うミミア。


「はあ。わかりました。じゃあ書き直して明日持ってきますので…」

 リーダーは礼をしてから離れていく。


「あのさ…あの3人組…おばかなの?」

 ユキは聞いた。


「ああ。あのひと達…ユキ君にもわかる? 大変なのよ…教えたことすぐに理解してくれなくて…

騒ぎを起こしたり、国交の貿易の交渉をしに行ったら、怒られて帰ってきたり。

謝りに行かせたら別のお客さんのところへ行ってしまったりとかね」

 ミミアはため息をつく。


「そうなんだ…」残り少なくなっていたジュースを飲み終えるユキ。


 ちょうどララちゃん2人とキララが戻ってきた。


「あ。ユキお兄ちゃん」言いながら走ってきて、後ろからユキ君に抱きついて、肩の上に乗ってくる。


「うわぁ」ララお姉さんと同じ反応をするユキ。

 そして…両脇に手を入れてユキを軽々と持ち上げ、抱っこしてしまう。


「ゆーきくん」抱き上げたまま言う12歳のララちゃん。


「うー。なんかララお姉さんみたい… ユキ君いやがってるでしょ」

 幼稚園児のララちゃんが12歳のララちゃんに言う。


「えー。やっと久しぶりに会えたのに…14歳のユキお兄ちゃん。いいんだもん。あたしより小さいし…」


「ねえ。ララちゃんもこうなるのかな?」ユキは幼稚園児のララちゃんに言う。


「えー。なるのかな? わかんない…」とだけ言うララちゃん。


「さてと…ミミアお姉さん。いちおう連れてきたからボスのところへ行こうと思うんだけど…」

 キララは律儀だ。


「そうね…ほら。行くわよ…ララちゃんはそのままユキ君を持ってきていいから…」

 と言い、席を立つミミアお姉さん。


「えー」ユキは12歳のララちゃんに抱っこされたまま廊下を移動する。


 ユキは足を床へつけてみようとした。

 けれども背の高さはユキを越してしまった12歳のララちゃんは大きくて、床に足がとどかない。

 あきらめて、12歳のララちゃんに抱っこで運ばれてしまう。


☆☆☆


「あっ」ボスはユキのほうを一目みて何も言わなかった。


「あたしにお礼って?」12歳のララちゃんはユキ君を抱っこしたまま言う。


「おおそうだ。この手帳。持っていていいのかな? そして多分そのときが来たらこの手帳を使ってなんとかしてみようと思うんだが…そして… 本題だが…」

 ボスが話し出す。


 それから…ユキとキララはいったん帰ると言う。

 12歳のララちゃんはそのままユキ君の家についてくると言う。


 チケットを人数分もらい、出発の日時をミミアと決める。


「じゃあね…こんどの日曜日の10時ね」

 ミミアに言い、キララは自動ドアを開ける。


「カザー星系の所有する観光用トレインの旅か…」

 ユキはボスからもらったチケットを見る。


 黒いチケットが打普通のものに見える。


 まあ。いいか。危険はなさそうだし…それにタダだし…


 これからちょっとした観光用トレインの旅が始まる。


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