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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
再びカザー星系とのやりとり
94/138

カザー星系の部下といやがらせ(5)


 倉庫の床は完全に元に戻る。


 ペタンとララお姉さんが床にしりもちをつく。

 もう一度ユキ君がいた床を見て、はってその付近まで行くララお姉さん。


 床をさわる。ララお姉さん。


「もう。なによこれー。ねえ。ボス。ねえ。ぎゃー」

 と叫ぶ。そしてよろっと立ち上がり、そばにあった1メートル四方の小型のコンテナを怪力で持ち上げ、ボスが映っているスクリーンへ投げつける。


 どがん。とすごい音をたてて、倉庫の壁に穴が空く。

 小型のコンテナは半分壁にめりこみ、そして反対側へと落ちて行った。


「あ。あれ…」みのるお兄さんが言う。


 倉庫の壁。

 壁の向こうは…空でも外でもなかった。黒い空間。

 星も見える。


 やっぱり本当だったんだ。宇宙にこの倉庫があるのが…


 そして…

 ララお姉さんの脚をくいくいとひっぱる子。


「なによ…こんなときに…」涙を見せているララお姉さん。


 ララちゃんが服をひっぱっていた。

「ユキお兄ちゃんは死んでない」

 それだけ言った。


「は? だって見たでしょ。ユキ君が床から落ちて…じゅって…

ねえ。見てたでしょ」

 ララお姉さんが言う。


 ララちゃんは「しんでない。そこにあったものは落ちて行ったけど…本人は落ちてない。

向こうにいるユキお兄ちゃんを呼んでくるから…」

 とララちゃんは言う。そして入り口のほうへと歩いて行く。


「何言っているの? ララちゃん」

 床に座ったままのララお姉さんがララちゃんの後ろ姿を見る。


 そして…


 ララちゃんと一緒にユキ君が歩いてきた。


「ゆ。ゆ。ゆ」

「ゆきくん」


 やっとのことで立ち上がり、ユキ君のそばへと歩いて行くララお姉さん。


 ララお姉さんは、ユキ君をぎゅうと抱きしめる。

「死んだかと…」ララお姉さんはペタンと座り込む。


 ユキ君は言った。

「どうしたの? 何かあった? ララちゃんをトイレに連れて行った後にね。

ララちゃんからもらった飴をなめてたら座って寝ちゃったみたいで…」

 と言いあくびをする。


 キララは「ほ。ほんものなんだよね? さっきのは?」

 キララもユキ君を抱きしめる。

 きつねしっぽもユキ君の体にまきつける。


「えーとね。これ…」

 ララちゃんが腕を操作する。操作して…宅配ボックスを表示させて…稼働型デバイスを中から出す。


「あ。あなた。何やっているの? 何で使えているの?」

 ララお姉さんは、ララちゃんがTMRを使い、宅配ボックスを表示させていたのを見て言う。


 ララお姉さんは自分のTMRを出すも…使用禁止になっているのを見て言う。

「なんで?」


 キララも自分のTMRを出してみるが…同じく使用禁止で使えない。

「はい?」


 幼稚園児を見つめるキララとララお姉さん。


 ララちゃんが手をぽんとする。

「そういえば。やっておかないと…」ララちゃんはポケットから日記を取り出す。

 それを見ながら腕を出す。


「日記?」ユキ君は覗き込む。


 ララちゃんは言いながら…「えーと。どうだっけ。腕を出してTMRの仮想インターフェースをだして… 自動ドアを空中に出して… えーと。自動ドアを空中に固定化してからおーぷん」


 キララもララちゃんの行動を見て…「ね。ねえ。なにやっているの?」


 ララちゃんはおかまいなしに「あ。開いた。ちょっと行ってくる…」


 子供サイズの自動ドアを空中に開き、通り抜けて行ってしまう。


 そして見た。前のスクリーン。

「こんにちは。ボス。えーとどこだっけ? あ。あった。

これ。あぶないからもらっていくね…

じゃあね」

 ララちゃんはカザー星系のボスのいる部屋へ姿を現し、ボスの使っていたデバイスを手に取る。


 あっけらかんとして、見ているボス。


 自動ドアの中へ消えて行ったララちゃんをみる。


「は? あれはなんだ? どうしてだ…今 女の子がいなかったか?」

 ボスはミミアに聞く。


「私にもそのように見えました。それに…空中にTMRの自動ドアが出てませんでした?」

 ミミアもぽかんとしている。


☆☆☆


 ララちゃんが空中に開けた自動ドアから出てきた。自動ドアはララちゃんが操作すると消えた。

 それから、ララちゃんはボスの部屋から持ってきたデバイスをララお姉さんの足元におく。


「ねえ。これ。ボスが使っていた床をどろどろの赤いものにするやつ。お姉さん踏みつぶして…」

 ララちゃんがお姉さんに言う。


「え? あ。うん」

 どすん。

 かかとでそのデバイスを踏みつぶすララお姉さん。


 その後…

「あー。忘れてた。地球。彗星が落ちて壊滅の危機になったんだった…ああ。どうしよう…

TMRは?」キララは操作する。


 けれどもキララのTMRは使えない。


 ララちゃんはボスのほうを見た。そしてキララのほうを見てから言った。


「ふっははは。いやぁ。ボス。地球は本当に壊滅したとおもうかい?」

 とキラの声真似をしながら言うララちゃん。


 ボスはララちゃんのほうを見る。

「は? 何を言っている。さっきお前も見ただろう… 海の近くにある都市に彗星が落ちて大きなクレーターが出来ただろう…

それに彗星の後ろからの映像あるし…

まさか…いや。ここは現実だ。何回も調べた。

何を言っているんだ、ウサギのぬいぐるみの子よ…」


 ボスは言う。


「だから… 本当に彗星のせいで壊滅したの? 都市は無傷で…地球へ舞い上がったちりもウソだとしたら?」ララちゃんは日記を見ながら言う。


「だからなにを…

まさか。おまえか。何かやったのか? なあ」ボスは立ち上がる。


 ユキ君とキララがララちゃんを見る。


「じゃ。たねあかし…頭わるいな。おじさん。映像を出すから…」

 ララちゃんはTMRを操作して…デバイスを取り出した。それを前の方へ歩いていき、ネコへ渡す。


 これボスのところへ持って行ってと言う。


 ボスは限定的にTMRを使えるようにする。ちょうどネコのサイズぐらいの大きさに…


 ネコはボスの元へと消えて行った。


 ボスはネコからララちゃんの持っていたデバイスを手にとる。

 ミミアに「これ。再生しろ」


「あ。はい」ミミアはデバイスをコンソールへセットする。


 さっきの地球の映像が見えた。


 さらに後ろから撮影している。


 彗星が地球へ近づいたときだった。


 いきなり彗星が消えた。

「は? 彗星が消えたぞ…」


 ボスの口があんぐりとあく。


「ええとね。彗星は消えたんじゃないの。大きさが小さくなったの。

あらかじめ。あたしが宇宙ドローンを使って縮小スクリーンを彗星がとおる場所へてんかいさせてたの…彗星は元の大きさよりかなり小さくなったの…後ろをついてきていたカメラとともにね…

そしてね…」

 ララちゃんが言うと…


 例の海の近くの都市が見えた。


 彗星が落ちた場所だ。


 しばらくその映像が映っていたが、いきなり人影がうつった。


 ものすごいでっかい人影。


「うわぁ。何あれ。巨人?」ユキ君が言う。


 でも…


 映像がパンして、違う角度から都市が映る。


 あれ?

 都市の横。さっきの映像の切れ目。映像の映っていない場所にいっぱいの人影。


 それとカメラの器材。


 映画の撮影に使うもののようだ。


 都市はミニチュアだった。


 ミニチュアといっても数百メートルはある本格的なもの。


「解説するとね。ミニチュアの都市の真上に小さくなった彗星がおちたの…

そのときにすごい映像がとれるからって、みんなに言っておいたの…

その後の地球に衝撃波が広がってちりが広がる映像は、CGなの…

ボスのカメラから送られてくる映像をすりかえたの。

どう?

すごいでしょ」

 とララちゃんが言う。


 ほえー。

「すごい。ララちゃん。キラみたい…」


 ララお姉さん「え? え? ええー」やっと今頃びっくりしている。


 ボスは…

「ふ。ふ。ふざけるなぁー。こんなことがあってたまるかぁ」

 手に持っていたグラスを床へとたたきつける。


 と…ボスが床の上へくずおれる。


 ぷるぷる震えているボス。


「ねえ。すごい。ほめてほめて…」ララちゃんは頭をユキ君の前に出す。


「すごいわね。どうやったの?」

「ねえ。これはララお姉さん。完全に負けね」


「なーんだ。良かった。地球は無事ね」


 みんな喜ぶ。


 だが…


 ボスの隣にいたミミアがいなくなっているのにみんな気が付いていなかった。


 ボスは立ち上がる。

 そしてデスクへと歩いていき…

「なあ。ミミア。指定の場所へついたか?」


 ボスは言う。


 映像が映し出される「はい。ボス。どうすれば?」

 ミミアだ。


 月の近くなんだろうか。

 宇宙にいるミミアの映像が見える。


「じゃあ。そのデバイスのスイッチを押せ」

 ボスは言う。


 ミミアは「えーとこれですか? これを押したらどうなるんですか?」


 ボスは…「くっくっく。こんなこともあろうかと…地球の奥深くの地層に惑星破壊弾を設置しておいてよかったな。お前が押すのだ。さあ」


「なっ」その言葉にキララの顔がひきつりボスの顔をみる。


 ララお姉さんは「なっ。さ。さっきボスはくずおれていたじゃない?

さっきのは演技だったの?」


 ユキはボスを見る。


「くっくっく。実はそうなのだよ…過去のキラやキララとのやりとりの記録を見させてもらった。

一筋縄ではいかなくてな。傑作だったよ。前のボスを仮想現実の中で現実と思わせて地球の歴史の改変をさせていたものとか。すごかったぞ…でもな。わしはそんな無能なボスとは違うのだよ…

わしは有能なのだよ…だからしっぱいしても次のリカバリーをしておく…そのリカバリーも失敗してもなんとかなるようにしておくのだよ…だからわしはこの地位にいる。どうだ?」


「くっ」キララが苦い顔をする。


 みんなはララちゃんのほうを見る。


 ララちゃんは首を横にふる。


 どうやら地球の運命はミミアにかかっているということになった。


「さあ。ミミア。ボタンを押すのだ…押せば地球はこなごなだ。さあ。押せ。命令だ…逆らったらどうなるかな」

 ボスは言う。


 ミミアは…


 考え込んでいた。


「押せないわね… まだ地球に人がいっぱいいるんだもん。無人だったら押すわね」

 とミミア。


 ボスは「ほう。そうか… お前の考えはそうなんだな…

ふむ。まあ。よい。仕方がないな。あきらめよう」


 あっさりあきらめるボス。


 そして別のデバイスを出してボタンを押す。


 キララは「ねえ。何をしたの?」ボスの行動を見て言う。


ボスは「くっ。これか? ミミアの頭の中にチップが入っていてな。これを押すと脳に信号が行くのだよ。わしの命令を絶対聞くようにな…

くっくっく。ミミア。ボタンを押せ」


 ミミアは…ちょっともがく。

「ああ。ああああ」


「ミミア」

「ミミア。押しちゃだめ。地球が…押したら地球が…それと大勢の人の命が…」

 みんなミミアの姿を見る。


 そしてミミアは見た。

「わかったわ。ボス」


 ミミアはデバイスをみんなのほうに見せる。


 ボスは「おお。押すのか。くっくっく。見ものだぞ…押すのだ…」


 ミミアは「わかったわ」

 と言う。


「だめーぇ」

「ミミア。押すな」

「ミミア」


 みんなが言うが…

「わかったわ。私は…」

 みんなの方を見るミミア。


「私はミミアではないわ。あたしはミアよ…なんで忘れていたのかしら…

なんでミミアだと思い込んでいたの?」


「は?」ボスが言う。


 キララとユキ君は顔をみあわせる。


「はぁ?」ラミちゃんが言う。

「はい?」ミミちゃんも言う。


「え?」ヒメルも言う。


 そのとき…みんなが立っているそばの空中に自動ドアの形が見え始めた。

 ユキ君の背と同じぐらいの自動ドアの形。


 それが実体化し…1人の女の子が出てきた。


 ウサミミ。ひじょうに見覚えのある姿。


「ねえ。どう? あたしの言うとおりにしてた?」

 その子はユキ君よりちょっと大きいぐらいのうさ耳の女の子。

 雰囲気はララお姉さんに似ている。


「あ。ララお姉ちゃん。うん。日記ありがと。これを見ながらやったらうまくいった」

 ララちゃんはその子に日記を手渡す。


「き。きみは?」ユキ君は言う。


 その子はユキ君をじっとみて「ふっふっふ。ユキ君。かわいいね。あたしはララ。異世界から来た12歳のララ。ふっふっふ。ユキ君の身長こしちゃったね…

でね…えいっ」

 12歳のララちゃんがユキ君に抱きつく。


「うわぁ」ユキ君は12歳のララちゃんにもふられる。


「こら」ボスの声。


「ゆーきくん。かわいい」12歳のララちゃんがユキ君をもふもふする。


「ねえ。あれって?」ラミちゃんがララお姉さんのほうを見て言う。


「ぜったいあたしなんだけど…12歳のときに来た記憶がないのよね…」

 と言う。


 キララが「ねえ。あの子。異世界から来たって言ってなかった?」


「そっか」


 12歳のララちゃんは空中に開けたTMRの自動ドアを閉じて、ララちゃんに腕を出してと言う。

「はい」


 12歳のララちゃんは「一時的にあたしのTMRの機能を使えるようにしていたけど…もういらないね…大人になるまで使えないようにしておくから…」

 12歳のララちゃんは幼稚園児のララちゃんのTMRに処置をする。


 そして…ボスのほうを見た。


「ねえ。ボス。その子はミアお姉さん。あたしが2人の記憶を入れ替えたの…

ボスが着任した日から…ミアお姉さんはミミアとしてボスのそばにいたの」


「はああ?」ボスは通信機を通して映像がうつっているミアお姉さんを見た。


 ぷるぷるしているボス。


「ふざけるなぁ。くそがぁ…これでは地球は…地球は…」

 今度こそ本当にボスは床にくずおれた。


「ぷっ」キララは笑う。


「ぷっ」ユキ君も笑う。


 幼稚園児のララちゃんは「ボス。あきらめなさい。もううつてなし…

しっぽを巻いて逃げるのよ…」


 幼稚園児のララちゃんに言われる。


「くぅ。これで勝ったと思ってないだろうな。わしはあきらめんぞ…

次にとっておきの作戦で地球を壊滅させる…

太陽系を破壊してやる…

おぼえていろ。

くそっ」

 ボスが言う。かんかんだ。


 で。

 12歳のララちゃんは…

「あ。そうだ。ミアお姉さんを迎えに行ってくる。それとミミアもボスのもとへと届けてくる」

 いまだキララとララお姉さんのTMRは使えないが、12歳のララちゃんは自動ドアを開きどこかへと行ってしまった。


☆☆☆


「やっほ。ボス。これ。ミミア」

 12歳のララちゃんは本物のミミアを連れて来てボスの横へと押し出す。


「あたし…何をしていたのか… うすぼんやりとしているのよね…」

 ミミアが腰かける。


「ぐぬぬ。くそぉ…」怒り。頭からゆげが出てそう。


 12歳のララちゃんがボスに言った。

「このままだとボスが一方的に負けだと思うの。私たちの勝ち。で、ボスは損するだけ…

それはいやなの…だからこれあげる…」

 手帳をボスに渡す。


「なんだこれは」ボスは手帳を見て中をあける。


 ん? ボスは手帳に書いてある字を読む。


「それ。あなたの書いた字。未来に行ってもらってきたの…で、あなた。将来あるミッションで困ったことになるの。大勢の部下とともにね…

でね。これもあげる…いってらっしゃい… 手帳の中を読んでね…」

 立方体をボスに手渡す。


 そしてララちゃんは辺を2回押してとボスに言う。

 ボスは言われたまま押してしまう。


 すると…辺は全部白色になる。

 そしてボスはどこかへ転送されはじめた。

「お。おい…なんだ…どうなっているんだ…」

 

 ミミアは

「あれって例の立方体じゃない。ぼ。ボス。ねえ…」

 ミミアは手を伸ばすがボスは消えてしまう。


 12歳のララちゃんはミミアに言った。

「将来。ボスは不思議な空間へと取り込まれるの。部下とともにね。脱出方法をさがして苦労するんだけど…結局その空間から出ることがなくしばらく過ごすはずになるの。

でね。今あたしが立方体と手帳を渡したから。ちょっとすると戻ってくると思うの…

この脱出の経験が…部下と共に不思議な空間へと取り込まれたとき、ボスの発想により部下とともにみんな生還するの。それでさらに出世して英雄になるの…

このぐらいやっておかないと暗殺されちゃう…」


 ミミアは「そ。そうなの…。まあ。まってるわね…戻ってきたらあたしから伝えておいてあげる…」


「うん。よろしく。じゃあ。あたしはみんなのところへ戻ってから自分の世界へと帰るね」


 と言った。


 こうして地球の危機は去り…


「ぐぬぬ。これ…どうしても渡すの? ニンジンセットぉ」

 ぐっすん。涙目になっているララお姉さん。


 幼稚園児のララちゃんとの勝負に負けたのであった。

「おばあちゃんに頼んでニンジンじゅーすにしてもらう…

お姉さんにもジュースあげるね…」


「へ?」涙目のララお姉さんがララちゃんを見る。


「泣かないの。いいこいいこ」ララちゃんが長身のララお姉さんの頭をなでる。


「ありがとー」ララお姉さんはララちゃんにぎゅっとだきつく。


「あはは」

 じゃれあっているうさぎのハーフの子。


「さて。帰ろうか」キララが言う。


「うん」ユキ君はキララと手をつなぐ。


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