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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
86/138

消えたユキとキララ(5)解決編

「今日はゆっくり休むといいわ」ミミアが言った。


 食べ物は、台の上にあった数個の鍋の中。勝手に中身が補充されている。実に便利だ。


「ねえ。シロ達はどうだったのすぐ見つかった?」キララが聞く。


「えーとね。いろんな地域に行って、最後にやっと1個だけ見つけたの」


「そう。透明なケースの中に入っていたんだけど。どうやって取り出せばいいかわからなくて…

目を閉じてケースに触ったり、ケースを持ち上げて底からとろうとしたりしたんだけどダメ」


「うん。そうそう」


 シロとソラが言う。シロとソラは親子。シロはソラのお母さんになるはず。ソラは後の時代から来ていた。だから気が合う。仲の良い姉妹みたい。

 けもの子ハーフだと遺伝子操作で生まれてくるけど親子はめずらしい。


「で。どうしたの?」ミミアが聞いた。


「ソラがね…」シロが言った。

「ほらでておいで、立方体ちゃん。出てこないと燃やすわよ…」と言ったら転がって出てきたの。


「はあ? 何それ…」ミミちゃんが言った。


「出てくるもんなんだね」ユキが微笑みながら言う。


「へー。あたし達のときはがちゃがちゃだった」

 ミケア・ミレイちゃんが言う。


「うん。特大サイズのがちゃがちゃがあって。コインを入れなくてもハンドルを回せるんだけど…きっと1000個はあったかな。一つ一つ取り出してカプセルを割って、中の立方体に触ると消えるんだ」


「あたしがね。最後まで調べてみようと言ったから、シマ君とあたしが1000ぐらいのカプセルを全部だして、調べたら最後の2個があたしたちのカプセルだった」


「うわぁ。大変だったね。でも移動しなくて良かったからいいのかも…最初であきらめてたら見つからなかったわね…」ミアお姉さんがスープを食べながら言う。


「こっちは、町みたいなところの建物の中で最初に立方体を見つけたんだけど触ったら消えちゃった。最初に小瓶を見つけてなかったから…その後噴水の水の中で小瓶を見つけてね…

あ。そのときユキ君の姿が消えちゃったんだよ」キララが言う。


「へー。すぐに見つかった? あー。えーとユキ君と立方体…」ミケア・ミレイちゃんが聞く。


「ユキ君は見つかった。急に背後から声をかけられてね…」キララ。

「キララのしっぽ。びっくりして太くなっていたし…」ミミちゃんはキララのしっぽをさわりながら言う。


「その後は、別の地域で木の上に立方体がくっついていて、ジャンプしてミアお姉さんとララお姉さんが取ろうとしたんだけど…」


「だめだったのね。あたしのことば聞いてなかった?」ミミアが言う。


「うん。それだとダメだというのがわかって… 僕にララお姉さんが抱きついてきてキララもだきついてきて、重くてしゃがんだんだよね。そうしたら、木の根元をしゃがんだ目線から見たとき、穴があいているのに気が付いたんだよね…」


「あたしのおかげかな?」ララお姉さんが言う。


「ユキ君。私もだよね」キララが言う。


「うん。2人のおかげ… でも…僕の分の二つの立方体がまだ見つかっていないんだよね。ねえお兄さん」

「ん。お兄さんって。異世界から来た僕自身なんだけど…まあいいか」大きいユキが言う。


 立方体は、所有者が触ると、面の色が変化するから誰のかわかるんだけど…


「そう…」ミミアは食器をかたづける。

 台の上に置いて置くと、いつのまにか綺麗になっているらしい。


☆☆☆


 朝。外の空の色が明るい色になっている。

 ユキは建物から出て外を見ていたときだった。


「おーい」遠くから声が聞こえる。

 2人組。


 だんだんこっちへと歩いてくる。


 ユキは建物の中にいったん入った「ねえ。誰か来るよ…」キララに言う。


「え?」キララはユキと一緒に外にでる。


「ほらっ」ユキは遠くを見る。


 外で待っていると誰か見たことがない人が来た。


「ここで人に会えるなんて…」

 2人組。女の子っぽい。


 外観はトリのハーフの子と猫のハーフの子に見える。

「ねえ。ひょっとしたら地球人?」聞いてきた。


「うん」

「そうだよ」


「あたし達は、西暦2039年から来たんだ」


「あー。だったら僕たちの時代に近いね。2038年からだよ」

「私もだけどTMRがあるからどこの時代にも行けるよ。ここでは使えないけど…」

「とりあえず入って」ユキが2人に言う。


☆☆☆


 ユキは外から来た2人をみんなに紹介した。


「あたしはミケ。こっちはハク。それぞれネコのハーフとトリのハーフ」


「こんにちは…」


 しかし…なんか2人を見ているとある人を思い出す。ミケはハクの頭をなでなでしながら話しをしている。


「ところで自分の小瓶と立方体は見つけたの?」ミミアが新しい来訪者に聞く。


「うん小瓶はあるし、立方体は1つ見つけたんだけど… 残りが見つからなくて…

この立方体おかしいの… あたしがさわったら反応するときとしないときがあるし」


「それっておかしいわね」ミミアが言う。


「うん。ねえ。あなた達も探しに行くんでしょ? あたし達もついていっていい? 新しい地域に出るかもしれないし…」

「うん」

 ミケとハクは、キララに聞く。


「OK」

「うん。いいよ。僕たちの分としてはあと残り2個見つければいいし…」

 キララとユキは言う。


☆☆☆


 夕方になった。

 結局新しく立方体は見つからず。


 ミミアがいる建物に戻ることにした。

 ここは、見たことがない地域。


☆☆☆


 ミミアがいる建物の前へと戻ってきた。

「もうだめ…」

「だめかも…」

 ミケとハクは地面に座り込んだ。

「ねえ。また明日探そう…」ユキは2人に声をかける。


「ねえ。あなたたち建物の中に入ったら?」ミミアが出てきた。


 ミケとハクはミミアの姿を見て話しだした。

「実はあたし達。青の小瓶を前に飲んでいるの…ねえ。ミミアと言ったかしら。ウサギの子。

あたし達も同じように長い間ここにいるらしいの。50回は青の小瓶を飲んだらしいの。そして来てから50年たったみたい…」


「は? そんなに? でも年とっているように見えないんだけど…」ミミアは2人を見る。


「うん。2人同時に青の小瓶の中を飲んで、リセットされちゃうんだけど… 今回。あたし達は同じ場所で気が付いたの…きっと前も同じだと思うわね。そして、今回、あなた達より前に会った人に『あなた前に見たわよ50年ぐらい前に』…と言われたの。何回青の小瓶の中を飲んでリセットしているの?と」


「そ。そうなんだ。前会った人はミミアではないの?」ユキは聞く。

「あたしはこの2人には会ったことないわね…」ミミアが言う。私が忘れてなければだけど…


「うん。違う。緑色の建物の中にいた人」

「そう。この建物と似ているんだけど…建物の色が薄い緑色」

「緑色の建物にいた人に聞いたんだけど…青の小瓶の中身を飲むと1年の時間が進むの…と言ってた」

 ミケとハクは交互に言う。


「そうなの?」ミミアがびっくりした顔で2人に聞く。


 そんなの初耳だ。

 ユキは考えた。じゃあ。50回で50年か…じゃあミミアは100年前にこの世界に来て…100回はリセットして…その後? じゃあなんで外見がおばあちゃんになっているんだろう。


 ミケとハクは、ミミアの姿を見てから、2人目を合わせた。

 そしてポケットから小瓶を取り出した。

 あ。リセットする気だ。

 僕は思った。


 でも見ると赤の小瓶。

 2人同時に瓶のふたをとってごくりと飲む。


「何やっているのよ。死ぬのよ…」あわててミミアは2人にかけよる。


「う。にがい」

「う。にがい…」

 うべぇという顔をする2人。そして。う。

 喉に手をあてて苦しみだした。


 2人は地面にころがる。

 そして2人手を握る。ぎゅっと抱きつく。

「喉がくるしい」

「うん。だめ。死ぬのかな」


 そして…2人は動かなくなって…うっすらと体が薄くなり…消えていった。


「そ。そんな…」ユキは地面に座り込む。

「あ」

 キララは何も言えなかった。


☆☆☆


 ユキとキララは、ミケとハクは立方体を見つけて戻っていった。とみんなに話した。


 ユキとキララはものを食べずに、ベッドの中に一緒に入った。


☆☆☆


 3日目。この日もユキの分の立方体を見つけに行くが見つからなかった。

 そして異世界から来たユキとキラ。2人も同じ。ユキの分が見つからない。


☆☆☆


 4日目。

 この日も見つからなかった。


「ねえ。見つからないんじゃない?」ミアお姉さんは言う。


「そうかも…」

 キラは異世界から来たユキの隣で。

 キララはユキのの隣で、ユキの頭をなでている。


「キラの立方体2面だけ僕が触ったら反応するんだけど… 僕のじゃないし…」


「うん。僕も同じ。キララの立方体。2面だけ僕が触ったら反応するんだけど…」


 と2人のユキは言う。


それを聞いてミミアは「変なのよね。あのミケとハクの立方体もそうだったんだけど…

絶対あるはずなのに… つれの立方体はそばにあるのよね…」


 シロとソラ。

 シロの膝の上にソラは座っている。シロはぎゅっとソラを抱っこしている。

 それを見ながらララお姉さんは言う。


「んー。じゃあ。立方体がそばにあるんだとしたらくっついているんじゃない? シロとソラみたいに…上に乗っているとか」


「何。変なことを言って…乗ってたらわかるでしょ。重なっているわけでもないし… ???ん」


 ミミアは立ち上がった。


「ねえ。ひょっとして…」キララは立方体をさわる。

自分がさわって反応する面。ユキが触って反応する面がちがっている。


 それを見てキラは「あ。ひょっとして」キラはキララと目をあわせる。


 キララとキラ。それぞれ立方体を手に取る。

 自分が触って反応する面を手にもち、反応せずユキがさわると反応する面をユキに持ってもらう。


 そして立方体を上下にひっぱってみた。 


「あー」2人のユキは同時に言った。


 1つの立方体が縦にひっぱったら2つに分裂した。


 ちゃんと2個の立方体になっている。


 2つに分裂したキラが持っている立方体。キララが持っている立方体。

 キララが反応する立方体とユキがさわって反応する立方体に分かれた。

 それはキラと異世界から来たユキの立方体とも同じだ。


「あー。最初からあったんだね。立方体は3次元的に重なって存在していただけで…」

 キララはなっとくしたようだ。


「じゃあ。ミケとハクの立方体も?」ユキはキララに言った。


「そうかもね…」


 ☆☆☆


「やっとこれで帰ることができる。立方体の面を同じ色にそろえると元の世界へと帰れるわよ…」


「やった」ミミちゃんは立方体を同じ色にそろえはじめた。

「あたしも…」ラミちゃんも立方体をいじる。


「じゃあ。あたしたちも…」ミケア・ミレイちゃんとシマ君。


「じゃあ。行こうか…」キラとユキ。


「じゃあ。あたしもそろえよっと」ララお姉さん。


 つぎつぎと仲間が消えていき、元の世界へと帰る。

 最後に残った。ユキとキララ。そしてミアお姉さん。ミミア。


「あなた達もそろえなさいよ」ミミアが言う。

「うん」

「そうする…」

 ミアお姉さんとユキ、キララが立方体の色をそろえたときミミアが言った。

「ねえ。気になっているんだけど。あたしは100歳を超えていると思うの。戻ったら死ぬかもね」ミミアは立方体を1面を残して色をそろえてから最後の面をそろえる。


「そそれって… ミミア…」言いかけたミアお姉さんの姿が消え。その後にユキとキララも消える。

 最後にミミアの最後が消えた。


☆☆☆


 ここは図書館。借りている個室。

 みんな戻ってきた。


 ミミアを除く人がみんないた。

 みのるお兄さんとヒメルもいなかった。

 テーブルの上には借りてきた本が積みあがっていた。


 いろいろな惑星の飛行生物。

 リゾート地。

 新婚におすすめの観光スポット。

 夫婦の月。


「あの言っておくことがあるの」ミアが言う。


 まだミミアが戻ってきていない。


 立方体をそろえるのをためらっていたのか?


 ミアはみんなにミミアは長い間あの世界にいたからこの世界に戻ってきたら寿命を迎えて死ぬかも。

 と話していたのをみんなに言う。


「えー。それって…」

「なんで…」

「ミミア…」

 みんないい、うさ耳っ子はウサ耳が垂れる。きつねっ子はしっぽが下がる。


 そんなとき…

 ミミアの姿が現れた。

 ミアお姉さんの近く。


 ミアお姉さんは自分とうり二つのすたがを抱きかかえる。

 外見は年をとっておばあちゃんになっているミミア。


「ねえ。ミミア。ミミア…」

 ぐったりとして動かないミミア。


「ミミアがしんじゃった」シロが言う。

「ミミア…」


 ぴくりとも動かないミミアを見てみんなだまる。


 ミアお姉さんはミミアを抱きかかえてソファへと寝かせる。


「やすらかに寝かせておきましょ…」ミアお姉さんが言ったときだった。


「んごー」

 聞こえた。


「は?」ミミちゃんがミミアのそばへと移動して息を確認する。


 息をしはじめた。

 そして…

「んごー」いびきをかいて寝始めたミミア。


 ミミアの外観。なんとなくおばあちゃんではなくなっているように見える。

 毛並みもいつものとおり。つやつやだ。しぼんでいたうさ耳も元にもどっている。


「生きているじゃない…」もうっと。ミアお姉さんは言う。

 ミアお姉さんは… ミミアの腹に軽くぱんちを入れる。


「うごっ… ごほっ…あー。何するのよ…寝ていたのに…

あ…。あれ? 戻ってきたの?」

 ミミアは起き上がる。


 そして自分の体を見て自分のうさ耳に触る。

 自分のうさ耳の毛並みを確認しているミミア。


「ミミア。もうおばあちゃんではないわよ。外観はあたしと同じ…」

 ミアお姉さんが言う。


「それ本当? 鏡はあるかしら」ミミアは言い、個室を出て行った。


 トイレに行ったようだ。


「ねえ。ヒメルとみのるお兄さんは?」ユキはキララに言った。


「そういえばどこ行ったんだろうね」ユキとキララは個室を出る。


 あー。戻ってきた。時代は違うけど…


 ミミアがトイレから戻ってくるのを待ってから、みのるお兄さんとヒメルを探すことにした。


☆☆☆


「あ。いた。あそこ…」

 図書館のロビーのところにあるソファに2人で座っていた。

 2人で座って、2人の世界に入っていた。


 ロビーを掃除している人。往復で何回かヒメルとみのるお兄さんの前を通る。

 ちらっと見ていく。


 ヒメルとみのるお兄さんは…

「ここはどうだ…」

「うん。気持ちいい。もっとなでて…」

 みのるお兄さんは、ヒメルの頭をなでなでしていた。


 前を通るロビーを掃除している人が、何回もヒメルとみのるお兄さんをちらっと見ているのにも、気が付かず気にしていないようだ。

 きっと2人しかいないように思えているんだろう。


 ミミアとミアお姉さんは歩いて行く。


 ミアお姉さんは…2人の目の前に立つ。じーと見る。

 1分。2分。3分… まったく気が付かない。


「こらっ」ミアお姉さんがいらっとして、みのるお兄さんの頭にちょっぷを入れる。


「いてえ。なんだ? あっ ミアお姉さん…」

「え。ミアお姉さん?」

 ヒメルはとろんとした目でミアを見上げる。


「こんなところでまた、2人の世界に入って… 大変だったんだから… ほら戻るわよ…」


「えー。もっとなでなでされていたい…」

「もっとヒメルをなでていたい…」

 みのるお兄さんとヒメルが言う。


「だめ」

「だめ」

 ミアお姉さんは、みのるお兄さんのわきのしたに両腕を入れて強制的に持ち上げて立たせる。

 ミミアは、ヒメルの両脇に手を入れて強制的に立たせる。


「うわぁ」

「おいっ」


「じゅうぶん。なでたでしょ…行くわよ… もう…」ミアお姉さんは言いながら歩く。


☆☆☆


「ねえ。スイートルームでちょっと休んでいきたいな…」ララお姉さんがキララに言う。

「それいいかも…つかれた…」ユキは言う。


 みんなスイートルームへとキララに連れて行ってもらい、ベッドに寝っ転がった。


☆☆☆


 みんなスイートルームのぐっすり眠れるベッドで仮眠をとった。 


「ぐっすり寝ちゃった…」キララは起き上がる。


 時間を確認すると、1時間30分しかたっていない。

「ほら。起きてユキ君」ゆさゆさとキララはユキの体をゆさぶる。

 キララはユキの寝顔を堪能することにした。


☆☆☆


 宇宙船の中。

 キララの宇宙船を使い地球へと向かう。最速で戻る。


「地球にもうすぐでつくんだけど…お腹空かない?」キララが言う。

「そうね…」


「あの不思議な場所でミミアからもらったごはん食べていたんだけど… しばらく時間がたったし…」

 異世界から来たユキは言う。


 地球に戻ってくるとちょうどお昼どきだった。

「町のそばにある定食屋さんに行かない?」キララが言った。

「ねえ。町の定食屋。今の時代にもあるかな?」シマ君が言った。


「うん。あるよ…代はかわっているけど…かつおぶし入りの卵焼き定食があるよ」キララは言う。


「いいねえ。かつおぶし入り、玉子焼きが食べたくなっちゃった」シマ君が言った。


「いいわね…かつおぶし…」ミミちゃんが言う。


「じゃあみんなで行こうよ…ミミアも…」キラが言う。


「そうね」ミミアは両腕を上にのばして伸びをした。


☆☆☆


 ちょっと古びた定食屋。


 他にお客は2名。奥にいる。


 僕たちは定食屋に入る。


 テレビがついていた。何かのドラマだ。


「よっこいしょ」シマ君が言う。

「よっこいしょ」ミケア・ミレイちゃんが同じように言う。


「お年寄りみたい…」


「よっこいしょ」ミミアが言う。

「もう。おばあちゃんじゃないのよ…」ミアお姉さんが言う。


 みんなそれぞれ注文する。


☆☆☆


 シマ君は煮魚とかつおぶし入り卵焼きの定食を頼んだ。

 ミミちゃんもシマ君と同じものを頼んだ。

 ミアお姉さんは新鮮なニンジンがつけあわせになっているステーキ定食を頼んだ。

 ユキはきつねうどんを頼んだ。

 キララは月見うどんを頼んだ。


 注文後。それぞれ食べ物が到着し、みんな食べ始めたころ。


「ねえ。キララ。油揚げいる?」ユキがキララに聞く。

「いいよ。気にしなくて…それほど好物ではないし…」キララは狐っ子だが油揚げはそんなに好きではない。


「おいしそうね。煮魚。そしてかつおぶし入りの卵焼き」ミミちゃんは手をつけて食べ始める。


「いただきます」シマ君も食べ始める。


 シマ君がかつおぶし入り卵焼きを食べて、番茶を飲んだときだった。


『食い逃げだぁ』とテレビから声が聞こえた。


「ぐほっ」シマ君はその声にびっくりして、番茶を落とした。

 うわちゃちゃ。とシマ君のズボンにお茶をこぼす。


「あー。ちょっとまって」ミケア・ミレイちゃんが立ち上がり、おしぼりでシマ君のズボンをふく。


「食い逃げという言葉に反応して驚くなんて…」キラがシマ君に言う。


「うるさいよ。もう…ちょっとびっくりしただけ…」

 シマ君は席から立ち上がる。


 ユキもシマ君を見る。


 その騒ぎを見て、奥の席に座っていた人がこっちを見る。

 そして…「あー」声をあげた。


「あなたたち。会ったわよね…」

「あなた達戻れたのね? でもなんでこの時代にいるの?」

 死んだはずのミケとハクだった。


「なんでここにいるの?」


「なぜか。自分たちの時代より後の時代に戻ったのよね。死ぬことはなかったわ…

苦かったけど…」

「うん。ものすごく苦かった。気絶した…」


「良かったよ。てっきり死んだと…」キララは小声で言う。


「大丈夫だった。1週間ぐらい前に戻ってきたの。でも自分たちの時代より後だから、どうやって戻ろうと思っていたの…

日やといのアルバイトをして過ごしているんだけど…

今日は休みなの」

「そうなんだ…どこに泊まっているの?」キララは聞く。


「駅」

「駅のベンチ」


「そ。そう… あの…TMRがあるから帰ることができるよ…」


「それ本当? 連れて行ってくれる?」

「あ。そうだったわね…」


「じゃあ。あとで…」キララは自分の席に戻る。


☆☆☆


 定食屋を後にする。


 自分の時代へと帰るためにキララは2人を送ることにした。


「ユキ君はララお姉さんのTMRで帰っていて…」


「うん。じゃあね」ユキはミケとハクに言う。


「じゃあ。住所はここだから遊びに来てね…」ハクが言う。


☆☆☆


「あー。もどってきた」シマ君はミアお姉さんの家の畳の上にねっころがった。

「あー。和室。おちつく…」ミケア・ミレイちゃんもシマ君の隣にねっころがる。


 ユキは自分の家で自分の部屋に入る。


「あー。ニンジンの鉢植えと畑をみてこよっと」ラミちゃんが言う。


「じゃあ僕たちも自分の世界へと帰るよ…ひょっとしたら異世界の君たちがまた困っているかもしれないけど…」

「うん。疲れたけど…」

 異世界から来たキラとユキは2人で異世界へと通じる自動ドアを開けて帰ることにした。


 キララはミケとハクを送ってから、こっちに戻ってきた。


「じゃああたしも帰るわね…」ララお姉さんは立ち上がる。

 そしてユキの背後にまわり、抱き上げる。


「うわぁ」

 ユキはララお姉さんに両腕の力だけで持ち上げられている。


「何やっているのよ… あたしを送って」ミミアが言う。そしてミミアはユキをララお姉さんからとりあげる。そしてミミアはユキを抱っこする。


「今度はなんなの。ミミアお姉さん」


「えー。しばらく来られなくなるから。ユキ君をお持ち帰りしようと思ったのに…」ミミアが言う。


「だめだよ…」ユキはもがく。

 やっと床に足がつく。


「じゃあミミアを送っていくから」ララお姉さんは自動ドアでカザー星系へと通じるドアをあける。


「あ。そうそう。あたしの上司がかわるのよ。いままでおじいさんだったんだけど。腰をいためて引退するの… もうそろそろ若い上司が着任するわ。やり手のね。地球のことも計画を進めることにするはずだから…注意してね。あたしからはカザー星系の情報は流せないから…

あと…ミアお姉さん。来てくれる? ちょっとだけだから… 今のことで話しておくことがあるから…」とミミアは言う。


「わかったわ」ミアお姉さんは言い、ララお姉さんの空けた自動ドアの前へと歩いて行く。


「じゃあね。ユキ君」ミミアは言う。


「じゃあね」ララお姉さんが言い、最後に自動ドアの中へと消えて行った。


「そうか。カザー星系…」すっかり忘れていた。


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