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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
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消えたユキとキララ(4)ー立方体さがし…

 ユキはちょっと小走りで噴水のほうへと歩いて行く。


 結構暑いので、涼し気なところへと行きたかった。

 ミミアがいる建物の付近とかはちょうどいい温度だったんだけど、この場所へ来てから気温が高くなったのだ。


 噴水。

 水が上のほうまで上がり、そして落ちていく。普通の噴水。


 噴水の周りのふちは石に似た素材で囲まれており、噴水の水をせきとめている。腰かけるのにちょうどいい高さだ。

 ユキは靴を脱いで、靴下も脱いで、足をそっと噴水の池になっているところにぽちゃんと足をつけた。

 ちょっとぬるめだが、水に足をつけると気持ちがいい。

 ユキは後ろを見る。


 あれ? キララ達。あんなに遠かったっけ?

 遠くにキララとうさ耳っ子。ミミちゃん。そして異世界から来た僕とキラの姿も見える。


 けれども、みんななかなか近づいてこない。

 おーい。と手を振ってみたが、みんな見えていないかのようなふるまいをする。


 ユキは、みんなが来るまで待つことにした。

 みんなからは背を向けるような感じで、噴水のほうを見て座る。


 足をちゃぽちゃぽさせる。

 ユキはふと、腰かけているふちのそば(水の中)の下に何かあるのに気が付いた。

 赤と青の瓶。


「あ。赤と青の小瓶」小瓶は赤と青で一本づつ。ちょっと離れたところを見ると、水の中に落ちている小瓶があった。おそらく人数分ある。


 ユキは水の中に落ちている小瓶を拾い上げて、座っている石の上に置く。

 そのまま立ち上がり、水の中に落ちている小瓶のそばまで歩いて行く。2本ゲット。


 そして、また水の中を歩いていき、2本げっと。そして噴水の周りを一周すると人数分の小瓶が集まった。


 元座っていたところに戻り、小瓶の横に座る。そして後ろを振り返るとキララの姿。


「ねえ。小瓶見つけたよ…」


☆☆☆


「困った。ユキ君どこ行ったんだろう…」キララは噴水のそばへと到着したがユキはいない。


「ああ。どうしよう…」

「ユキ君…」

 うさ耳っ子とミミちゃん。そしてキララは後ろを見る。元来た道。そこにユキ君の姿はない。


 みんな見つめあう。


 そして…

「ねえ。小瓶見つけたよ…」

 と後ろからユキ君の声が突然聞こえた。


 振り返ってみると、ユキがいた。

「うわぁ。急に出てきた…」

 キララのきつね尻尾が太くなっている。


「え? 何が? さっきからこの噴水のところにいたよ… ほら小瓶…」

 ユキは手に持っていた小瓶をそれぞれキララと、ラミちゃん。ミミちゃん。ララお姉さん。ミアお姉さん。異世界の僕とキララに手渡す。

 手渡してから手の中が空になったのに気が付いた。ユキは自分の分の小瓶を拾うため、噴水の石の上を見た。

 あれ? 石の上に置いていた小瓶がない?


「ありがと… びっくりしたんだよ…急に前を歩いていたユキ君の姿が見えなくなるんだもん」

 キララはユキの頭をぽんとたたく。

「消えた? ずっとここにいたよ。普通に歩いてきただけだし…」

「ほんとなんだから…」ララお姉さんが言う。


 ユキは下を見た「ねえ。ここに置いてあった、僕の赤と青の小瓶知らない? 知るわけないよね。さっき来たんだもんね…」

 ユキは小瓶が無くなっているので、噴水の水の中も覗き込んで探してみる。

「小瓶… ユキ君の分がないの?」ミミちゃんはユキの隣へと行く。

 ユキは、ふちの石のあたりをかがんで覗き込む。


 ミミちゃんも靴と靴下を脱いでちゃぽんと噴水の池の中に入る。

「あたしも探すわね…」ミミちゃんはユキの背後のほうへと歩く。


 ユキは下を見て、水の中をさがす。


 キララが「あれ? ミミちゃんは?」キララはきょろきょろしている。


「ん? さっき僕の後ろのほうに…? あれ? いない? おーい」

 ユキは後ろを振り向くが、ミミちゃんの姿はない。噴水の裏?

 いや違う。そんなに水が多いわけでもない。裏にいても見えるはず…

 かといって、噴水の中から出た気配はない。


「何。何なの? 今度はミミちゃんが消えちゃった?」ラミちゃんはきょろきょろとあたりを見回す。


 ユキはその声を聞いて、再びまわりを見回す。ネコミミっ子はいない。

 ユキは元来た道を見る。

 そして…背後から急にミミちゃんの声がした。

「気持ちいいわね。水の中…そしてこれ。小瓶あったわよ。石の上に乗っていた…」

 ミミちゃんが手を差し出す。


「うわぁ。急にミミちゃんが出てきた…」キララがこっちのほうを見てびっくりしている。

 またキララのしっぽが太くなっている。


「え。ほんと?」キララは僕の背後を見ている。


 そしてラミちゃんも…「どこいってたのよ… 黒いから暑くて溶けたのかと思ったわよ…」

 ラミちゃんが言う。


「うーん」キララは考えだした。


「どうしたの?」ユキはキララに聞く。


「なんか怖い。いきなり消えたり…現れたり… 小瓶。見つけたんだったらこの噴水から離れよう…さっきの建物に戻って、そこにある立方体を持ってこの地域から出よう…」

 キララはユキの手をとって、噴水のところから出ようとする。


「さてと。行くわよ…さっきの建物の中。立方体があったわよね…」ミアお姉さんの声。

「そうだね…」異世界から来たユキが言う。


 もと来た道を戻り、最初に入った建物の中に入る。


 立方体は建物の中にあったはず…


 でもなかった。


「ないみたいね…」ミアお姉さんは言う。


「もっと良く探してみよう…」キララが言う。


「うん」ユキとキララは2人並んで、立方体を探す。

 見落としがないか…


 でもしばらく探したが、立方体はなかった。


「ないのだったら行きましょ…別の地域にあるかもしれないし…」ララお姉さんは、この地域に来たところまで戻りましょと言う。


「そうね…」ミアお姉さん。

 ミミちゃん。ラミちゃん。ユキ君。キララ。その後から大人のユキとキラがついて歩く。

 そして…


 がらっとあたりの景色がかわった。


 びゅう。

 あたりは白くなった。

 雪。吹雪。


「何これ…さぶい…」

 ララお姉さんはそばを歩いていたユキとキララに抱きつく。


 それを見てミアお姉さんも、ラミちゃんとミミちゃんに抱きつく。


「ああ。さぶい。しぬわ。猫は寒さに弱いのよ… あんたは平気?」ミミちゃんはラミちゃんに言う。


「うん。でも急に寒くなったから…」ラミちゃんも体をぶるぶるとさせている。


「ここから離れましょ…」後ろへと下がるミアお姉さん。

 それを見て、ララお姉さんも後ろへと下がる。

 10歩ぐらい下がると、がらりとあたりの景色がかわった。

 今度はお花が咲いている野原。

 気温も春の過ごしやすい感じになった。


 さっきの寒いところでララお姉さんはユキとキララに抱きついたあと、ユキとキララを抱っこして歩いていた。

「ねえ。もうおろして…」ユキはララお姉さんに言う。


「わかったわよ」ユキとキララはララお姉さんの体と密着していたが開放される。


「ねえキララ。なんかいいところだね。お花畑…」

「うん」


「なんか平和ね…」ララお姉さんはまわりを見る。


「うん。ところであれ。なんだろ…木かな?」

 遠くに見える木のようなもの。


 それ以外には目立つものはない。


「行ってみよう」キララはみんなに言う。


「そうね…」ミアお姉さんはみんなを見てから歩き出す。


☆☆☆


「ねえ。あの木。上に立方体が3つぶら下がってない?」

 ミミちゃんは上を見て言う。


「あー。ほんとだ」ララお姉さんが言う。


「ジャンプしたら手がとどきそうね」ミアお姉さんが言う。


「たしかにね…じゃあお願いするかな…3つ」キラが言う。


 長身のララお姉さんが、木の真下へと移動してジャンプする。


 ちょうどいい高さまでジャンプして、立方体を手でつかんだかに見えた。


「あれ? だめだった…」ララお姉さんはジャンプして、手でさわったかに見えたが、地面に着地してから言った。


「もう一度やってごらんなさい」ミアお姉さんは真下から見てるからと言った。


 ララお姉さんは、再び木の上の立方体が手に届く高さまでジャンプする。


 あれ? だめ。またダメ。何度かジャンプするが立方体を手でつかめていない。


「もう。何やっているのよ…あたしがやるわ」ミアお姉さんが木の上を見てからジャンプする。


 ぽーんとジャンプして、着地する。


「どう?」ララお姉さんはミアお姉さんの手を見る。


「だめね。立方体を手でさわったはずなんだけど…つかめないわね」


 しばらくその場に立ち尽くして考える。


「なんか。いいアイデアない?」キララがみんなに言う。


「と言ってもね…」異世界から来たユキが言いながら考え込む。


 そして…「ゆーき君」ララお姉さんはユキに抱きつく。抱きついて体の重さをユキにかけてくる。

「重いから…」ユキは言う。


 それを見て、キララもユキにくっついて体をあずけてくる。

「重いって…」ユキは地面にしゃがんでしまう…


 しゃがんだままユキは木の根っこを見た。

「あっ」ユキは木の根っこを指さした。

「ん? 何?」みんな見る。けれども気が付かない。


 しゃがんで木を見たユキだけが気が付く。

 ユキは立ち上がる。

「重いからどいて…わかった」ユキは上からララお姉さんがどくのをまって、立ち上がる。


 ユキは木のところまで、移動してからしゃがむ。

 しゃがむと、木の根っこに穴が見えて、中に立方体が3つ入っているのが見えた。


 ユキは立方体を1つ手にとった。そして上を見た。


 すると、木の上にくっついていた立方体のうち1つが消えた。


 それを見て残りの立方体を手に取る。

「なーんだ。ララお姉さん。ジャンプしないでも良かったんだよ…」

 ユキは立方体ララお姉さんに見せる。


「見つけたね。とりあえず3つ… 残り5つだね」キララが言う。


このお花畑。もっとゆっくりしたかったが、空の色がだんだん変化してきた。


「ミミアお姉さんのところへ戻ろう」空を見て異世界から来たユキが言う。

「そうだね…」


「もとどっちから来たっけ?」ユキがキララに聞く。


「あっちのほうだったと思う…」さすがキララ。しっかりしている。


「行きましょ…」


☆☆☆


 途中。空色のタイルが敷き詰められたところに出て、そこの台の上に立方体が3つあるのを見つけた。

 手に取ろうとしても触れない。


「えー。もう。なんで触れないの…」ララお姉さんがどん。と足を踏み下ろす。


「見たままだとだめなんじゃないかな?」


 その言葉にユキはあたりを見回す。


 変わったものはない。


 ユキは再びしゃがんでみた。


 でも下のほうになにかあるわけでもなく…


「ねえ。みんな後ろ向いていて…」キララが言う。


「あー。そっか。試してみて…」ミアお姉さんはわかったみたい。


 みんな後ろを向く。


 キララは立方体に手が届く位置に移動して後ろを向く。そして後ろ手になって立方体をつかむ。


「あ。とれた…」キララの手。立方体が握られている。

 そしてもう一つ。さらにもう一つ。3つ立方体を手に入れた。


「残り2つだね… でももう戻らないと…」だんだん空の色が濃くなってきている。


☆☆☆


「おかえり…」ミミアがみんなの姿を見て言う。

 他のミケア・ミレイちゃんやシマ君がすでに戻ってきていた。シロやソラはまだだった。


 ミケア・ミレイちゃんとシマ君は小瓶と自分の立方体を見つけていた。


「シマ君達見つけたんだ。早いね…僕たちはこれ…残り2つだよ… 3つずつ見つけてね…」キララがミミアに言う。


「ねえ。4つずつではなくて3つだったの?」ミミアが聞く。


「うん。そうだけど…」


 そのとき、シロとソラが戻ってきた。

 げっそりしている。

「あー。一個だけ立方体を見つけたの。どうしてももう一つ見つからなくて… 残りは明日かな?」

 シロが言う。


「あー。残りの立方体。探すのに時間がかかるかもね。もしかしたら小瓶を使うかも…」

 ミミアが言った。


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