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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
84/138

消えたユキとキララ(3)

「やっと来た。待ちくたびれたわね。100年は待ったわよ…」

 ミミアだった。


 見た目はおばあちゃんになっている。

「あなた…なんで…」

 ミアはミミアに言う。


「まあ座りなさいな… お茶を用意するから…」

 そこそこ広めの部屋。出入り口はない。


 ミミアは部屋のすみにある台に置いてあったポットを手にとる。

 テーブルの上に置く。そしてカップを手に取ってそれぞれの前に置く。


 みんなミミアのことをじっと見ているが誰も何もいわない。


 ユキの隣にキララが座る。その隣に大人のユキとキラが座る。

 その隣にミミちゃんが座る。

 その隣にラミちゃん、ララお姉さん。ミアお姉さんも座る。


「無茶しないでね。キララと一緒にユキ君が消えてしまってから、もう会えないかと思ってたんだよ…」

 ミミちゃんがユキに言う。


「うん。ごめん…」

「いや。ついかっとなってね…ところでそちらの方はキラとユキ?」

 キララは大人のユキと異世界から来たキラのほうを見る。


「やあ。ユキ君と仲良しでなによりだね…」

 イケメンのキラがキララに言う。そして仲が良すぎるキラと大人になったユキ。

 くっついている。さすがに手をにぎってはいないが…


「さてと、どこから話そうかしら… まあいつものお話からするか…」

 ミミアは話をし始めた。

「あたしが…ここに来たのは100年ぐらい前かしら… いろいろ歩き回ってここを見つけたの…

 目を閉じて一歩前へ歩いたら中へと入ることができてね…

 そのあと、ここを拠点にしてあなた達が来るのを待ってたの…

 まずは帰る方法を説明するわね。

 この世界へと来たのと同じように立方体を使ってこの世界から出るの。

でも、あなた達は持ってないわよね。この世界に来たときに自分専用の立方体は消えるの。

その立方体はこの世界のどこかにあるから探す必要があるんだけど…

そして決まって立方体とは別にこんな小瓶を見つけると思うの…

青と赤のね。中に液体が入っていて飲むと変化が生じるの」

 いったん言葉を切って、小瓶をポケットから取り出し、テーブルの上に置いた。

 そして、マグカップの飲み物を飲んで喉を潤した。


 ミミアが飲むのと同じタイミングで飲み物を飲むキラとユキ。

 ユキ君は小瓶をのぞきこんだ。


「変化って?」ミアお姉さんが聞いた。

 ミミアは「えーとね。青の小瓶はここに来てからの記憶を消す薬。赤はここから出られる薬」と言った。


「なぁんだ。赤の薬を飲めば出られるんじゃない…」ミアお姉さんが、赤の瓶を手にとった。


 蓋をとって、中身の液体のにおいをかぐために、くんくんとした。

「だめよ。飲んだら…きっと死ぬから…」ミミアはミアお姉さんに言った。


「えっ…」それを聞いて、ミアお姉さんは体をこわばらせてから、赤の小瓶の蓋を戻して、テーブルの上に置いた。


「以前。赤の瓶の中身を飲んでここから消えた人がいたの…

連れの人は立方体を見つけていたんだけど、赤の瓶の中身を飲んだ子はどうしても見つけることができなかった。連れの人は立方体をそろえて元の世界へと帰ることにした。そのときの噂では、赤の小瓶を飲むと、連れの人が立方体をそろえて帰るタイミングで飲むと一緒に帰ることができるらしいとのことだった。

連れの人が立方体をそろえて消えた後、赤い瓶の中身を飲んだ子は、とっても苦かったせいなのか、とっても苦しみだして、その後意識を失って動かなくなって… 床に倒れたまま動かなくなったの…その後消えたわ…その子はきっと死んだのね。

そして青の瓶の中身なんだけどリセットする薬になっていて、記憶をリセットしちゃうの。

連れが死んだことに耐えられなくて、いったんまた立方体をそろえてここに戻ってきたの。

そして、青と赤の小瓶をまた見つけて、その後に青の小瓶の中身を飲んで連れのことを忘れてしまったのね。その後にまた立方体を使って元の世界へと帰っていったの…

それを見てからは、ここで出会う人に言うことにしたの…赤の小瓶の中身を飲んだら死ぬと…」


「そうなんだ…かわいそうに…」ユキは言った。

 キララは…「じゃあ…ここから出るには自分の立方体を見つけないといけないんだね…」


 その後ミミアは続けた。

「立方体を見つけないと帰ることができないんだけど… どうしても見つからない場合3通りの解決方法があるの… 

青のほうの小瓶の中身を飲む。

赤のほうの小瓶の中身を飲む。

長い間ここの世界で暮らして誰か来るのを待つ…」


「赤の小瓶の中身を飲んだらダメじゃない…」ミアが言う。


「まあ。そうね。ものすごく長い間この世界にいて、生きるのにいやになったときに飲むんじゃないかしら…」


「それって自殺ってことでしょ… 解決にはならないじゃない…でも青の小瓶の意味は?」ミアがミミアに聞く。


「青の小瓶の中身を飲むと記憶がリセットされて、元出現した位置へと戻されるの… きっと何度も探して立方体を見つけることができなかった人のためにあるのね。何度も同じ場所を捜しても、あきらめてしまうでしょ。見落としとかあっても気が付かない。記憶をリセットして新たな気持ちで探すと見つかることがあるの…」


「そうなんだ… じゃあ立方体を見つけるか、赤の小瓶の中身を飲んで死ぬか。この世界で待つかしかないんだね…」

 大人になったユキがミミアに聞いた。


「うん。そう…」


「待ってたらいいことあるの? 待っている間に死ぬことはないの? 何百年とか…」

 シマ君がミミアに聞いた。


「待っていると誰かと会う可能性があって…そのときに意見を聞いて解決方法が見つかることもあるんじゃない?」


「ああ。そうか…」


「ミミアはきっとあたし達が来ると思って待ってたのね… こんなになるまで…」ミアお姉さんがミミアに抱きついて耳とかをなでる。毛並みはお年寄りになっているので少し硬くなっている。そしてもともと白うさぎのハーフと同じ外観なので白髪になっているとかはない…


「まあ。いいわ。あなた達は自分の立方体を見つけることね…そうしたらあたしも帰れるから…」


「うん」

「そうだね… じゃあどこに行けばいいの? それと見つけに行ってから…再びこの建物に戻ってくる方法とか? 教えてほしいな」

 キララがミミアに聞く。


「歩いて探すことぐらいでしょうね。歩いて行くと空間が切り替わって別の外観の街並みに出ることがあるの… そういうところに置いてあることが多いわね… 目立つ台の上に乗っていたり、頑丈な透明の入れ物の中に入っていたり…

その場合は取り出す方法を見つけないといけない…

もちろん力づくで壊してというのはダメ。頭を使うのよ…

最初に赤と青の小瓶を見つけて、ポケットに入れてから、立方体を手に取るの…

じゃあ。待ってるから…

あとね。一日が終わると夜になって暗くなるから。その場で一晩すごすこと…

暗闇の中。穴に落ちて出られなくなることもあるから…

その場合は誰かに引き上げてもらわないと一生出られない。赤の小瓶か青の小瓶でないとね…

もちろん見つける前だと絶望的だけど…」


「ここに戻ってくる方法は?」キラが聞く。


「白いタイルの床がある地面を目指すの… いつのまにかこの建物と同じようなものを見つけるから… その建物への入り方は同じ… どこにその建物があっても、壁を抜けるとここに出てくるから…」


 みんなひとまず出かけることにした。まずは少人数でグループを作り一緒にさがす。


☆☆☆


 それぞれ、シロとソラ。ミケア・ミレイちゃんとシマ君。異世界から来たキラとユキ。そしてユキとキララとミミちゃん、ミアお姉さん、ララお姉さんとで一緒に探すことにした。


 異世界から来たキラとユキは一緒に歩いて行く。


 シロとソラもミケア・ミレイちゃんとシマ君の後をついていった。


「さあ。いきましょ…」ミアお姉さんが言う。


☆☆☆


 みんなそれぞれ夕方ぐらいの時間になったら白い建物を目指していったん帰ることとした。

 ミミアに聞くと、時間の経過により空の色がかわるらしい。夕方近くなるとオレンジ色になる。


 しばらく歩いて行くと、いきなり空間が変化した。

 どこかの廃墟みたいな街並み。


 ユキはふと…横を見る。

 オレンジ色の店舗。

 ラミちゃんとミアお姉さん。ララお姉さんもその店舗を見つけて、気になったのでその店舗に入っていく。

 その後をついて行くことにした。

「あ。あった…」ラミちゃんが立方体を見つけ手に取ろうとする。


 立方体はラミちゃんの手が触れる前に消えていった。

「なんで消えるの…」無言のまま手をのばしたラミちゃんを見て、ララお姉さんが声を出す。


「ミミアが言っていたでしょ。赤と青の小瓶を見つけてから立方体を手にとると…」


「じゃあ。赤と青の小瓶を見つけた後じゃないとダメだったの?」

 うさみみをしょんぼりさせてラミちゃんがミアお姉さんに聞く。


「そうね。だぶん。見つける前に触れようとすると消えるみたい…きっと立方体は別のところへ転送されたのね…また探さないと…」


 同じ部屋に立方体があるのを見つけた。2つ。


 でも小瓶を見つけないと…


 小瓶はそこにはなかった。


 いったんその店舗を出る。


 ふとユキが道の先を見ると、噴水があるのを見つけた。


「ねえ。ちょっと暑くない? 噴水があるよ…」ユキはうさみみっ子達に言う。


「確かに暑いけど… 小瓶を捜さないと…」

「いいんじゃない? ちょっとだけだし…」キララは言う。


 ユキは噴水の方へと歩き出す。


 遅れて、うさ耳っ子達は後をついて歩く。


 ユキの姿がふっと消えた。


「えっ」キララがそれを見て言う。


 キララはユキのいたところまで行くが、空間が切り替わることもなく。ユキも出てこなかった。


「ど。どうしよう…」キララはあせる。


「なんで消えたの?」ミアお姉さんは立ち止まる。


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