無限に続く廊下に迷い込んだユキとキララ(4)
ぐうっ… キララのお腹から音がした。
「僕のだね… おなかすいたなぁ。だとするとここは仮想現実ではないのかな?」
「うん。そうかも…」その後ユキのお腹からも音がした。
キララはユキと2人だけのときだけ、たまに僕と言う。女の子なんだけど…
羽があるイケメン女子のキラのころの名残…
自動ドアは開かないし…
ユキは前のほうのドアを見てから、首を後ろにまわして別の後方の自動ドアを見る。
ん?
ふと横を見る。
横の壁。真ん中あたりに点滅する光…
さっきはなかった…
ユキは自動ドアがないほうの壁へと歩いて行く。
じっと光を見る。
光の上に手をあてた。
「あっ」キララの声がした。キララは部屋の真ん中に立っているが、下を見ている。
キララが手招きしている。
ユキは歩いて行くと… 部屋の中央に下へと続く階段ができていた。
「もしかして出口?」キララは下を覗き込んでいる。
「降りてみよう…」僕は先に階段を下りていく…
☆☆☆
あ。なんだ。
小さい部屋になっていた。
奥のほうにはベッドらしきもの。
横にはテーブルと、その上には鉄のお鍋っぽいもの。
鍋の横にはお椀。そしてどこかで見たお盆と急須。
お鍋の蓋をあける。
あたたかい湯気が立ち上る。
これってごはん?
「ねえ。きっと食べていいものなんだよ… お腹空いたし…」
キララはウインクする。
キララが言うのなら大丈夫だと思うんだけど…
キララはお椀に何かのスープを入れる。
鍋の隣には、おひつみたいなもの。あけるとごはんだった。
なんでごはんがあるんだろう…
でもお箸がない。
どこだろう…
2人で探す。
部屋の中にはお椀。急須が乗っているお盆。お鍋とおひつしかなかった。
おひつの蓋を逆さに台の上に置いてからさがそうとした。
おひつの裏に木でつっかえ棒をしてある形で、箸が2善くっつけてあった。
「なぁんだ。こんなところに…」キララは木のつっかえ棒をとって、お箸を手に取ってユキに手渡す。
「ありがと…」
さてと。キララは壁のほうにくっつけてあるテーブルのはしを持ち上げる。
ユキはキララが持っているほうとは逆のテーブルを持つ。
きっとテーブルを部屋の真ん中へと移動する気だ。
ユキとキララは言葉を言わないで、テーブルを動かす。
椅子も向かい合わせに置く。
いただきます。
ふたりでスープとごはんを食べる。
簡単な食事だったが、温かいスープはありがたい。
2人でごはんを食べて、急須をさわるとなぜか中身が入っている。
湯呑にそそぐと、ほうじ茶みたいなもの。
ずずずっと飲む。
ほんわか。あったかい。アツアツではない。
そして、いったんお盆の上に急須を乗せる。
2人で食べ物を食べたあとにお茶を飲んで考える。
「この部屋。他に出口はないみたい…」
まわりを見ながら言う。
そりゃそうか。簡単に出口が見つかるはずはない。
ベッドもあるし…ここから脱出するのは難しいのか?
長期になる?
でもなんで。こんなところに僕たちを閉じ込めたんだろう。
理由がわからなかった。
ユキは急須をまた持ち上げる。
あれ?
急須の重さからすると、中身がある。
ユキはキララの分と自分の分のお茶をそそぐ。
急須の重さは軽くなる。そしてお盆に乗せる。
また急須を持ち上げてみると、急須は重くなっていた。
「これ…このお茶。無限に飲めるみたい…」ユキは不思議な顔をする。
「仮想現実なのかな? ここ… 脱出方法はわからないけど…でもおかしいんだよね…
僕の耳とかしっぽに感じる空気感が現実と変わらないんだよ… 人間にはわからないと思うんだけど…」
キララが言う。
「そうなの?」ユキはキララの耳としっぽを見る。
ちょっとの間。お茶をのみ、ひといきつく。
☆☆☆
僕たちは再びさっきの自動ドアの空間へと戻る。
2人でさっきの部屋を出ると、下へと続く階段は消えた。
ユキは左のほうの自動ドアへと歩いて行く。
キララは逆の自動ドアのほうへと歩いて行く。
やっぱりだめだ。
いろいろ考えてみる。
僕たちは部屋のはしをぐるぐる回るように歩いてみる。
近づくと自動ドアは閉まり、離れると自動ドアが開く。
何かに気が付かないとだめなのか?
キララは向かい側の自動ドアのところにいる。
自動ドアは閉まっている。
自動ドアが開くと隠れてしまう壁の前へと移動するキララ。
つまり閉まっている自動ドアの斜め横の壁の前に立つ。
そして壁をじっと見ているキララ。
ふいにキララがくしゃみをした。
くしゅん。というかわいらしい音が聞こえた。
キララのきつね耳が壁のほうを向く。
キララのしっぽがぶんぶんと左右にいきよい良く動く。
「あ? ん? ひょっとして…」
キララは壁に向かって手を出す。
あああ。というキララの声。
「何かわかった?」ユキはキララに声をかける。
わかったという顔でこっちを見るキララ。
「自動ドアの横の壁。そっちもだと思うんだけど…壁に見えて通り抜けられるかも…
手を壁にあててみて…」
キララが言う。
ほんと?
ユキは自動ドアの横の壁に手をあててみた。
あ。
手が壁をとおりぬける。
ユキはおもいきって、壁に顔をちかづける。
おわっ。顔が壁の中にめりこむ。
もっと首をつきだすと、逆側に出た。
下をみると地面がある。
ユキは壁に向かって一歩踏み出すと無事に通り抜けることができた。
近づくと自動ドアが閉まったのは、この壁を通り抜けることができるようにするため、見た目は壁。
けれども触ってみないとわからない…
ユキは壁を回り込んで、キララのほうへと歩いて行く。
部屋を挟んで逆側にいるはず…
壁沿いに歩き…曲がったときだった。
ドアがあった。
ユキはドアを開けて入る。
☆☆☆
ドアを開けると別の空間。
向かいのドアからもちょうどキララが入ってきた。
こっちのドアと向こうのドアの間には空間がある。
幅5センチぐらいの白い床でつながっている。
向こうへは行けそうにはない。
こちら側、それと向こう側。僕とキララの前には直径2メートルぐらいの丸い台がある。
その丸い台は、細い白い廊下でつながっている。
僕のいるところとキララのいるところのちょうど中間ぐらいには丸い台がある。
横を見るとちょうど時計の数字が書いてある位置と同じところに直径2メートルぐらいの丸い台がある。
前のほうに歩いて行って下を覗き込む。
かなり下のほうにライトで照らされた床があった。たっぷり40メートルぐらいありそう。
つまり落ちたら死ぬ。
僕とキララは、目の前の丸い床の上に乗った。
すると、床が時計周りに動き出した。
ゆっくりまわる。
ユキの位置を6時の位置だとすると、7時、8時の位置まで周り、12時まで回る。
さっき僕がいたところにキララが来た。
キララは僕がいた丸い床から見て7時の位置にある丸い床を足で押した。
すると、丸い床は落ちていき、ちょっと後に下の床に当たってくだける音がした。
時計の数字のある位置の丸い床。これは上に乗れないのか?
元いた床の上に戻る?
で。その後はどうする?
やっぱり、この丸い床の上に飛び移らないといけないのか?
この中の2つだけ正解? それとも正解はない?
それとももっと別の方法?
「ねえ。この丸い床。浮かんでいるように見えるんだけど。危険かも…」
とキララが言う。
「うん。たしかに…じゃあどうすればいいの?」
ユキの返答に…「じゃあちょっと考えてみるよ」
キララは丸い床の上にあぐらをかいて座る。
僕もずっと立っているのは疲れるし、下に落ちたら怖いので丸い床に座り込む。
この時計の数字の位置にある外側の丸い床。どれかが正解?
他ははずれで、乗ったら下へと落ちるかもしれない。
時計回りに回っている床。
床の中心にも丸い床がある。けれども中心までは行けそうにもない。中心まで続く床の幅は5センチぐらいしかない。
バランスをとり、上を歩いて行くのはかなり危険。
僕はキララの顔が良くみえるように、中心のほうへ向かって座りなおす。
「キララどうしよう…」
ユキは、丸い床から足を投げ出すような感じで丸い床の上に座る。
ユキの左足と右足の間には白くて細い5センチの廊下があるように座る。
キララも僕と同じような姿勢になるように床へと座りなおす。
「うーん。まだわかんない…ユキ君も考えてみて…」対面にいるキララ。
キララのそばへと行きたい。
ユキも考える。
ユキは再び、下をのぞきこむ。
地面。かなり下の方に床があるように見える。
けれども実はそんなに高さはない?
いやいや。さっき丸い床が下へと落ちていったから、この高さは本物だ。
じゃあ?
行くところは中心?
幅は5センチしかない床。
僕は手をのばした。
幅5センチの床の横を手でさわってみる。
手は空気をつかむように動く。幅5センチの床は本当に幅5センチだった。
だめだ。
僕は足をぶらんと外側へと下していたのだが、足のつま先を上のほうへと動かしてみる。
かん。
足先が何かに当たる。
僕は。ん? となった。
足先をもっと動かしてみる。
あしをぶらんぶらんさせて、足先を幅5センチの床の下から触ってみる。
こつんとぶつかる。
そして少し左へと動かし、幅5センチの床の外側に足先を当てるようにする。
こつん。
見えない何かに当たった。
ん?
ユキは更に足を外側に動かす。
ぶらんぶらんさせた足を上に動かす。
ごつん。
少なくとも幅5センチに見える床はもっと幅があるように見える。
手前側は本当に幅5センチの床。
その30センチほど奥からはもっと幅が広くなっている床になっている。
「ねえ。キララ。わかった」
僕は立ち上がり、キララを見る。
「何? どうするの?」キララはこっちをじっと見る。
「こうするの…」僕は大きく一歩を踏み出した。中心に向かって…
「あっ」キララの声がした。
僕は一瞬目を閉じたが。幅5センチのはずの床の上に立っている。
僕の両足は5センチの床の外側にある。
キララもユキと同じように、大きく一歩を踏み出すために立ち上がった。
キララは一歩。大きく踏み出す。
踏み出そうとしているところから、踏み下ろすところまでじっと見てた。
足が床に着くところ。床はなく。そのまま落下していくキララ。
「あっ」ユキはキララのびっくりする顔を最後に見た。
僕はキララと離れているが、キララが落ちて行かないようにするために手を伸ばした。
届くはずはない…
ユキそのままバランスをくずして下へと落下していく…
☆☆☆
……
……
……
どすん。
何かの上におちる。
目をあけると、見覚えのある部屋。
隣にはキララ。
どすんと落ちたところはベッドの上だ。
ユキは起き上がる。
同時にキララも起き上がる。
ユキはあたりを見回す。
テーブルにはお鍋。横には湯呑…
さっき、ごはんを食べた部屋だ。
「死ななかった」
「死ぬかと思ったよ…」
ユキはキララと目をあわせる。
「キララ」
「ユキ君…」
2人ベッドの上で上体を起こしたまま抱き合う。
ユキは手でキララの耳をさわる。
お互いのぬくもりとユキはキララの耳の毛並みの感触を十分に感じる。
お互いまた。ぎゅうっとしてからベッドの上から降りる。
ユキは台の上にあるスープ鍋の蓋をとった。
中身はなみなみと入っている。
おひつの蓋をキララは開けた。
ごはんは手がつけられてなかった。
ユキとキララは階段を見た。
階段の上の段にばつの印があった。2つ。
その横には8個の丸の印。
このばつの印は死んだから?
そして残りのまるは後残り回数?
キララとユキはお互いの顔を見る。
やっぱりさっきは下へ落ちたんだ。
キララとユキは上へとのぼる。




