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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
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無限に続く廊下に迷い込んだユキとキララ(2)

 ユキとキララはキララのしっぽの毛のことをいったん忘れて、廊下を進むことにした。


 しばらく廊下を進み、何度目かの曲がり角をまがる。

 だんだんまっすぐな廊下の距離が短くなり、同じ方向に曲がる廊下の割合が多くなる。

 つまり、うずまきの廊下みたいに感じる。


 中心に何かあるのか?


「ねえ。もう曲がり角が見える。もうすぐわかるのかな?」

 ユキは前を歩くキララのしっぽを見ながら言う。


「そうかもね」キララは先に廊下をまがる。


 ユキは廊下の横にある台に目をとられた。

 今の廊下は廊下の両端に台があり、台の上にお盆が乗っている場所だ。

 その中のお盆の上に急須が乗っていたが、さきっぽが欠けてとれていた。


 よそ見をしながら廊下を曲がると、どん。と何かにぶつかる。


 キララだった。キララが廊下の真ん中で立ち止まっていた。

 キララの前を見るとすぐに曲がり角。


 キララと一緒に曲がり角の先をみると、行き止まりでドアがある。


「入るよ…」キララはドアをあける。


 今度はドアを開けても、まぶしい光源はなかった。


 そのかわり正方形の部屋。


 正方形の部屋の真ん中に台があり、見覚えのあるものが台の上に乗っている。


 ユキは正方形の部屋の真ん中まで歩いていく。


「んー。なんか耳がちりちりする…」キララが自分の耳に手をあてた。


 キララはユキがTMRを手に取るところを見る。


 ユキは「これってTMR?」手に取ってからキララのほうを見る。


「あっ」キララが声を出した。


 ユキの姿がその場から消えた。


☆☆☆


 そのころ。惑星に下りたうさ耳っ子とそのほか一行。


「面白いぐらい畑から収穫できるわね…」

 小ぶりの根菜を畑からひっこぬきながらミミちゃんが言う。


「そうね…」くちをもぐもぐさせながら言うラミちゃん。

 近くに置いてあるバケツの中に入っている水を使って根菜の泥を落とし、収穫するそばから食べているラミちゃん。


「あんた。食べ過ぎ…」ミミは他のうさ耳っ子を見る。


 ララお姉さんも収穫するそばから、食べているようだ。

 ミアお姉さんも一緒。

 ミミアもじっと見てから、収穫した根菜をこりこりと食べている。


 シロとソラのほうをみると、収穫した根菜の根菜の上についている葉っぱを水であらってから食べている。


 みのるお兄さんは、ひめるのほうばかりを見ている。


 シマ君とミケア・ミレイちゃんのきつねっ子は、しゃがんでとなりどうしで仲良く畑の野菜を収穫しながら、根菜を見せあっている。


 しばらく収穫を楽しんでいたが、アナウンスが流れる。

「長い間畑にいる人は近くの休憩所で休んでください。休んでいても畑の作物は無くなりません」


 それを聞いて、ララお姉さんは立ち上がり、ううんと背伸びをした。うさ耳もたてて伸ばす。


「休憩しよっか」ミアお姉さんが言う。


「そうね」ミミも立ち上がり、背中をのばしているネコのようにおもいっきり伸びをした。


 収穫した根菜はいったんララお姉さんのTMRにある宅配ボックスの中にしまう。


どうぐはそのままにして、近くの休憩所の小屋の中に入る。


 畑はかなり広くて、一つの大陸が畑のようだ。だから人は他にもいるが混んでいるわけでもない。

 少人数で休むための小屋が畑の中にある。


☆☆☆


 みんな小屋の中にはいる。

 ベッドもある。テーブルやいすもある。


 飲み物を入れる冷蔵庫もある。


「あーつかれた。ちょっと休憩…」ララお姉さんはどすんとベッドの上に横になる。


 人数分のベッドはある。


 ミミちゃんも空いているベッドに横になる。


 みのるお兄さんとヒメルは一緒のベッド。


 シマ君とミケア・ミレイちゃんも一緒のベッド。


 ミミアとミアお姉さんはララお姉さんのベッドで一緒に寝っ転がる。 


 ラミちゃんは、ミミと一緒のベッドにどすんと横になる。


 そして、ぐるんと体でベッドの上を転がる。

 転がった拍子にミミちゃんの体の上に乗っかり、通り過ぎて逆側までころがる。


「ぐぶっ。重いのよ…」

 ミミちゃんは、しっぽでラミちゃんのうさ耳をたたく。


「そこにいるのがじゃまなのよ… まあいいわ。ちょっと休憩」

 仰向けに横になっているラミちゃん。

 ラミちゃんの上に、ミミちゃんは転がって乗っかる。


「ぐぶっ。あたしのお腹の上にお尻を乗っけないでくれる? 大きいクロネコちゃん」

 両腕で、ミミちゃんのわきに手をやって、軽々と持ち上げて横に捨てる。


「相変わらず。怪力よね…」ミミちゃんは、ラミちゃんに背をむけて横になる。


 ミミちゃんは、しっぽをびたんびたんして、ラミちゃんのお腹を叩き続ける。


「このしっぽ。じゃま。畑の根菜みたいに抜くわよ…」ラミちゃんはミミちゃんのしっぽをつかむ。


 つかむ寸前で殺気を感じてしっぽをひっこめるミミちゃん。


「ちょっと暑いわね… これ冷房?」シロが壁にスイッチがあるのを見つけて押す。


 涼しい風がベッドの下から出てくる。


「あーすずしい…」ソラが言う。


 シロとソラは一緒に椅子に座る。


☆☆☆


 ユキは一瞬めまいがして、目を閉じた。

 目の前には台。

 けれどもTMRが乗っていた台ではなかった。

 台の上には模型のようなもの。よく見るとうずまきの迷路のようなもの。つまりミニチュアのうずまきの廊下があり、その中心に部屋がある。模型にはガラスみたいなものでカバーがかけられていて、中心に動く人のようなものが見える。


 ん?


 これって、白と灰色を基調とする人、きつね耳。

 キララ?


 ミニチュアの模型の中心の部屋にキララがいる。


 なんで?

 僕たちが小さくなって、模型の中に入っていた?


 キララは上から覗き込んでいる僕に気が付いていない。


 ミニチュアの模型の中にいるキララも部屋の中心の台を覗き込んでいる。


 ん?


 台?

 目をこらしてみると、台の上には模型が乗っている。

 すごく小さいんだけど、模型の中をみると渦巻きのように見える。


 そして渦巻きの廊下の中心に何かいる。

 小さい正方形の部屋。

 ん?


 誰か? 黒い頭の人?


 ん?


 ちょっと待って。


 僕は天井を見る。


 天井を見ても白い天井があるだけ…


 けれども台の上に乗っている模型の中にいるキララも天井を見上げる。


 何も見えなかったようだ。


 ユキは両手を広げて、大きくふってみる。次に左手。次に右手。


 模型の中のキララも手をふっているように見える。大きく。そして左手、その次に右手。


 まったくわからない。


 模型の中のキララと思われる人。その人も部屋の中央にある台を覗き込んでいて、なかの人を見ている。

 その人は僕らしい。


 鏡の中に僕がうつっていて、そのまた中に鏡の状態になっている。


 僕は正方形の部屋の入り口を見た。


 ドアの形はない。


 この部屋から出ることもできない。


 んー。ユキは悩んだ。


☆☆☆


 そのころキララは…


「ユキ君? ねえユキくん? どこにいったの? そ。そんな…」


 キララは台を覗き込む。


 台には模型。


 渦巻きの廊下の模型。


 その中央に正方形の部屋。


 その中に頭が黒い毛で覆われている人が見える。


「えっ? これってユキくん?」


 中の人が両手を広げ、左手を広げ、そして右手を広げる。


 キララも同じように腕を動かしてみる。


「んー。どうしよう…」


☆☆☆


 そのころ惑星の根菜祭りに出ている人達。


 休憩を終えて、再び根菜を収穫している。


 みんなしゃがんで畑を見ている。


 人はさっきより多くなったみたい。


 まわりに知らない人達がいる。


 知らない言語でしゃべっている人が周りにいる。


 みんな畑の根菜を収穫している。


「あ。これ。丸いのがあった。おいしいのかな?」ミアは言ってから、かじってみる。


「どう?」ラミちゃん。

「どう?」ララお姉さんも聞く。


「んーなんか変な味…」


 そう。という感じでみんな畑に目をおとす。


☆☆☆


 いつのまにか。

 まわりから知らない言語でしゃべっている人の言葉が聞こえなくなった。


 あー。とか。うーとか聞こえる。


 ミミちゃんは畑から目を離して目をあげる。


 ゆらゆらと歩いている人達。


 なんか変だ。


「ねえ。あれ。気持ち悪くない?」ミミちゃんは、ネコしっぽでとんとんとラミちゃんの肩を叩く。


「何よ。うるさいわね。あと少しでとれそうなんだから…」


 ひっ。という声。


 ミアお姉さん。


「あ。あ。あ。あれっ」指をさすミアお姉さん。


「どうした?」ミミアも畑から目を上げる。


「なにあれー。やばくない?」ララお姉さんは立ち上がる。


 ちょっとなにあれ。


 まるで…ぞんび?


 変な恰好。立ち上がってゆらゆらゆれながら、歩く。


 あー。とか。うーとか言葉にならない声を出して歩く人達。


「どうしたの? ひょっとしてイベント? 根菜祭りの他にぞんびイベントでもやっているの?」


 ミミちゃんは、近くのぞんびっぽい人と目があった。


 というか目がなかった。


「ぎゃー」ミミちゃんは、そばにいたラミちゃんにしがみつく。


 しがみついて背中の後ろに隠れるようにする。


「なによ… うっさい…」ラミちゃんの目の前、にネコのしっぽであっちみろと示すミミちゃん。


 ラミちゃんは尻尾の先の人を見る。


「あ。あれ…」ミミちゃんはふるえながら言う。


「げっ。やばそう… 何これ?」ラミちゃんは背中にミミちゃんをくっつけたまま立ち上がる。


 ミミちゃんはそのままラミちゃんにおんぶされる形になる。


 あたりの危険性を察知したミミアは…

「逃げるわよ… うさ耳っ子達は、それぞれみんなおんぶして、ジャンプして逃げるわよ」


 ミミアは、近くにいたシマ君とミケア・ミレイちゃんを抱っこしてみんなを見る。


 うさぎ飛びで、10メートルぐらいジャンプしてその場から離れる。


 ララお姉さんは、シロとソラを抱っこ。


 ミアお姉さんは、ヒメルとみのるお兄さんを抱っこしてジャンプする。


 ジャンプして着地。ジャンプして着地を繰り返す。


 休憩した小屋の屋根に飛び乗るうさ耳っ子達。


 小屋のまわりに集まってくる得体のしれない人達。


「ここまで上がってこない?」ミミちゃんは、ラミちゃんにおんぶされたまま言う。


「さあね。どうかしら… 何あれ? 本物?」ラミちゃんは耳をぴんと立てて、遠くの音まで聞く。


 それを見て、ミミアやミアお姉さん。ララお姉さんもうさ耳をぴんと立てる。


「やばいわね。遠くからもうーとか。あーとか聞こえる」

 ミミア。


「ねえ。あなたのTMRでいったん宇宙の図書館にでも逃げない?」

 ミアお姉さんがララお姉さんに聞く。


「うーん。みんな連れていくには壁がないとね。もうこの小屋のまわりは得たいの知れない人でいっぱい…」


 見つからずに小屋の壁にTMRによる自動ドアを開けて出ていくのは無理っぽい。


「あたし1人だけなら、小屋の屋根にTMRをあけてジャンプできるんだけど…意味はないわよね…」

 シロが言う。


「まあ。あたしもなんだけど…」ソラも言う。


「僕もミケア・ちゃんの世界へと通じる自動ドアを開けることができるけど…壁が必要だし…」

 シマ君。


「うん」

 ミケア・ミレイちゃんも、シマ君と同時に異世界のキラからもらったデバイスを見せる。


 ちょっと余裕が出てきたのかラミちゃんはミミちゃんに言う。

「この猫を下に落として、1人が犠牲になっている間に逆側の壁に自動ドアを開けるのはどう?」


 と背中にくっついているミミちゃんをちらりと見てから言う。


「だめよ…あんなの…かじられたらどうするの? あたしゾンビになるかも…」


 ララお姉さんは空を見る。


 だんだんと日が落ちてきている。


「夜になったら真っ暗になるかも…」


 本来、根菜祭りは夕方で終わりのようだった。


 夜も開催されるのなら明かりがあるはずなんだけど。なさそう。


「ねえ。下りてみる?」ララお姉さんがおそるおそるいう。


「だめね。あたしの感なんだけど…つかまる…」 

 ミミアが言う。


 上にはあがってこない。


 けれども立ち往生。


☆☆☆


 キララとユキも立ち往生していた。


 どうすればいいかわからなくなったからだ。


 正方形の部屋。


 出口はない。


 そして部屋の中央の台。

 ミニチュアの模型。

 その中に大切な人がいる。


 キララはいったん模型から離れて、壁によりかかる。


 上を見上げる。


 どうしようかな。


☆☆☆


 ユキもどうしようか。考える。

 壁のところまで下がり、床に座り込む。


 部屋の中央の台を見る。


 台を下から見る。



 ん?

 ユキは何かに気が付いた。



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