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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
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無限に続く廊下に迷い込んだユキとキララ(1)

「ねえ。キララ。説明してよ…」ユキはしっぽが垂れて元気がなくなっているキララに聞いた。


「うん。説明するよ… このTMRは今は使えないんだよ…

この先ずっとかもしれない…」とキララは言った。


「えっ? それどういうこと?」ユキはキララのTMRを見る。


『リンクできません』という表示があった。


 ユキはキララを見る。


「えーと。この表示はありえないんだけど…TMRを動かすためにはTMRのリンク先となる時空間移動用の制御ターミナルと接続しないといけないんだよね…

でね。この表示はこの世界に時空間移動用の制御ターミナルが存在しないということになるんだ…」

 キララはユキに言った。


「ん? それどういうこと? ここにはTMRで移動してきたんだよね…ということはここに移動できたんだから…戻れるんじゃないの?」ユキはキララに素朴な疑問をぶつけた。


「うん。そうなんだけどね… なんでかなぁ… 夢でも見ているのかな?

ユキ君も見てくれる?」


 キララはTMRを操作しようとした。けれども『リンクできません』の表示が出た。


「ねえ。リンクできないときはTMRのどの機能が使えないの?」ユキはTMRの機能にそんなには詳しくない。


 キララは…

「うん。ほぼ全部の機能。空間移動用の自動ドアも開けないし…時間移動用の自動ドアも開けない。それに宅配ボックスも開けないし…通信もできない… かなりお手上げだよ…

TMRが使えない僕はただのきつねっ子だよ…」


 キララのきつね耳が垂れる。

「そんなことはないよ…キララは頭がいいもん。きっとなにか思いつくよ…」ユキは言いながらキララをぎゅっと抱きしめた。


「ありがと… ユキ君がいてほんとよかったよ…」キララもユキを抱きしめ返す。


☆☆☆


「さて…ここはどこなんだろう…」ユキは白い廊下を見回す。

 白い廊下しかない…


「さあ。どこなんだろう。私たちの世界なのか、異世界なのか… それとももっと別の存在なのか…」

 キララはあたりを見回す。きつね耳を立てて遠くの様子を音で探る。


「何か聞こえる?」ユキはキララが耳に意識を集中しているのを見て聞いた。


 キララは首をふった。

「ううん。何も聞こえないよ。物音もしない… さぁてどうするか。ここを動かないか。動くのか…」


 ユキは見回す。


☆☆☆


 同じころ。惑星へと降り立った一行。


「結構にぎわっているわね…」

 ミミちゃんは、根菜祭りの畑と催し物の小さい建物を見ている。


 さまざまな、根菜が畑に植えてあり、収穫して好きなだけ持って行っていいらしい。


「これ。見て… すごくふっとい」ラミちゃんは、一番でっかい根菜のサンプルに抱きつく。


「あたしも…」ミアお姉さんも隣の根菜に抱きつく。


 ミミアも抱きつくかと思ったら高い高いの要領ででっかい根菜を持ち上げようとする。

「なにこれ。すごく重い… ミアお姉さんぐらいの重さあるんじゃないの?」とミミアは言う。


「何言っているの。ミミアも同じ体重でしょ… まったくもう…」ミアお姉さんはミミアに言う。


「そう見える? そうなんだ。でもね。あたしはミアより5kgぐらい軽いわよ…」という。


「えー。なんで。ってそういえば見てみると、あたしより少し細いかも…」ミアは自分の腕やお腹を見る。


「少し前に仕事が忙しくて歩き回っていたからな。その割には食事の時間がなくて…だったから…5kg減ったぞ…」


「くっ。いいわね。あたしなんか3kg太っちゃった」ララお姉さん。


 シロとソラも隣から、ララお姉さんのお腹を見る。


「そうね。ちょっと。貫禄が出たかも…」シロはぽんぽんとララお姉さんのお腹をさわる。


「ウィスキーボンボン食べ過ぎなんじゃないの?」ソラはララお姉さんのお腹を見て言う。


「そんなに増えていないんだけどな… このままだとミアお姉さんの体重をとおりこしてしまうわね…」とララお姉さんがミアを見て言う。


「ねえ。3kg太ってもあたしの体重以下なの? なんで… あたしより背がでっかいのに…」ミアは言う。


「さあ。なんででしょ。ウサギハーフの世代が違うから?」ララお姉さんが首をかしげながら言う。


 ミアは、ミミアが持ち上げようとした巨大根菜を持ち上げてみて…

「あ。これ。重い… さあ。明日からダイエットしよ… そしてララお姉さん… あなたは今日いっぱい食べて育つのよ…」とララお姉さんに根菜を手渡す。


「よいしょっと」ララお姉さんはそのまま、その巨大根菜をミミちゃんに手渡す。


「ぎゃー。こんな重いもの渡さないでくれる? 潰れるわ…」

 くずおれそうになっているミミちゃんをヘルプしようとして、ラミちゃんが根菜を手で支える。


「ありがと…」ミミちゃんは力を抜く。


 それを見てラミちゃんは… 根菜をミミちゃんの上にのっけて潰そうとする。


「ぎゃー」ミミちゃんは巨大根菜の下敷きになる。


 それを見ていたミアお姉さんは…

「何やっているのよ。もう… 遊ばないの…」

 根菜をミミちゃんからどかして、元のところへと戻す。


「巨大根菜の下敷きになるところだった。こんなところで死ぬのはいやよ…」

 ミミちゃんは、ラミちゃんのお腹をチョップする。


「ねえ。これなんか、シマ君の耳の中に入れたらちょうどいい大きさかも…」

 ミケア・ミレイちゃんがシマ君の耳に細長くてちょっと太い根菜をあてている。


「へっ。僕の目から見えないからわからないよ… 耳の中には入れないよね…」

 シマ君のきつね耳の横に根菜をあてているミケア・ミレイちゃん。


「おもしろーい。いれちゃおっかな…」ミケア・ミレイちゃんは、シマ君のきつね耳の中に

根菜を入れるふりをする。


「ぎゃー。やめて…もう…」シマ君は後ずさりして走り出す。

「あー。待ってよ…ほらほら… 根菜…」

 ミケア・ミレイちゃんはシマ君を追いかける。


「あれだね」シロが言った。

「うん。そうね…」ソラが言った。

 で、みのるお兄さんとヒメルはどこかな?

 ミミはあたりを見る。

 あ。いた。


 でっかい抱き枕サイズの根菜の根元のほうをヒメルの頭にこすりつけて、こりこりしているみのるお兄さん。

「この形。気持ちがいい?」

 ヒメルは。でっかい根菜を頭の横にすりすりされて、かゆいところをこりこりと根菜で『かいて』もらっている。


「あれだね」シロが言う。

「そうね」ソラが言う。

「なんかもう2人の世界に入っているわね いつもだけど…」

 ヒメルとみのるお兄さんを見て言う3人。そしてシマ君を追いかけているミケア・ミレイちゃんのほうも見る。

 あそこも2人だけの世界みたい…


 そういえば、ユキ君とキララどうしているのかな? もうお昼寝から起きたよね…

 ミミは今はここにいない2人のことを考えた。


☆☆☆


「うん。じゃあこっちへ行ってみよう…」

 キララはユキに言う。

 どっちへ行っても同じような白い廊下。同じような場所だと進むか、留まるか迷う。


 キララは自分が立っているほうとユキが立っているほうの廊下を比べて、なんとなく自分の立っているほうの廊下から先に進むことにした。


「うん。とりあえず…」ユキはキララと一緒に歩き出す。


 しばらく2人で廊下を進む。


 途中にはドアとかもないが…


 5分ぐらい無言でただ廊下を歩く。


 すると、つきあたりに何か見えてきた。


 ドアだ…


「ドアがあるね…」キララはユキの方を見て言う。


「うん」

 2人は廊下のつきあたり、曲がり廊下でもなく、ドアがあるだけ…


「開けよう…」


 ユキはドアを開けてもまた廊下だったらと思いながらドアを開けた。


 ドアの向こうはまぶしくて、一瞬目が見えなくなる。


 ゆっくり歩いてドアをくぐる。


 ばたん。


 ドアが勝手に閉まった。


「えっ」

 キララは後ろをふりかえる。

 閉まったドアにはドアノブがなく、もう開けることはできなかった。


「なんなの。これ…」

 ユキはまぶしい光源が置いてあるところを通り過ぎる。


 光源はドアのほうに向いており、光源の後ろはそんなにまぶしくはない。


 光源を過ぎても廊下が続いていた。

 廊下の幅は広く。なぜか、両側に椅子がならんで置いてある。

 長い廊下。両側に椅子。ずっと続いている。


「なんだろうね…わかんないけど先に進んでみる?」ユキはキララに言った。


「うん。そうしよう…」

 

 廊下を進む。


 無言で進む。


 ユキはキララの後をついて歩く。


 ユキはキララのきつね尻尾を見ながら歩く。


 左右にふりふり動いている。キララのしっぽ。

 たまに、左のほうだけにしっぽを向けているときもある。


 しばらく10分ほど歩くと、またつきあたりにドア。


「開けるよ…」キララはまたドアを開ける。


 開けるとまたまぶしい光源がある。


 同じパターンなのか…


 ユキとキララは光源のそばへと歩いて行く。


 廊下の真ん中にまぶしい光源が置いてある。


 今度は、廊下の両脇に花瓶が置いてある台が無限に並んでいるかのようだった。


 また、2人で廊下を進む。


 廊下を進むと、右に曲がっていた。


 2人で廊下を曲がって先へ進む。


 花瓶は相変わらず並んでいる。


 たまに花瓶が無い台があった。


 先に進む。


 しばらく進むとまたドアがある。


「開けるよ…」キララはドアを開けた。


 またまぶしい。


 ドアが勝手に後ろで閉まる。


 今度は廊下の両側に台があり、台の上に急須と湯呑茶碗が乗っているおぼんがあった。

 それが無限に並んでいる。


 どれもおなじお盆に、同じ湯呑茶碗が置いてある。どれも同じ位置。


 キララとユキは廊下を進む。

 

 キララはちらっと、たまに両側の台の上をチェックしている。


 また右に曲がる。


………


 廊下を4つ曲がったあとに、ドアを開けた。


 今度の廊下は何もない。


 キララとユキはまた歩く。


 これ最初の廊下に似ている?


 ユキは思った。


 歩いて行くと、突き当りにドアがある。


「開けるよ…」ドアを開けるとまた、まぶしい光源。

 ばたんと閉まるドア。


 廊下の幅は広く。両側に椅子がならんで置いてある。

 ずっと続いている。


「ねえ。これ…さっき通らなかった?」ユキはキララに言う。


「そう見えるね… でももうちょっと進んでから判断したい」キララは注意深く椅子を見る。


「うん。キララが言うのなら…」


 ユキとキララはまた廊下を歩く。


 しばらく歩く。


 しばらく歩くとドア。


「開けるよ…」キララはまたドアを開ける。

 開けるとまたまぶしい光源がある。


 同じパターンなのか…

 ユキとキララは光源のそばへと歩いて行く。


 廊下の両脇に花瓶が置いてある台が無限に並んでいるかのようなところ。


「これ絶対通っているよ…」ユキはキララに言う。


「うん。どうだろうね…」

 キララは歩き出す。


 廊下を進むと途中、花瓶が置いてない台があった。


「ねえ。さっきもこれだったよ…」ユキはキララに言う。


 キララはじっと台を見る。


「うん。1702番目に花瓶が置いていない台があるんだけど…最初の廊下に花瓶が並んでいた廊下だと、1702番目だったんだよ…」


 キララは数えていたみたいだ。

「じゃあ同じじゃないの?」キララに聞いた。


「いや。花瓶が置いていない台の位置は同じなんだけど…花瓶の台の高さが1つだけちょっと違うのがあったんだ…それが307番目。最初の廊下では308番目だよ…だから違う廊下なんだよ…」


 とキララ。キララが間違えるわけないし…


 さらに進む。


 またドア。

「開けるよ…」キララはドアを開けた。


 まぶしい光源。

 ドアが勝手に後ろで閉まる。


 廊下の両側に台があり、台の上に急須と湯呑茶碗が乗っているおぼんがあった。

 それが無限に並んでいる。

 どれもおなじお盆に、同じ湯呑茶碗が置いてある。どれも同じ位置。


「進むしかないみたいだね…」ユキが言うとキララはまた、先頭を歩く。


 キララのきつねしっぽを見ながら廊下を歩く。


☆☆☆


「あれ?」キララが言う。


「どうしたの?」ユキはキララの顔を見る。


 キララはお盆の上にのっている銀色の毛を見つけた。


「これ私のしっぽの毛」

 キララは毛をつまんで良く見る。


 ということはここ通った?


「でもおかしい…」キララはつぶやいた。


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