表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
64/138

きつね耳としっぽのけもの耳パンクの世界(2)

 夕食までの間。シマは町に出て街並みを見物して過ごした。


 庶民の家なども、通りを歩きながらみてみた。家の中にいる猫もみかけた。

 猫も、きつね耳のようなものがついた小さい帽子をどの猫もかぶっていた。


 さすがけもの耳パンクの世界。


☆☆☆


 夕食の時間となった。メイドさんと一緒に歩いて行き、広間に案内される。

 料理はいっぱいテーブルに並んでいる。

 広間には、見かけたことがない子もいた。きっと10歳ぐらいの女の子。きつね耳としっぽがついている。

「この子はミケア・ミレイ・ド・クライ。僕の妹だよ」セラが紹介した。

「こんばんは。シマさん」礼儀正しく10歳の女の子は挨拶してきた。

 ミミと呼んでほしいと言った。その隣には大人の人。

 結構美人だ。きつねのような耳としっぽがついている。

「こんばんは。シマさん」

「この世界におまねきいただき感謝しております」とシマは言った。


「いいって。いいって。かたくならなくても… さあ。温かいうちにどうぞ…」とセラが夕食をすすめてくる。


 自分の席に座るように促される。

 シマは座る。

 ちょっと待っていると執事が温かい料理を運んできた。目の前に皿を置く。

 野菜メインの前菜。

 その次にスープ。何かの豆ベースのスープ。地球では見たことがなかった。


 その後は、小ぶりの皿が運ばれてきて、いろいろなものがお皿に乗っていた。

 フォアグラやキャビアがのったクラッカーもあり、小ぶりのハンバーグもあり、ハンバーグは上物のお肉を使っているらしく、非常にジューシーだった。お肉の油もうまかった。

 お肉以外にもお野菜。パスタ。ごはんを炒めたものなども少量ながらお皿に盛り付けてある。

 きっとどれが好みかわからないからいろいろなものを取りそろえたみたいだ。

 見たことがないお魚もあり、それもうまかった。

 いちおう油揚げを使った、料理も出てきた。

 油揚げの袋の中に、卵を落とし入れたものと、だしをとるために鰹節が入っていた。

 それと小さいお餅も入っていた。それを閉じて煮たもののようだった。

 結構うまかった。


☆☆☆


 よる。お休みの時間。


 寝室へ案内される。メイドさんは客人を寝室へ案内したら仕事は終わり。

 お話しようよ。とシマは言ったが、規則なのでと言われてメイドさんは部屋へと案内した後に廊下を戻っていってしまった。


 ベッドを見た。天蓋付きのベッド。でも。あれ? なんか違う。

 どうやって使うんだろう。普通のベッドではなかった。

 天蓋つきのベッドは普通なんだけど、寝具が空中に浮かんでいた。寝具に丸まって寝るのかな?


 うーんどうしよう。使い方がわからない。


 そのとき、こんこんとノックする音。

 きつね耳の女の子がドアから顔をのぞかせた。

「ねえ。ベッドの使い方わかる? ねえ。お願いがあるんだけど。一緒に寝ていい?」


 シマは小さい来訪者を見て「うん。いいよ。ちょうどどうやってベッドで寝ていいかわからなかったんだよ… ほらおいで…」シマはミミちゃんを見た。かわいい寝間着を着ている。それと自分の小さい枕を持ってきている。


「あたしはね。年があまり離れていないお客さんと、夜一緒に寝るのが趣味なの…」ミミちゃんが言う。


「ふーん。そうなんだ。君はきっとかわいいから、断る人はいないよね…」シマは、ベッドにこしかけたミミちゃんの頭をなでる。


「うん。ありがと。ところでこのベッド変わっているでしょ。しっぽを寝ているときに圧迫しないように、空中に浮かぶように寝ることができるの。最初はコツがいるの…」


 ミミちゃんは、ベッドの上にのぼり、立ったまま寝具を体にまきつけた。しっぽは寝具から出す。

 そして、横になると空中に浮かぶような感じになる。


「へー。面白いね」


「でね。起き上がるときは、反動をつけて立ち上がるの。でね。一緒にくるまって寝たいの。こっちにきてほしいな」ミミちゃんは、寝具の前をあけて、ここに来てと言う。


「いいのかな? でもいいよね。うん。一緒に寝よう。ところで、一緒にくるまって寝て、下敷きにしちゃったりはしない?」シマは聞いた。シマの上にミミちゃんが乗っかっちゃうのはいいんだけど、寝相が悪くて逆に、ミミちゃんを下にしいちゃったらと思った。


「問題ないの。浮かんでいるから…」とミミちゃん。


「そう。じゃあ。お言葉に甘えて…」シマは、ミミちゃんがくるまっている寝具の中に入る。


 寝具の中にはいり、くるまった後、横になる。ためしにミミちゃんの上になってみるシマ。


「ほら。全然大丈夫… あたまなでて…」甘えてくるミミちゃん。


 きっとセラにも甘えているんだろう。シマはミミちゃんの頭と耳の付け根をなでてあげた。

 ミミちゃんは体を動かして、シマの真横に来るように回転させた。

 ぎゅっと抱きついてくるミミちゃん。


 ミミちゃんの体温を感じていると、すーすーと浅い息の音。ミミちゃんは、抱きついているので、あたたかな体温のおかげで数分で眠りにつく。


 シマも、ミミちゃんの寝息を聞いているうちにうとうととしだした。


☆☆☆


 シマは朝。目をさました。


 目の前にどアップのミミちゃんの顔。


「あ。起きた。おはよう…」ミミちゃんは、起きて寝ぼけているシマのくちびるに軽くチューをした。


「んんん?」シマはわからなかった。


「気にしないで、うちはいつもこうだから…」よっと。という感じで起き上がるミミちゃん。


 じゃあね。と言って枕を持って出て行ってしまった。


 あれ? あれれ? これってファーストキス?


 んんん? まあ。いいか。シマは。柔らかかったなと思った。


☆☆☆


 そして、今日は宇宙局へ出かける日。

 宇宙局へは、自動ドアを通じて空間をつなげて、別の国へ移動することになった。

 国境を自動ドアを使い移動して、建物の中から外にでる。いったん外に出た後に、迎えの車が来ていた。


 車に乗り込む。そして移動中にビデオを見るように言われる。

 簡単な操縦方法やトラブル発生時の対応方法を動画で教わった。

 今回使用するスペースシャトルは、昔使われていたものをベースに、学生でも操縦できるように操作を簡略化したものだった。イベントや、テレビのCM撮影などにも使われる。


 ビデオを見てあるていど覚えた後に、宇宙局へ到着する。


 シマはしっぽをのばした。


 基地の人が出てきて「ようこそシマ君。移動中に動画を見てくれたかな? この後は4時間ほどの訓練を行い、スペースシャトルを見学して終了。明日。実際に宇宙へと行ってもらう。ついでに、君にはミッションを用意した。実験用の器材と、食材を運んで届けてほしい。ではこちらへ…」


 移動しながらいろいろな建物を見学する。会議室のような部屋に通されて、簡単な健康診断と、体のサイズを計測された。ミッションに使用する服を調整するためだ。


☆☆☆


 シマは4時間ほどの訓練を実施した。昔とは違い、打ち上げにかかるGもキャンセラにより軽減されている。

 シミュレーターを使い、実際の打ち上げの体験と、地球への帰還時に使用するスペースシャトルの操作方法を習う。昔はいろいろ大変だったけど、指示されたタイミングでボタンを押すだけとなる。他は自動操縦で、基地へと着陸することができる。


 あっという間に午後4時。夕食までの間は、過去の宇宙へ行った人たちのインタビューや、トラブル発生時の対応方法をインタビューしたときの映像を見ながらすごした。


☆☆☆


 夕食は、宇宙局の主なメンバーとの会食だった。アメリカに似た国なので、食べ物も洋風だ。お米はなかった。


 宿泊は、センターの個室が用意された。メイドさんはいなかった。


☆☆☆


 朝。シマは起きて、ベッドから降りる。そして、窓のカーテンを開けた。朝日がまぶしい。

 いい天気だ。


 部屋を出て、食堂へと行く。簡単な朝食が並んでいた。


 ミッションルームへ入るシマ。今日の内容が一番偉い人から説明される。何か起きてもこちらから指示する。それに簡単なミッションなので君なら大丈夫と言われた。それにセラの国からテレビ中継のスタッフが来る朝10時に、発射台からエレベーターを使って、上のほうにあるスペースシャトルへ乗り込むことになった。


 スペースシャトルへ乗り込むのはもう一人いたが、体調不良のため、シマ1人になるとのことだった。


「ねえ。本当に大丈夫かな? 僕1人で…」シマはセンターの偉い人に聞いてみた。


「問題はないぞ。エレベーターのボタンを押すのと同じだ。ボタンを押した後は自動的に向かってくれるから… 君はエレベーターが怖いかい?」


「いや。そんなことはないけど… ボタンを押すだけだったら簡単だね…」シマは気が楽になった。


☆☆☆


 とうとう、スペースシャトルへ乗り込む時間になった。

 シマは昔ながらのユニホームへと着替え、機密があるヘルメットをわきに抱えて滑走路を歩く。


「いよいよかな。結構かっこいいと思うんだけど… 僕…」シマは独り言を言いながら、まわりをみて歩き出した。


 セラの国のテレビ中継をするためにカメラが数台、横にならんでいる。


 カメラ目線にならないようにしながら、カメラのほうを見てから前を見た。


 スペースシャトルを真下から見る。


 やっぱり結構でっかい。大きさや見た目は昔ながらのもの。中身はかわっている。燃料もほぼいらない。最初の打ち上げの時に使うだけ。その後は高密度の固体燃料を使い、ロケットエンジンの燃料とする。


 シマはエレベータに入り、ボタンを押した。


 ぐんぐん上っていく。


 最上階へと到着し、ドアが開いた。


 スペースシャトルへと通じるスロープがある。


 スロープを進み、ドアを開けて中に入る。中に入ったらロックをする。


「ロックしたよ」シマは作業員へと伝える。


 作業員は、スペースシャトルの外のスロープから金具を外しにかかる。


 シマは、そのまま梯子を上り、一番上まで進む。


 一番上は、操縦席がある。操縦席は普通とは異なり、床に置いた椅子のように、座ると頭が真上を向くようになる。シマはやっとのことで、操縦席へと座る。


 宇宙ステーションへ運ぶ荷物はすでに運び込まれている。

 小さいコンテナと、大き目のボストンバックのようなもの。四角い形状をしている。


 シマが操縦席へと座り、シマが「操縦席へ座った」と言った後、荷物のあたりから音がしだした。


「ん?」シマは後ろを振り返ると、荷物のジッパーが勝手に開いた。そこからきつね耳が出てきた。


「あー。窮屈だった」ミミちゃんだった。


「なんで、ミミちゃんがいるの? ひょっとして荷物にもぐりこんだの? えーどうしよう…」シマはミミちゃんを見て言った。


 シマの付けているインカムからミッションの責任者の声が聞こえた「困ったな。もうスロープは切り離したし、カウントダウンももうすぐで始まる。よし、このまま宇宙へ行こう。なぁに我が国のスペースシャトルは安全で簡単だ。ミミちゃん。シマ君の隣へといそいで移動するんだ。カウントダウンが始まる…」


「うん。わかった」ミミちゃんは、慣れない感じで梯子を上り、シマの隣の操縦席へと座ろうとする。


 シマは手をさしのべて、ミミちゃんが操縦席へと座るまで力を貸してあげた。


 シマは「だめだぞ…」と言いながら、ミミちゃんの頭をこつんと叩いた。


「えへへ。ごめん。どうしてもシマ君と一緒に宇宙へ行きたかったの…」ミミちゃんはにこっとした。


「危険はないからいいんだけど。今度からはもぐりこむのはナシね…」


「うん。さあ。カウントダウンが始まるよ…」ミミちゃんは前を見た。


 発射の150秒前からカウントダウンが開始される。


「なんか緊張するね。僕たちは何もすることはないんだけど…」シマは自分の操縦席に座ってからボタンを押しただけだ。システムチェックのボタン。自動的に機械が動きシステムチェックが始まる。

 チェック結果は送信され、発射に問題がないことがわかった。


「カウントダウン継続中。あと30秒…」ミッションの責任者が言う。


「どきどき…」ミミちゃんが言う。


 そして…


 3、2、1、ゼロ。


 振動が伝わってきた。普通ならすごい加速のGがかかるが、今のテクノロジーによりキャンセラが働く。飛行機の発射の加速ぐらいしかなかった。


 目の前の高度計を見る。


 どんどん上がっていく。


 がごんと振動が伝わる。第一ロケットが切り離されたようだ。第二ロケットが点火。

 その数十秒後に第二ロケットも切り離される。この間カウント120ほど。

 しばらく振動だけ伝わってきていたが、もう空と宇宙の境目を超えて、惑星が丸いことがわかる高度まで進んだ。はるか下に惑星。大気。大気の上はもう宇宙。真っ黒だ。


 ごーという振動だけが聞こえていたが、それも無くなる。


「おめでとう。シマ君。そしてミミちゃん。もう宇宙だ。無重力になっていると思うがどうだろう…」

ミッションの責任者の声が聞こえた。


 シマはシートベルトを外す。


 うわあ。本当だ。体がうきあがる。


「無重力だ」シマはミミちゃんを見る。


 ミミちゃんもシートベルトを外す。


「うわぁ。体が勝手に浮くね…」ミミちゃんは手足をじたばたさせている。


 僕シマは椅子の取っ手をつかみながら逆の腕で、ミミちゃんを抱き寄せる。


「慣れるまで大変だと思うが、シマ君。操縦席についてくれ。宇宙ステーションまでのドッキングをまかせる。操作方法は機能説明したとおりだ…」ミッションの責任者の声。


「了解」シマは返答して、なんとかして操縦席へと座りなおす。


 ミミちゃんもなんとかして、自分の操縦席へと座る。


 シマは、タッチパネルを操作して、ドッキングの準備を指示した。


☆☆☆


 最初は、スペースシャトルの窓には惑星と、空(宇宙)しか見えていなかったが。豆粒のような光が見えだした。


 だんだんそれは大きくなり、宇宙に浮かんでいる建築物だということがわかった。


 それほど大きくもない、宇宙ステーション。


 ドッキング準備。の表示が画面へ表示される。


 オートシーケンス実行中の文字。


 ガコンという小さい振動の後、無事にスペースシャトルのエアロックと、宇宙ステーションのエアロックがつながった。


「行くよ… ミミちゃんは、食べ物が入っていたバックを持ってきてくれるかな? 君が元々もぐりこんでいたほうのね…」


「はーい」ミミちゃんはなんとかして、バックのほうへと移動する。


 シマはミミちゃんを見る。ミミちゃんはきつねしっぽを上手に使い、体を方向転換させる。


「あ。しっぽ。無重力でも役に立つのかな?」僕はうかびながら、自分のきつねしっぽを左右にふった。


 すると、しっぽを動かすと、体の向きが変わる。おお。しっぽが魚の背びれや尾びれのように使えるかもと。シマは思っていろいろ動かしてみる。


「あー。自分のしっぽ使うと方向転換が楽だよ…」シマはミミちゃんに言う。


「うん。あたしも思った。これはどう?」ミミちゃんはきつねしっぽをぶんぶん回転させるようにふりまわす。すると、体が前の方にゆっくりだけど進む。


「すごいね。もう適用しているね… なら僕も…」シマもミミちゃんと同じように自分のきつねしっぽを回転させる。すると、前のほうにゆっくりだけど進むことがわかった。でも自分の体もしっぽを回転させている方向とは逆に回転してしまう。両腕はふさがっているので、両足を使いなんとか姿勢をたもつ。


 シマは両腕を荷物を運ぶのに使い、足としっぽを使って移動させる。


 エアロックのドアを開けて、通路を進む。通路のはしについたらボタンを押す。


「こんにちは。宅配のきつね便です」とシマは言った。

「きつね便でーす」ミミちゃんもつられて言った。


 ミミちゃんと目が合った。にこにこしている。


 ドアが開く。


 宇宙ステーションのクルーたちが「おお。良く来てくれたシマ君。こっちは… ? えー ミミ様…」

クルーたちの表情が固まった。


 ひれふすように姿勢を低くする。


「そんなにかしこまらなくてもいいの。ほら。これ…」食料が入ったバッグを一番近くにいるクルーに渡す。


「ちなみにね。僕がスペースシャトルで発射する前に、そのバッグの中にミミちゃんがもぐりこんでいたよ…」シマがクルーに言った。


「そうでございますか。急でしたので… さあさあ。こっちへ。狭いところなのでおもてなしもできず、申し訳ない… まずはこの施設の中を案内いたします」とクルーの人がミミちゃんに言う。


「うん。見てみたいの… ねえ。あたし無重力に慣れていないから、つかまってもいい?」ひとなつっこく、クルーの人の肩をつかむ。男の人が同意を言う前にもう、クルーの人の肩を手でつかんでいる。


「はい。この肩でよければ…」と男の人は少し緊張した感じで言う。


 さあ。こちらへ… と進む一行。


「ねえ。これは何?」僕はゲージの中に入っている生物を見た。


「これはおたまじゃくし。大人のカエルになるまでの間。地上での成長過程で体の細胞の作られかたに違いがあるかを調べているんだよ」クルーの人が説明してくれた。


「じゃあ。こっちは?」シマは隣の水槽について聞いてみた。


「これはウニだね。味に違いがあるかを調べているんだ。これは趣味でこっそり持ち込んだものなんだ…」とクルーの人。


「そうなんだ…」シマは面白いなあ。と思った。でも無重力の中だといろいろ大変かもと思った。

 まだ無重力の環境には慣れない。


 その後は無重力の環境での合金を作る実験や、半導体の結晶を作る実験。宇宙ステーションの外の計測機器を使い、宇宙ステーションの外に置いた丸い水槽の生物について、紫外線や放射線の影響を調べる実験をしていた。


☆☆☆


「さてと、もうそろそろ時間じゃないのか?」ヘッドセットからミッションの責任者の声が聞こえる。


 シマは「ああ。そうか。もうこんな時間。じゃあ。僕たちは戻るよ。地球への帰還の時間が近づいているみたい…」


 ミミちゃんは「もっと見ていたかったのに…」とつぶやいた。


 シマはクルーのみんなに握手をした。

 ミミちゃんは、クルーのみんなにハグをした。


 僕たちは元来た通路を戻る。最後のハッチのところ。


「楽しかったよ」シマは最後にお礼を言った。


「こちらこそ。久しぶりの来客でね。我々もうれしかったよ。それにミミ様も突然訪問されて、驚きました。では良い帰還の旅を… ああ。地球の地上が恋しい… では閉めますので…」クルーの人が扉を閉めてロックした。


「さあ通路を戻ろう…」シマはミミちゃんの手を引く。


「うん」ミミちゃんは、結構スムーズに進む。


☆☆☆


 もとのスペースシャトルへと戻ってきた。


 シマとミミちゃんは、操縦席へと座る。


「さて。スペースシャトルが地球を8分の7周したら、帰還のカウントが始まる。そのときに操作を頼む。シマ」ミッションの責任者がシマに伝える。


「了解。タイミングになったら教えて…」


「うむ。それまでの間。惑星を見ているといい。では切る」ぷつっと通信が切れた。


 下に見える惑星を見る。


 積乱雲や、雷。どこかの大陸が見える。


 大陸の形は地球と似ている。ここも地球なんだけど…


「綺麗だね…」僕はミミちゃんに言った。


「ほんと。青いね…それと白い雲…」ミミちゃんはうっとりと惑星を眺めている。


☆☆☆


「ピー」音が鳴り。帰還タイミングを知らせる。画面表示に従いボタンを押す。


 自動制御でスペースシャトルの進路が変更された。すこしずつ高度が落ちていく…


「もうすぐで大気圏に突入する。シートベルトはしっかり着用しているか?待っているだけだと思うが気をゆるめるな…」ミッションの責任者が言う。


 大気圏突入まで300秒のカウントダウンが始まる。


 カウントが残り271秒になったとき… 突然の警報が鳴った。


「びー。びー」かなり大きな音。それと操作パネルには赤い背景で『自動制御用の信号が途絶えました。回復しない場合は手動での操作が必要になります。自動制御の解除まで10秒...』


「へっこれって?」シマはあわてる。

 その表示と警告音。赤い表示を見て、ミミちゃんの顔が初めて青ざめる。


「ねえ。シマお兄ちゃん。これってやばいの?」ミミちゃんはきつね耳の内側の毛をさかだててシマに聞いてくる。

 ミミちゃんのしっぽがいつもより太くなっている。


「ちょっと待って。聞いてみるから…」シマは通信を開始するボタンを押した。「あの。自動制御用の信号が途絶えたっていう表示が出てきたんだけど…どうすればいいの?」シマはミッションの責任者と通信で聞いてみる。


ミッションの責任者は「なんだって。ノイズが多い。もう一度言ってくれ… あ。ちょっと待て。何?ばかな……」という声。

ちょっとそのまま待つと再び声が聞こえてきた「状況はわかった。こちらでも自動制御用の信号がロストしたのを確認した…

くそっ。申し訳ないが、命の危険を覚悟してほしい。では手動での操作を教える…あと115秒だ…

操縦桿で大気圏突入時の進路を維持せよ。姿勢がくずれると、大気圏突入時の摩擦熱に機体が耐えられず損傷するかもしれない。それに大気圏突入後。君が操縦して、宇宙局の滑走路まで飛行させる必要がある。エンジンがあるわけでもないから、滑空で降りていくことになる。少しながら機体制御用の小さいジェットがあるがなるべく使うな… この通信が使えれば、必要な指示はこちらからする… 以上だ。大気圏突入にそなえよ…」


 ミッションの責任者が話している途中に、コンソールの表示が切り替わり赤い背景は解除された。手動操縦に切り替わったことを伝える画面になった。


 操縦桿が使えるようになった表示が出た。

 シマは操縦桿を両手で握った。


「ねえ。あたしたち死んじゃうの?」ミミちゃんが言った。


 大気圏突入まで残り74秒。


 スクリーンに今のスペースシャトルの姿勢と、修正すべき角度が表示されている。

 シマはすこしずつ操縦桿を操作し、位置を修正する。


「いいや。今やっているから… 大丈夫。お兄ちゃんを信じて…」シマは言った後。うーん。これってどっきり?。たぶん何かのイベントかな? 本当に自動制御の信号がロストすることってないと思うし… うん。言われたことだけやって、あとはこのコンソールの表示を見ながら姿勢制御をするだけ…


 シマは自分の世界に居た頃、たまに飛行機のゲームをやっていたことがあった。シミュレーターも使ったことがある。


 操縦桿を動かして機体の姿勢を修正する。あっと行き過ぎた…コンソールの機体の位置がずれる。


「びー。びー」と音が鳴り警報が鳴った『このままでは大気圏突入時の姿勢に問題があるため非常に危険です』とアナウンスが鳴った。


「ほら。おちついて…シマお兄ちゃん」ミミちゃんの声。


「う。うん。じゃあもうちょっと姿勢を戻して…」シマは逆方向に操縦桿を操作する。


 警報はいったん解除されたが、また警報が鳴った『このままでは大気圏突入時の姿勢に問題があるため非常に危険です』と再び声。


「うわぁ。シビアだなぁ。難しいよ…あと何秒?」シマはミミちゃんに聞いた。


「あと35秒…」ミミちゃんはシマに言ったがミミちゃんも操縦桿に手をかける。


「またやるよ… ちょっとずつ戻して…」シマはさっきよりゆっくり操縦桿を操作する。


 警報はいったん解除された。


 残り5秒、4秒、3秒…


 また警報が鳴った『このままでは大気圏突入時の姿勢に…』


「わあもうだめだ… いいやあきらめない…」シマは指先でちょんと操縦桿をつついた。


 警報が鳴りやむと同時にカウントが0になった。


『姿勢制御はこのまま維持してください…』アナウンスが鳴った。  


 外に見える風景がだんだん赤く見えてきた。機体の外の温度も1300度を超えてきている。


 ミミちゃんが腕をのばし、シマの二の腕をつかんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ