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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
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きつね耳としっぽのけもの耳パンクの世界(1)

 朝。お日様が昇ってからある程度の時間がたったころ。


 またミアお姉さんの家の窓がこつんと鳴った。


 僕シマはカーテンを開けた。


 キラがいた「今日もだよね。わかったよ。用意するよ…」僕はちゃぶ台のところに座っていたが立ち上がった。


☆☆☆


「いやぁ。昨日はどっきりでやりすぎたね。ごめんね」キラが謝ってきた。


「ほんと。ひどいや。僕をだましていたなんて…」僕はキラを見た。


「家の中に入れてくれるかな。ちゃぶ台のところでお話をしよう」キラが言った。

 キラを玄関から家の中に入れる。

 そしてちゃぶ台の前に座ったキラ。僕はお茶を出す。おせんべも出す。


「ありがと…」キラは一口お茶を飲んでから「これ報酬。それと今日から1週間は休みだよ… それでね。君にお詫びとして、いい世界へ連れて行ってあげる。実は僕もね…」とキラは話し出した。


 僕が疑問に思っていたことも聞くことができた。

 なんでキラはミアお姉さんの家に泊まっていないのか。僕と一緒の時間が終わったらTMRでどこかに行っていた理由。


「お話って? まさか、元の世界に帰ってよという話?」僕はキラに聞いた。

 食い逃げのお店の人もゆるしてくれたみたいだし… 僕はキラの顔の表情を見た。


「帰りたいの? 帰りたいのなら言ってくれれば連れて行ってあげる。今日は別の話…

どっきりで、君を困らせちゃったからお詫び。君をけもの耳パンクの世界へ連れて行ってあげる…」


「け。けもの耳パンクって。まさかあのサイバーパンクみたいな世界?」僕は思い出した。尻尾につける電飾。キラキラしていて面白い。しばらくすると飽きて付けなくなったけど…


「ずっと昔。地球に直径70kmの隕石が衝突するはずだった世界があってね。その世界できつねのような耳と尻尾を持つ種族が、隕石衝突の危機を救ったんだよ… その後、きつねの耳と尻尾を持つ種族が、神様と同じように崇められて、太陽系の所有権を譲渡されたんだよ。地球の危機を救った子孫の3代目なんだけど今年で12歳になったんだよね。前に会ったときシマ君のことを話したら会ってみたいって。

その種族がいる地球に君を招待しようと思ってね。君が行ったら国賓扱いだよ… 1週間。リゾート地で休暇をとっている気分で行って来たらどう?」とキラはおせんべを食べてお茶を飲んだ。また話し出す「ちなみに、僕も似た世界に行っているんだよ。夜に寝るために帰る世界。休みの日もその世界で過ごしているんだよ。そこはトリのハーフが地球を救った世界でね、僕も国賓扱いだよ。大陸を1つもらっちゃったし、その世界で使えるお金も使えきれないぐらいあるし…

いやぁ。住み心地が良くて専属のメイド20人もついているしさ… おいしいものも出てくるし…」

とキラが言った。


シマは立ち上がった「何それ。本当? すぐに行くよ。案内してよ…」


「そんなに興奮しなくても、連れて行ってあげる… それと機能を限定して、その世界だけに行き来できるデバイスもあげる。好きな時に行けるよ…」


 キラも立ち上がった。

「キラ。ありがとう」シマはキラに抱きついた。


☆☆☆


 ちゃぶ台の湯呑を片づけてから、僕たちは移動することにした。


 キラはミアお姉さんの玄関にTMRで自動ドアを開けた。

 自動ドアを開けると、豪華な部屋に出た。部屋の絨毯は赤でふっかふかだ。


 メイドと思われる人達が両側に10名ずつ並んでいた。その中央。きつねのような耳と尻尾がある子供が立っていた。


「時間通りだね… 僕はセシル・ラ・ミレイ・ド・クライ。長いからセラと呼ぶといいよ。ようこそ。この世界へ」聞いたとおりの12歳ぐらいの男の子。きつねのような耳としっぽを持っている子が出迎えてくれた。

 ちなみに両脇にならんでいるメイドさんはハーフではなくて純粋な人間だった。


「こんにちは。この子がシマ君だよ…」キラは紹介してくれた。

 セラの尻尾はきつね尻尾をそっくり。尻尾の先っぽは銀色で、その他の部分は黄金色だ。綺麗な色。耳も同じ黄金色で耳のさきっぽが銀色だった。上品な感じ。


セラは「ついてきて…」と言い歩き出した。


 部屋を出る。


 部屋と思っていたのは建物だった。一部屋しかない建物。

「あれ? 部屋だと思ったら建物なの?」僕はその子に聞いた。


「うん。キラ専用の部屋。世界と世界の間を移動するときにだけ使う建物。キラさんにはそこから出てきてもらうように言ってあるんだよ…」さらに歩いて行く子。


☆☆☆


「あ。けもの耳パンク。わかった気がする」僕シマは建物から出て、外を見て言った。

 自動車。ヘッドライトの位置にきつね耳のような突起がついている。

 建物。建物の正面の上部には、きつね耳のようなものがついている。建物の背面にしっぽはない。きつね耳みたいなけもの耳のレリーフや、突起がどの建物にもついている。

 それから、ペットのわんこを散歩させている地球人。普通の人なんだけど。わんこの耳にはきつね耳のような耳カバーを付け、わんこのしっぽにも、きつねの尻尾に似たしっぽカバーをつけている。

 なんでもきつねの耳ときつねのしっぽを付けるのが流行っているようだ。


 だからキラは『けもの耳パンク』の世界って言っていたのか。

 歩いて行くと、小さい飛行機がとめてあった。飛行機の前方の上。操縦席の真上にはきつね耳のようなものがついていた。後部の尾翼にはきつねの尻尾のようなものがくくりつけてあった。

 飛行機まできつね耳がついているなんて…


「こっちへ…」セラは小型ジェット機へと乗り込む。

 道の両脇には、メイドさんや、制服を着た女性の人。警備の人が並んでいる。

 警備の人の後ろには見物人がならんでいる。見物人もいる。これって。プロ野球選手やハリウッドスターが来たぐらいの感じ?

 僕は手をふってみた。


「きゃー。あたしに手をふってくれた。どうしよう…」という声が聞こえてきた。

 きやー。

 きゃー。

 シマ君。


「ねえ。すごいね… キラ… あれ?」キラはいなかった。

 僕はセラに聞く「ねえ。キラは?」その子は歩いたまま答えた「キラさんは自分のけもの耳パンクの世界に帰るって言ってたよ。自分もユキ君の情報を集めるのに1週間休みにするって」とセラはこっちをふりかえって言った。


「そう…」僕は知り合いがいないけもの耳パンクの世界に残り1週間過ごすことにした。


☆☆☆


「うわぁすごいや…」僕は小型ジェット機の中に入って言った。

 きっと個人所有のものなんだけど…内装が豪華。他のも見たことはないんだけど…


「気に入ってくれた? これは君のものだよ… それとこの世界に来てくれたお礼としていくつか、君にあげるものがあるよ… 受け取ってほしい… くわしいことは専属のメイドからお話を聞けると思うから… では… あとで… 僕は僕専用の小型ジェット機に乗るからね…」とその子は言って降りて行った。

 シマは。小型ジェット機の内装を見た。フカフカの絨毯。とっても座り心地がよさそうな椅子。


 ジェット機の奥からメイドさんが出てきた。この子も人間。ハーフではない。

「ねえ。ハーフの子いないの?」僕はメイドさんに聞いた。


「ハーフの子? アメリカとかロシアの子とのハーフですか? それともあなたのような耳のある人間とけもののような耳がついている子のハーフですか?」とメイドさんは聞いてきた。


「うん。けもの耳」僕はメイドさんを見た。とっても可愛い子だ。

「残念ながら、あなたのような大きい耳と尻尾を持つ子とのハーフはいません。この星系の所有者の一族のみですよ。他は普通の地球人だけです」


「へっ。そうなの? ハーフの子いないの?」


 メイドさんはそうですね。と答えた。

 さらにメイドさんは機内の奥に来てくださいと言った。


 メイドさんはテーブルの上に置いてあるものを指さした。


「こちらのお着物に着替えてもらいます。上物の繊維で織り込んだものです。着替えを手伝いますか? ちなみに下着もですよ」

 とメイドさんは言った。


「あ。そうなの。じゃあ着替えるから… どこかに着替え用の部屋はないの?」シマはメイドさんに聞いた。


「残念ながらありません。この機には操縦担当の人と、お世話係の私しかいません。どうぞ、気にせずここでお着換えください。素っ裸になっても構いません。私のことは空気のように扱ってください」


「そうなの…」僕は上着から脱いだ。


 じっと動きもせず。そのまま立って見ているメイドさん。


 僕は下も脱いだ。パンツ姿になった。


 僕はメイドさんを見る。メイドさんは何事もないかのように立ったままだ。


 上を全部脱いだ。上半身裸になった。


 メイドさんをちらっと見た。メイドさんは何事もないかのように立ったまま。

 僕はパンツも脱いだ。


 ちらっとメイドさんを見る。そのまま身動きせず立ったままだ。


 僕は靴下も脱ぎ。上物の下着をつけた。そして服を着る。


 服を着用するときに、メイドさんは動き着るのを手伝ってくれた。


 なんかいいところのぼっちゃんか、貴族になったかのようだ。


 ぴしっとした感じの服を着て上品な感じになったシマ。


「では、いろいろ説明させていただきます」とメイドさんは口をひらいた。


「うん。お願い。何も知らないから」シマはメイドさんに言った。


「電子マネー。何でも購入することができます。この星系の持ち主の許可があれば何でも購入が可能です。あなたは何でもできます。メイドの数が少なければ1000名まで増やせますし、この世界の有名人や一国の大統領と会いたいとか言ってもらえれば会うことができます。

また、ハリウッドの映画に飛び込みでちょっと出演することや、NASAでの昔ながらのロケット打ち上げで、宇宙ステーションまで行って、帰ってくることもできます。

ちなみに今は火星、木星の衛星に住居があります。行って帰ってきたいと言うのでありましたら最新の宇宙船をご用意します。ただし5日かかります。あと専用の大陸がほしければどこでもOKです。住居はお城でも宮殿でも大きい屋敷でも、なんでも使えます。あなたがほしいと言えばもらえます」


「まじで… なんでも?」


「そうですよ。ご希望はありますか?」とメイドさんが聞いてきた。


「じゃあ。どうしよう。目的地に着くまで考えてみる」僕はとっても座り心地の良い椅子に座って考え出した。


☆☆☆


 僕シマは考え事をしていた。けれども。ものすごくふかふかで座り心地の良い椅子に座っていると自然に眠くなってくる。


 そうだな。自分の世界やミアお姉さんがいる世界でできないこと。そうだな。


☆☆☆


 ゆさゆさ。肩がゆさぶられる。


「ん。あ?」僕は目をさました。


「到着です」メイドさんが椅子の横に立っていて、きちっと背を伸ばした姿勢で言う。


「寝ちゃった。もうついたの?」僕はううんとのびをした。それと尻尾。背中と座席の間におしつけていたからしびれた。


 しっぽを手でしごく。


「あ。それなら私にやらせてくださいね」とメイドさんは僕のしっぽを手にとった。

 ポケットからブラシを取り出して、手入れをしはじめた。メイドさんのしっぽお手入れは手際よくて、僕のしっぽはいい感じになった。


「ありがと…」僕はメイドさんの手をにぎった。


「ではこちらへ…」メイドさんはそのまま僕の手をひいて、外につれだした。


☆☆☆


 テレビカメラの中継や、多くの見物人がいる。


 セラ君も出てきた。

 きゃー。きゃー。聞こえる声。


 僕も手を振ってみた。


 おなじくきゃーきゃー言われる。


 すごい。気分がいい。


☆☆☆


 建物の中に入る。ここが住居かと思ったが地下を走る地下鉄みたいなものに乗る。


 傾斜もある。どんどん上っていく。


 地下を走っていた鉄道が、地上に出た。地上に出てゴンドラのような感じのものと合体し、ソラを移動し始める。ロープウェイみたいなものになった。以外に原始的。


 高台の上のほうについた。


「やっと到着したよ… ようこそゲストルームへ」セラ君は言った。


 高台の上のほうにある豪華な建物。宮殿といってもいいぐらいだったが、この建物1つがゲストルームらしい。


「ねえ。君の住居はどこにあるの?」僕は聞いてみた。


「特に決めていないよ。世界の各地に家がある。一番のお気に入りはあそこの山の上に見える家だよ…」


 セラが指をさした。この建物よりちょっと大きいぐらいの建物に見える。


「ねえ。やっぱりロープウェイで移動するの?」向こうの建物に通じるロープウェイのケーブルが見えている。


「そう。ロープウェイが好きなんだ。のんびり。下の景色を見ながら移動するの」

 きつねのようなしっぽをふりふりしながら言うセラ君。


「1週間の滞在なんだけど、僕の希望を言ってもいいのかな?」シマはセラ君に聞いた。


「うん。何でも言って、急すぎるのはだめかもなんだけど…」

 セラ君はにこにこしながらこっちを見ている。


「じゃあ。国際宇宙局での昔ながらのロケットの打ち上げ。それの操縦をしたい… あとテレビ中継か映像でかっこよく記録に残してほしい」


「うん。いいよ。明日以降なら。いつにする? 操縦は簡単にできるようにしておくから… 2時間ぐらい移動中にビデオを見たら使えると思うからね…」 


「やった。それと、今日から1週間シマの日として制定してもらうのは? 全世界の人の買い物金額が1/4になるの」


「いいねえ。お金はいくらでもあるから、人助けになる使い方は大歓迎だよ… みんな喜ぶよ…

他には?」


「じゃあ。宇宙から帰ってきたら温泉か、マッサージかエステ。耳やしっぽの手入れをしてくれるところでリラックスしたい… 景色のいいところと、おいしい食べ物」


「そう… 君が宇宙に行っている間に用意しておくよ…」


 ゲストルーム(建物自体がゲストルームなんだけど)の見晴らしがよいところで、軽食タイムとなった。


 メイドさんに案内されて、テラスのテーブルに案内される。


 僕はセラ君が椅子に座ってから椅子に座るために、椅子に手をかけようとした。

「ああ。いいですよ。私が椅子を引きます」メイドさん。


 僕は椅子の前に立つと、メイドさんが椅子をひいてくれて、腰かけると椅子を前のほうに押してくれた。そしてナプキンを後ろからかけてくれた。そしてメイドさんが僕の手をとり、付近で綺麗にふいてくれた。


 あたたかい飲み物と、パンのようなもの。それと何かのひき肉を丸めて焼いたものと、簡単な卵料理が出てきた。


「どうぞ」セラ君が言った。


「いただきます」僕はパンを手にとってちぎって食べた。うん。おいしい。ふっかふかのパン。そして、パンをお皿に置いてからお肉の料理を食べた。うん。これもおいしい。


「気に入ってもらえたみたいだね…」セラ君は、きっと僕の好みと近いんじゃないかと思ってセラの好物を用意してみたみたい。


「うん。おいしいよこれ… これも…」僕はあたたかい飲み物をのみ、ほっと。一息ついた。


 僕はキラのことを考えた。感謝しないと。ところでキラも同じような待遇を受けているのかな。キラのけもの耳パンクの世界で… 僕はたまに聞こえるトリの声や、ほどよく耳のそばをとおりぬける風の感触を感じていた。


 いいなあ。国賓待遇。そしておいしい食べ物。うん。1週間のんびりしよう。


 僕はそう思った。


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