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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
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サイバーパンクな世界でのユキ君さがし

 キラがこつんと、ミアお姉さんの家のガラスをたたく。


「えー。今日もぉ」シマはキラの顔をみて文句を言った。


「約束だし、ほら前の分」キラは宝石の原石をシマの手ににぎらせた。


「ねえ。この原石どのぐらいの価値?」シマは原石を裏からみたり、目を近づけてみたりした。


「たぶん。1万円ぐらい」


 なんだよ。敵につかまって大変だったのに… とシマがつぶやくと…


「数日後にまとめて渡すから… 今日はこれで我慢して…」とキラが言う。


「もう。わかったよ… ちょっと待ってて…」シマはちゃぶ台に湯呑を置いて立ち上がった。


☆☆☆


 キラがまた自動ドアで別の世界と空間をつなげる。

 前回も異世界だったらしい。この世界と近い別の世界の未来。

 今回は前回ほど危険はないらしい。


「さあ。ついたよ… このどこかにユキ君と思われる人がいるよ…」

 うわぁ。なんかすごい。サイバーパンクという感じの街並み。


 道を行きかう人。髪型はそれぞれなんだけど、ハーフの子、普通の人間を問わず、頭にキラキラ光る電飾をつけている人が多かった。服もおとなしいものを着ている人は少なくて、キラキラがどこかに入っている服だ。

 それに、小型の空飛ぶ機械がひっきりなしに飛んでいる。宅配用の飛行ロボットだったり、何かの宣伝用のディスプレイを表示させてたり…

 ビル自体にも電飾がほどこされており、ビルの側面は広告用の動画の表示が動いている。

 巨大なビルに女の人がお酒を飲んでいる場面の動画が映し出されている。


「これどうやって探すの?」シマはあたりを見回した。

 人通りが多い。

 前の小さいマシンを使うの? シマはキラに聞いてみた。


「まずは、人探しの広告を各地に出すよ… いくらか費用を払えば大型ディスプレイにユキ君の情報を表示できるんだ。そして連絡先を無料でレンタルできる事務所宛てにするよ… まずは事務所を借りてだね…」とキラはTMRを操作してどこかに連絡をとった。


シマは、キラが連絡をとり始めたときに、あたりを見回した。

「あ。なんか面白そう…」お店を見つけた。ハーフの子用の尻尾につける電飾が店先にならんでいたからだ。


 シマは、お店の前まで歩いて行く、これなんかきつね尻尾につけたら面白いんじゃない?

 僕は、尻尾に巻き付けるタイプの電飾を手にとった。


「お。それ気に入ったのかい? それは長いこと売れてなくてね。あげるよ… 商品の入れ替えで返品しようかと思っていたんだ…」

 店員の人が好意でくれるみたい。


「うん。ありがと… ところでこの電飾。電池とか入れるの?」


「へっ? 電池? そんなものかなり昔に廃れたよ。身に着けると体温で自動的にエネルギーが供給されるんだよ」


「じゃあ。尻尾につけてくれる?」僕は付け方がわからなかったから店員の人に聞いてみた。


「わかった。後ろ向いて…」店員の人がシマの尻尾を手にとって、電飾を巻き付けていく。


 すると、電飾が肌色や、黄色。緑色に光りだした。


「うわぁ。面白い。気に入ったよ…」


「よかった。じゃあ。仕事あるから… 今度よったときに何か買っていって…」と言い残し店員は店の奥へと消えて行った。


 僕はさてと。という感じで元来た場所を見た。


 キラはまだ、立ち止まってTMRを操作していた。

「うん。たのむよ。人探しの情報はこの後送るね…」とキラは通話を切った。


 事務所はもう借りたから、行こうとキラに言われた。


☆☆☆


 道を歩く。後ろから高速で近づいてくる浮遊する小型の機械。

 人が歩いている間を器用によけていく。


「なんか。すごい世界だね。電飾が多いし… この世界だと夜のほうが似合うね…」僕はキラに言った。


「うん。確かに… 町中といわず田舎でも電飾が結構あるから、夜中でも明るいんだよね。星とかは見えない… 何か食べ物でも買っていく?」キラは手を上げた。


 すると、タクシーではなく、小ぶりの浮遊する小型ショップがキラの近くに寄ってきた。

 空中に浮かぶ小型ショップには結構たくさんの食べ物が入っている入れ物が付いている。

 キラは、数個の食べ物と電飾でキラキラになっているペットボトルの飲み物を手にした。

 お支払いはTMRですませたみたい。


「すごいね。お店も浮遊している小型機械が売っているなんて…」ふわふわと飛んで遠ざかっていく、小型ショップを見る。


 歩いて路地を進む。10分ぐらい歩くと、斜めに地面から生えているビルの玄関にたどり着いた。

 キラはそのままビルに入っていく。階段を上っていく。


 僕もキラの後をついていく。


 生体認証を使い、入り口のロックを外す。きっとビルを借りたときに登録したんだろう。


 僕は部屋の中に入った。入り口付近にはロッカー。それより奥にはソファ。その奥には机。

 壁には端末が5つ。その端末の前には高さがある、カウンターにあるような椅子が並んでいた。


 キラは、どさっとソファにこしかけた。


「広告を出したから待つだけだよ…」キラはさっき買ってきた飲み物や食べ物をソファの前のテーブルに置いた。キラは飲み物と食べ物を手にとった。


「待つだけね…」


「ところでその尻尾は何? 君もサイバーパンクの世界の住人になったの? 尻尾ピカピカしているよ。面白いね…」キラは僕の尻尾を見て言った。


「なんかすごいでしょ…」僕は尻尾を手にとった。

 ぴかぴか電飾が光っている。

 うん。面白い。元いた世界にも、今住んでいる世界にもこういうのはない。


 ぴーん。ぽーん。ぽろん。音が鳴った。

 壁についている端末からだ。


「あ。情報が集まってきたみたい…」キラはソファから立ち上がった。

 ううん。と背中の羽を伸ばしてのびをする。キラの綺麗な羽がひろがった。

 天使みたいだよな。と僕は思った。


 キラは、壁の端末を操作する。


 僕は、キラのそばへと歩いて行き「ねえ。見つかった?」と聞いた。


「うーん。違うみたい。似ているんだけど… 生年月日が違うね。そしてこっちのは女の子だよ…」

 とキラはいった。


 キラはさらに、あとは僕がやっておくから、この世界を見物してきたらどうかな?

 電飾のしっぽ付けていると、立派なこの世界の住人ぽいね… とキラは言った。


「そう。じゃあお言葉に甘えて… ちょっと見物してくる。ついでにユキ君に似た人がいないかを注意してみるよ…」


「うん。わかった。じゃあ。迷子にならないでね…」

 キラは手をあげて言った。


☆☆☆


 僕は外に出た。ビルの側面に映っている広告がどこかの巨大都市のものになった。ありえないほどの巨大なビルディングが立ち並ぶ大都会。ビルが真横に生えているところもある。空中を飛ぶエアカーや、小型飛行機が目立つ。

 そして、月に似た巨大な明かりが空中に現れ、月のように浮かんでいる映像も表示された。

『巨大なCyber都市Ryla完成予定』と広告が表示された。

 そして次の広告。海底にそびえるCyber都市。巨大ドームによる1000万人が住居予定。


 すごいなあ。僕はビルの広告を見ているだけでも面白そうだと思った。


「きゃあ」後ろで声。

「ひったくりだぞ…」

 近くで声が聞こえて、だれか男の人が走り出していった。

 けれども誰も追いかけない。


 ちゅん。はるかかなた上空からレーザー光線の光が、男の人めがけて落ちた。

 ひったくり犯の靴の足先から、煙が立ち上っていた。僕は近くまで行ってみると、5円玉ぐらいの焦げた跡が靴に開いていた。

「ひっ」男の人はひったくったバックを放り投げて、立ち上がり、超小型タクシーを呼び立ち去って行った。

 悪人をこらしめるのも機械により自動で狙撃されるらしい。今回は靴の足先に焦げた跡が開くぐらいですんだみたい。


 僕はさらに道を歩く。

 ウサギのハーフの子や、ネコミミの子、わんこの耳を持っている子もいる。それにキリンの角のようなものを頭につけている、ものすごい長身の子もいる。みんな尻尾や耳に電飾をつけて、キラキラ、ぴかぴかさせている。


 僕は、大きい通りをさらに歩く。


 わきのとおりにあるお店が目につく。『何でも買い取ります』とあった。

 そういえば、採掘現場でくすねた何かの原石も売れるかな?


 僕は、そのお店に入っていった。


☆☆☆


「以外に値段が高くついた」僕は喜んだ。数個のよくわからない原石が2万円ちょっとで売れた。


 お札を数えながら、道を歩いていると、髪型がパンクな人が数人近づいてきた。

 1人は、カラフルなうちわを縦に頭につきさしたような髪型の人。

 もう1人は、頭の真ん中だけをつるつるに剃っている人。

 さらにもう1人は、頭の片方だけつるつるに剃っている人。髪の色はピンクに染めている。


「よよーよ。以外に金もってるな。お前さん。俺たちにおごる気はないかぃ。べいべー」

「そーよ。そーよ。俺たちのために使ってくれないかなぁ… へぃどうだぃ」


「えー。なんで。君みたいな人達になんでおごらないといけないの? いやだよ…」僕は、知らんぷりして、立ち去ろうとする。


「おい。ちょっと待てよ…」1人が僕の肩をつかむ。


 なんだよ。もう「ねえ。ひったくりと大声を出すよ。君の靴の足先にレーザーで穴が空くかも…」

と僕は言った。


「ちっ。なんだよ…」髪型がパンクな人はあきらめて、別のターゲットを探すために去って行った。


☆☆☆


 ふう。危ない危ない。僕は立ち尽くして去って行ったパンクな人の姿を見送っていると、後ろから肩をとんとんと叩かれた。


 5歳ぐらいの女の子。

 まゆげに小さい電飾を付けている。ピンクの光と水色の光が交互にまゆげを光らせている。


「ねえ。その尻尾の電飾…」女の子は指さして言った。「時代遅れ… もっといいのがあそこにあるよ…」と女の子が言ってきた。


「えー。これさっきもらったばかりだよ。売れ残りだけど…」僕は女の子が見ているお店を見る。


 あ。なんかまた面白そうなお店がある。

「これあげる」女の子は、立ち去りぎわにシマの手に何かをにぎらせた。

 僕は手を見てみた。


 棒にキャンディーが渦巻き状にくっついているお菓子だった。いかにもキャンディーというもの。

 違うのは、棒も電飾でぴかぴかしていた。しかも色は青紫色だった。


 僕は一口なめてみた。


 う。まずっ。何味かわからないが色といい、味といい。もういらないという感じのものだった。

 仕方がないので、包みのセロファンを戻し、ぽけっとに入れた。


 僕はお店に入る。


 尻尾に付けるタイプの電飾が売っていた。今風のものは、電飾が1列になって順々に先頭から光るものだった。それを尻尾にまきつけるみたいだ。


 値段も1000円だ。きつねのハーフ用。ウサギのハーフ用(耳につける)。猫用(尻尾)。あとトリのハーフ用に羽に付けるタイプのものもある。みんなの分を買っていくことにした。

 あとサイバーパックな鉢植え(電飾付き)や、調味料を入れる瓶(電飾付き)があった。

 鉢植えはラミちゃんとミアお姉さんに、調味料を入れる瓶(にぼしとかを入れる)はミミちゃんに向けて買うことにした。ユキ君にはそうだな。人間用の後付け狐尻尾(電飾付き)を買うことにした。キララにも僕と同じタイプのキツネ尻尾用の電飾の色違いを買うことにした。


 さてと、もうそろそろ戻るか。僕は元来た道をたどって斜めに生えているビルを目指すことにした。


☆☆☆


 僕はキラが臨時で借りた事務所のドアの前にたどりつき、ドアをあけた。


「やあ。お帰り…」キラは端末の前でこっちを振り向きながら答えた。


「どう? 見つかった?」僕はキラの表情を見てきっと見つからなかったんだなと思った。


「うん。似た人の目撃情報しかないよ… 今回はいないみたい… じゃあ。この事務所を引きはらって帰ろうか… ところでいっぱい買い物をしてきたんだね…」キラは僕が手に持っている買い物袋を見て言った。


「うん。面白そうな電飾があったから買っちゃった。キラの分もあるよ…」僕は羽につける電飾をキラに見せた。


「うーん。じゃああとでね… 僕は連絡をするから…」キラはまわりにあるものを片づけはじめた。

 キラは自分の宅配ボックスをTMRで開けて、いろいろなものを片づける。


 いいなあ。TMR。便利だよね。


☆☆☆


 撤収準備をした後に、キラは壁に自動ドアを開けた。


「なんか、僕。あまり役にたってなかったみたいだね…」キラに言った。


「そんなことはないさ。君は髪型がパンクな人にからまれていたよね。見物するために、数人お店から出てきたんだけど、その中の1人がユキ君そっくりでね。きっとこの世界の目撃情報はその人なんだと思ったんだ。偵察ロボットを出して、その人の身長とか体重とか、生体パターンを遠隔から取得したんだけど、別人だったよ…」


「そうなんだ…」


☆☆☆


 僕はみんなにサイバーパンクなお土産をあげた。電飾でキラキラしている鉢植え。調味料入れ。尻尾や耳につけるかざりなど。


 みんな面白い。と言って喜んだ。けれども身に着ける人はいなかった。


 僕はしばらく尻尾に電飾をつけて過ごした。


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