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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
60/138

シマと採掘場とユキ君

 僕シマは、宇宙船(巨大な移民船)の広い部屋でキラが戻ってくるのを待っていた。

 キラのもといた世界のユキ君が行方不明なので、探すのを手伝っているんだけど…


 遅いなあ。キラが持っていた探索用のマイクロマシンを放出して90分。ちらほら情報が集まっているころだ。


 でも気になることがある。この宇宙船は巨大勢力の敵によって襲われているところだ。

 大丈夫だったんだけど、なんか雲行きが怪しくなってきた。モニターを見ていたんだけど、僕が乗っている宇宙船のそばに、急に赤い点が具現化した。その直後。ががーん。ごーん。がごん。という何かがぶつかる音。それとひどいゆれ。


「キラ。まだぁ。なんか怖いんだけど…」とキラが消えて行ったほうの壁に向かって言う。

 けれどもその独り言を聞いている人はいない。


 ががーん。ごーん。どん。

「あわわっ」シマは大きなゆれで、こけた。「なんだよもう…」キラはモニターを見た。


 すると、モニターを見た直後に、モニターに表示されている映像が切り替わり、赤い映像になった。


『警報。この船に未知の侵入者が多数。もし敵と遭遇した場合はおとなしく従うこと。逃げたり抵抗すると命が危ない恐れがあります。繰り返します…』と聞こえだした。


「えー。なにこれ。ちょっと待ってよぉ」シマは立ち上がった。


 あたりを見回す。どこかに隠れる場所。マンホールとかないかなぁ。シマは地面を見た。


 そんなものはない。


 ハッチもない。ただの金属でできている床があるだけ。


☆☆☆


『きゃー』

『助けて…』

『おかあさーん』

 という声。だんだんと騒ぎが大きくなってきている。


 ちょっと。やばい。ほんとにやばい。


 僕たちが入ってきた入り口から、どう見ても怖そうな人達が入ってきた。

 ばらばら、どたどたと足音をたてて、30人は超える人達。


「げっ」シマはよつんばいになって、立って動けないでいる人の足元に隠れて、遠ざかろうと歩く。


 そーと。見つからないように… そーと。


「いたっ。なんだよ」誰かに尻尾を踏まれる。よつんばいの姿勢のまま後ろを見る。


 げっ。敵。


「どこに行こうとしている。立て」銃らしきものをつきつけられる。


「ひゃ。はい…」シマはゆっくりと立ち上がる。


「あの後についていけ。逃げたら撃つ」どうみてもレーザー銃らしいものをつきつける。


「キラぁ」シマはつぶやいた。


☆☆☆


 移民船に横付けされている宇宙船。宇宙船と移民船をつなぐ通路が設けられていた。

 その通路を僕は移動している。

 他にも家族連れや、カップルらしき人達が震えながら、通路を渡っていく。


 キラぁ。捕まっちゃったよ。助けに来てくれないの?


 僕はあたり左右を見ながら歩く。逃げれそうにもない。


 大人しくしたがっておくことにした。


 きっとキラが助けてくれる。


☆☆☆


 大部屋に通されて、扉が閉じられた。


 天井にはモニターがある。


『本船はまもなくこの宙域を離脱する。行先は追っ手から姿をくらますため、7000箇所ある惑星からランラムに選ばれる。お前たちは奴隷として働くのだ。最低限の食料と住居は与える。優秀なものにはおいしい食べ物をやることもあるだろう。なお。反乱や抵抗した人には容赦なく撃ち殺す。代わりは大勢いるためだ。以上』


「ちょっと。まって、ランダムって…」シマは座り込んだ。


 そして自分の襟をみる。


 あ。通信機。忘れてた。


 僕は通信機のスイッチを押して、キラを呼び出した「ざざー。ざざー」雑音だけ。


 そのうち、『充電が必要です。この通信機を使うためには充電が必要です』と声が聞こえだして、自動的に電源が切れた。


「なんだよもう…」僕はバッジの通信機を使うのをあきらめた。


☆☆☆


 そのうち、宇宙船は宙域を離脱する。


 天井のモニターには別の星系が表示された。2重連星のある惑星が見えてきた。色は緑色。地球は白い雲と青い海が目立つ惑星なんだけど、見えてきた星は緑色の海をたたえた惑星らしい。


 宇宙船は惑星上に着陸するため、乱暴に下降しはじめた。


 かなりゆれる。ずざ。ずざー。と1メートルほど床をずれる。


「なんだよもう…」


☆☆☆


 どごん。


 乱暴に地面に着地する宇宙船。


 地面に着地した後、10分ぐらいたったとき、敵が現れて、みんなを外へと誘導しはじめた。


 僕は立ち上がった。


 誰か知らない人が、敵の目を盗んで逃げた。


「おい。待て…」じぐざぐに走り、追っ手をかわす人。


 かなり後ろまで逃げて、部屋のすみまで逃げたとき。


 ぼん。かなり大型の武器が火をふいた「ぎゃー」逃げてた人は倒れた。それっきり動くこともない。


 敵の数人がその人のまわりに集まる。その中の1人が何か武器の手に持った。ばん。


 大きな音と煙。赤い煙がたちこめて、倒れていた人は跡形もなく消えてしまっていた。蒸発したようだ。


「ひっ。あんなのはいやだよ…」僕はおとなしく、みんなの後をついて歩き、宇宙船の外に出た。


☆☆☆


 数日が過ぎた。キラは助けに来るかと思ったけど、まだ来ない。


 僕は、価値のある宝石の原石や、希少価値があるレアメタルが良く出ると言われる谷で採掘をしていた。


 最初は綺麗な石を見つけたらポケットに入れて、くすねるつもりだったが、一緒にいた人に言われた。


「なーにしてんべ。そんなことをしても無駄だ。俺も昔はそうしたものさ… 最初につかまってからもう22年だなぁ…」


「22年… そんなに?」僕シマは手にしている宝石の原石をベルトコンベヤーへほうりなげた。


☆☆☆


 夜。採掘が終わり。5名ずつグループになっている部屋へと帰る。


「おい。知っているか? 明日は補給船が来る。何かほしいものはないか?」

 22年もいる人がシマに声をかけてきた。


「ほしいもの? ここから脱出できる宇宙船…」


「はっはっは。補給船にもぐりこめば脱出できるかもしれないが、出入りする人数を数えているんだ… それに。あ。おまえさん。そういえばその尻尾。よく似た尻尾をおしりから生やしている子がいるなあ。その子と入れ替われば出られるかもしれないぞ…」


☆☆☆


 次の日。補給物資を運んできた宇宙船が着陸した。


 そこから小柄な人や僕に年齢が近そうな人達が下りて来て、荷物を運んで歩いてきた。


 そのうちの1人。フードをかぶった人が重そうな荷物を持って、隣の建物へと入っていく。

 荷物を置いて、建物から出て行った。


「あ。しっぽ」僕の尻尾と良く似ている尻尾がお尻からみえた。


 あの人を待ち伏せて、頭に大きな石をごつんとおろせば、くっくっく入れ替われる。


 僕は、荷物置きにしている建物の中に入り、入り口付近で待ち伏せることにした。

 中が暗い建物。僕は誰かが入ってくるのを待つ。


 音が聞こえだした。歩く音。だんだん近づいてくる。


 さっきの人がまた荷物を持って入ってきた。


 尻尾が見える。


 僕はゆっくりと背後から近づいて、頭にごつん。と大き目の石をぶつけた。


「あっ」その人は倒れた。


「ふっふっふ。入れ替われば…まずは服を脱がそう…」


 フードをとり、上着を脱がす。

 その人の顔をみたときだった。


「あー」僕は声を出した。見覚えのある顔。ユキ君だ。


 ちょっとねえ。あー。あたまにごつんと石をぶつけちゃったよ。


 まさか死んでないよね。死んでたらキラに殺されるよぉ。


 僕は自分の尻尾で、ユキ君と思われる人の鼻の下を尻尾でこしょこしょとした。


 尻尾がこそばゆくて、くしゃみをして目を覚ますその人。

「うーん。いたたた。頭が…で、君は? 反乱者? 通報っと」ユキ君ぽい人がポケットに手を伸ばそうとする。


「動かないでほしいな。また石を君の頭におみまいするよ…」

 その言葉を聞いて、その人は手をポケットから遠ざける。


「ねえ。なんで僕?」地面に座ったままシマに問いかける。


「うーん。じゃあ。君。名前は? ユキって言う名前じゃない?」僕は聞いた。


「たしか。そんな名前だった気がする… 薬を飲まされて。記憶があいまいなんだ…」


「ねえ。キラって子知っている?」シマはユキ君ぽい人に聞いた。


「うん。知っている気がする…」


「じゃあ。ユキ君っぽいね。でもその尻尾どうしたの?」僕はユキ君のお尻から生えている尻尾を指さした。


「ああ。これ? どこかの惑星で、尻尾を売っていたから付けてもらったの。寒いときに抱っこして寝るとあたたかいから…」


「なんだ。自分の尻尾じゃないのか… うーん。じゃあどうしよう。困った。ここから出たいんだけど…。それとキラ。早く助けに来てくれないかなぁ」シマはつぶやいた。


「君もキラっていう子知っているの?」ユキ君はシマに言った。


「うん。そうなんだけど。君を探しているみたい…」


 さてどうしよう。2人で出ていきたいんだけど…


 ユキ君と相談して、僕がユキ君の着ていた服を着て補給船に乗り込むことにした。

「後で助けに来るから…」僕はユキ君に言って、補給船の入り口へと向かう。


 入り口に見張りが立っている。僕はユキ君が着ていた服からしっぽを出してわかるようにして、歩く。


 入り口。もうちょっとで中に入るとき。


「おい。お前…」見張りから声をかけられた。


「何かな…」ものすごくどきどきする。心臓がばくばく。ばれた?


「荷物1つ置くのに時間がかかったな… 何かあったか?」聞いてきた。


 えーとえーと。どうしよう。「荷物の底が抜けて、中身を拾っていたら遅くなった」


「ふむ。そうか。荷物を運ぶときは底も持つんだ… じゃあ行け…」


 見張りはまた、外を向いた。


 ほっ。やばい。ばれたかと思った。


☆☆☆


 僕は給湯室を探した。けれども212給湯室はなくて、217給湯室しかなかった。

 その給湯室で待っていると、壁に自動ドアが現れてキラが出てきた。


「あ。いた…」キラは給湯室のすみに座っていた僕を見つけた。


「なんだよ。遅かったんじゃない? ひどいよ…」僕はキラに抱きついた。


「よしよし。もう大丈夫。僕のほうはユキ君見つけられなかった…」


 僕はそれを聞いて。「ふっふっふ。ユキ君を見つけた。入り口から左のほうに行ったところにある建物の中にいる」


「本当? じゃあ。行ってくるよ…」キラは自動ドアから出て、TMRのボタンを押す。

 するとキラの姿は消えた。


「へっ?」僕はあたりを見回した。


 目の前には誰もいない。いないんだけど、いきなり僕の頭がなでられた。きつね耳をぽんぽんとする透明の誰か。


「見えないでしょ。光を屈折する機能を付けて誰にも見つからないようにできるんだ。じゃあ迎えに行ってくる。そこから直接この給湯室へ自動ドアを開けるから来てね」という声が空中から聞こえる。


☆☆☆


 しばらくすると自動ドアが給湯室の壁に現れた。


 僕は自動ドアに入った。


 どこか見覚えのない場所。


 図書館だった。


 そこにユキ君と一緒に立ってまっているキラの姿。


「なんだ。残念。でも君は元の場所に帰りたいよね。地球の元の時代でいいんだよね」という話声。


「うん」


「その前に未来へと寄って、薬の影響を取り除いてあげる。あ。シマ君。ちょっと待っててね。ユキ君を送っていくから…」とキラが言い、キラはまた自動ドアを開けてユキ君をくぐらせた。その後自分も移動してしまう。


☆☆☆


 しばらく図書館らしい建物で待っていた。


 壁に自動ドアが現れてキラが出てきた。


「いやぁ。今回は見つけたと思ったんだけど、違う世界で行方不明になったユキ君だったよ…

元の時代の元の場所へ送ってきたよ…」とキラ。


「そう… でもひどいよ。キラ。僕も22年ぐらい奴隷として採掘現場で働くことになりそうだったよ…」


「ごめんごめん。22年ってやけに細かいね… 今日は終わり帰ろう…」キラはTMRで自動ドアを開けた。


☆☆☆


「あー疲れた」シマはミアお姉さんの家の玄関にあけた自動ドアから家へと入った。


 ミアお姉さんは家に帰ってきていた。

 そして隣にはララお姉さん。


 この際しょうがない。


 僕はミアお姉さんとララお姉さんの間に座り、左右を見て。胸の大きいララお姉さんの胸に頭をつっこんだ。


「なーに。甘えて… 大変だった? よーしよし」ララお姉さんが頭をなでてくれる。


 ミアお姉さんは、僕の尻尾をなでてくれる。


「あー。あったかい。抱きつかせて…」ララお姉さんの胸に頭をつっこんだまますりすりする。そして両腕を後ろにまわす。


 長身うさぎお姉さん。ふかふかであったかい。


「夕食ができるまでの間の時間。ずっとこうしていてあげる…」今日はやけにやさしいララお姉さん。

 ちょっとウィスキーのにおいがする。

 あたしは何でも知っているんだから。とララお姉さんの小声が聞こえた。


「あー。神系のララかな? ひさしぶり…」キラの声。


なんだろう。神系のララって。


「今日は3人で一緒に寝ましょうね」とミアお姉さんの声。


 2人の年上ウサギお姉さん。完璧なバニーガールのお姉さん。でっかい胸がやわらかで、ふかふか。

 抱きついていると本当のお姉さんみたい。


「また来るよ…」キラの声。TMRで自動ドアを開けたみたい。


「あ。忘れてた」人探しの料金。こんど会ったときたっぷりと請求しよう。


 でも疲れた。このまま長身うさぎお姉さんの胸の中にうまっていよう。


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