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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
59/138

移民船とシマ

 僕シマは、やっとララお姉さんの強制的なもふもふから解放された。


 僕は居間に入ってきたユキ君の背後に隠れてララお姉さんに言うことにした

「ねえ。なんなの? あんな強制的に… やっぱりやめるよ… 付き合うの…」


「だーめ。あたしはあきらめないから… 過去や未来。世界のどこまでも追いかけていくからね… ちなみに異世界へは行けないけどね。むっふっふ」とララお姉さん。


「強制的にもふるのはやめて。少しだけならいいけど。抱きついてくるのはOKだから…」


「そっか。じゃあ。また抱きついちゃおうかな…」ララお姉さんがこっちを見る。


 そろそろと近づいてくるララお姉さん。


「うう。近づいてくるよ… もう今日は疲れたから… それにさっきマイクロバスに轢かれたばっかりだし… そうだ。これあげるよ…」シマ君は僕をララお姉さんにさしだした。


「げっ。なんだよ。シマ君。裏切ったの?」

「いーや。べつに… さっき助けてくれなかったからね…」シマ君は後ろに目線をそらす。

 ユキがシマ君のほうを見ている間。いつのまにか背後に近づいてきていたララお姉さんに捕獲される。


「げっ」僕はララお姉さんにつかまった。けれどもララお姉さんの長身の長い腕は同時にシマ君も一緒に捕獲していた。


「よっこいしょっ」ララお姉さんは、ユキとシマ君を一緒に同時に持ち上げる。

「うわぁ」ばたばた。2人で足をじたばたさせる。


 どさっと。ソファの上に落とされる2人。


「ふっふっふ」近づいてくるララお姉さん。


 そしてその背後からさらに近づいてくるうさ耳。


「おねえさん。だめ。ユキ君いじめちゃだめ…」5歳児のララちゃんが言った。

「えーいじめてないでしょ…」未来から来たララお姉さんは、今現在のララちゃん(5歳)に怒られていた。


「こまっているでしょ。嫌いになっちゃうでしょ」幼稚園児のララちゃん。大人になったララお姉さんより、ものわかりがいい。いい子だ。


「わかったわよ… ほら… よっこいしょっと。あー。少し重くなったわね… お兄ちゃん達と遊びなさい…」ララお姉さんは、幼稚園児のララちゃんを抱っこして、ユキ君の膝の上に座らせた。


 5歳児のララちゃんは、ユキ君の膝の上で抱っこされながら、シマ君とユキ君の頭を交互になでた。

「いい子。いい子」

 巨大なウサギのぬいぐるみそのままの感じのウサギのハーフの5歳児ララちゃん。

 なごむ。ほんわかする。

「ほんとかわいいね。それにしてもこの子の将来がああなるなんて…」シマ君がいった。


「うん。そうなんだよ… きっとミアお姉さんの影響なんだと思うけど…ミアお姉さんはシマ君がホームスティする先のウサギの子。たまに僕を強制的にもふろうとするんだけど、きっとそれを見ていたんだよ。僕をもふって嬉しそうにしているミアお姉さんを見て、自分ももふるようになったんだ…

ちなみに、ミアお姉さんはララお姉さんより背はちょっとだけ低いけど、胸の大きさはララお姉さんぐらいあるよ…」


「そうなんだ。でも僕も、ミアお姉さんにもふられるかな?」


「まあ。大丈夫なんじゃない?」僕は5歳児のララちゃんを抱っこしながら頭をなでなでしてあげた。

 耳の付け根もこりこりとなでてあげる。


「んーん。きもちいい」ララちゃんがほんわかした顔で言う。


「なごむねぇ」

「ほんとだねぇ」

 僕とシマ君はララちゃんの顔をみてほほえんだ。


☆☆☆


 次の日。用事からもどってきたミアお姉さん。家に寄るように言ってある。


「こんにちは」ミアお姉さんが玄関を開けて家の中に入ってくる。


 ララお姉さんがソファの上に座り、ララお姉さんの膝の上にシマ君が座っている。

 強制的に抱っこさせられているシマ君。


「ミアお姉さん。この子。シマ君というんだけど、しばらくミアお姉さんのところであずかってくれないかなって、異世界のキラが言って、この世界に置いて行っちゃったの…」


「それちょっとちがうなぁ。自分の世界から逃げてきたの。だからこの世界でお世話になろうと思って…」


 ミアお姉さんは、ララお姉さんの膝の上に座っているシマ君を見る。


「また強制的にもふっているのね… 嫌われるわよ…」ミアお姉さんがため息をついた。


「いいの。付き合うことにしたんだから…」ララお姉さんがいった。


「それまだ続いているの?」シマ君がもがいてみる。


「だーめ」シマ君が立ち上がらないようにぎゅっとするララお姉さん。


「ねえ。トイレ行きたいんだけど…」シマ君が言う。


「だーめ。もうちょっと」ララお姉さんがさらにぎゅっとする。


「出るよ…」


「もう…」ララお姉さんはシマ君を開放する。


 シマ君は立ち上がる。けれどもトイレには行かない…


「ねえ。おトイレは?」ミアお姉さんが言う。


「えっ。ああ。もういいや…」シマ君が言う。


「もう。うそつき…」ララお姉さんは腕をのばす。

 その腕をするりとかわし、ミアお姉さんの前に立つシマ君。


「やっぱりミアお姉さんも背が高いね」シマ君は自分の背と比べる。


「そうなのよね。でも胸のサイズはあたしの方がおおきいし、体重もあたしのほうが5kg軽いの…」ララお姉さんは言いさらに続ける「たしか82kgだっけ」


「ぎゃー。なんで今言うの… ところで今ララお姉さんが言ったのは聞いていた? xx kgって」


「82kg? どう見ても背が高いし胸が大きいのを見ても60kg台後半? あっても70kgちょっとかなぁと思ったけど… そんなにあるの見えないし… ミアお姉さん美人だし…

ということはララお姉さんの体重は78kg? ぷぷっ」シマ君はララお姉さんのほうを見てララお姉さんの体重の話に振り替えた。

 ララお姉さんはシマ君のウエストをわしづかみにして言った「ねえ。細いよね。シマ君のウエスト。こうしてあげるとどうかなぁ」ララお姉さんはシマ君のウエストをぎゅっと力を入れて縮めようとする。

「うぐえ」シマ君はララお姉さんの腕をタップする。


「体重のことは内緒よ。特にユキ君にはね… ミアお姉さんは78kg。あたしは73kgということにしているんだから。内緒にしないとしめるわよ…」ララお姉さんはシマ君のウエストをぎゅっと縮めようとする。

「わかった。わかった。ばかじからなんだから…」

 ララお姉さんがシマ君のウエストから手を離した。


「今のことは忘れてもらって… ねえ。シマ君。ホームスティ。家であずかるんだよね… 家の人に聞いてみる。だめだったら、未来のララお姉さんのところに…」


「うわぁ。それだめだって…」シマ君はララお姉さんを見る。


 ミアお姉さんは電話で、ミアお姉さんの身元をあずかっている人に聞いた。


「OKだって」ミアお姉さんはシマ君に言った。


「ほっ。良かった…」


 いったんシマ君はミアお姉さんの家へ行くことにした。

 すぐ近くなのでシマ君は自分のとっても少ない荷物を持って家を後にすることにした。


☆☆☆


「おじゃましまーす」シマはミアお姉さんの家に入った。


「ただいま。って誰もいないんだけどね…」ミアお姉さんは荷物を居間に置く。


 ここ使って。と空いている部屋へと案内する。


「うん。いい部屋だね」和室。畳。日当たりは微妙に良い。


「お布団はこの押し入れに入っているから…」ミアお姉さんは押し入れを開ける。


「うん。ありがと。ところで夜一緒に寝ていい?」シマ君は言った。


「えっ? まあ一緒に寝たければいいけど…」とあっさりOKをもらう。


「やった」シマ君はうれしそうだ。


 ミアお姉さんのほうは(子供なんだから…)と子供扱い。


 こんこん。窓を叩く音。


 見ると、キラの姿。


「こんにちは…」キラがミアお姉さんに言う。


「えっ。ん? んん? えー」とキラの顔に気が付いたようだ。


 キラは異世界から来たのと、僕は男だよとミアお姉さんに話す。


「というわけ… ところで、明日からシマ君を借りていくよ… 手伝ってほしいんだ…」


 となにやら話しをしている2人。


 僕はその間。本当にトイレに行きたくなったので、ミアお姉さんの家のトイレを借りることにして、部屋を出ていた。


☆☆☆


 次の日。ミアお姉さんが出かけたあと、僕は和室でお茶をずずずと飲みながら、おせんべを食べていた。


「お金がないや。アルバイトしなきゃ…」僕シマはため息をついた。


 こんこん。また窓を叩く音。僕は窓をあけた。


「やあ。シマ君。暇だよね。出かけるよ。ミアお姉さんには昨日話したんだけどね…」とキラ。

 キラから話を聞くためにキラを家にあげて、キラの分のお茶とおせんべを用意するシマ。


……


 ぱりっと食べてからキラは話し出した。「君は異世界から来たからこの世界のお金を持っていないよね…」


「そうなんだよ…アルバイトをしなきゃと思ってたとこ…」シマは尻尾をびたんびたんと畳に打ち付けながら言う。


キラは背中の羽をそわそわ動かしながら言う「実は。僕の世界のユキ君を探すのを一か月だけ手伝ってほしいんだよ」


「僕の世界のユキ君? ということは君の世界のユキ君は行方不明?」僕シマはキラに聞いた。


「うん。昔自動ドアの移転中の事故でね。異世界のどこかに飛ばされちゃったんだよ… 僕は10年かけて探しているんだけど… なんとなくもうそろそろ見つかる気がしててさ。でもやっぱり人手がほしくてね…」

 キラはお茶をのんだ。


「そうなんだ。じゃあ手伝ってあげる。そのかわり、お手伝い料金として何かお金になるものがほしいなぁ…」シマはキラにいった。


キラは「うん。元からそのつもり、宝石の原石があるからそれを換金するといいよ… でも迷惑をかけたり、食い逃げをしたり、邪魔になったらその場に置いて行くけどね」


シマ君は「なんだよもう。食い逃げはもうしないよ… 邪魔にもならないし、役に立つよきっと」シマ君はぱりっとおせんべを食べた。


「じゃあ。食べ終わったら出発ね」キラはお茶を飲んだ。


「あ。でも問題があるよ。この家の鍵をもらってない… 留守の間玄関開けっ放しだと困る…」


 シマはそう言ったが、キラは「なんだ。そんなこと… この家の玄関に中から鍵をかけて、玄関の壁からTMRで自動ドアを開けて移動すればいいんだよ…」


「なんだ。そういうこと… じゃあ問題ないね。ところで持ち物は何かいる?」シマはキラに聞いた。

 キラは背中の羽をおりたたんで言った「どうせ何も持ってないでしょ… これ…」キラは万が一はぐれたときに連絡ができるように通信バッジをシマに手渡した。


 襟のところにつけるらしい。


「食べ終わったよ… じゃあ湯呑とか急須を片づけてくるから…」シマは立ち上がって台所へと持っていく。


 流しで洗ってから、キラの元に戻るシマ君。


「じゃあ行こうか…」キラはイケメンの顔をこっちに向けた。


 玄関の壁にTMRで自動ドアを開けるキラ。


 キラはシマの背中を押して自動ドアをくぐらせる。その後キラ自身も自動ドアを通り抜ける。


☆☆☆


 自動ドアを通り抜けたところはどこかの通路だった。


 僕シマはものめずらしいので、天井とか廊下の壁を見ていた。人はいる。見たことがない種族みたいだけど、人間もいる。


「何やっているの。こっち」キラが後ろを振り返り、こっちを見ている。


「ごめん。今行く…」僕はキラの方に向かって歩く。


「置いて行くよ… もうちょっと先まで行くよ…」キラはどんどん歩いて先へと進む。


 どごん。そのとき地響きみたいな音とともに少しゆれる。


「何これ?」僕はゆれた時に壁に手をつく。


「ここは恒星間を移動するための移民船。巨大勢力から攻撃を受けているらしいんだよ…」


「えー。そうなの?」僕シマは、置いて行かれないようにキラの後をついて歩く。


 少し歩くと開けた場所に出た。大きい部屋。100メートル以上はあるだろうか。天井も小さいビルが入るほどの高さがある。


「天井のモニターを見て…」キラはシマに言った。


「ねえ。緑の点が僕たち? 赤い点は敵?」わかりやすい表示。固まって表示されている緑の点と、四方八方から近づいてきている赤い点。


 赤い点がさらに近づいてくる。


『警報。敵が近づいてきました。みなさんはできるだけ早く、移民船の中心に近い場所へと非難してください。船の外層に一番近い区画は30分後に閉鎖します。繰り返します…』とアナウンスが流れる。


「さあ。行くよ…」キラは僕シマの手をひいて歩き出す。


「ねえ。なんで詳しいの?」来たことがあるのかな? 僕はキラに聞いた。


「前にもね。別の世界で同じタイプの移民船の中に入ったことがあるんだよ… それと同じさ…」


 キラは、部屋のはしにある入り口からさらに階下へと通じるスロープに足を踏み出した。


 キラと僕は下のほうに向かって歩く。他のみんなも一緒だ。


 しばらく歩くと、またさっきの大部屋を少し小さくしたような部屋に出た。


 キラは懐から何か、球体のものを取り出した。スイッチを入れて蓋を開ける。


 一斉に直径5mmぐらいの球のものが飛び立った。


「それなに?」僕は見たことがなかった。キラの手にしている球の中身が空になった。


「これは捜索用の超小型ロボット。ユキ君の情報を入れてあるんだよ。見つけたら僕のTMRに通知が来る…」


ずずーん。地響きがする。そしてかすかに揺れる。

また攻撃を受けたらしい。

「で、なんでここなの? 攻撃を受けているんでしょ。危険じゃないの?」僕はさっきの揺れを感じて不安になった。


「うん。こうでもしないと、この移民船の中すべてを探すのは大変。だから攻撃を受けてて、住民が船の中心近くに集まっているときに探すんだよ… 120分ぐらいすると情報が集まるから…」


「120分? ねえ大丈夫?」僕は天井のモニターを見た。少し離れたとこにあった緑の点。それが消滅した。


 ぱしぱし、僕シマは尻尾でキラの太ももをを叩く。


「あー。あの移民船。やられちゃったね」とそんなに深刻そうでもなく言うキラ。


「ねえ。本当に大丈夫なの? あの移民船どうなったの?」


 キラは「きっと奴隷だね。タダで働かせるために移民船の人を奪っていくんだよ。だから命まではとられないんだけど…」


「えー。助けることできないの?」僕シマはキラにいった。


「いちいち無理でしょ… ユキ君だったら助けるけど…」


「ひどいなぁ。そんな白い羽を持っていて天使のようだと思っていたのに…」シマは少しキラを嫌いになった。


 キラはシマのキツネ耳がついている頭をわしゃわしゃとなでる。


「ところで、僕はもう一つの目撃情報があるこの移民船から3つ隣の船に行ってくるけど、シマ君はここで待っていてね…」と言いながら歩いて行くキラ。


「へっ? ねえちょっと。置いて行かないでよ…」シマはキラを追いかける。


「もしはぐれたらここか、捕まったら、2重連星のある惑星の補給船にどうにかしてもぐりこんで、212

給湯室で待ってて」とキラは言い残して壁に自動ドアを開けて消えて行った。


「ねえ。ちょっと。ねえ…」消えちゃった。


 もう。なんだよ… 待っていればいいんでしょ。ふんだ。人探しのお手伝い料金上乗せだもんね。


 シマは尻尾をびたんびたんと壁にうちつけた。


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