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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
普段の日常と、ちょっぴりSF
54/138

みんなで塩ラーメンを食べに行く日

 土曜日。週末。

 みんなで、キララと一緒にラーメンを食べに行くことにした。

 ただし、付近のラーメン屋でもない。遠く。

 時間軸は未来。そして、他の星系にある惑星でやっているラーメン屋に行くということになっていた。


「じゃあ。みんなそろったね。出発」僕はみんなの顔を見てキララにTMRで自動ドアを開けてもらう。


 ララお姉さんも未来からこの時代に来ていた。

 メンバーは、僕、みのるお兄さん。おばあちゃん。うさ耳っ子グループのラミちゃん、ミアお姉さん、ララちゃん、未来から来たララお姉さん、カザー星系から来たミミアお姉さん(キララに頼んで連れて来てもらった)。

 ネコミミっ子グループのミミちゃん、レオちゃん、トラちゃん、ココちゃん、ミルクちゃん。

 トリのハーフ達のヒメル、シロ、ソラ。

 そして狐っ子のキララ、ギンちゃんであった。


 かなり大勢での移動となるが、先日キララが購入した宇宙船が未来で整備してもらったので、今日の朝、キララは先に未来へ出かけて、宇宙船を受け取ったのだった。未来での衛星軌道上の所定の位置に停泊しているとのこと。


☆☆☆


 TMRにより、未来への時間移動と、衛星軌道上に停泊している宇宙船の転送ルームへと移動がされた。自動ドアを通ると宇宙船の中だった。レンタルした宇宙船の場合は専用の自動ドアを開けるデバイスでないと中に入れないのだが、キララ個人所有の宇宙船なのでキララのTMRで直接移動できる。


「ここがうちゅうせん」ララちゃんは転送ルームから出て、上の階の展望室へとかけて上がっていった。


「へー。いいわね」ミミちゃんが言う。そしてララお姉さんは「これ昔の海外ドラマで見たことがある。転送室だっけ。転送用のコンソールもつけてもらったのね」昔の機械。はりぼてだけど雰囲気が出てる。レバーとぴかぴか光る何かの装置。


「宇宙なのじゃ」ギンちゃんは転送室から出て階段を上る。


「宇宙。無重力ではないのね。飛べるかと思ったんだけど…」シロ。

「うん。あとで聞いてみましょ」ソラ。


「ねえ。みのる。宇宙。いいわね…」ひめるとみのるお兄さんは一緒だ。いつも隣にいるか、くっついている。


「ここが宇宙船なの?」おばあちゃんは、あたりを見回している。


「ねえ。キララ。内装もいいね」僕は転送室から出て階段を上る。展望室にはソファもテーブルもあり、ベンチもある。そんなには広くないが、コンソールとも近いし使いやすい。

 観葉植物もソファの隣に置いてあった。レンタルした宇宙船にあったのと似ているものだった。


「いい宇宙船ね。これあたしたちの時代のより後のモデルなのよね。見た目はそう見えないけれど…」ミミアお姉さん。


「ねえ。ミミアお姉さん。お姉さんは自分の宇宙船は持っているの?」僕は聞いてみた。


「自分のはないわね。社用機ならあるけど… これよりちょっと大きめのがあるわ」

 ミミアは、展望室のベンチに腰掛ける。


「ねえ。ミミアはラーメンは好き? やっぱり、醤油味が一番好み?」ミアお姉さんはミミアに聞いている。


「まあ。そうなんだけど。今日は塩ラーメンって聞いていたから、たまにそれもいいかなと思っているの…」ミミアは地球で買った服を着てきている。


 キララは展望室の中央にあるコンソールルームへと移動した。

 ちびっこ達はキララの後についていく。


「これどう、うごかすの?」ララちゃんはキララに聞いている。

「わしもきょうみある」ギンちゃんのきつねしっぽを膨らませているから、興奮しているのがわかる。

「これ、うごかしていいかしら」頭のいいシロちゃんは、コンソールの点滅しているアイコンを指でさした。


「うん。いいよ。それだね。今日は月の近くを通ってから、ある程度地球から離れたら、移動するよ… 今日は塩ラーメンなんだけど、行先を選んでみんなで決めようね」キララはちびっこのギンちゃんの頭をなでてからシロちゃん、ララちゃんの頭をなでた。ララちゃんの隣でしゃがんでいるシロ、ララお姉さんの頭も一緒になでるキララ。


 シロちゃんは、コンソールのアイコンを押した。そして指で現在位置から、月の隣の位置を通って、惑星から離れたところまで指でなぞる。その後に「OK」ボタンを押した。


 宇宙船は静かに動き出した。


「動いてるわね」

「ほんとね。地球は青かった」シロとソラはならんで遠ざかっていく地球を見ている。


☆☆☆


 月の真横を通り過ぎる。


「月。以外に明るいわね」

「ほんとね。あんたの故郷じゃない? 月にうさぎは住んでいるのかしら…」ミミちゃんはラミちゃんに言う。


「なんで昔の人は月のクレーターの模様がウサギに見えたのかしらね」


「そうね。日本では餅をつくウサギ。海外ではバケツを運ぶ少女や、本を読むおばあさんというのがあるわ」と年をとったおばあちゃんがミミちゃんとラミちゃんに言う。


「そうなんだ。本を読むおばあさんね…」ミミちゃんは、遠ざかっていく月を見る。


 ぴー。という音がした。

「あ。宇宙船が地球から遠ざかって、ワープできる位置になったよ。じゃあどうするかな。ひとまず大マゼラン銀河のラーメン街にでもいってみる?」


「そんなのがあるの?」僕はキララに聞いた。


「うん。大マゼラン銀河は栄えているからね。いろいろな食べ物があるよ…」


「キララちゃん物知りね。まるでキラみたい…」ミアお姉さんが言う。


「えっ。あ。そう… キラから教えてもらったんだよね… あ。あはは…」キララはいっしゅんびくっとした。ばれたかと思ったけど、ミアお姉さんは言っただけのようだ。


「キラ。ごめんなさいね。うちのボスがあんなことをしちゃって…

と言ってもこの場にはキラはいないんだけど… もし過去からキラがTMRで来たら謝っておいてくれる?」


「うん。わかったよ。キラもきっと気にしてはいないよ。かっとなっちゃうことは誰でもあるし…」

 キララはミミアお姉さんに言う。


 シロちゃんは行先の選択方法をキララから教えてもらって、コンソールを操作していた。そして、移動速度を中速にセットしてGoボタンを押した。


 外に見える星。星が線の形にのびていく。宇宙船が中速で移動しはじめた。


「30分でつくよ… それまでの間。カタログでどのラーメンがいいか選んでおくといいよ…」

 キララはみんなに言った。


「わかったのじゃ」ギンちゃんはシロちゃんが使っているコンソールの隣で、ラーメンの情報を表示していた。幼稚園児組は機器の操作を覚えるのが早い。


「ねえ。キララ。これってワープしているの?」シロはキララに聞いた。


「えーとね。TMRの自動ドアの技術と同じ。空間移動すると一瞬で移動できるんだけど、それだと面白くないから、1秒間に60回自動ドアによる空間移動と、通常空間の移動を交互に繰り返しているの。

そうすると、星の光が線に見えるんだよ… それがワープっぽく見えているの」


「なあんだ。そっか。映画やテレビで見えるワープと実際のは違うのね…」シロはキララに返した。


「うん。TMRの時間移動や空間移動は一瞬なんだけど、それと同じ。空間移動だから移動中の空間はないんだよね」


「やっぱりそうなんだ。あたしも宇宙船ほしいな。あたしの時代だとまだないんだもん」ソラが言った。ソラやララお姉さんの時代でも、個人所有できる宇宙船はまだ実用化はしていない。

 クロの時代だとあるんだけど…


 ギンちゃんがラーメンの情報を表示させて見ていた。


「これなんかどうじゃ。深海の海水からとれた塩をつかったラーメン」


「こっちのはどうかな…」レオちゃん。ネコミミっ子のミミは「遠浅の海で海底の日光をふんだんに浴びた海藻と魚介入り塩ラーメン」すでにレオとミミちゃんは、じゅりとよだれが出そうになっている。

塩ラーメンということで、魚介のラーメンかなということで、ネコミミっ子達はかなり期待しているようだ。


「野菜たっぷりラーメンはないかしら…」ララお姉さんもギンちゃんの操作するコンソールを見る。

「巨大ニンジンがまるごと入ったラーメンとか…」


「ニンジンね。そんなものいいじゃない。魚介よ魚介…」ミミちゃんはラミちゃんに言う。


「ぎょかい」トラとココ。ミルクのネコミミっ子は魚介がいいと言う。


「もちろん。野菜よね。根っこを食べるタイプの…」ラミちゃんは対抗して言う。

「そうよ。野菜よ… ミミアはどうなの?」ミアお姉さんはミミアに聞く。

「大マゼラン銀河ね。じゃあ、アスピラーはどうかしら?」


「へ。なにそれ…」ミアはミミアに聞いた。

「あ。知らないんだっけ。ニンジンに似た味よ… あたしの故郷にある野菜。大マゼラン銀河にはそれの特別おいしいのがあるって聞いたことがあるの」


「あ。それ食べてみたい。ミミアがおいしいというのなら、きっとうさ耳っ子であるあたしたちにもいいものよね…」とミアお姉さんはラミちゃんに向かって言う。

「うん。興味ある。ねえ。ギンちゃん。『アスピラー』で検索してみて…」ラミちゃんはギンちゃんにコンソールの操作を頼んだ。


「わかったのじゃ。検索。検索と… お。お店はあるのじゃ。えーとこれ。野菜たっぷり、特産地からとりよせた『アスピラー』入り。限定ラーメン。あ。でも今日は定休日なのじゃ」


「えー。定休日」ラミちゃんの耳ががっくしと垂れる。


「他にはないの?」ララおねえさん。


「うーん。ないのじゃ。みな定休日なのじゃ」


「そっか。特産地からの定期便が来るのは明日なのよね。たぶん。昔と変わっていないのであればだけどね」ミミアは言う。


「ざんねんだけど、次のラーメンめぐりの日にしよう… 今日は別のお店…」キララは、みんなが喜びそうなラーメンがあるお店を見つけた。


「もうすぐ着くのじゃ…」ギンちゃんが言った。


☆☆☆


 宇宙船をきまった位置に停泊させる。宇宙なので地球の駐車場みたいに、線がひいてあるわけでも、隣に別の宇宙船が見えるわけでもない。


 キララはTMRで自動ドアを開く。みんなを通してからキララは最後に自動ドアをとおった。


 お店は惑星の衛星軌道上にあった。通路の両側にいろいろなラーメンのお店が並んでいる。


「ここだよ」キララは先頭になって歩いてお店を案内し、お店の中に入っていく。


 僕はキララの後から続いてお店に入る。


 結構広かった。4人掛けのテーブルが結構たくさん並んでいる。カウンターもある。カウンターの中には、頭にけもののような耳がついたロボットが働いていた。


 それぞれ4人ずつとか、適当な人数にわかれて座る。キララは立ってみんなに言った。


「テーブルをタッチするとメニューが出てくるから、表示言語は地球の日本語になるようにしたからね。じゃあ。21番がぼ、私のおすすめ」キララは僕といいかけた。

 お冷(お水)はペットボトルのような容器に入ったものがテーブルの横から出てきた。


「じゃあ21番にする」僕はテーブルに表示されている21番をタッチした。

「わしもじゃ」ギンちゃんも21番を選択する。


「じゃそうする。21番」うさ耳っ子達は21番を選ぶ。おばあちゃんは20番を選択した。

 ネコミミっ子達は21番を選択した子と、22番を選択した子に分かれた。


「じゃあ注文を確定するね。ろぼっとさんお願いね」キララは言った。


「はいよ。10分お待ちください… 今すぐ作りますので…」ろぼっとは言った。


☆☆☆


 ろぼっとはワゴンに全員分のラーメンをのせて運んできた。


 お箸は割りばしではなかった。お箸までぽりぽり食べることができる物でできているようだ。食事が終わったらみんなで食べるみたい。


「いただきまーす」

「いただくのじゃ」

「おいしそうね」

「そうね」


ネコミミっ子達。ギンちゃん。シロ。ソラ。が言った。そしてミミちゃんがラーメンのスープを飲んだとき、ネコミミがピンと立った。

「あ」レオ

「お」トラ

「うん」ココ

「おいしー」ミルク

 みんなネコミミがピンと立つ。


「じゃあいただくわね…」ミミア

「地球のと同じね」おばあちゃん。ひとくち。


「あ。おいしい」みんな満足そうだ。


 色はついているが透明なスープ。ラーメンの上には半分に切った卵。三角形に切ったノリ。海藻が横に小さく切ってあり乗っている。地球ではみたことがない甲殻類が茹でられて乗っている。

 赤い根菜と白い何かの円盤に切った野菜も乗っていた。


「甲殻類は全部ぼりぼり食べることができるよ」キララが教えてくれた。


 しんぷるな塩味のラーメンなんだけど、なんとなく地球産の塩とは違った味がする。なんだろう。


 ラーメンの麺はオーソドックスなもの。ちょっとだけちじれている。そのちじれ具合がいい。ラーメンのスープをほどよくからめてくれる。ラーメンの温度はぬるめにしてもらってた。ネコミミっ子の猫舌対策だ。


「魚介のだしがでてるわね」ネコミミっ子のミミちゃんは満足。

「この根菜。おいしー」うさ耳っ子のララちゃんは、赤い根菜が気に入ったようだ。

「この甲殻類おいしい」僕はこの甲殻類のおいしさが気になった。


 小ぶりのラーメンはあっというまに無くなってしまった。通常のラーメンの半分よりちょっと少な目。


「いちおうラーメンめぐりだから、量は少な目だよ。次のお店も決めてるからね」とキララ。

 スープの量も少な目なので、みんな空にしてしまった。


「おいしかった。ところでお代はどうすればいいのかしら。日本円は使えるの?」おばあちゃん。


「えーとね。私か、ユキ君が払えるよ。ユキ君は私が前にあげたプリペイドカードを持っているからね…」


「じゃあ。僕が払うよ… カードをテーブルに置いて、みんなのテーブルの番号を入れて精算すればいいの?」


「うん」キララは僕に言った。


 僕はプリペイドカードを使ってラーメン代を精算した。


☆☆☆


 そのお店を出て、斜め向かいのお店に入った。


 そこで、キララが選んでくれた塩ラーメンと、ごはん(チャーハンみたいなもの)を頼んだ。


「これもおいしー」ミミちゃん。

「ほんとだー」ラミちゃんも耳がピンと立つ。

「ほんとだ」

「おいしいわね」シロ

「うん。これいける」ソラ

「あーんしてあげる。みのる」ひめるはみのるにラーメンの具を食べさせていた。


 塩ラーメン。火山帯の惑星の遠浅の海でとれたミネラルが豊富な海藻がメインのラーメン。

 白身魚も入っている。それと小ぶりのチャーハンに似たもの。卵をからめて食べるようだ。

 別の白身魚もチャーハンに入っていたが、以外にも味はしっかりついており、とってもおいしかった。魚介のラーメンと比べここのはシンプルだけど、素材の味をきっちりと出しているものだった。


 みんな2つの小ぶりのラーメンと小ぶりのごはんであるチャーハンに似たものを食べてすっかり満足した。


 お会計はキララが払った。


 そして、帰路につく。


「あーまんぞく」ミミちゃんはお腹をさすりながら言う。


「あの赤い根菜おいしかったー」ラミちゃん。

「うん」


「あれ、食べたことがないんだけど、何かしら」ミミアお姉さん。


 地球までの帰路。展望室から見える星を見ながら、みな満足していた。


 ヒメルとみのるお兄さんの姿は見えなかった。どうやら個室に2人きりでこもったようだった。


 僕とキララはソファに座った。


 ギンちゃんとシロちゃん。ララちゃんにコンソールの操作をまかせて、地球までの帰路の行先をセットしてもらった。


「幼稚園児でも動かせる宇宙船って。すごいね…」僕はキララに言った。


「うん。のみこみが早いよね。インターフェースがわかりやすいからいいんだけど。難しいものは自動化されているし…」


 おばあちゃんは、宇宙船にそなえつけた。マッサージチェアに座っている。


 ネコミミっ子はみんなで集まってベンチに座っているし。


 うさ耳っ子は隣で外を見ているし。


 幼稚園児組は、コンソールの表示を見ているし。


 鳥のハーフの子は、せっかく宇宙にいるんだから飛べないかしら。と話している。重力制御を弱めればと聞こえてくる。


「ねえ。キララ。この宇宙船の重力制御を弱めることできるかしら? 飛べるかなと思って」


「ああ。できると思うよ。キララねえどう?」僕はキララに聞いた。


「うん。ちょっとやってみる?」キララは立ち上がった。










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