救難信号を出している宇宙船と海賊(2)
僕はまぶしさに目を開けた。
僕は海岸に倒れていた。
なんでこんなところに…
見覚えのある海岸。
3000メートルの鉱石が砕けた砂浜でできた場所。
前に立ち寄った惑星の海岸だった。
僕は手をついて上半身を起こす。
「えーとたしか…」僕は何があったかを思い出そうとした。
僕の手首にはキララが使っているTMRがはまっていた。
ボタンを押す。
障害発生のため今は使えません。という表示が出ていた。
「ねえ。キララ」僕は立ち上がってあたりを見回す。
キララの姿を探すことにした。
☆☆☆☆
「ねえ。これって…」僕はキララのTMRから再生された記録映像を見て、キララに聞いた。
キララのTMRに救難信号と記録映像が届いて、再生して見ていたところだった。
「うーん。これどうみても私とユキ君だよね… それと日時。日時は今日だよ…
時刻もほとんど同じ。でもおかしいよ。僕たちは今こうして、救難信号を出している宇宙船の近くに停泊して様子をさぐっていただけなんだよ。ひょっとして今の映像。これからの未来を示すものなのかな…」
映像に表示されていた、救難信号を出している宇宙船の型は同じ。そして細長い物体の位置もほぼ同じ。映像に出ていた情報は、今現実で見えているものとほぼ同じ。
ただ、違っているのはキララのTMRが使えないこと。まだ通信障害のためキララのTMRは使えない。TMRとこの宇宙船を共通インターフェースで接続して、宇宙船のスキャン性能を上げるということはできていなかった。
救難信号と記録映像を見る前だったら、正体不明の宇宙船はほっといてこの場を離れる予定だった。
「ねえ。この映像からあの細長い物体は海賊と見て間違いはないよね。そして失敗して捕まってしまう…」
「うん。たぶん。でも映像に記録されていた私たちは何者なんだろう。未来の自分たちだとしたら助けないといけないよね… TMRを使って未来からこの時代に来たのかな…」
キララはちょっと悩んでいた。
キララのTMRから音が鳴った。
「ねえ。何の音?」僕はキララに聞いた。
「うーん。近距離の空間移動なら可能になったみたい… 今なら海賊のアジトに乗り込めるよ…」
僕とキララは覚悟を決めた。
宇宙船に乗り込むことにする。
キララは上着を僕に手渡してくれた。それと銃。
自動ドアを開けて、海賊の宇宙船に乗り込む。
廊下を進む。そして映像で見覚えのある部屋。映像で見たのと同じく4人が部屋の中にいた。
僕とキララは背後からしのびより、4人をしびれさせた。
映像で見た順番で部屋を移動し、キララと僕とで海賊を電気銃でしびれさせていった。
そして、1人で寝ている人。銃でしびれさせた。
たしか映像だとアンドロイドということだったんだけど…
キララはアンドロイドの上半身を起こして、上着を脱がせた。
そして背中を見て何かをする。
「やっぱり。人ではなくアンドロイドだよ。今背中についているエネルギーパックを抜いたから、これで。この子が起き上がって仲間を助けることはないよ…
さあ。行こう…」
キララはアンドロイドを処理して、次の部屋に向かう。
そして捕まっている捕虜がいると思われる部屋についた。
見覚えのある船長。見た目のガラは悪いが民間人のはずだった。
間違えないようにして、キララは3人。僕は2人を電気の銃で気絶させた。
そして上着を脱いで姿を現す。
捕まった捕虜の3人は僕たちを見て「おお。急に海賊が気絶したと思ったら、お前さんたちか。
ありがとう。ありがとう…」
見た目のガラが悪い船長が僕とキララの手をとって、感謝の言葉をかける。
「いやぁ。良くこの船長が海賊じゃないってわかったな。以前も悪者につかまってしまったことがあってさ…」とジンが話始めた。捕まっていたメンバーは映像と同じだった。
「そうそう。治安部隊が悪人を捕まえて、連れていくところで船長も一緒につかまったのさ。
連れていかれそうになっているところを俺たちが違うぞって引き留めたんだよな…」
「こんな顔で悪かったな…」船長は仲間2人に向かって言う。
「さあ。出ようぜ。見つかる前にこの星系をずらかるぞ…
救難信号を出している宇宙船があるから、行こうというのが間違いだったな…」
ジンは廊下を先頭に立って進む。
別の部屋に出て、テーブルの上に乗っているものを手にとる。
この人達が使っている宇宙船につながる自動ドアを開くためのものだ。
「あ。だめだ。妨害がかかっている。操縦室から妨害をいったん切らないと…」
ジンは言う。
ジンがちょっと行ってくるから待ってろ。と言葉を残して扉を開けて、部屋から出て行った。
うーん。遅い。5分ぐらい経過した。
10分が経過するぐらいになって、ジンが戻ってきた。
「遅かったな」
「ああ。ちょっとな… 妨害は解除したぜ…」
船長は自分の宇宙船の中に通じる自動ドアを開けるためにデバイスのスイッチを押した。
「お。開いたぞ… ところでお前たちにもいったん私たちの宇宙船に来てほしい。お礼をしたいんだ…」
「いえ。おかまいなく…」僕は言った。
「ねえ。ユキ君。この場合はお礼を受け取るべき。そういう礼儀があるんだよ…」キララは僕に注意をする。
キララと僕は3人の後につづいて自動ドアをくぐる。
☆☆☆☆
僕とキララが最後に自動ドアを通り抜ける。
3人の使っている宇宙船の中に入る。
「そこのソファに座って待っていてくれ…」
船長が言い、部下にあれを取ってこいと命じる。
僕は見回す。なかなかいい宇宙船だ。
「なかなかいい宇宙船ですね」僕は言う。
「えへへ。そうかい。ありがとよ… 星系間である商品のセールスをやっているんだ。今は別の星系に移動する途中だったのさ…」と船長。
「船長は商談には顔を出さないで商品の仕入れをしてもらってる。業者から品物を仕入れるときに値段を値切るのがうまいんだ。この顔だから負けてくれる人が多くてよ…」とジン。
品物を取りにいった部下の戻るのが遅かった。
「なんか遅いな…」船長が言った。
「ちょっと見てくる」ジンは立ち上がって部屋のドアを開けた。
すると「おい。動くなよ…」
まったく見たことがない人が廊下にいた、そして部下は両手を上げていた。
海賊だった。
他にも仲間がいたらしい。
「自動ドアの妨害電波が止まっているからおかしいと思ったぜ。船内の仲間が気絶させられているんだからな… 近くにとまっていた宇宙船の中を調べたら、この船に生体反応があったから進入させてもらった。ちょっとでも動いたらすぐに殺す…」
「ちっ」ジンは言った。
船長は前に出た。
「おい。動くなって言ったろう…」
「いや。待て。俺だ。同業だ仲間を忘れたのかよ…」
船長はなれなれしく、武器を構えている人に向かっていく。
「えーと誰だったかな。おお。そうだ。お前か…」海賊は銃をちょっと下げて、船長のほうに歩いて行く…
船長は海賊を取り押さえようとする。
ぱん。
音がした。
この海賊も、火薬の力で弾を発射するタイプの武器を手に持っていた。
「ぐっ」船長が床に倒れる。
「面構えが俺たちに似てるからって、仲間だと思うわけないだろう… 仲間には認識番号がついている発進機を持たせてるんだよ…」
「このやろう」部下は海賊に体当たりをした。
海賊は銃が廊下のほうへと滑っていったのをみた。
僕とキララも動くことにした。
キララが海賊にあと一歩のところまでせまったとき。
ぱん。と音が聞こえた。
キララは床に倒れてしまった。
「キララ」僕は倒れたキララのそばへと寄った。
キララの脇腹に赤いしみがみえる。
「あはは。失敗しちゃった。撃たれちゃった…」
キララはTMRを外して、僕の手首につけた。
「キララ…」そのとき、廊下から足音が複数聞こえるのに気が付いた。
見覚えがある人。気絶させたはずの海賊だった。それと映像でみた僕が銃で撃たれる前にみた海賊だ。
見たことがある銃が目の前につきつけられる。
「ダメ。ユキ君。逃げて…」とキララ。
「この世から消えな…」海賊は言った。
☆☆☆☆
太陽の光。
まぶしさに目を覚ます。
ここは海岸。
3000メートルはある鉱石が砕かれたもので出来ている砂浜。
僕は起き上がる。
「あ。つー」頭に手を当てる。ずきずきする。
僕は手首を見た。
キララの使っているTMRだった。
僕はボタンを押した。通信障害のため使えませんと出ていた。
☆☆☆
「ねえ。これって…」僕はキララのTMRから再生された記録映像を見て、キララに聞いた。
キララのTMRに救難信号と記録映像が届いて、再生して見ていたところだった。
映像には「キララのTMRに救難信号と記録映像が届いて、再生して見ていたところだった」というところも含まれていた。
今と全く同じ。
「何かやっかいなことに巻き込まれてしまったみたいだね。私たち…」
目の前には救難信号を出している宇宙船。
そばに細長い物体。
映像からは海賊とわかる。
この場から立ち去ったらどうなるんだろう。きっと何も起こらない…
と思うんだけど、映像に記録されている僕たち。
無関係ではないと思う。助けないというわけにはいかない。
でも映像に出てくる登場人物は海賊とセールスをしている船長と部下の3人。別の僕たちとは会っていない。
僕とキララは覚悟を決めて、海賊のアジトに潜入することにした。
ちょっと前に無人の宇宙船が近くに停泊していることに気が付いた。映像で見たことがある宇宙船だった。
もう捕まってしまったんだろう。
僕はキララからもらった上着を着て、電気の銃を手にもって海賊のアジトに潜入する。
幸い。キララのTMRは使える。




