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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
キララとの二人きりの宇宙旅行
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惑星見学

 僕とキララは3000メートルはある砂浜のある惑星へと進路を向けた。


 その星系は、ちょっと最寄りの有名な星系からちょっと外れている。


 自動ドアによるワープから抜けると、ぱっと見た感じが地球に似ている星が姿を現した。

 第4惑星だ。この星に砂浜がある。


 赤道よりちょっと南にある大陸へと向けてと降下していく…


「ほらあれ。海沿いに見える緑色のものが砂浜だよ…」キララが解説してくれる。

 海の色は青く見えるが、砂浜は緑色っぽい…


 だんだんと降下して、植物が生えているのがわかるぐらいの高度まで降りた。


 緑色に見えた砂浜は、全体が緑色ではなく、緑色に見えるところもあれば、黄土色の所もあり、また青っぽいところもあるような砂浜だった。


「降りることができるよ。地球と大気の構成はそんなにかわらないみたい…」

 キララは宇宙船を着陸モードにセットする。いちおうこの宇宙船にも外との出入りができるようにハッチがある。自動ドアで開けることができないところ(自然が多くて壁がないところとか)にも降りることができるようになっている。


 ハッチを開けて外に出る。


 僕はぎゅっと砂浜の砂を踏みしめる。

 砂だ。砂なんだけど、透明で色がついている石がかなりの確率で含まれている。僕の足元の砂は緑色と青色がまじった砂だった。


 僕は宇宙船から降りて、ずっと先を見る。すこしづつ湾曲しながらかなり砂浜が続いている。


「あー。やっぱり外はいいね。空気もちがうね。自然いいよね。気候もあったかい、というか少しあついぐらい…」

「ほんとだね。それにこの砂浜。地球にはないよね…」

 僕はしゃがんで、鉱石が砕けてできた砂浜の砂を手にとった。


 しゃがんでいる僕の肩に、キララがさっきまで着ていた上着がばさっとかぶさる。

「ちょっと。持っててくれるかな。あ。そうだかけっこしよう。捕まえてみてごらんよ」

 キララは砂浜をかけていく。


「あ。ちょ。ちょっと待って…」僕は立ち上がって、キララの着ていた上着を手に持って、キララをおいかける。

 やっぱり。砂浜に来たら。恋人どうしだとおいかけっこするのが定番だ。

 で、キララは走るスピードが速いのでどんどん離れていく。


「あれ。ユキ君おそいよ。ほれほれ」キララはしっぽをふりふりしながら、立ち止まって待っている。


「あ。は。はやいよ…」かなり遠くから僕はキララに言う。

 疲れているから小さめの声だったんだけど、キララの狐耳には聞こえてたらしい。

 ララお姉さんとかラミちゃんみたいなうさ耳少女もそうなんだけど、耳が大きいから地獄耳だ。

「きららすき」ぼくは小さい声で言ってみた。


「あーなーにかな。聞こえないよ」とキララの声が聞こえたが、しっぽを見るとさっきよりふりふり動いている。とっても嬉しそう。きっと聞こえているんだろうな。と思った。


 やっとキララのところに追いついて、僕は砂浜に寝っ転ぶ。


 キララも僕の隣に座り横になる。


「太陽の光のあたたかさが気持ちいいね」キララは僕の隣からこっちを見て言う。


「うん。やっぱり恒星のあたたかさはぽかぽかしてくるよね。ここも太陽って呼んでいいのかな?」

 僕は地球の太陽と同じぐらいの大きさに見える恒星を見て、言いながらキララのほうを見る。


「まあ。いいんじゃない」

 キララも空を見上げる。太陽がまぶしい。キララは目を細めた。


 惑星の砂浜。気候は温暖でちょっとあっついぐらい。走ったせいもある。それに湿度。結構住みやすい環境だと思う。東京の夏のじめじめとした暑さはいやだけど、湿度が低いと気温が35度あっても暑いで済む、アメリカのカリフォルニアあたりだとそんなかんじだ。


「誰もいないね」僕は隣のキララを見て言う。

「この星も観光地なんだけど…… 宇宙は広いし、ひょっとして誰かいるのかな?…」

 キララはデバイスを取り出して調べる。


 僕はキララに近づいて「どうかな」とデバイスを覗き込む。

「他に12人いるよ。この近くではないけどね…」


ということは、この付近には誰もいない2人だけ…


☆☆☆


 キララと2人で砂浜を満喫したあと、僕は立ち上がった。

 キララは下から手をのばしてくる。僕はキララの手をつかんで立たせてあげた。

「あ。しっぽに砂がついているよ」僕はキララのふかふかの大きい尻尾に砂が付いているのを見て、手ではらってあげた。


「優しいね。ユキ君。私の尻尾にも気をつかってくれて…」


「うん。気になったから… あと、今度は歩いて戻ろうよ。キララは走るの早すぎ…」


「うん。そうしよう。じゃあ手をつないで歩いて行く?」

 キララは僕のほうに手を伸ばしてきたから、そのまま手をつないで2人で歩く。


 鉱物がかなり混じっている綺麗な砂浜。ずっと前にも後ろにも続く海岸。

 こうしてみると、かなりの距離を走ってきたんだなと思う。宇宙船まで結構距離がある。


「もし、宇宙船が誰かに盗まれて、おいてけぼりになったらどうしよう…」僕は歩きながらキララに聞く。

「そうだね。壁になるところを見つけて自動ドアを開けばいいんだけど、デバイスも壊れちゃったらおいてけぼりだね。そうなったら誰か来るまで二人暮らしかな?」


「食料とかどうしよう…」


「そっか。水も見つけないとね…」


「もし猛獣が出たら?」


「そうだね。ユキ君が食べられそうになってたら代わりになるよ」


「それはだめ。2人でなんとか協力して逃げるとか、猛獣を倒すとか…」


「うん。ありがと」キララは僕の言葉を聞いて、肩をくっつけてきた。


 キララの耳が至近距離まで近づく。

 耳ふーふーができる距離だ。でもしない。


 キララと僕は砂浜を歩く。


☆☆☆


 やっと宇宙船のところまで戻ってきた。宇宙船のハッチから中に入る。

「なんか、この宇宙船。我が家に帰ってきたみたいに感じるよ」キララは保管庫から冷たいのみものを取り出して、ふりむきながら僕に言う。そして、飲み物を僕の手に握らせてくれた。


「ありがとう」僕はキララと一緒に展望室へと戻り、そしてソファに座る。

 僕とキララは飲み物で喉をうるおした。


「じゃあ。そろそろ出発しよう… 次の目的地はこの惑星から離れたら考えることにしようかな…」

 キララはデバイスを操作してハッチを閉めてから、宇宙船を浮かび上がらせた。


☆☆☆☆☆


 惑星が丸い形に見えるぐらい、惑星から離れたころ…

「うーん。どうしよう…」キララはTMRを見て悩んでいた。


「どうしたの?」僕はキララのTMRを覗き込む。


「TMRの通信ができないみたい… 未来や過去への移動や空間の移動ができなくなっているよ。きっと何かの障害かな?」

 キララはまあ、一時的なものかな。と言って、しばらくたっても通信ができないようだったら調べようと言った。


「あ。また救難信号…」僕は、コンソールのはしのほうに、救難信号を留守の間に受信していた痕跡を見つけた。


「ほんとだね…」キララはTMRから目を離して、宇宙船のコンソールを見た。


「またあのおばあさんかな?」


「いやあ。違うと思うよ… 行ってみる?」


「まあそうだね。時間はまだあるし…」


「ねえ。今回は救難信号を出している宇宙船から少し離れたところにワープで出現したほうがいいんじゃない? おばあさんみたいな人ばかりが救難信号を出しているわけではないし…」


「うん。そうしようか。TMRのこともあるし… 気が付かなかったけど昨日から断続的に使えない状態があったみたい。今は直っているみたいなんだけど…」キララは宇宙船を操作して、自動ドアによるワープから出る座標を、救難信号を出している宇宙船からちょっと離れたところにした。


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