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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
キララとの二人きりの宇宙旅行
43/138

救難信号を出している宇宙船

 キララは宇宙船を操作して、救難信号が出ている宇宙船の近くまで移動させた。


 コンソールの表示を見ると、前方700メートルぐらいの位置に宇宙船がある。

 肉眼というか目では見えない。


「うーん。普通の小型宇宙船だね。レンタルのものではないね… 海賊かな?

それとも本当に遭難しているのかな」

 キララは宇宙船の光学ズーム機能とセンサーを使用して、前の宇宙船の状態を調べる。

 小型の宇宙船が見えた。


 宇宙船に穴が空いているとか、大きな破損があるとか目立ったものはない。


「ねえ。どうなの?」僕も光学ズームで映し出された宇宙船を見る。けれども変わったところはないように見える。


「まあ。大きな破損もないし、病原菌や危険なガス。不安定な空間とかもないし、それにそばには誰もいない… それに無線や映像の通信にも応じない…」


「海賊?」


「うーんどうだろうね。宇宙船の大きさが小さいし、そばに何もないから違うと思うよ…」


「じゃあ乗り込むの?」


 キララは宇宙船をレンタルしたときに借りたデバイスを手にとって説明をし始めた。

「この借りたデバイスは、救難信号を出している宇宙船にも自動ドアを開けて乗り込むことができるんだよ。乗り込む前に危険がなければ自動ドアが開くよ。じゃあ行こう」


 救難信号を出している宇宙船に自動ドアを開けて、乗り込むことにした。


☆☆☆


 宇宙船の中に乗り込んだ。


 僕たちがレンタルした宇宙船より小さい。大型バスぐらいの面積しかない。


 そこに一人お年寄りの方がいた。地球人ではないが、2足歩行の人型で頭にキリンのような、つのがある。


「ねえ。救難信号をみてきたんだけど…」


「おやまあ。来てくれたのね。困っていたの。エネルギーパックが4次まで空になってしまったのよ。5次のエネルギーパックが無くなる前に来てもらえてよかったわね」


 どうやら本当に救難信号を出していたみたいだった。


 キララはエネルギーパックの状態を調べるために扉を開けた。


「えっ」キララが扉の中を見ていった。


「どうしたの?」


「1次から3次までのエネルギーパックがないよ」


 1つの扉の中に、2対のエネルギーパックを入れるところがある。1次、2次、3次のエネルギーパックが入るところには何もなかった。


 4次と5次のエネルギーパックが入るところはそれぞれ別の場所にある。4次のパックが入っている扉と、5次のパックが入っている扉を開けた。4次のパックも無くなっていた。


「ねえ。エネルギーパックがないんだけど…」キララはおばあさんに聞いた。


「1次から3次のエネルギーパックがないの? なんでかしらね。4次のは前に立ち寄ったところに忘れてきちゃったわね。電話あるかしら。エネルギーがなくて使えなくなってしまったの。おじいさんに聞いてみるわね」

 

 キララは、自分の宇宙船をレンタルしたときに借りたデバイスのボタンを押して通話ができる状態にした。


「あ。おじいさん。宇宙船のエネルギーパックなんだけど、1次から3次までないのよ。知っているかしら? え。うん。

 ちょっと待って。と言っているわ」


 数分待っているおばあさんとキララと僕。

「あはは。もしかして…」キララは苦笑いをしていた。


「え。はい。あ。そうなの。わかった。実は4次のエネルギーパックを、さっき寄ったところに充電したまま忘れてきちゃったのよ。じゃあ帰りに寄らないとね… じゃあね」


 おばあさんはおじいさんとの電話を切った。


「ごめんなさいね。わかったのよ。1次から3次までのエネルギーパックがなかった理由。

出発前に1次から3次のエネルギーパックを取り外して充電していたと、おじいさんが言ってたの。

取り付ける前に出発してしまったみたいね…

そして4次のエネルギーパックは、少し前に寄った惑星で買い物しているときに、4次のパックを充電するために取り外して、充電ステーションにセットしたまま忘れて、宇宙船で飛び立ってしまったみたい…」


 ということだった。

 つまり取り付けるのを忘れてた。だった。


 キララは少し前に寄った惑星の充電ステーションの場所をおばあさんから聞き出して、取りに行ってくれるとのことだ。ついでに1次の電池をレンタルして持ってくるから。と言ってTMRで自動ドアを開けて出て行ってしまった。


「ごめんなさいね。迷惑かけてしまったわね。それに4次のエネルギーパックも取りに行ってくれると言うし、それに1次のエネルギーパックもレンタルしてくれるし。いい子ね。キララって子。

ねえ。お二人はお付き合いしているの? それとももう結婚しているのかしら?」


「えっ。ごほっ」僕は、飲み物をだしてくれたおばあさんの飲み物を飲んでいたが、むせてしまった。


「二人旅の途中だから。どうなのかしらと思って…」とおばあさん。にこにこしながらこっちを見ている…


「それは。その。お付き合いを最近始めたばかりで…」


「そうなの? いろいろ宇宙船で行ってみたのかしら、あそこは行ったの? イータカリーナ星雲とか夫婦の月がある宿泊施設とか、そのほかには宇宙の図書館」


「イータカリーナ星雲と夫婦の月がある宿泊施設には行きました。宇宙の図書館は行ってません。どういうところですか?」僕はおばあさんに聞いてみた。


「3つとも有名なデートスポットなんだけど、図書館はある星系の近くにあるんだけど、どこだったかしら。

あなたの出身の地球の本もあるし、宇宙を観光しているなら、いい観光地の情報も図書館で調べることができるし、おすすめよ」


「そうですか。じゃあキララに聞いてみます」


 僕は飲み物を手にとって飲んだ。おばあさんは笑顔でこっちを見ていた。


「若いっていいわよね。私もおじいさんに宇宙船でいろいろなデートスポットに連れて行ってもらったことを思い出すわね…」

 とおばあさんは過去を思い出しているようだった。


☆☆☆


 キララが戻ってきた。手には2本のエネルギーパック。

「ねえ。ユキ君。このエネルギーパックを4次のエネルギーパックのところに戻してくれるかな。はめこみ方はわかると思うんだ。上下があるからね」


 1メートルの円筒形のものを2本キララからもらう。


 僕は4次のエネルギーパックを元の場所にもどした。


 その間にキララは自動ドアを開けて、また出て行ってしまった。


「どうですか?」僕はおばあさんに、4次のエネルギーパックを取り付けた後に見てもらうことにした。


 宇宙船の中が少し明るくなった。

「どうやら、省電力状態が解除されたみたい。4次と5次のエネルギーは正常。4次はほとんど充電されたみたい。あとは1次のエネルギーがあれば問題なさそうね…」


 キララは戻ってきた。4次のエネルギーパックより少し大きい円筒形のもの2本。

 キララは1次のエネルギーパックを元の場所に取り付けた。


「さあ。これで問題はないよ」キララはおばあさんに、今度から注意するんだよ。と言う。


「ありがとう。お礼をあげないとね。これもらってくれるかしら…」


 ずっと前に惑星で見つけた宝石の原石2つ。しばらく宇宙船の中に入れたままになっていたもの。


 ブルートパーズとピンクトパーズの原石のようだった。


「結構高価なんじゃ…」僕はおばあさんを見た。


「大丈夫よ。地元では、そばの山の洞窟の中とかに良く落ちているのよ、何かの時のために入れてあったの。前にも別の人に助けてもらったことがあったのだけど、その時もあげたことがあるの」


 おばあさんから報酬の宝石の原石をもらい、その場を後にした。


☆☆☆


「なんともなくてよかったね。ところで僕たちが来なかったらどうなっていたのかな?」

 キララの後について歩き、レンタルした宇宙船へと戻ってから、僕はキララに聞いた。尻尾がふりふりと動いている。

「うーん。5次のエネルギーパックが無くなってたら、生命の危機になっていたのではないのかな…」


「そう。じゃあ良かったじゃない。人助けができて」


「うん。よっこいしょっと」キララは、疲れたー。みたいな感じで展望室のところのソファに座った。


「僕もちょっと疲れた。何もしていないんだけど、気疲れかな。心配だったし…」


キララは手で自分の足をぽんぽんとした。「ちょっと休む? 膝枕してあげるよ」と言い、僕に膝枕をすすめる。

「うん」僕はキララに甘えて、脚に頭を乗せた。ぽよんという感触が首の後ろに感じる。


「次はどこに行く?」


「さっきおばあさんから、聞いたんだけど宇宙の図書館ってあるの?」


「うん。あるよ。そうか。いいねえ。調べものもできるし、それに見た目もいいからデートスポットでもあるんだよ。じゃあ次は宇宙の図書館に行く?

実は前に行ったところがあるんだ。昔だけどね…」キララは宇宙の図書館の場所を片手で調べだした。

逆の手で、僕の頭をなでてくれる。

 おちつく。キララの膝枕。キララの尻尾も僕の胸の上に乗せてくれている。

 ふかふかの銀色の狐しっぽ。狐のしっぽ布団だ。


「そういえば、そこの図書館。どういうところ?」

 僕は下から見上げながらキララに聞いてみた。


「惑星の近くにあるんだけど、床と図書館の本棚としかない感じ。地下には宿泊施設とか買い物ができるところがあるよ」


「へー。じゃあ天井は?」


「ない。ように見える。星空と、図書館から見える惑星が絶景なんだよ…

 なつかしいなあ。そういえば、図書館に行ったのは今日みたいに宇宙船から救難信号が出てて、人を助けた後に行ったんだった」

 キララは語りだした。


「このまま聞いていていい?」

 僕はキララに膝枕されたまま聞く聞くことにした。


「僕は、昔アルバイトが終わった帰りに別の惑星へ向かう所だった。そのときはTMRを使わずに、アルバイトで使っていた宇宙船を返しに行く途中だったんだよ。

 中型の宇宙船の救難信号をキャッチして、たまたま近くを通っていたのが僕だけだった。

 そのころは海賊とかは考えずに、何かの事故かと思って向かったんだ。


 で。中型宇宙船と、ガラの悪そうな改造宇宙船とドンパチしていたのさ。

 そのガラの悪そうな改造宇宙船には、かけだしの宇宙海賊が乗っていたんだけど…


 僕はちょうど、アルバイトで使った大型ディスプレイ…ちょうど前の宇宙のコンサートで使ったものと同じものを返しに行くところだったから、ちょっと離れたところから、見つからないようにして巨大スクリーンを数か所にセットしたんだ…

ぷっ。そうそう今でも思い出すよ…

その後どうなったと思う?」


「うーん。スクリーンに偽物の警察か軍隊の映像を映した?」


「うーんおしいね。そのころ有名な海賊の一味の宇宙船の映像を映したのさ…

巨大勢力のものさ。

 で音声や通信も偽装して、がらの悪そうな改造宇宙船に映像と音声を送ったの。

その後に、エネルギーパックを2個放出して、レーザーで撃って爆発させたのさ。

そうしたら、がらの悪そうな改造宇宙船に乗っていた人は本物の海賊と信じて、

わんこがしっぽを巻いて逃げるようにして、いそいで逃げて行ったのさ…

そしてその後、中型宇宙船に救助へ向かい。大型スクリーンを回収した」


「良かったね。運が良かったし、キララの機転というか思いつきもいいし… その後はどうなったの?」


「実はね。中型宇宙船に乗っていた人達は、あるお金もち所有の商船だったんだ。

その後、持ち主の惑星へと招かれてね、星系を2個お礼にもらったんだよ」


「へっ。星系って?」


「例えると、太陽系1個まるごともらったみたいな… それを2つ」


「太陽系まるごと… それお礼のもらいすぎじゃない?」


「うん。だから。もらいすぎと言ったんだけど。そのお金持ちはハイパーお金持ちでね。

星系を1062個持っているんだ。だから2個ぐらいあげても問題がないって…

その後、もらった星系から資源を回収するために、採掘屋さんを手配してもらったり、手続きとかも商船の人がしてくれて。かなり蓄えが出来たんだよ…

でね。未来でハーフの転換手術を受けたあとに、キラ名義の星系を1つキララ宛に譲渡したから、今でも1つ持っているよ星系…」


「その星系に行ける?」


「うん。行けるよ… 宇宙の図書館なんだけど、場所を提供する約束をして、今は建設中なんだよ。

今日行こうとしている図書館が管理している系列と同じなんだけど、まだ完成していないから…

建物のデザインとか、配置とかを参考にしたところがあるから今日そこに行こうと思っている…」


「じゃあ。キララ所有の土地? 宇宙地? にある図書館も今日行くところみたいになる?」


「うん。近いと思うよ… あと緑や水ももうちょっと増やすかなと思っているよ…

図書館に寄った次の日にでも行ってみる?」


「うん」

 ひととおり話終わり。キララは僕の頭をなでてくれる。

 僕は、自分の胸の上に乗っているキララのしっぽをなでてもふもふしている。

 もふもふ。なでなでタイムの中。うつらうつらとする。

 僕はそのまま、キララの尻尾をなでながら寝てしまった。


 キララも僕の寝顔をみているうちに寝てしまった。


☆☆☆


 僕は目をあけた。真上に見えるキララの顔。

 キララも目を閉じている。そして、首がかくっとなった。


キララはかくっとなったときに目を覚ました。「あ。寝てた」キララが言う。


「あーあ。起きちゃった。もうちょっと見ていたかったのに…」


「いつから起きて見てたの?」キララは真上から見つめてくる。


「ついさっき。かくっとなる前ぐらいかな…」

 キララのうつらうつらしている寝顔。ちょっとだけ見ることができた。

 僕は起きてからキララの尻尾をなでる。

 キララの尻尾が動き、キララのお尻のほうに動いてしまった。

 キララは、のびをした。そのときに尻尾はキララの体の真後ろに動いてしまった。


 僕はソファから立ち上がる。

 その後、キララも立ち上がる。そしてデバイスを操作して、宇宙船を図書館へと進路を向ける。


 移動には超高速モードを使い、3分で目的地の惑星があるところについた。


 遠くに板のようなものが見えてきた。大きな板の上に乗っている建物に見える。天井が無い。


 正面から近づく。


 板のように見える図書館の下側の位置に宇宙船を停泊させて、自動ドアで図書館の入り口まで移動する。宇宙船の中から建物の中に直接移動できるのは便利だ。

 自動ドアを使用して空間をつなぐ技術がなかったら大変だろう。エアロックとか、真空と空気がある部屋を操作して、空気で満たしたり、真空にしたり… そういう操作がいらないし、セキュリティも自動ドアのほうで制御されている。かなり時間の短縮にもなっている。


 僕とキララは、図書館のエントランスを歩いている。大きな部屋。天井はない。

 エントランスは2階にあるかのようになっていて、1階の階下に巨大な図書館が見える。下にはかなりの高さまである本棚。左と右に大きな本棚があり、中央は通路になっている。左と右の本棚の隣にも棚があるが、棚と棚の間には十分な幅がある。そして奥、奥には惑星が見える。惑星と衛星も見える。大きな板のように見える図書館の床は惑星の地面と水平に設置されているかのように見える。真上にはこの星系の太陽が見える。

 図書館の左右の端は、部屋のようになっており、個室のような図書を読むためのスペースが設けられている。


「いい眺めでしょ。夕方もここに来る? 奥に夕日が沈むのが見えるよ」


「ほんといい眺め。遠くに見える惑星。下に見える巨大な平面の床と図書館の棚もいいね」

 僕は感想をキララに言いながら、ところどころにある緑や水の流れ、人々が歩いているところを上から見る。


 衛星軌道上の図書館もいいものだ。自然のものと人工物の融合…


「こっちから階下へと降りることができるよ…」キララは歩き出しながら僕に言う。キララの歩いて行く方向に階段がある。


 僕はキララの後をついて歩く。キララの狐しっぽは嬉しそうに、左右に動く。


 階段を地球の建物の3階ぶんぐらい降りると、階下の図書がある1階に出た。


 下からみるのも違う。僕は上を見上げてみた。さっきまでいたエントランスが見える。目線を水平に戻すと、前方にある通路と、両脇の巨大な棚に入っている書物。


 キララは僕に何かを手渡した。


「これは?」手首につけるデバイスを見てキララに聞く。


「えーとね。案内用のデバイス。図書の検索もできるし、このデバイスが映し出す板に乗って移動もできるよ。実体があるホログラムみたいなものだね。ちょっと板を出して乗ってみるよ」

 キララはデバイスのボタンを押すと、足元に浮かぶ板のようなものが現れた。キララはその上に乗った。

 僕も同じようにボタンを押すと、足元に浮かぶ板が現れた。僕はそれに乗ってみる。


「ちょっとバランスが難しいかな」


「大丈夫だよ。私の手を握ってくれるかな。試しに地球の日本語で書かれている本を呼び出すよ。

えーとどれにしよう。古典SFの『夏への扉』にしよう」

 キララはデバイスを通じて本の情報を音声で入力すると、板が動き出した。僕はキララと手をにぎっているので一緒に動く。


 ある程度の速さになってからしばらく進む。


 ある棚の前で止まった。そして棚自体が下に沈み込むように動き出した。棚全部が動くのではなくて、幅50センチぐらいの棚だけ沈みこむ。目的の本が置いてある棚が目の前の高さまで降りてきた。

 キララは本を手に取った。


「よっと」キララは板から降りた。僕も同じようにして降りる。


「へー。便利だね。かなりの高さがある棚だからどうやって本を取るのかなと思っていたけど、棚が下りてくるとは…」僕は棚を見上げながら言う。


「ユキ君も何か読みたい本を探したら? 僕はそこのスペースで待っているよ。この番地を記録しておけば、自動で戻って来れるから…」キララは本を読むためのスペースの椅子とテーブルがあるところに向かって歩く。


 僕はデバイスを操作して『学校を出よう2巻』を探した。どうやらあるらしい。板を出して乗ると自動的に進む。

 1分ぐらい進んで棚の前で止まる。棚がまた下に沈み込むように動き出した。


 目的の本が置いてある棚が目の前で停止する。僕は本を手にとった。


 原因不明のタイムトラベルに巻き込まれるというものだった。同一人物3人が同じ時間帯に存在するというものらしい。読んだことはまだなかったが、僕自身はTMRによってタイムトラベル経験者になっていたから、経験者が読むとまた違うのかなと思った。


 僕はデバイスを操作してキララがいる区画へと戻ることにした。


「どう? 読みたい図書はあった?」

 キララは本を閉じてから、こっちを見上げて言う。


「うん。あったよ。しばらく図書タイムだね… 宇宙の衛星軌道上に浮かんでいる図書館で本を読むのもなんか非日常的だね…

ところでこの図書館の建築はどこのものなの? 地球外?」

 僕は図書館の建物を見まわしながらキララに聞く。


「えーとね。以外だと思うけど地球の建築家が建てたんだよ。なんかかなり昔のwebにアップロードされていた、建物のデッサンを元にして作ったみたい。えーと確か2038年ぐらいだっけ。えーとたしか…」

 キララはデバイスを使って調べ始めた。


「2037年。じゃあ僕の時代と同じだ。知っている人のデッサンだったりして…」僕はキララつぶやいてみた。


「あ。あったよ。デッサンの元は、森宮めぐるって書いてあるよ…」


「えっ。それって僕の友達かも…」ユキは席が近くでよく会話している人の名前が『森宮めぐる』だった。


「ひょっとして、ループかな?」キララは僕に向かって言った。


「ループ?」


「うん。きっとユキ君が、宇宙旅行から帰った後に、この図書館の風景を森宮という人に話したんだよ。それを聞いて、森宮という人は絵を残したんだ。それが、長い間webにアップロードされたままになっていて、未来のどこかで将来建築家になる人の印象に残ったんだよ。その人がここに図書館を建設した。

そして、ユキ君がここに来た。というわけさ…」


「そうか… じゃあ僕が森宮君に図書館のことを話さなかったらどうなるの?」


「その場合は、この図書館のデザインが違っているものになるんだろうね…」


「うーん。じゃあ。今話さないと決めた時点から、図書館のデザインが変わっていくとかはないの?」


「それはない。今は未来だから。この未来とつながっている過去には、君が森宮君に図書館のことを話したという事実は変わらないから。過去に戻ってから未来に来てみると、デザインが変わっていると思うよ… その場合はどうなっているんだろうね。普通の図書館かな?

それだと、私所有の図書館のデザインも変わってしまうかな?」

 キララはじっと僕の顔をみて言う。


「そうか。じゃあ。きっと戻ったら話すと思うよ… この図書館のデザイン。結構センスがいいし…

そうだ写真でも撮っておこうかな…」僕は自分の時代のスマホを取り出し、写真をとる。


「それを聞いて安心したよ。私も結構この図書館のデザインが気に入っているし…」


 キララは本を取り出して、再び読みだした。


 僕もキララの向かいのソファに座り、本を開く。


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