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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
キララとの二人きりの宇宙旅行
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イータカリーナ星雲。それと耳ふーふの話

 朝。地球の朝では、ちゅんちゅんとスズメなどの鳥の声が聞こえるはず。

 でも、ここは地球ではない。


 鳥みたいな生物はいないので、朝は静かだ。


 僕は目を覚ました。隣にはキララの寝顔。

 キララは早起きのはずだけど、まだ寝ていた。


 僕はキララを抱き寄せる。


「ん」キララは寝ているけど、くっついてくる。


 キララの体温があったかい。狐の尻尾。狐耳。


 もうちょっと寝ていよう…


☆☆☆


 いい匂いがする。僕は目を覚ました。


 キララはいつのまにか起きていた。


 いいにおいのするカップをテーブルの上に置いたキララ。最上階の寝ている部屋まで朝食を持ってきてくれたみたい。


「キララ。おはよう…」


「うん。おはよう。ねぼすけさん」


 キララお手製と思われる朝食が、テーブルの上に並んでいた。


 卵もある。卵の黄身の色はオレンジっぽいけど黄色にも見えるようなものだった。地球の卵と似ているけど、違うんだろう。


 何かのお肉のひき肉みたいなものを棒状に丸めて焼いたかのようなもの。それにたれがかかっている。


 あと、パンだ。クロワッサンだった。地球のものと同じだ。


「寝ている間に用意してくれてたんだね… 先に起きたのは僕なんだけど、キララをぎゅっと抱き寄せてから、心地が良くてまた寝ちゃったんだよ…」


「やっぱり… 起きたときにユキ君がぎゅっとしているから、布団の中が名残惜しかったよ。

 でも起きたよ… ユキ君の寝顔を10分ぐらい見てから起きたし…」


「えーまた見てたの?」


「うん。さあ。下に行って身支度をしてきたら、上ってきて。朝食にしよう…」


「うん」僕は階下へと降りた。


 身支度をととのえてから最上階のキララがいる部屋へ戻った。


☆☆☆


「いただきまーす」

「いただきます」


 キララと僕は手をあわせて、キララの用意してくれたものを食べる。

 まずはカップの中に入っている温かいスープを飲み、何かの卵みたいなものを食べる。


「あ。これ濃厚…」卵は地球のよりおいしいかも…


「そうでしょ。結構お気に入りなんだよ。結構宇宙でも広まっているよ…」


「あ。これもおいしい」ひき肉のようなものを棒状にして焼いたもの。噛むと肉汁が出てきた。


そしてクロワッサンをほおばる。あ。やっぱり地球のクロワッサンだ。


「このクロワッサンは、結構いろいろなところに売っているよ… パッケージが特殊で焼き立てを維持するんだ… 時間凍結の技術が使われているよ… だからあったかいんだよ…」


「へー」たしかにクロワッサンは焼き立てかのようにおいしい。


 この地域は針葉樹林がある地域で、温暖ではなく朝や夜はちょっとだけ寒い。このツリーハウスには部屋がいっぱいあったけど、結局部屋の中が少し肌寒くて、くっついて寝ることをキララから提案されたのだった。


『ユキ君は最上階に寝て、キララはその下の部屋で寝ると言い、夜這いに来てもいいよ』と言いながら、実は行かなかったとかだとキララはどう思うんだろうとか考えたけど、考える必要もなかった。キララのほうからくっついてきたり、一緒に寝たり、当たり前かのように一緒の寝床に入ってくるようになった。なんか一緒にくっついて寝るのも慣れてきたというか当たり前になってきた。

実は寝ているときに、キララのしっぽを触って、なでているとおちつくのだった。ふっかふかだし。


「さてと、出発の時間かな。今日はどうする?」


「えーとなんだっけ。NGC3372」


「地球からみて、りゅうこつ座の中にみえるイータカリーナ星雲だね。綺麗な場所だよ…

じゃあ決まり」


 キララと僕はこの宿泊施設に来た時に入った建物に、デバイスを返却してこの場所を後にした。


 宇宙船をレンタルした時に借りた装置を使って宇宙船の中に自動ドアを開けて、乗り込む。


☆☆☆


「なんか不思議。自動ドアを通ったら別の星系に浮かんでいる宇宙船の中なんて…」


 もう宇宙空間に移動した。さっきまで緑豊かな星の上にいたんだけど、あたりは黒と星の海。綺麗な星雲が見える。


「今度は僕にやらせて…」ユキは宇宙船のコンソールを操作してNGC3372のほうに進路を向ける。速度を高速にすると30分でつく。超高速にすると3分でつく。僕は『高速』にセットした。


 キララは隣から覗き込んできている。「私も高速にセットするよ。3分だと早く着きすぎだし… ちなみに中速にすると17日。低速にすると7万年かかるよ…」


「低速は、自動ドアを使わないの?」


「うん。通常空間を移動するだけ… 普段は星系内や惑星内の移動にしか使わない。

もっとも私たちには考えることのできないぐらいの長寿命な生命もいるんだけど、数百年ぐらいかけて宇宙を移動するのが好きという種族もいるよ… その生命体は数千年から数万年の寿命を持つともいわれているよ」


「うへぇ。そんなに長生きな生命体もいるんだ…」


「まあ。生命体と言っても地球でいうと植物。巨大な木とかもあるし、ものすごくめずらしいというのでもないよ… 生身で宇宙空間を移動できる生命体もいるみたいだし…」


「うへぇ。そうなの…じゃあ宇宙人ってどんなのがいるの? お風呂場であったような人達以外にもいる?」


「うん。知的生命体にかぎるけど、特定の形に見えないような、煙というか気体というか細菌みたいなものの集まりみたいなものから、植物みたいなものが全部くっついていて、惑星1つに1人ぐらいの大きさになっているのもあるよ。1人の大きさと惑星の大きさが同じだね。あとは水生生物が進化したもの。体は丸みをおびているよ。それと2足歩行の生命体が一番多いかな。足がなく羽があり飛んですごす生命体とか… うにょうにょする触手みたいなものがいっぱいある生命体もいるし… ちなみにその生命体は、他人と接触すると体をいろいろ触るんだよ、感触が気持ち悪いんだけど、悪気はないんだ…」


「うへぇ。触手…」僕は想像した。ぬるぬるしている数本の触手が動いている生物。


「会いたくない宇宙人っている?」


「うーんそうだね。海賊かな…」


「宇宙にも海賊っているの? 宇宙だから海賊って言うのも変だけど…」


「いるよ。船の燃料をうばって、身代金を要求するのとか。燃料といってもエネルギーパックなんだけど。1次。2次。3次。予備の4次と5次エネルギーパックがあるよ。1~4次までうばっていくんだ」


 ということを話しているうちに、イータカリーナ星雲へついたみたい。


「あ」その後、言葉が出なかった。非常に綺麗な景色がひろがっていたからだ。


 数えきれないぐらいの星。その星の間に流れる星間ガス。星間ガスの模様が綺麗だ。


「窓は赤外線フィルターモードにしてあるから、コントラストがはっきりして、見えるようになっているよ。どうだろう。やっぱりいいね。一番好きだよ。この景色。りゅうこつ座η星とHD 93129Aも見えるよ。光の強さは太陽の400万倍もあるよ。だからあんなに明るいんだ…」


「へー」


「そして質量は太陽の100倍以上もあるんだよ、将来はブラックホールだね。

そしてもう一つのHD 93129Aもかなり明るい星だよ。近くで見たら明るすぎてきっと目がつぶれちゃうよ…」


「やっぱりすごいなあ。きれいだなあ」

 そう言うしかできなかった。星と星。星間ガスの模様。そしてところどころに見える非常に明るい恒星。それともっと明るい恒星。


「やっぱりいいね。綺麗だし…」キララもうっとりと星空を見る。


「そういえば、飲み物いる? しばらくここで見ていたいから…」

 僕はキララに聞いてみた。


「うん。ポットに昨日飲んだのと同じカラフルな飲み物を入れてあるから持ってきてよ。あとはクロワッサンにひき肉を焼いたものを挟んだものが保管庫に入っているから持ってきてくれる?」


「うん」


 僕は保管庫に入れてあった、クロワッサンとポット。それにコップを2つ手にとって展望室へと戻る。


 窓のそばのソファ。そしてテーブルの上にクロワッサンと、レインボーな飲み物が入ったポットを置いた。


「あと。宇宙の怖い話… 知っている?」


「いや。知らないけど…」


「聞きたい?」キララはクロワッサンを手にとって言う。


「うん。ちょっと怖いけど、キララがいるから大丈夫…」 


「じゃあね。話始めるよ…」


 キララは話だした。


 あるところに、僕たちと同じようなお付き合いを始めたばかりのカップルが宇宙へ旅行に来ていた。


 いろいろな、宇宙の星間ガスが綺麗なところとか、恒星や星系が生まれている地区や、景色が雄大な惑星とか、いろいろ見てまわったんだ。


 そして、立ち入り禁止の惑星にも降りたいということになって降りたんだ。


 キャンプ用品みたいなものも、持ってきていたから2泊地上でキャンプしてから宇宙船に戻ったんだけど、その後からだよ、彼女がおかしくなったのは。普通の会話をしている最中に、突然「あたしの耳の中を見て」と言うんだよ。


「なんでそんなことを言うんだろう…」僕はキララに聞いてみた。


「さあ。なんでなんだろうね」キララは話を再開した。


 そのカップルの男性は、耳の中を見ることはなかったんだけど、とうとう耳の中を見てしまったんだ。


「どうなったと思う?」


「えー。わかんないよ…」


 その子の耳の中。つまりけもののような大きい耳をした彼女の耳の中には、彼女がいたんだ。耳の皮膚にくっついて離れない感じ。


 そのとき、彼の首を噛む彼女。そのまま気を失ってしまう彼氏。


 彼氏は気が付くと、彼女の耳の中にいたんだ。隣には本物の彼女が…


 彼氏自身も、元彼女の耳の皮膚にとらわれて出られない状態。外をみると、彼氏自身がいた。


 彼は思い出した。ずっと前のニュースで、人の体を乗っ取ってしまう宇宙人がいると、乗っ取った元の人達は消えてしまうということだったが、耳の中に囚われているのが理由だった。


「ねえ。そのあとどうなったの?」僕はキララに聞いた。


「じゃあ教えてあげる… 私の耳の中を見てみればわかるよ…」


「えーなんか怖いなあ…」


「まあ。これは。けもの子が耳ふーふー。をやめてほしいときに言う話なんだよ」


「耳ふーふー?」


「うん。私みたいな狐耳で大きいと耳が敏感なんだよ… 他人に私の耳を『耳ふーふ』されるとびっくりしちゃうから…」


「なんだ。そういうことか…」僕は安心した。


「でも本当にあるらしいよ。体を乗っ取る宇宙人。私の耳を覗いたらそうなるかもね…」

 ほら。と狐耳をこっちのほうに向ける。


 ふっさふさの狐耳を見せるキララ。


「そういえば、イータカリーナ星雲みたいなこんな綺麗な場所で、耳ふーふの話をしているんだろう…」


「まあ。たしかにね…」キララと僕は笑った。


☆☆☆


 うん。いいね。宇宙一ともいえるような景色がいい場所。


「イータカリーナ星雲ほんと綺麗だよね。とっても満足したよ」僕はキララのほうを見て言う。


「うん。私も満足。それにユキ君と一緒に見ることができてうれしいよ」


「うん。僕も」


「じゃあ、次行きたいところある?」キララは僕に聞いてきた。


「じゃあ、NGC4314」

 キララはデバイスで調べているようだ。「ああ。リング状のものを持った銀河。じゃあ行こう」


 キララはデバイスからリモートで、宇宙船の進路を示した。


 超高速で移動させる。


 星が点の形になり、再び線の形にもどったとき。銀河とそのまわりにリング状のものが見えた。


 リングは直径2000光年ぐらいの距離を持つ。そして大規模な星形成領域がリング状に存在しているものだ。誕生してから500万年未満の星々がリング状に分布している。

 

 そのリングが特徴的で綺麗だ。


「地球から5500万光年ぐらいの距離にあるよ… ここはだいぶ近くからだから、姿が地球から見るのと少し変わってしまっているけどね…」


 地球化から見えるリング状のものより、少し濃く見えるし、星の数も多いように見える。長年の間に新しく誕生した星が増えたためだろう。


しばらくNGC4314を見たあとに、別の場所へと移動させる。


「NGC4038。触角銀河だね」僕は銀河の形から見分けた。


「うん。地球から8900万光年ぐらいの距離にあるんだよ。銀河どうしの衝突によって、昆虫の触角のような突き出した形のものがある銀河になったんだよ…」


 タツノオトシゴのような、ぜんまいという植物みたいにも見える。星間ガスの模様が綺麗だ。


「じゃあ次行くよ… NGC4826。Black eye銀河。地球からの距離は1700万光年。10憶年以上前に小さな銀河どうしが衝突したんだよ。銀河の中心から3000光年ぐらいまでの内側の星やガスと、その外側にある星やガスがそれぞれ逆方向に回っているんだ。内側の明るいところと、外側の黒く見える星間ガスからBlack eyeと名付けられた」


「へー」銀河のもようとしては面白い。渦巻き状。


 Black eye銀河を見ているときだった。


 アラームが鳴った。


「なんだろう」キララは階下のコンソールがある部屋へ向けて歩き出した。


「僕も…」


☆☆☆


「えーと。いまどきめずらしいんだけど、小型宇宙船からの救難信号だね」


「そうなの? でも、困っているんなら助けてあげないと…」


「うーん」キララは悩んでいた。


 なんでも、本当に救難が必要で救難信号を出しているのか、もうすでに時遅しなのか、それとも海賊が救難を装っているのか。ということを悩んでいるのだった。


「海賊だったらどうなるの?」


「まあ。金品はあまりないから、僕のTMRを持っていることがばれなければ、宇宙船のエネルギーパックを1次から4次まで持っていかれるかな。そして宇宙船のレンタル会社に、助けてほしければ、xxクレジット用意しろ。となるね。そうなったらよっぽどのことがないかぎり、会社はお金を用意するよ」


「命の危険は?」


「エネルギーパックの中身が無くなったらアウトだよ。もっともTMRがあるから心配ないよ。ブラックホールのそばでないかぎりなんだけど。それとこの宇宙船を借りたときに借用したデバイス。それで借りたところまで戻ることはできる。でも。だいたい海賊に没収されちゃうんだけど…」


「ということは、普通の人が救難信号を出すときって、結構切羽つまっているときになるの?」


「うん。そうだね… どうしようかな。じゃあ行こう」

 TMRがあるんだし… ということで救難信号を出している小型宇宙船のもとに向かうことにしたのだった。


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