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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
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未来での仮想現実旅行(3)

 夕食タイムの後、仮想現実の中とはいえお腹もいっぱいになっているなか、キラはみんなに提案する。


「外にでてみない?。星がきれいだよ…」


「あー。見たい」ミミちゃんはキラの後に続いて外に出る。


「ねえ。ユキ君も行こう…」ラミちゃんが手をにぎって僕を外に連れ出す。


「私もー」ララお姉さん。一人だけ食後のおやつとしてお饅頭を手に持っている。そのまま外に出る。


……


「あー。すごい…」僕は空を見上げて言う。プラネタリウムにいるみたいに、くっきりと星が出ている。

6等星までは確実に見えている。こんなに星ってあったっけ?

それに月。普通の月の他に、でっかい月が山の向こうに沈みかけている。

 絵画になりそうな星の夜空の景色。


「はい。あったかい飲み物…」キラは僕にマグカップをさしだしてくる。


「ありがと」夜になるとちょっと肌寒い。あったかい飲み物が心地良い。


 キラはほかの人達にもマグカップを手渡している。気が利くなあ。


 僕たちはしばらく夜空の中にいた。


 そして寝る時間。

「ねえ。ユキ君。あたしの部屋に来てくれるかな…」ララお姉さんが言って部屋に入っていく。


「わかった…」僕はララお姉さんに返答した後、キラの後ろ姿を見つけて、キラを呼び止める。


「なんだい?」キラはこっちを見て言う。


「うーんとね。明日はどうするの?」

 キラは考えてから「そうだね。がらりと変わって、都会とか? どうしたい?」


 ユキは急にキラに聞かれてうーんと悩む「そうだね。仮想現実っぽいのとか、現実にはないことができるような…」


「現実にはないもの… うーむ」キラは腕組みをする。


「一晩考えてみるよ…」僕はキラに言う。


☆☆☆


 僕はララお姉さんの部屋に入る。

「来たわね…ふっふっふ」ララお姉さんがデバイスを手に取るとボタンを押す。

 ばたん。後ろで勝手にドアが閉じる。

 なんで勝手にドアが… 僕がドアを見るとドアが消えてなくなった。


「なんでドアが…」僕はララお姉さんを見る。


「ふっふっふ。逃がさないわよ…さて。お願いがあるんだけど、ユキ君。うさ耳のハーフになってもらって。あたしをお姫様抱っこして」


「えっ。お姫様抱っこ? ララお姉さんは背があるし、ウサギのハーフだし… 無理なんじゃ…」


「ああ問題ないわよ。ユキ君もウサギのハーフになれば、力が強くなるから…」


ララお姉さんはベッドの上で体育座りをする。


「ほんとに持ち上がるかな…」ほらほらとララお姉さんが促す。

 僕はララお姉さんの脚のところと背中を腕でささえて、持ち上げる。


「あー。上がった。ウサギのハーフだと持ちあがるでしょ?」

 ララお姉さんは、僕の腕の中だ。思ったより重いんだけど、力があるから持ち上がった。だいぶ余裕がある。これだとミアお姉さんも一緒に二人分、同時に抱っこできそうだ。


「ララお姉さんどう?」僕は抱っこされているララお姉さんを見て言う。


「夢みたい。ユキ君に抱っこしてもらえるなんて… 部屋を一周してベッドに下してくれるかな。

ねえユキ君。あたしをもらってくれないかな。結婚して一緒に暮らそう…

今日のところはそのまま一緒に寝よう… 拒否できないからね… ユキ君」


「えー。結婚はちょっと… 寝るのはいいけど…」

 雰囲気からしてまた拒否できないやつだ。まあいいか。ララちゃんと、ララお姉さんと一緒に寝たこともあるし… でも、入り口のドアが隠されているのが気になるけど…


 僕とララお姉さんは一緒のベッドに入る。


「何もしない?」僕はララお姉さんに聞いた。

「それって逆じゃない? 女の子が男の子に言うもの…」

「まあそうなんだけど…」


「ぎゅー」ララお姉さんはベッドの中で抱きついてくる。

 あー。またもふられる。

 思う存分。ララお姉さんはすりすりしてくる。


☆☆☆


 朝。仮想現実の中でも訪れる。仮想現実の中でいつの間にか寝てしまっていた。現実と変わりはない。

 朝起きると、部屋のドアが戻っているのに気が付いた。僕が寝てからララお姉さんがドアを戻したらしい。

 僕はララお姉さんの抱き枕になっていたみたいだ。寝ているララお姉さんの腕をふりほどいて、ベッドから起きる。


「ああ。いい朝」

 外を見ると朝霧の中、朝日が昇ってくるのが見える。


 僕は建物の外に出る。キラは外にいた。

「お。君も早いね…」キラは背伸びをして清々しい朝を満喫している。


「そういえばさ。今日行きたいところ… そして仮想現実ならではのもの。

例えば。僕は今14歳なんだけど、例えば僕が24歳の姿になることもできるのかな?」

 ユキはキラに向かって言った。


「ああ。そうだね。できるよ… いちおう僕はタイムトラベルができるし、ここは未来だから、ユキ君が24歳のころのデータとか動画は残っていると思うよ。

でも、そのデータは使わずに僕が勝手に入力するよ。自分の未来を知ってしまうことにもなるし…

たぶん。えーとユキ君は将来こうなるとして… ちょっと待って…」


 キラは考えながら入力する。


「あ。背が伸びた。そしてなんか声も低くなったような…」

 ユキはおとなしい、大人の青年になっていた。


「おっきくなったね。でもララお姉さんよりは小さいかな…」


「えー。これでも。結構大きくなった気がするんだけど…」


「じゃあユキ君はドアの横に隠れてて、僕はララお姉さんを外に連れ出してみるから…」


「えーと。まだララお姉さんは寝ているよ…」


「じゃあ。10分か15分は待ってもらうかもだけど。隠れててね…」と言い残してキラは建物の中に入っていた。


 ララお姉さん。びっくりするんだろうな。


☆☆☆


 キラとララお姉さんが出てきた。


 僕はドアの影に隠れてたけど…「ララお姉さん」ララお姉さんの後ろから声をかけた。


「あれ。ユキさん。なんでここに? ん? ん? ん。ちょっと違うような… あ。

もしかしてユキ君? 成長させて背を伸ばしてもらったでしょう」


 ララお姉さんが近づいてきて、背のチェックをする。

 あ。やっぱりララお姉さんのほうが大きい。


「実はそうなんだけど。ララお姉さんのほうが大きいのにちょっとショックを受けている…」

 僕はララお姉さんをちょっとだけ見上げて言う。


「まあ。あたしは175cmあるし… ユキ君は170cmにちょっと届かないぐらいかな…

っと。すきあり!」ララお姉さんは抱きついてくる。


「わあ。また… もう子供じゃないんだから。もうー」僕は大人になってもララお姉さんに抱きつかれるのかと思った。


「中身はこどもだよぉ…」とララお姉さん。抱きついたまま言う。


「ははは。きっとずっとララお姉さんから、この時代のユキ君を見たら弟みたいに思えるよね…

やっぱりタイムマシンがあるから、ララちゃんはまわりにいろいろな人達がいて、大人と過ごすのがなれたんだよ…

ララちゃんから見て、ユキ君はずっと年上のお兄さんと思っていたんだけど、自分が24歳になって、過去に行ったら自分より年下のユキ君がいて、だいぶ子供に見えたんだよ…

たぶん自分の時代のユキさんと今のユキ君は別人に感じているんじゃないのかな…」とキラが解説する。


「うーん。そうなの。ユキ君は弟というか、そんな感じ…」

 さらに抱きつきながら言う。


「さてと、みんな起きたころかな… 朝食の時間にして、出かけようか。と言っても別の場所に移動するんだけど…」


☆☆☆


 ユキは大人の姿のままで朝食をとることになった。

 うーん。なんか急に成長したみたいになっているからちょっと落ち着かない。

 テーブルまでの高さもちょっとだけ離れている。背が伸びたからだ。


 朝食をとり、出発することにした。現実と違うのは朝食を食べても後片付けをしなくてもいいこと。出発するときに荷物を持たなくてもいいことだ。


「さあ。案内板を出すよ…」キラはデバイスを操作してロッジの前に案内板を出す。そしていろいろな箇所をスクリールさせながらどれにするかを選ぶ。


「次の場所に移動するよ… びっくりしないでね…」


☆☆☆


 場面が急にかわった。これって…


「わー。ぎゃー溺れるぅ…」ミミちゃんはものすごく慌てている。上のほうに泳いで上がろうとしている。


「ははは。大丈夫だよ。仮想現実だから… 息はできるよ… ほら…」

 キラはミミちゃんをぎゅっとして安心させる。


「あ。あははは。ちょっとびっくりしちゃった」


 そこは海底だった。すごい深海とかではなくて、亜熱帯の浅い海の中。いろとりどりの魚が泳いでいる。そして海底にはサンゴ礁。


「おーこれなら。仮想現実ではないとこんな体験はできないね…」僕はあたりを見回す。


「ねえ。あそこに泳いでいる魚を。あんたは捕まえて食べそうね…」ラミちゃんは泳いでいる魚を指さしてみる。


「あんな、カラフルな魚は食べないわよ…」ミミちゃんは海底から海の中を泳ぐ熱帯魚を見ながら言う。


「ああ。そうだ…」ラミちゃんはキラにお願いする。


「ああ。いいよ」キラはデバイスを操作する。

 いきなり景色が変わる。


 普通の海の中。


 横を泳ぐのは魚。そして魚。また魚。


「これはね。かつお。という魚だよ。そしてあっちを泳いでいる小さい魚。

まいわし、かたくちいわし、うるめいわしだね。ちなみに煮干しの材料になるよ…」


 ごくり。ミミちゃんの喉が鳴る。

 もうひとり。クロの喉が鳴る。


「あーあ。ここに魚を見ておいしそうと思っているネコミミっ子がいるわよ…

ほら。逃げなさい。食べられるわよ…」


「にゃによ。泳いでいる魚は食べにゃいわよ…」


「あー。言葉がにゃんこ語になっているわよ… ほらほら。にぼし。にぼし」

 ラミちゃんはミミちゃんをからかっている。


「あははっ」僕は二人のやりとりがおかしくて笑った。


「あ。そうだ」僕はキラにひょっとしてウサギ用のもあるのかなと思って聞いた。


「うん。あるよ。ウサギのパラダイスというプログラムの中にあるんだけど、ちょっと待ってて…」

 キラはデバイスを操作すると、ラミちゃんとララお姉さんの肩をたたいた。


「ん?」

「なーに?」

 ウサギのハーフの二人。キラが指をさすほうを見る。

「これこれ。ウサギのパラダイスというプログラムにあるんだけど、長さが3センチぐらいのニンジンが群れをなして泳いでくるから、お口をあけてあーんすると、ニンジンが口のなかに飛び込んでくるよ…」

 二人はウサ耳をぴんと立ててある方向を見る。オレンジの物体。小さいけど群れをなして泳いでいる。それがこっちのほうに近づいてくる。


 二人はあーん。をした。お口の中にニンジンの群れが飛び込んだ。


「にゃによこれ。おいしー」

「んー」

ラミちゃんとララお姉さんはものすごく、目をきらきらさせておいしそうにもぐもぐしている。


「ちなみにね。20匹中の2~3匹はものすごくおいしいニンジンになっているから、それが群れの中にいっぱい入っていたら当たりだよ…」


 ウサ耳の子達は、またあーんをしている。

 ものすごく満足してもらえた。


「えーと。あのさ。今度はネコミミっ子用のものはある?」僕はキラに聞いた。


「あるよ。ネコのパラダイスというプログラムの中にね。じゃあ別の場所に出現させてっと。

ねえ。ミミちゃんとクロ。あそこに煮干しの小さいのが群れで泳いでくるから、

口をあーんして待っているといいよ。

20本に2~3本はものすごくおいしい煮干しが入っているから、それが多かったら当たりだよ…」


「にゃんだってー」

「しょ。しょうなのかい?」

 ミミちゃんとクロはキラの指さすほうを見る。

 ネコミミっ子の耳が元気に立つ。


 二人はあーん。をした。お口の中に煮干しの群れが飛び込んだ。


「あれ、見てよ…うれしそうだよ…」僕はラミちゃんとララお姉さんの組。ミミちゃんとクロの組を見る。

 みんな満足している。


☆☆☆


「さあ。もういいかな…

今度は深海にするよ。本物の深海は暗くて何も見えないんだけど、明るく見えるようにするよ」


 がらっと変わって、魚の形が変わる。あんまり見たことがない魚。グロテスクな魚。

「あれは何?」ユキはキラに聞く。


「あれはデメニギス。頭だけ透明になってて中身がみえるよ…

そしてあっちのがクシクラゲ。綺麗でしょ…」


「うわぁ。気持ち悪い…」ラミちゃんは顔をしかめて言う。

 デメニギスは頭だけが透明なのでグロテスクだ。そして透明でもグロテスクじゃないのがクシクラゲ。7色に光るので町の繁華街のネオンサインみたいだ。


 リーフィーシードラゴン。タツノオトシゴみたい。


「そしてあれが… メガマウス。あっ」キラは言葉をとめる。


 ミミちゃんはキラが見ているほうを見ると、体長約4メートルはあるメガマウスが大きな口をあけてあーん。をしている。その口はミミちゃんを飲み込もうとしていた。


「ふんぎゃー」ミミちゃんはしっぽを立ててびっくりしたまま固まっている。


 ぼくっ。口が閉じた。

 仮想現実なので食べられたわけではない。

 ぼりぼり音がした。骨がくだけるような音。でも実際は大丈夫だ。

 ぺっ。と吐き出した。


「あ"ーお魚にたべられた…」ミミちゃんはぐったりとしている。


「ネコミミっ子が魚に食べられるなんて…傑作よね… ぷっ」ラミちゃんはおかしくて吹いてしまっていた。食べられる直前のミミちゃんの顔を見たらしい。


「あんたも食べられればいいのよ… あ。ほら見て…」ミミちゃんはしっぽで後ろを示す。


「またまた。あんたの言うことなんて… あぎゃー」ラミちゃんは巨大なサメにぱくっと食べられた。

 ぼりぼりぼきぼき音がする。そのあと。ぺっ。と巨大サメはラミちゃんを吐き出した。


 白目をむいているラミちゃん。僕は抱っこしてあげた。

「ねえ。休めるところはないかなぁ」ユキはキラにお願いする。

 白目になっているラミちゃんを支えながらユキは言う。


「じゃあ。海底のカフェに案内するよ…」

 キラはデバイスを操作して場所を変更する。


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