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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
3/138

みのるお兄さんとヒメル。そしてエージェントのクロ。

「暑い…。やっぱりダメ?」ユキはおばあちゃんに聞いた。

「うん。全然冷えないねえ。クーラーこの暑さで壊れちゃったみたいね」


 クーラーが壊れた。温度設定を上げても下げても、同じぐらいの温度のぬるい風しか出てこない。修理のためおばあちゃんが電話をしたみたいだが、明日は時間がとれないとのことで、明後日以降修理に伺うということになった。


 今は夏休み。ユキは14歳。ミミちゃんもラミちゃんも同じ年齢なので学校はなく、家にいる。それなのにクーラーが壊れたのだ。

 ミミちゃんはクロネコのハーフ。ラミちゃんは白うさぎのハーフである。

 ミミちゃんは色が黒いしとっても暑そうだ。

 ラミちゃんは色が白いので涼し気なのだが、体毛が短いながらも上半身のほとんどと、足首より上のところから上半身にかけて白い毛がおおわれている。二の腕も真っ白な短い毛で覆われている。


「暑い。死ぬわ。このままだと…」

 ミミちゃんは、両手にうちわを持ってあおいでいるが、加えて尻尾でもうちわを持って仰いでいる(三刀流だ)。


 扇風機もあるのだが、ラミちゃんが使っている。

「あんたはしっぽもあるんだし三刀流でうちわを使えていいわね。あたしはウサギのハーフだから、尻尾は短いのよね。だから扇風機はあたしが使うわね」

 とラミちゃんは扇風機を自分のそばへ移動させてしまった。


 ミミちゃんは、ラミちゃんに反抗する気もない感じで、そのままうちわであおぎ続けている。


「そうだ。夏休みの宿題でわからないところがあったんだ。みのるお兄さんのところにいくかな」

 ユキは独り言をいって電話を操作する。


「あ。う。うんいいよ。家のクーラーは壊れていないし…みんなで家に遊びにおいでよ。ヒメルもいるし…」というみのるお兄さんの声が電話から聞こえる。ちなみにみのるお兄さんの家はお隣だ。


 みのるお兄さんは16歳。そしてヒメルという女の子もホームスティしている。ヒメルは鳥のハーフだ。インコの遺伝子が入っているらしい。


僕は自分の家から出る。それからおばあちゃんも出かけるというので一緒に家を出る。ミミちゃんとラミちゃんも一緒だ。


「あたしの前を歩かないでくれる? あんた黒いから暑苦しいのよね」


「しょうがないじゃない。生まれたときから黒いんだから。夏の間はシロに染めろっていうの?」


「まあね。それでもいいんじゃない。毛染め買ってあげるわよ」

 とラミちゃんはミミちゃんに言っている。いつもこんな感じ。なんでかな仲良くできないのかな。


 僕はミミちゃんとラミちゃんの後ろを歩きながら思う。


「おじゃましまーす」それぞれ、ミミちゃん。ラミちゃん。僕がみのるお兄さんの家の玄関から入る。

 田舎なのと、玄関に鍵がかかっていなかったら、いつでも入ってきていいとみのるお兄さんに言われていたので、一応呼び鈴を押してから、玄関のドアを開けて入る。


「あ。涼しい」ミミちゃんは言う。

「そうね。涼しいわ」ラミちゃんも同じく言う。

 クーラーがきいていて涼しい家の中。外とはだいぶ違う…


 居間には、低いラック。薄型テレビ。観葉植物。窓辺にはインコ用の鳥かごがある。

 みのるお兄さんの家には、つがいのインコがいる。本物のインコだ。

 遊びに行くとインコを観察するんだけど、ほとんどの場合二羽くっついている。

 とっても仲良しで、メスのインコが頭を下のほうに向けて「なでて」とオスのインコにアピールしている。オスのインコはそれを見て、くちばしを相方の頭にうめて、こりこりとかゆいと思われる箇所をなでている。


 たまに「キッ」というふうにそこ違う。とメスのインコが言い。オスのインコはそれに従ってちょっと位置をずらして、くちばしをつっこんでなでている。そしてたまに、オスのインコの頭にメスのインコのくちばしがつっこまれ、なでなでモードになっていることもある。


 いつも一緒だし、つがいのインコはこんな感じなんだなぁと思う。


「ヒメルちゃんは?」ユキはみのるお兄さんに聞く。

「二階にいるよ。上で待ってて。すぐに行くから…」と居間の台所付近にいたみのるお兄さんがユキに言う。


「うん。わかった。ミミちゃんとラミちゃんはどうする?」


「一階にいるわ。この部屋にクーラーがあるからね。テレビをつけて見てるわね」

 やっぱり人間より暑さに弱いよね。ミミちゃんは黒いし…。


☆☆☆


「あら。こんにちはユキ君」ヒメルが部屋の中から声をかける。

 ユキはみのるお兄さんの部屋に入ると、ヒメルがいて、とっても綺麗な声で言う。

 鳥のハーフの子はみんな声が綺麗。


 頭は白を基調とする色で銀色っぽい箇所もある。たまにアクセントでパープルの色の毛が生えている。毛並みは人の髪の毛とは違い、鳥の羽毛というか羽毛の産毛に近い感じでふかふかしている。

 なでなでしたくなる頭。身長は163cm体形はすらっとしている。鳥のハーフだから小さい羽の名残みたいな感じで翼が二の腕の後ろにある。

 ばさばさというふうに動かし、うちわの代わりに羽を使っている。

 やっぱり便利だよなぁ。鳥は羽があるし。ネコは尻尾があるし。。。


 周りにハーフの子がいると考えてしまう…


「お待たせ。砂糖が入っていない炭酸飲料しかないけど。甘さが足りなかったらはちみつを入れるといいよ」みのるお兄さんはジュースの入っている容器とコップ。それとはちみつを持ってきた。


 ハーフの子がいる家庭では砂糖が入っている普通の飲み物はあまり飲まないようにしている家庭が多い。甘すぎるんだとか。

 みのるお兄さんはごく自然にヒメルの横に座る。ヒメルはみのるお兄さんにくっつく。

「どこがわからないんだい? 国語? 英語? 数学?」


「えーと。まずは英語なんだけど。あっ辞書持ってくるの忘れた」ユキは辞書を家に忘れてきたことに気が付いた。


「うーん。自分の家から持ってくるしかないのかな。ちょうど友達に英和と和英の辞書を貸していて、家にないんだ」みのるお兄さんは自分の机のほうを見ながら言う。


「じゃあ。持ってくる」ユキは部屋を出る。


「戻ってきたら、呼び鈴を押さずにそのまま二階へ上がってきてもいいよ」うん。とユキは返事をして、家を出る。


「やっぱり外は暑いなあ」ユキは家の中に入る。家の中も暑い。

 二階の自分の部屋から辞書を持ってくる。英和と和英。

 電子辞書もあるのだが、覚えないから紙の辞書を使うようにと、学校の先生に言われている。

 さてと戻るかとユキは家を出る。


 外に出て、お隣のみのるお兄さんの玄関に入り、階段を上がっていく。

 がちゃ。


 部屋の扉を開けると…


 そこにはハートマークの空間が広がっていた。

 実際に部屋が変わっていたのではなく雰囲気がそうなっていた。


 ばさっ。

 音がして手元を見ると持っていた辞書を落としていた。

 びっくりすると手に持っているものを落とすんだと思った。


 それにしても…

「ねえ。何やっているの…」とくっついている2人を見てユキは言った。


「見つかってしまったわね」

「見られてしまったな。じゃあしょうがないな…」

 みのるお兄さんはリモコンを手に取るとボタンを押した。


 ばたん。ガチャ。

 後ろで音がして、扉が自動的に閉まった。そしてガチャという音がしたからわかったんだけど、鍵もかかってしまった。

「ふっふっふ。見られたからには、ユキ君もこっち側の人間になってもらうしかないわよね…」


 ヒメルは、みのるお兄さんに『なでなで』をしてもらっている。

 さっき扉を開けたとき、みのるお兄さんはヒメルの頭(羽毛のような髪の毛)に自分の頭をつっこんでいた。


 辞書を落とした音を聞いて、顔を上げてこっちを見たのだった。

 まるで一階にいるインコのつがいのようだった。


 おたがいの頭にくちばしをつっこんで、こりこりなでなでしている姿。それとおんなじだ。


「さて。こっちに来なさい…」いつのまにかヒメルは、ユキの背後に回り込んで両手をつかんでいる。

 そしてベッドのところまで誘導される。


「そこに座るのよね」

 ユキがベッドの上に座ると、ヒメルはユキの膝の上に横向きにごく自然に座った。


「あっ。あの…」ヒメルはユキの膝の上に座ったまま、みのるお兄さんに言った。


「いいわよね…」


「うん。いいよ。見られてしまったし…くっくっく。生きた羽毛をしばらくの間。君に預けよう」


「うん。そう。生きた羽毛…ユキ君? ぎゅっとして。抱きしめて…」とヒメルはユキに言った。


「えっ」


「いいから。やって」ヒメルはユキの顔を見ながら言う。


 しょうがない。言うとおりにするか…


 ユキは優しく。そっとヒメルを抱きしめる。


「そう。いいわね。じゃ次」ヒメルは次の行動に移る前にみのるお兄さんを見て言う。


 今度はユキのほうを見て。「頭なでて。インコの頭をなでるように。ゆっくりと。横向きにね。そのあと逆毛になるようにゆっくりなでてね」

 ユキはヒメルの頭をなでないといけないらしい。

 ヒメルは頭を下げる。なでてほしいと思う箇所をこっちに向けてくる。


 インコっぽい。ユキは手を頭にのせる。そしてなでなでする。


 手を頭の横の耳の後ろあたりに移動して横向きにゆっくりなでなでする。


「んー」ヒメルは言う。気持ちがいいらしい。


そして「逆…」ヒメルは横向きに座っているが、立ち上がって逆の向きに変えて膝の上に座りなおす。


「やさしくなでて…」綺麗な声でユキに言うヒメル。ヒメルは目を閉じて頭を下げる。


 僕はぽんと手をヒメルの頭の上に置いてから頭の横に手をくっつけたままおろしていく。

 そしてなでる。左右方向になでる。そして上下になでたり、逆毛になるようになでる。


「けっこう上手ね。初心者にしてはみのると比べて、上級者よ。今はみのるのほうがうまいけど」

 10分ほどなでなでタイムとなった。


「じゃ。こんどはあたしの頭にユキの顔をうめてみて」


「そ。それはだめなんじゃないかな。変態みたいだし。。。」


「だめ。拒否権なし。一回だけ。ちょっとでいいから…さあ」ヒメルは頭を下げる。

 僕は少し涙目になって、みのるお兄さんのほうを見るが、あごをしゃくって『やれ』という仕草をしている。


 しょうがない。やるか。

 ユキはヒメルの頭に自分の頭をうめた。自分の鼻がヒメルの羽毛の産毛の頭にうまる。


「あ」ふかふかだ。手で触ったときもふかふかに感じるんだけど。自分の顔と鼻で感じる羽毛のふかふかは、全然違っていた。

 ふかふかの羽毛の感触。ヒメルの体温。あったかい。


「どう? これが生きた羽毛なのよね」ヒメルが言う。

 たしかにふかふか。ものすごいふかふか。

 超高級品な羽毛で出来たマフラーがあって、それに顔をうめたようだ。


 気持ちよさは天気の良い日曜日にベランダに干した羽毛布団を取り込んで、その羽毛布団にジャンプして飛び込んだぐらい。ふかふかで気持ちがいい。


 違いは生きている体温を羽毛に感じること。人懐っこいヒメルという鳥のハーフの子だからか、変なことをしている感じもあまりしない。自分がインコになったかのようだ。


「じゃあ。昔話をしよう…」みのるお兄さんは話し出す。


 ユキは顔を上げて、みのるお兄さんのほうを見る。


「ありがと。気持ちよかった」ヒメルはユキ君の膝の上から立ち上がり、みのるお兄さんの近くに歩いていってみのるお兄さんの膝の上にごく自然に座る。


 みのるお兄さんは、ヒメルを膝の上に座らせヒメルの頭の上に手を乗せてから話し始める。


「この町に引っ越してくる前なんだけど、そのときに出会ったんだ。たしか僕たちがユキ君と同じぐらいの年齢の時だった…」


☆☆☆


「こんにちはみのる。あたしはヒメル」


「こんにちは。僕はみのる」


 今日から鳥のハーフの子が家にホームスティをすることになり、最初に出会ったときの挨拶だった。


「そのころあたしは今みたいに甘えんぼさんではなかったのよ。みのるはなでなでも下手だったし…」

 みのるは頭の上に乗せている手を横にずらして、ヒメルをなでなでする。


「ん」ヒメルは目を閉じる。

 一週間ほどたって、それぞれの生活がなじんできたころ。


「ただいまぁ。ペットショップに行って衝動買いしちゃった。ほい。インコ二羽」

 みのるの母は突然インコをペットショップから買ってきたと言い、インコ用ゲージが車にあるからおろしてきてと言う。


「わぁインコだ」

 ヒメルは紙製の箱に入っている二羽のインコを見る。

 まだ子供。

「仲がよさそうだったから二羽にしたのよ。ペットショップの店員に聞くといつも一緒みたいだったし、店員の勧めもあってつがいにしたのよ…」


 その日から、ヒメルはつがいのインコをよく観察するようになった。


「ねえ。みのる。今日から一週間はハーフとのふれあい習慣なのよね」


「そういえばそうか。今日買い物に行ったときにいろいろ安売りをしていたのはそれか」

 ハーフの動物みたいな子と人とのふれあいを大切に。仲良くすることを目的にできたものだ。

 世間的に休みにはならないが、生活用品とか食品が安くなる。ペットショップではセールが実施されたりする。


「CMやってるよ」ヒメルはテレビを見る。


 本物の猫耳少女がテレビに出てる。猫耳少女が本物のネコにご飯を上げている。

 そして、猫耳少女が猫缶をあけて、食べようとしているところだ。

「あっ間違いそうになった。ついあたしも食べたくなっちゃうこのおいしさ…」

 猫耳少女が手にもって猫缶を宣伝する。


 そのCMが終わり。別のCMが入る。

 元気に走り回る犬耳を頭に生やしたわんこ少年が泥だらけになって遊んでいる。


 家に帰ってきて母さんに言われる。

「今日も泥んこね。でも大丈夫これがあれば…」

 洗濯用洗剤。

「これを使えばこんなに泥だらけでもほら真っ白」

 と白くなった服を見せる。


 また次のCMになり、白い本物のわんこがしゃべってる。

 となりに犬耳の子、猫耳の子が出てきて言う。

「にゃんだってー。学生は2,980円で使いほーだい」

 携帯電話会社のCM。増えたなあ動物ハーフのCM…


 テレビに気をとられているとヒメルがみのるの膝の上に座ってきた。

「あたまなでて…」ヒメルがおねだりする。

 インコのつがいが仲良くしているのを見て、自分も同じようになでてほしくなったようだ。


「わかったよ」みのるは頭をなでなでする。


「どう?」


「んー」なでなで。なでなで。


「んー。そうね。ぎりぎりね。75点」


「えー。これで75点。きびしいなぁ」


「本物のインコにあたしの頭を『なでなで』やってもらったら何点になるかしらね。90点は超えるわね…」


「えーインコより点数低いのかよ…」みのるとヒメルとのふれあいは増えていった。


☆☆☆


 出会って1年。みのるは修学旅行で家をあけることになった。

 ヒメルは中央にある厚生労働省管轄のハーフ専門の健診のため家をあけることになっていた。


「じゃあ後でね。帰ったらまたなでてね」ヒメルは列車に乗る。


 みのるは学校に向かう。


☆☆☆


 みのるは修学旅行先で失敗した。

 池にスマホを落としてしまったのだった。


「あー。落としちゃった」みのるはスマホを水の中から拾い。すぐに電源を入れてみようとする。


「あ。すぐに電源入れないほうがいいよ」見ていた友達が言う。一瞬画面がついて、すぐに消えてしまった。


「なんだ。何やってるんだ…」先生が近くに来て、みのるに話しかける。


「スマホ。落としちゃったのか。ばかだなぁ…」先生はかがみこんで池の中を見る。


 そのとき、胸ポケットに入れていた先生のスマホも池の中に落ちる。

「お。おわっ」先生は落ちそうになっているスマホを空中でキャッチしようとしたが、失敗して池ポチャをしてしまう…


「先生も落としちゃったのかよ。だっせー」友達が言う。


「うるせぇ」先生は言いながら池に落ちたスマホを拾う。

 ついていた画面が消えた。「あっちゃ。だめだな」


その日。みのるへの連絡手段がはなかったのが痛手だった。


☆☆☆

 みのるの自宅近く。カモのマークの引っ越しトラックが止まっている。


 そこをウサギのハーフのミアちゃんが通りかかる。

「カモのマークの引っ越しトラック」

 ミアちゃんは、業者と思われる人2名が家から出てきて段ボールの箱2つを運び出しているのを見た。


☆☆☆


 健診のため中央に来ていたヒメルは二日目の検診が終わって、駅に向かって歩いているところだった。

 道にカモのマークの引っ越しトラックが止まっている。

 カモのマークの引っ越しトラックの後ろに泊まっていた黒い車から人が出てきた。


「ちょっといいかな。君はヒメルさんだね」


「え。はい」


「私は鈴木というものだが、落ち着いて聞いてほしい。」


厚生労働省の名刺を見せる。


「みのる君はさきほど息をひきとったそうだ」


「はい?」


 ヒメルは鈴木さんが何を言っているのかわからなかった。


☆☆☆


 同じ時刻。


 先生がみのるを呼び止めた。

 修学旅行の終盤。帰りのことだった。


「ちょっといいかな。落ち着いて聞いてほしい。ヒメルはさきほど息をひきとったと連絡があった」


「はい?」


 みのるは先生が何を言っているのかわからなかった。


☆☆☆


 ヒメルはスマホでみのるの電話番号を入れて鳴らしてみるが出ない。家にもかけてみたらつながらなかった。


「君はそのまま新しいホームスティ先に行くことになった。来てくれるかな」


「そ。そんな急に。せめてみのる君に会わせて…」


「だめだ。みのる君はトラックに轢かれたそうだ。もう見ても本人だとわからないだろう。さあ来るんだ」


「いやぁ。あたし行きたくない…」


 暴れようとするヒメルに超強力な睡眠薬をかがせて、男たちは黒い車に乗せる。


☆☆☆


 みのるは家に着いた。

 ヒメルの遺影が立てかけてある。


「あっ」みのるは立ち止まり「なんで…」とつぶやいた。


☆☆☆


 ウサギのハーフのミアちゃんがみのるの家の前を通る。

「ヒメルちゃん亡くなっちゃったのよね」

 そういえばカモのマークの引っ越しトラックが止まっていた日だっけ。と思い出していた。


 二週間後。

 ウサギのハーフのミアちゃんが自分の家の近くを歩いている。


 ミアちゃんは、塀の上を黒猫が歩いているのを見かける。


「ネコ」ミアちゃんは一瞬ネコを見たが前を向く。


 がちゃん。

 何かが落ちる音がして、音のほうを向くと、さっきの黒猫が塀の上に置いてあった牛乳瓶を道に落としたようだった。


「瓶を落としちゃったのね。クロネコちゃん」

 ミアちゃんは、黒猫の向こう側を見る。「また、カモのマークの引っ越しトラック」


 ミアちゃんは、業者と思われる人2名が家から出てきて段ボールの箱2つを運び出しているのを見た。その数日後。そこの家にいたハーフの子が亡くなったみたいとのことを近所の人から聞いた。


「なんかおかしいわね」カモのマークの引っ越しトラックを見てミアちゃんはつぶやいた。


☆☆☆


 僕はクロ。エージェント22番。

 本物の黒猫だ。今は西暦2235年。脳を改造され人間の言葉も理解できるようになり、エージェントとして働いている。報酬は少しばかりの給料と煮干しだ。煮干しは上物しか受け取らない。


「今日の任務ね。あなたは2037年に行ってこの場所で指示のある時間に塀の上を歩いて、牛乳瓶を落とすのよ。近くの路地でうさぎのハーフの子が通りかかるから注意をひくのよ」


 タイムトラベルが実用化した今。タイムエージェントとしてクロは働いている。

 なぜネコなのかというと、道を歩いていても誰も気にならず、複数の時間を行き来きして同じネコが写真に写ってしまっても見分けがつかないからだという。

 それに体重が軽い。人を過去に送るにはコストがかかりすぎるそうだ。

 クロは床をタッチした。タッチすると円の形の光が現れてクロはその時代から姿を消した。


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