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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
29/138

未来での仮想現実旅行(1)

 ラミちゃんがミアお姉さんを呼びに行ったあと、ちょうど24歳のララお姉さんがやってきた。

「また。きちゃった」きっとララちゃんの過去の日記を見たんだろう。


 僕たちは、キラから誘われて、未来の仮想現実を体験するために出かけるところだった。


「じゃあ。出発」


☆☆☆


「クロ。ひさしぶり」僕はクロに行った。

 クロは床をタッチして「こんにちはユキ君。しばらくぶりかな。君の時代の仕事は減ってしまったんだよ。ほらララお姉さんやキラがいるからね。最近は別の時代のタイムトラベルばっかりだよ」と言った。


「クロちゃん」ミミちゃんはクロの頭をなでる。同族のミミちゃんには頭をなでることを許しているクロ。


「じゃあ。施設へ自動ドアで移動するよ… さあさあ」キラはみんなをつれて、自動ドアを開けて移動させる。

 クロも最後に移動した。


☆☆☆


「じゃあ。こっち。この中に座ってカプセルを閉じるんだ…

心配しなくていいよ。未来の展示会のようなことにはならないから…」


 ヒメルとみのるお兄さんは、2人だけの世界を希望した。


 レオとココ。トラちゃんとミルクちゃんは「ねこのパラダイス」という世界を希望した。


 大きいシロとソラは「トリのパラダイス」という世界を希望した。


 シロちゃん、ギンちゃん、ララちゃんとミアお姉さんは「ちびっこランド」の世界を希望した。


 残りのキラ。ユキ。ミミ。ラミ。ララお姉さんは「現実世界」を希望した。

 

 みのるお兄さんはトリのハーフになるためのオプション料金を払った。


 キラはユキ君のために数々のハーフになるためのオプション料金を払った。


 キラはその他のメンバー用にも別のハーフになるためのオプション料金を払った。

 オプション料金は別料金だった。

 仮想世界に入るための料金はチケットにより無料となった。


 カプセルを閉じる。実際は2日間この中で過ごす。


☆☆☆


 ユキはカプセルを開けた。

 見たことのない建物にいた。

 空中に浮かんでいる都市が遠くに見える。

 ここは仮想現実。


 実はユキはまだ人間のまま。ラミちゃんはネコミミ娘になっていた。

 ララお姉さんもネコミミ娘。キラはトリのハーフのままだ。

 そしてもう一人見たことがないネコミミの男の子が姿を現した。


「えーと君は誰かな?」ユキはネコミミの男の子に聞いた。


「僕だよ。僕。クロだ。ここは仮想現実だから僕の体だよ。むずかしい仕事の打ち合わせでもこの体は使っているんだよ。ああ。楽だね。床をタッチしないでもしゃべることができるからいいよ。

そういえば煮干しの小袋を前に買ったものがあるんだ。食べるかい?」

 にぼしの小袋の中に入っているにぼしをユキは受け取る。

 僕はぽりぽりと食べる。あ。現実と同じ。


「本当にクロなの。結構男前だね…」ミミちゃん。手を出してにぼしを受け取る。

 あ。このにぼし。おいしい。とミミちゃんが言う。


「あたしにも頂戴」ラミちゃんとララお姉さん。

「もー僕のが無くなっちゃうよ。後で補充してよね。キラ」

「うんわかった。わかった。じゃあ。あそこのエレベーターから下へ移動するよ」

 キラが歩いて案内する。


 エレベーターは軌道エレベーターに似たものだった。

 自動ドアで行けばすぐだし、仮想現実だからなんとかなる。

 でも現実にはない景色。それが仮想現実にいることを実感する。


 透明なチューブみたいなエレベーターで下へ移動する。

 現実にはない景色が見える。天井も透明なのでだんだんとさっきいた場所の底が見える。

 さっきいたところも空中都市だった。

 都市の底はビルが逆さまに建てられてるようにいくつかの建物が見えた。

「あれはビルの地下だよ…空中に浮かんでいるから、地下にあるビルの窓から下の景色が見えるんだ…」


 ふーん。

 さらに下に降りていく。


「あれっ。あー私。今ウサギだった」ミミちゃんの声。

 手でとんとんとユキの肩を叩く。

 いつものようにユキ君の肩をしっぽでとんとんしようとして、ウサギの尻尾になっていることに気が付いたミミちゃんであった。


「何かあるの?」僕はミミちゃんのほうを見る。


「ほら。綺麗…」海を指さして言うミミちゃん。


「ほんとだ…」ブルーの海。南国みたい。でもこの高さから見ると、遠くの海の色は紫になっている。

 現実にはない海。


 エレベーターはどんどん下りていく。

 綺麗な海がある地面の高さをすぎて、さらに下りていく。


 僕は下を見る。さらに下がある。僕は下ばかりみていた。


 とんとん。しっぽで肩がとんとんされる。

「ねえ。上みて。上。ユキ君尻尾使えたわ。これ便利ね…ねこの尻尾」今度はラミちゃん。

 ラミちゃんは尻尾を動かすことができたようだ。

 ララお姉さんも猫の尻尾をくねくねさせている。


 僕は上を見た。

 さっきのブルーの海。その海が空に見えた。あんまり暗くはない。遠くは紫になっている。

 なんか現実ばなれした景色。


「もうちょっとでつくよ…」

 キラが説明する。

 ちーん。音がした。


 僕たちはエレベーターから出る。


 右は砂浜。左は都市。

「じゃあ。こっち来て」

 キラはなぜか砂浜のところにある操作盤のところに来るように言う。


「これは?」僕は町の案内板みたいなものを見てキラに聞いた。


「操作盤。ここでいろいろ操作ができるんだ。この世界は僕たちの貸し切りだから、これでいろいろ操作ができる。まあ見ててよ…」

 キラは、画面を操作して、海辺の都市から、高山の都市に切り替えた。

 すると、僕たちのいる地面を除いて世界が横にスクロールしていった。

 そして目の前の景色が山の景色になった。高い高地。下には都市が見える。

 左にはロッジ。ここに泊まろう。とキラは言った。


 世界というか景色が移動してくる。現実にはないものだった。そして空。

 空には月が二つある。大きい月だ。普通の月の20倍か30倍はあるような月。月はブルーがかっていた。


「夜は星が綺麗なんだよ…」キラは空を見上げながら説明した。


 僕は空気を胸いっぱいに吸った。いい。自然の多いところに来たみたい。


「あ。そういえば。人間もけもの子になれるって聞いたけど…」


「ああ。そうだね。忘れてた。じゃあ。僕が操作してあげる。まずはウサ耳のユキ君だね」

 キラは何かを操作する。


 あ。僕の体に変化が生じた。頭に何か重いものが生えた。お尻もちょっと変わった。そして体が重くなった。

 そしてよく遠くの音が聞こえるようになった。

 僕は頭に手をあてた。

 あ。うさ耳がある。うさ耳があるよ。

 それとうさ耳あったかい。本物のように思える。


「ユキ君がウサギのハーフの男の子になった」ラミちゃんは、ぽーとこっち見ている。

「あー。ゆきくん。いいわ。いいわね。うさ耳。かわいいわね」ララお姉さん。


「今は君もハーフの子だね」クロ。


「今日はウサ耳で過ごしてみようか… 遠くの山の向こうから聞こえる声に耳をすませてごらん。遠くの音も聞こえるよ… たぶん」キラが言う。


 僕は音に集中する。

 僕の耳が意識しないでもピンと立つ。

 あ。聞こえる。遠くの風。そして鳥の鳴き声。音の聞こえ方が違う。全然違う。


 地獄耳の意味がわかった気がする。ずいぶん遠くからラミちゃんを呼んでも、小声でも聞こえてこっちに来た時に「これこれ言ってたでしょ」と聞かれる。だいぶ遠くだから聞こえていないと思っていたんだけど、違った。すごく耳が良くなっている。

 それにウサ耳にあたる風。風がふくと耳で感じることもできる。


 ユキはなんか面白いなと思った。


 ロッジに入る。


 テーブルの上にはにぼしのお菓子とニンジンクッキーが置いてある。


「ねえねえ。せっかくだから。ニンジンクッキー食べてみてよ… ほら。それと野菜ジュース。ニンジンジュースはあたしが作ってあげる。ユキ君のために…」

 今はネコミミのラミちゃんがニンジンを勧めてくる。


 僕はクッキーを食べた。ニンジンはそんなに好きではなく普通だった。

「あれっ。なんか違う…いつもと違ってすごくおいしい…」


「でしょでしょ。ジュースはちょっと待っててね…」ラミちゃんはフルーツとニンジンを切ってジューサーに入れる。原始的なジューサー。


「どうもありがと」僕はラミちゃんがコップにそそいでくれた野菜ジュース。ニンジン入りジュースを飲んだ。これも氷が入れてあってすごくおいしい。でもニンジンの味がひきたっている。今だとニンジンが何本入ってるか、濃さでわかるような気がした。


なんか世界が変わるよ。


「さて、散歩でも行こうか。山の空気がおいしいよ。それと景色…」

 キラは外へと案内した。


☆☆☆


「んー」僕は伸びをした。


「こっちのほうに登山道があるよ。隣の山頂に行こうか」キラは先頭を歩く。


 とんとんと尻尾で僕の肩を叩くだれか「あ。ララお姉さん」

 僕は尻尾を見ると、ララお姉さんのものだった。


「仮想現実。あたしは使ったことがなかったんだけど、いいものね。今度行ってみようかしら。未来のユキ君達を誘ってみるかな。TMRを使って未来に移動して、仮想現実の中に入って…」


「いいかもね。ところで未来の僕はかわりない?」


「うん。大人になっただけ。ミミちゃんやラミちゃんも一緒に暮らしているし…

でも今ほど未来に移動してどこかに行ったりはしてないなぁ…」


「そう…」ララお姉さんの話を聞きながら山道を歩く。遠くで鳥の声がする。


「ねえ。実は。僕この中だと飛べるんだよ… 鳥のハーフだから…

ちょっと飛んでみるよ…」

 キラは下り坂のほうに向かって走り出す。そして羽を広げる。羽ばたくと体が浮き上がり飛行する。

 ばさばさと。普通の鳥のようだ。羽はちょっと小さめだけど…飛んでいる。


 ぐるりとあたりを一周してから元の場所に近いところに降りる。

 ぱちぱちぱち、僕たちは降りてきたキラを見て拍手をした。


「ねえ。あたしたちは飛べないの?」ミミちゃんが聞いた。


「トリのハーフになれば飛べるけど、羽を元々持っていない子には飛び方がわからないから難しいんだよ… 教えないといけない…」


「でも、ウサギならジャンプで高く飛び上がれるよ… ミミちゃんジャンプしてみて。思いっきり。びっくりするぐらいジャンプできるよ…」


「え。そうなの? じゃあ。えいっ」ミミちゃんはおもいっきりジャンプした。20メートルぐらいは飛び上がる。

 あわわ。という声。どすん。と着地する。


「あー。なんとなく。私が全力でジャンプしたぐらいのところまで上がってるわね…

ちなみにネコミミのあたしがジャンプするとどうなるのかな…」ネコミミになっているラミちゃんが思いっきりジャンプする。3メートルぐらい飛び上がる。


「猫のハーフだとそのぐらいなのね…」ラミちゃんを見てララお姉さんが言う。


「あれっ。みんな置いていくよー」クロはこっちを見て、だいぶ先の道から振り返って言う。

 クロはトリのことには興味はない感じだった。


「あーごめんごめん。君はトリのことに興味はなかったみたいだね。純粋なネコだし…」

 僕たちは、クロの元に急ぎ足で向かう。


「まあ。みんなトリのハーフになって飛んでいけばとも思ったんだけど、こうして仮想現実の中とはいえ、山道を歩くのも悪くないわね…」ミミちゃん。うさ耳になっているので僕と同じように、鳥の声とか、山の音がよく聞こえるのだろう。


 普段のネコミミより耳が大きいし。尻尾がウサギの尻尾になっているから、その点が不便かもしれないけど…


 僕たちは景色のいい山道を歩く、坂道になっているところもあるけど、ちょうどいい運動になる。でも、仮想現実だから実際は疲れているように感じているだけなのかな…体の実体は動いていないのだし。


「さあ。もうちょっとで隣の山の山頂だよ…」キラが言う。羽を微妙に広げながら歩いて行く。

 羽があるのって、羽で山の風とか感じるのかな…


☆☆☆


「うわぁいい景色…」ララお姉さんの声。尻尾が左右に動いている。

「ほんとね」風があたりの草をなでる。風が耳にあたったのか、ネコミミのラミちゃんの耳が動く。


 下の方に見える景色。近くは森が下のほうに広がっている。その向こうには小さい湖が見える。

 さらにその向こうには自然が終わり、小さい町が見える。さらにその向こうには海っぽいものが見える。空を見ると、綺麗な水色。そして、遠くの空は紫がかっている。昼間だけど普通の月と、もう一つの大きな青みががった月が見える。

 あれだ、夜になったら『ラッセン』の描いた絵のようになるんだろう。大きい月もあるし…


「じゃあ。ちょっとお腹も空いてきたところだし、ランチにでもするかな…」キラは手元のデバイスを操作する。すると、展望台の横に、木のテーブルと、テーブルの上にランチセットが現れた。


 ツナのサンドイッチ。おかか入りスクランブルエッグ。あったかいコーンスープの入っているポットが出てきた。そして飲み物。紅茶っぽいけどちょっと違う。


みんなそれぞれの位置に腰かける。

テーブルの上のサンドイッチを手にとるミミちゃん。

「ああ。おいしい。山の空気がおいしいからなのかしら…」ミミちゃんはサンドイッチとスクランブルエッグを口にする。


「うん。おかか入りスクランブルエッグとは、ネコ耳の子にも気をつかっているね。もちろん本物のネコにもね…」クロは器用に箸を使って食事をしている。本物のネコなのに仮想現実の中だとネコのハーフみたいに行動をしている。


「クロを見ていると、クロがネコだというのを忘れそうになるよ…」僕はクロに言った。


「そうかい。未来のネコは僕のように仕事をしている子もいるんだ。脳改造されているから頭が良くなっているのさ。適用力も高いし… まあ。本物のネコの言葉もわかるんだけどね。

本物のネコは、人間のことをでっかくて、獲物も狩れないネコと思っているし、でもごはんをくれるから人間のことは好きなんだよ…

あごの下かいてくれるとうれしい。あのでっかい手。自分たちとは違う手が不思議なんだよ。それに二足歩行。


 なんで立って歩いているんだろうと思っているんだよ。4つ足で歩けばいいのにって。でも後ろ脚と前足の長さが違うから歩きにくいんだろうとも思っているけどね。

体がでっかくて、前足が短い変なネコ。と…」


「ふーん。そんなふうに思っているんだ。ところで、脳改造されている犬はいないの?」


「ああ。いることはいるよ… 盲導犬とか、警察犬とか、あと介護用の犬とか、もっとも介護のほうはずっと前からろぼっとがその役割を果たしているけどね…

昔のタイプのロボットから、人間とうり二つのもの。稼働型デバイスもあるし『けもの耳ろぼっと』というのも昔からいるよ」


クロの隣に座っているミミちゃんは「ほんと。クロは。本物のネコだっていうことを忘れてしまうほど、いろいろ物知りね…」とクロを見て言う。

 ミミちゃんは、クロの足。ふともものところに手をあてて言う。


 クロはミミちゃんを見て「いやあ。その。ちょっとくすぐったい」


「ああ。ごめん…」


「あごのところとか、頭ならなでていいよ」とクロはミミちゃんに言う。

「じゃあ。ちょっとだけ」ミミちゃんはクロの頭をなでる。

 なんか、ミミちゃんとクロは仲が良い。


「本物のウサギって、脳改造はされていないのかな」ラミちゃん。

 ララお姉さんも同じように興味があるみたいで、クロに聞く。


「まあ。いないんじゃないかな… 見たことがない。ちなみに脳改造されている鳥はいるよ…

スズメとかカラスとか、軍事用でスパイ用途に使っているという噂があるよ。あくまでも噂だけどね…」


「そうなんだ。脳改造がされているウサギがいたら話してみたいと思ったのに…」


 そんな話をしているうちにテーブルの上のサンドイッチとかスクランブルエッグが盛り付けられた皿が空になっていた。


「さてと、もうそろそろ。食べ終わったころだね。片づけて戻るよ… 今度はあの湖まで行こうか。

こんどはみんなトリのハーフになってもらうよ… 飛び方は僕が教えるからね…」


 仮想現実だから、羽がない僕たちでも飛べるらしい。

 難しそうだけど楽しみだ。


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