けもの子達と夕食のカレー
僕はみんなと一緒にスーパーへ買い物に来ていた。
「ねえ。おばあちゃん?今日の献立は何にするの?」ラミちゃんはおばあちゃんに聞く。
「そうねぇ。何にしようかしら、今日の特売が何かによるわね」
野菜コーナーで、ニンジンを手にして言う。
「あたしは、魚がいいわね。それともいい鰹節を使うお味噌汁があれば何でもいいわね」
「まあ、あんたはクロネコだし。本当に魚とか鰹節とか煮干しとか好きよね」ラミちゃんはミミちゃんに言う。
「まあね。あんたもニンジン好きでしょ」おばあちゃんが手にしているニンジンをじっと見ているラミちゃんを見て、ミミちゃんが言う。
この子達がおばあちゃんと僕の二人暮らしの家にホームスティに来てからにぎやかになった。
隣の家にもハーフの子が引っ越してきたし…
「これあんたにちょうどいいわよ。好物なんじゃない?」
ラミちゃんが手にとって、ネコミミ少女に見せたのは猫缶。しかも特売で98円になってるやつだ。
「本物のネコ用のじゃない」ミミちゃんは、尻尾を使ってぱしっとラミちゃんをかるくひっぱたく。
くすっ。ユキ君は微笑む。
そんな二人の後をついて歩くユキ君。
僕はしっぽ便利だなとこの二人を見て思う。人間に尻尾がなんでないんだろう。
ミミちゃんのミミ。猫耳で可愛いし…
立ち止まってネコ用の猫缶が並んでいる棚の前にいる2人を追い越して、おばあちゃんのそばへと、僕は歩いていく。
「おーい。二人とも行くよ」僕は二人に声をかける。するとラミちゃんのウサ耳がこっちを向く。
「こんなネコにかまっている場合じゃないわね」と言うウサ耳少女。
ちょっと距離が離れているんだけど、大きい声を出さなくてもラミちゃんには聞こえる。
☆☆☆
ネコミミ少女のイメージを聞いて何が思い浮かぶだろう。
かわいい耳。尻尾。猫のようなしぐさとか、体の線の細さとか、しなやかさ。
現実のネコミミ少女を見てみると最初に思っていたのとは違う箇所があるのに気が付く。
本物の猫は人間と比べると体が小さい。そのイメージする猫耳のサイズで耳が人の頭にくっついているイメージで考えていると違いに気が付く。
ネコミミ少女の頭にくっついているネコミミは大きい。顔の半分ぐらいの長さの大きな耳。そして尻尾。尻尾の太さは猫の尻尾の太さと比べると2倍はある。しっぽの長さはミミちゃんが立って歩いても、もうちょっとで地面にくっつくぐらいの長さ。
そして力。尻尾の力は以外に強い。尻尾を地面につけて体を支えることができるし、僕のお腹まわりに、ミミちゃんが尻尾を巻き付けて、ぐいっとミミちゃんのほうに引き寄せられたこともある。
もう一人、うさ耳の本物のバニーガール。
バニーガールとは違うところは、頭についているでっかい耳が本物なこと。
ラミちゃんの体形はすこしだけぽっこりしているので、バニーガールの恰好をさせたら日本一似合わないと思う。ラミちゃんのお姉さんである、ミアお姉さんという子がいるんだけど、こっちは完璧である。
ミアお姉さんは、どこから見ても完璧なバニーガールで長身だ。それと胸は大きく足は長い。足の太さはほどよい感じであり、黒い網タイツをはくといい感じになる。バニーガールの恰好をすると、お姉さんはちょっとエロティックになる。
ミアお姉さんは身長が173cmぐらい。完璧な長身うさ耳バニーガールで外見は太ってないが、体重はかなり重くて、持ち上げることができない。
前にミアお姉さんの太ももをマッサージしたことがあったが、太さはかなりあった。
ミアお姉さん自身が言っていたんだけど、太ももの付け根の太さは70cmをちょっと超えているのよ、と言ってた。
うさぎのハーフの子達は、みんなそうなんだけど、力が強くて、人間と比べると足が大きくて、太ももの太さが太めだ。そんな足で全力でキックされると吹っ飛ぶ。
機嫌が悪いとき、ラミちゃんは床を『どん』と足で踏み下ろして威嚇するときがあるんだけど、家の床はそんなに丈夫ではないので、いつか床を踏み抜くんではないかと思っている。
案の定。ミミちゃんに体重のことで、からかわれたラミちゃんが、足を床に踏み下ろしたときに廊下の板がめきっと鳴って、ひびが入ってしまったことがあった。
その後、床にひびが入っているところをおばあちゃんに見つかって、ニンジン1週間禁止の刑とにぼし1週間禁止の刑が2人に言い渡されたことがあった。
今日の夕食はカレーだ。食卓には僕とおばあちゃん。ミミちゃんとラミちゃんが席についている。僕には両親はいない。もともとはおばあちゃんとの二人暮らしだった。
そういえば、ラミちゃんがホームスティで家に来たとき(ミミちゃんはまだ来ていないとき)の夕食もカレーだったなぁと僕は思い出した。
☆☆☆
今より小さいころの話。
「夕食できたよ」おばあちゃんが僕とラミちゃんに声をかける。カレーの匂いで今日の献立がわかる。
おばあちゃん特製カレー。それとほどよい大きさのハンバーグ。
その上に目玉焼きが乗っていてその上からカレーがたっぷりかけられている。
目玉焼きの半熟具合もいいし、肉汁たっぷりのハンバーグも好きだ。
甘辛いぐらいのカレーの中に、自家製野菜がたっぷり入っている。
ラミちゃんは、ウサギのハーフなので、自家製野菜の人参が絶品だから、きっとラミちゃん喜ぶんだろうなーと思っていると…
ラミちゃんは、耳をぴんと立ててじーとカレーを見ている。たっぷりと入っている人参に気がついたようだ。
「いただきまーす」僕たちは両手を合わせてから、スプーンを手にとってぱくっとカレーを食べる。
やっぱり美味しいなあ。おばあちゃんのカレー。
僕はラミちゃんを見た。人参を食べたラミちゃんの耳がびっくりするようにぴょこっと動く。
耳を見ているとラミちゃんの気持ちが良くわかる。
「ほっぺた落っこちるぅ。この人参すごく好きー」ラミちゃんは自家製人参を食べて喜んでいる。
市販のと違っていて人参丸ごとの長さが6センチぐらい。
ミニサイズで甘い。小さいのですぐに火がとおるのでやわらかいし。
自家製野菜の人参は僕のお気に入りのひとつ。でも僕は市販の大きい人参は少し苦手なんだけど…
ニンジンはラミちゃんに少しおすそわけをすることにした。
「おいしい。これ。すごくおいしい」ラミちゃんはものすごい早さでカレーをぺろっと平らげてしまう。
「おかわりあるよ」というおばあちゃんの声に、「じゃお願い。人参たっぶり、なみなみと」
とラミちゃんはおばあちゃんに、カレーのおかわりをリクエストする。
やっぱりウサギっぽいなあと僕は思った。僕はそんなラミちゃんを見てくすっと笑ってしまう。
「なんか可笑しかった?」僕はいいやなんでもないと返答する。
おばあちゃんも、喜んでカレーを食べるラミちゃんを見て微笑んでいる。
☆☆☆
今日の夕食はシーフードカレーだ。ミミちゃんもいるので、魚介も入れている。自家製のニンジンも入っている。
いただきます。をした後に僕たちはすぷーんを手にとってカレーを一口食べる。
「にゃにこれ。おいしいわね…」ミミちゃんは目を細める。びっくりしたときとかに、ミミちゃんの言葉はニャンコ語になる。『な』が『にゃ』になる。
「今日のシーフードカレーは、エビのだし。水にエビの頭とローリエ、白ワインを入れて煮込んでから、すりこぎで細かくしてから、ざるでこしてエビのだしとしたものを入れてあるの。どう?
気に入ったかしら… ニンジンは別にいい感じに煮込んでから、カレーに合流させたの」
とおばあちゃんが解説してくれる。
「おいしいよ。すごく。シーフードカレーに、エビのだしね… 今まで食べたことないよ」僕もおばあちゃんに言う。
「エビのだしはテレビでやっていたのを見たの… きっとミミちゃんが喜ぶと思って、今日作ってみたの…」
「うん。いいわね。これ… ごくごく飲みたいぐらい…」ミミちゃんのカレーのお皿は、もうすぐで空になりかけている。
「おかわりはあるからね…」おばあちゃんはほほえんで言う。
「おかわりお願い。ニンジン多めで…」とお皿を出すラミちゃん。
「私もおかわりお願い。魚介多めで…」とお皿を出すミミちゃん。
「ユキはどうするの?」おばあちゃんはユキ君に言う。
「ごはんはまだ残っているから、ニンジンと魚介を均等で、ちょっと少な目でいいよ」
とユキもおかわりをすることにした。やっぱりおばあちゃんの料理は絶品だ。
ニンジンもいい味しているし、魚介もいいし。エビのだしもいいし。
わおーん。外で犬が鳴く声がした。
びくっと、ラミちゃんは体を固まらせる。
「なーにやっぱり、怖いの。わんこ」ミミちゃんはラミちゃんに言う。
「そうよ。悪い? 私は犬が怖いの… どうしても苦手。本能的にダメなのよ…
子犬でもだめだし…」ラミちゃんは、ちょっと警戒した感じで話す。
「あたしは平気よ、ドーベルマンでもオオカミでも大丈夫」
「オオカミ… さすがに目の前に出てきたら、すぐに気絶しちゃうわね…
そのときはユキくん守ってね…」
「オオカミはさすがに、僕では戦えないかな… そのときはミミちゃんに任せるよ…」
「まあ。任せなさい。あたしはユキ君だけ、かかえて逃げるから。ラミちゃんを餌に置いて行くのよ…」
どん。それを聞いて、ラミちゃんの足が床を踏む。
「あたしを置いて行ったら許さないから… ユキ君があたしをかかえて、持っていってね」とラミちゃんが言う。
「あんたは、重すぎるからユキ君は持っていけないわよ…」
「ぐぬぬ。覚えておきなさい。ウサギの恨みは根にもつのよ… あとでしっぽ縛るから、ほどけないような固さで…」
「おお。こわい。あんたのばか力でしっぽを縛られたら、どうなるか…」
わおーん。また家の外で犬の遠吠えが聞こえる。
がたっ。ラミちゃんが体をこわばらせる。
「大丈夫。ただのわんこだよ。きっと近所の斜め向かいのおじいさんのわんこだよ…」僕はラミちゃんに言って安心させる。
☆☆☆
今夜はちょっと寒い。
夕食も終わり、寝る時間。
自分の部屋にお布団をしいたとき。
がらっと部屋の戸が開く。
「ねえ。今日は一緒に寝ていい?」まくらをかかえて持っているラミちゃんの姿。
きっと夕食のときの外から聞こえてた、わんこの声が怖くなったんだろう。
「うん。いいよ…」
そのとき、もう一人。ネコミミ少女が部屋に入ってきた。
「やっぱり一緒に寝ようとしている… あんたばかりずるいのよ。あたしもユキ君と一緒にねる。
お布団を持ってくるから…」
ミミちゃんは、いったん部屋から出て行ってしまった。
そして、お布団を抱えて戻ってきた。
僕の布団の横にミミちゃんのお布団を敷く。
ラミちゃんはお布団を持ってきていないんだけど、僕とくっついて寝る気だ。
僕がお布団の中に入ると、同じ布団の中にラミちゃんが入ってきた。
ミミちゃんは自分の布団の中に入った。
「おやすみー」
「おやすみ」
「うん。おやすみ」
電気を消した。
たまにわおーんと、犬の声がする。
犬の声がするたびに、びくっとなるラミちゃん。
ぎゅ。くっついてくるうさ耳少女。
たれみみウサギの耳が僕の顔に乗っかる。
うさ耳の感触は、本物のうさぎの耳とそっくりだ。
僕はきっと怖くて震えているラミちゃんをぎゅっと抱きしめた。