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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
19/138

カザー星系の悪だくみと魔法少女(2)

 ここはとある場所。地球を摸した外。

「くっくっく。ではちびっこ共。テーブルの上に置いてあるステッキを一人1つ。どれでもいいから手に取るのだ…

そして、ステッキを上にかかげて、『へんしーん』と言うのだ…

その後動物が具現化する。わしはここから見ている…」


 あごひげおっさんのボスが言う。

 うさ耳少女が「あたしこれがいい」とピンクのステッキを手に取る。


 ステッキに白いふさふさのものが2本ついている。うさ耳みたい。


 「わしはこれじゃ」ギンちゃんはピンクのステッキに、白い紐で蝶結びになっているものを手に取った。「うむ。しっくりくる」


 最後にシロ。ステッキの両側に鳥の羽のようなかざりがついたもの。


 「へんしーん」

 「へんしーん」

 「へんしーん」


 それぞれ、けもの子幼稚園児達が言う。


 ララちゃんの体が2メートルほど浮き上がり、体があわい光に包まれた。


 一瞬でララちゃんが着ている服がはじけとび、かわりに白いふわふわもこもこの服が具現化した。


 うさ耳が自分の身長ぐらいの長さになっている。


 ギンちゃんは、体がうきあがることはなかったが、どこからともなく『さくら』のよな花びらが舞い、ギンちゃんの体が光につつまれた。

 一瞬でギンちゃんの着ている服がはじけ、かわりに巫女さんが着ている服になった。そのほかはいつものギンちゃんだ。


 シロちゃんのほうは、丸い光の円が地面から上のほうに向かって表示される。シロちゃんの体が光の円をくぐるときに、変身していく。

 シロだけ大人バージョンの体になった。羽は天使のような感じになり、羽の大きさも3メートルを超えるものになった。


「さて。説明しよう。そこの長耳族の娘。お前はジャンプ力と体の丈夫さがうりだ。体術で戦ってもらう。そっちの尾太族の子は、飛べないが妖術が得意だ。そしていまわしき飛羽族の子は広域魔法が使えるぞ」

 録音された声が聞こえる。

 長耳族って、うさ耳のこと? 尾太属はギンちゃん。飛羽族はシロちゃんかな。

「そして動物を具現化しよう。遠くをみるのだ。巨大ネコが具現化する。ネコパンチと尻尾での攻撃に注意せよ。3つのボタンは尻尾の先っぽについている」


「しっぽーの先?」

「あたし飛んでいって近づいてみる…」シロはさっそく大きな羽をはばたいて飛ぶ。


「飛んだわね」

「そうね」

 ラミちゃんとヒメルは飛んでいくシロを見た。なんか本人は飛んだことがないのに、羽を使いこなしている。

 さすがトリのハーフ。本能で飛び方を覚えているのか…


 シロは飛んでどんどん小さくなっていく。かなり遠くまで飛んで行った。そして、遠くに見える巨大なネコのそばについたように見える。シロの体の大きさと巨大ネコの大きさを比べると猫の巨大さがわかる。

 古代の巨大草食恐竜や巨大ドラゴンと同じ大きさみたいだ。


 目の前に巨大スクリーンが突然現れた。シロちゃんの持っているステッキに付けられているのだろうステッキカメラからの映像が映し出される。


「ねえ。シロちゃん。聞こえる?」

 ララちゃんはステッキに向かって話しかける。

「あー。聞こえるよ。これ通信機にもなるのね」

「うん。そのステッキにカメラがついているの。ステッキを巨大ネコのほうに向けてくれるかな…」

「うん。もうちょっと近づいてみる…」

 シロは飛行しながら、巨大ネコに向けて高度を下げた。


「にゃーん」

 巨大ネコはシロに気が付いて、手をふりあげた。


 シロの真横を横切る巨大ネコの前足。「うわっと」寸前で飛ぶ方向を変えて、ネコの前足の直撃をさける。

 シロはそのまま飛行して、巨大ネコの後ろのほうにまわる。

 尻尾がある。ネコはそのまま前を見たままだ。


 ちょっと離れたところにシロは降り立つ。

 20メートルぐらい離れたところにネコの尻尾がある。地面の上に乗っている尻尾。

 巨大ネコは自分の前足をなめて毛づくろいをし始めた。


「いまのうち…」ゆっくり巨大ネコの真後ろからシロが歩いて、尻尾のところに近づいていく。

 シロは巨大猫のしっぽによりふっとばされた。そして動かなくなった。


「あたしが行く」ララちゃんは、シロが動かなくなったのを見て行くことにした。

 ララちゃんはうさぎ跳びではるか上空までジャンプして巨大猫へと近づいて行く。


「えーとララちゃん。たぶんネコの目線に入るところから近づかないほうがいいわよ…」ミミちゃんはララちゃんに注意する。


「えーなんでー。もう目の前だよー」ララちゃんはネコを見る。あ。やば。ネコがこっちを見た。巨大猫は前足を上のほうに持ち上げる。


「あ。あ。あ。やばい。でも。体制が変えられない…」


 ジャンプして、そのあと落下するような形でネコに近づいていくララちゃん。


 いいタイミングで、巨大ネコは前足を振り下ろした。べちっ。ララちゃんは前足に直撃して地面に落下した。


「あー。いたいわ…。あ。ひょっとして。。。」ララちゃんはネコにネコパンチを食らったが大丈夫のようだ。


 ララちゃんは真上を見る。ネコはララちゃんを見下ろしている。前足が動いた。やばい。

「そーと。歩いて去っていくわね…」とララちゃん。


「あー。だめよ。自分の前を横切って、過ぎたあたりからネコは襲ってくるのよ…」ミミちゃんはララちゃんに忠告をする。


「気配を感じたらジャンプして逃げるから…」ララちゃんは、耳をネコの方に向けながら前を見てそろっと歩いて行く…


 きた。

 ララちゃんはジャンプする。べちっ。巨大猫の前足がさっき歩いていたところを叩く。

「あぶなかった…」べちっ。


 いたたたた。ララちゃんは何かに叩かれた。

 自分の左側に巨大猫の前足が着地する。その2秒後ぐらい後、自分の右側に巨大猫の前足が着地する。左足と右足だ。やばい。冷や汗を出しながら真上を見る。巨大にゃんこのあごの下が見える。


「あー。助けて…」こわい。ララちゃんはウサギのハーフだから、本能でネコ科の捕食動物の怖さを知った。


「わしが行く…えーとこれじゃな」ギンちゃんはステッキにまたがって、飛んでいく。


 ネコの近くに着地すると。「眠るがよい…」ギンちゃんは祝詞みたいなものをつぶやくと、ステッキからまばゆいぐらいの光が出て、ネコはその光に包まれた。


……


 すーすー。と巨大猫は居眠りを始めた。

「よし。やったのじゃ。尻尾のボタンじゃ…」

 巨大猫の後ろで気絶していたシロは起き上がり、尻尾まで歩いて近づいてボタンを3つ押した。

 ボタンを押すと巨大猫はだんだん小さくなっていき、最後には光を出して消えた。


「クリアね」ラミちゃんは、ほっとして立ててた耳の力をゆるめた。


 ちびっこ3人が戻ってきた。戻ってきたところで、3人の変身が解けた。


「ふっふっふ。頑張ったなちびっこ達よ… では次に中学生組だな…3人ともステッキを取れ」


「ねえ。あのさ。僕は男なんだけど。僕もやるの?」

「まあ。そうなんじゃない。人数分あるし…」

「ユキ君の魔法少女姿? どうなるんだろ…」

「いやぁ。本当にやるの…」

3人それぞれステッキを手にとった。ユキ君は一番最後にステッキを手にする。

「ステッキを上にかかげて、『へんしーん』と言うのだ…」あごひげおっさんのボスが言う。


「変身」

「へ。へんしーん」

「ぼんきゅっぼんのバニーガールになーれ」

 ミミちゃん。ユキ君。ラミちゃんが言った。ラミちゃんだけ違う言葉を言った。


 ミミちゃんの立っている地面から円の光が現れた。そしてミミちゃんの体が光って、着ていた服が一瞬で無くなった。そして1...2...3秒たってもそのまま。


「にゃ。にゃによこれ。素っ裸のままじゃない…」


 左手で両足の又のところを隠し、右手で胸を隠すミミちゃん。


 その声にユキは一瞬ミミちゃんを見る。本当に何も着ていない。クロネコの猫っ毛があるので人間の女子の素っ裸よりは刺激が少ない。

「にゃに見ているのよ…」ミミちゃんは、尻尾で僕の顔をぱしっとぶつ。あ。尻尾僕の顔まで届くんだ…

「あ。やっと服が出てきた」ミミちゃんの服が遅れて具現化した。白を基調とするふりふりのネコミミメイド服。それと手には巨大猫グローブ。肉球がついているやつだ。


「げっ。にゃによこれ… ステッキが持てないじゃない…」

 巨大猫グローブ。野球のグローブよりは小さいが、グローブに大きな肉球がついており、肉球がじゃまでステッキを持つことができない。


「はずれだな…」あごひげおっさんが言う。

「はずれってなんなのよ」ミミちゃんは尻尾を太くして怒って言う。


 そして、ラミちゃん。ラミちゃんの立っている地面から円の光が現れた、光の輪が下から上に移動しラミちゃんの服が一瞬で無くなる。ラミちゃんの体は光っていて輪郭だけわかる。

「やった変身しそう… 身長伸びているといいな…」というラミちゃんの声がする。

 そしてすぐにバニーガールの服装になった。黒い網タイツのものだ。

「げー。バニーガールだ。それにあたしは服装の他は変わってない…」ラミちゃんの身体サイズはそのまま。バニーガールの衣装になっただけ。胸の大きさも変わらず…


「ぶーっ。にゃによそれ。傑作だわ… ひゃっはっは。後ろ後ろ…」ミミちゃんは尻尾でラミちゃんの後ろを指さす。


「なによ。おかしなこと… ってなによこれ。あたしの尻尾と違う…」

 子豚ちゃんの尻尾と同じものがラミちゃんのお尻から生えていた。


「おっかし。おかしい。笑い死んでしまうわ」地面を叩きながら笑い転げているミミちゃん。

 ラミちゃんは、4つ足になって地面を右手で叩いて笑ってるミミちゃんのお腹を下から蹴り上げた。

「ぐぎゃーーーー」ミミちゃんは、上空へと吹っ飛んでいく。


「もー。あたしはこれ… にゃんでよ…」ミミちゃんの口癖がうつったラミちゃん。

 ラミちゃんはユキ君のほうを見る。


 ユキ君の変身が始まる。ユキ君の体が一瞬まばゆい光を放ったかと思うと、服が一瞬で脱げてあたりにはらはらと下に落ちた。一瞬だけユキ君の裸の姿が見えた。そしてユキ君自体も消えてしまっていた。

 ユキ君が消えた? ラミちゃんは蹴っ飛ばしたミミちゃんのことを忘れてユキ君のいたところへ歩みよる。


 ユキ君が着ていた服の下から何かが出てきた。白い猫だ。

「僕ひょっとして。猫になっちゃった?」猫がユキ君の声でしゃべった。


「なにこれー。本当にユキ君。かわいい猫になったのね…

って。ユキ君もステッキ握れないじゃない。ステッキを使えるのはあたしだけ?」ラミちゃんはステッキをぶんぶんふって言う。


 ミミちゃんは、少しぼろぼろになりながら戻ってきた。「あんた。バカちからで蹴らないでくれる?ただでさえ、あんたのキック力はすごいんだから…

ところで、ユキ君は?」


 ラミちゃんが示す方向をミミちゃんが見る。


 白猫だ「あはは。僕だよ…」ユキはミミちゃんに言う。


「かっわいいわねぇ。猫になったの? これ。あたしがもらっていい?」


「だーめ。これはあたしがペットとして飼うんだから…」

「ふぅ。中学生組は… おい。忘れてないか。動物が具現化するぞ…」


 さっき、巨大猫がいたあたりに何かが具現化する。具現化が終わったところを見ると、今度は巨大ウサギがいた。ウサギは普通に座っているだけ。あんまり動かない。


「巨大ウサギだな。3つのボタンは巨大ウサギの尻尾の付け根、ちょうどお尻のところにある。座っているから地面と接している。巨大ウサギ謎の能力が1つあるぞ…

ゴミのような脳みそをフル回転させて考えればクリアできるだろう… くっくっく」ひげおっさんが解説する。


「あたしが先に行くわ。ウサギには恨みがあるのよ…」ミミちゃんはステッキをやっとのことで腕をつかって持ち上げると、普通に走っていった。ステッキが使えないから飛べないのだ。


「や。やたらと遠いところに具現化したわね。結構遠いし… しっかしでっかいわね…」


 ミミちゃんは、巨大ウサギから10メートルは離れたところから、ウサギの周りを歩いてみることにした。うさぎは前のほうを見てあまり動かない。鼻をひくひくさせたり、耳がたまに右のほうを向いたり、前のほうを向いたりするだけ。


 ミミちゃんは、巨大ウサギの後ろにまわる。うさぎの丸い尻尾が地面に押し付けられているのが見える。「えーとたしか、尻尾の付け根にボタンがあるって言ってたわね…」

 丸い尻尾の大きさは1メートルぐらいある。尻尾だけ持ち上げようとする。


「尻尾だけといってもくそ重たいわね…」両腕の力で持ち上げる。ちょうど巨大猫グローブについている肉球が滑り止めになって持ち上げやすい。

 立ったままの姿勢で両手で巨大な丸い尻尾を持ち上げると、自分で尻尾の付け根にボタンがあるかを見ることができないのに気が付いた。


「じゃあ。あたしが行くわ…」ラミちゃんが言う。


ラミちゃんはステッキを上下にふる。すると、羽のようなものがステッキに生える。


「これで飛べるのかな?」ユキはステッキにまたがるラミちゃんを見ながら言う。


「お。とんだ…あ。あれっ」思ったよりステッキの高度が上がらない。

 地上から50センチぐらいより上。でも浮かんでいる。


「あんた。重すぎるからよ… ほら。早く来なさい…時間がないわよ…」

「ぐぬぬ。待ってなさいよ…

じゃあ。ユキ君。そこから指示出してね…行ってくるから…」

「うん。わかった」


☆☆☆


「うわっ。でっかい…」

 ラミちゃんは、巨大ウサギのいるところに到着する。近くに古びた高層ビルがある。

 でもこのウサギ。全く動かないわね。けっとばしても動かないんじゃないかしら。

 ラミちゃんは思いっきりウサギのお尻を蹴っ飛ばした。どすっという音がした。でも巨大ウサギは全く動かない。

「ウサギから攻撃してこないのはいいんだけど。ほら。ボタン」


「ボタンね。本当にこの下にあるの?」ラミちゃんは、巨大ウサギのお尻と地面の間に手を入れる。


「あたしは、持ち上がったら下にもぐってみるから…」


「わかった。えいやってなにこれ、くそ重たいじゃない… んぁああああっと」

 ラミちゃんが力いっぱい持ち上げると、ウサギのお尻と地面の間に30センチぐらいの隙間ができた。


 ミミちゃんはしゃがんで下から見てみる。

「うーん。毛に埋もれて見えないのかもね。じゃあ仰向けになって下にもぐってみる…」

ミミちゃんは地面をはって、ウサギのお尻の下にもぐっていった。

 ちょうど。ミミちゃんの上半身がウサギの身体の下までもぐったとき。


「あーつかれた。ちょっと休も…」ラミちゃんは手をはなした。


「んぎゃー」ミミちゃんは、巨大ウサギのお尻と地面の間に挟まれた。完全に巨大ウサギのお尻がミミちゃんの上半身を隠して押しつぶしてしまった。


「にゃー。にゃにするのよ。ぐぶ。重い…」ミミちゃんの尻尾は、最初ばたばたと動いていたが動かなくなった。


「ほら。何やっているのさ。ミミちゃんが可哀想だよ… ラミちゃん。持ち上げて。早く…」


「ちっ。しょうがないなぁ…」ラミちゃんは、うんしょっと巨大ウサギのお尻を持ち上げる。

 少し平べったくなったミミちゃんの体が見える。


「ミミちゃん大丈夫?」ユキはミミちゃんに声をかける。


「ほらっ。寝ていないで起きるのよ…」ラミちゃんは、ミミちゃんの足をけっとばした。


「んあ。ああ。気絶しかけてたわ… にゃんてことしてくれるのよ。ウサギのお尻の下で潰されたわよ」

「ところでボタンはあった?」ラミちゃんが持ち上げながら言う。


「えーとね。あった。でも問題があるの…あたしの手だとボタンをいっぺんに3つ押してしまいそう…」


「じゃあ。僕も行く。何かできるかわからないんだけど。そういえばステッキどうしよう…

ステッキを見て持ち上がれ。とか言ったら上がらないかな…」

 ユキはステッキを見ると、ステッキが空中に浮いた。


「上がっているわね」ヒメルがユキ君を見て言う。

「たしかに…」魔法っぽい。あれだ、魔法少女の使い魔の猫みたいだ。

「えーと。上。斜め。水平…って自由にステッキを動かせる。そうだ僕がステッキの上に乗れば飛べるかも…」よいしょっとステッキの上に4つ足で乗ろうとする。

 よっと。なんとかステッキの上に乗るとゆっくり飛行していった。


☆☆☆


「やっとついたよ…」ユキは座り込む。そして猫がよくやるように前足をなめた。

「猫っぽいわね…ユキ君」

「さまになっているわよ。その座り方とか…

ああ。いいわね。その後ろ脚。後ろ脚の湾曲しているところとか好きよ」ミミちゃんが猫となっているユキ君を見て言った。


「そうなんだ。で。どうしようか」

ユキは2人を見る。ラミちゃんは立っているので見上げるようになる。猫の姿でラミちゃんを見ると、大きく感じる。ラミちゃんの白い太ももが見える。ミミちゃんは地面にすわりこんでいた。


 ミミちゃんはユキ君のステッキを見ながら言う。

「ユキくん。そのステッキを浮かすことができるんなら、あの巨大ウサギを持ち上げることはできる?」

「うーん。どうだろう。やってみる」

 ユキは巨大ウサギを見る。そして力を込めた。

「おお。すごい。動いている」

「確かに。隙間ができたわよ…」

 巨大ウサギのお尻と地面の間に20cmぐらいの隙間。

「どんな感じ? ユキ君大丈夫?」

「大丈夫。頑張るから…」


 ラミちゃんは、地面に四つん這いになり、巨大ウサギの下にもぐろうとする。

「ちょっと狭い。もうちょっと持ち上げてユキ君」

「うん」


「ゆーき君。抱っこしてあげる…」ミミちゃんはユキ君を膝の上に抱っこする。

 ユキの頭の上に肉球グローブをおいて、頭をぽんとする。


「結構つかれるよ…これ…」力を抜くときっと巨大ウサギは地面に落ちてしまうだろう。


「あ。そうだ」ミミちゃんは小声で言ってから。ふー。

 ユキ君の猫耳に向かって息をふきかけた。

「にゃ」ぴくぴくとユキ君のネコミミが動く。

 また。ふー。


「にゃ」

「ぎゃあ"」ラミちゃんの声がした。やっぱり…

 ユキ君の気がそれたので、巨大ウサギのお尻は地面にくっついていた。

 ばたばた。ラミちゃんの両足が動いていたが、しだいにその動きも止まっていった。


「ああ。ごめん。ごめん。えーと…」ユキ君は力をこめる。そしてやっと巨大ウサギの体は持ち上がった。

 下から少し潰れたラミちゃんの体が見えた。

「く"ぉっほごほ。あ"ー苦しかった。ねえ。ミミちゃん? ユキ君に変なことしたでしょ…」

「そうね。えーとこうして。ふー。と」

「こんど。同じことやったら、あとでプチころすから…」

「わかったわ」ラミちゃんがボタンを探すために仰向けになる。


「ねえ。ゆーきくん。あなたが猫のときにやっておくけど… これはどう? ふっふっふ」


「えっ何?」ミミちゃんは、ユキ君のお腹に自分の顔をくっつけて、すりすりした。

「ふぎゃー」ユキは自分のお腹にミミちゃんの顔が埋められてふぎゃーとなった。

 ぷちっ。という音が聞こえた。

 やっぱり… 巨大ウサギのお尻の下敷きになるラミちゃん。


「あ。ごめん…ちょっと待って…すぐに浮かすから…」

 巨大ウサギを持ち上げるが、ラミちゃんは動かなかった。

「ごめん。ラミちゃん。大丈夫?」

「ねえ。潰れちゃった? おーい。ラミちゃん。ニンジンがあるわよ…」

 とミミちゃんは言う。


「ぐっ。はーはーは。息ができなかったのよ… こんどやったら、ミミをやるわよ(殺す)。

それと、もうウサギのお尻の下はきらい…」ラミちゃんは、巨大ウサギの下へもぐり、ボタンを順に押し、後ろ向きに動いて巨大ウサギの下からでてきた。

 巨大ウサギの体の色が赤色に輝いている。


「やった。これでクリアね…」ミミちゃんは後ろに後ずさりしながら見上げる。

 あれっ消えない…


 巨大ウサギの光が強くなった。


☆☆☆


「ぎゃー。にゃによあれ…」ミミちゃんの尻尾が太くなる。

「えっ。何よ… あ"」ぼん。ユキ君の尻尾も太くなる。


 ぎろっ。ステッキをにらむ怪物。

「うひっ」

「あ"」

「ぎゃ」

 ちびっこ3人は、ものすごい顔を見て気絶してしまった。


「ど。どうだ。驚いただろう… あれは変化だ。クリア条件はボタンを押すことだ。ボタンは同じところにあるぞ…」ボスの姿だけど、顔をこっちに見せず後ろ向きにしゃべっている。


「ボスもこわいのね」

「きっとそう…」

「おい。あれは僕でもちびるぞ… 目線を合わせられない…」

ミアお姉さんとヒメル。みのるはモニター越しに見える怪物を見て言った。


「あれは、ライア星系の人をモチーフに顔を巨大ウサギから挿げ替えたのだ… あと炎を吐くぞ…」


「げっ」元は巨大ウサギだったが、怪物となっていた。身体はウサギのままだが、顔は見ることもできないような、おっそろしい顔となっていた。それに炎を吐く…


 ぎろっ。怪物は足元の3人を見る。

 口をあけた。

 

 ごぉ。


 炎が3人をつつんだ。


「あちち」

「ぎゃー」

「うわぁー」

 生身だったら、燃えて即死だったはず。でも魔法少女の力によって、本人保護機能が動き、少し焦げただけで無事だった。


 3人はクモの子を散らすように別々の方向へ逃げた。


「どうするのよ。あれ…」

 炎を吐くので近づくこともできない。ましてやもう、持ち上げることもできない。


「昔。アニメで見たんだけど… 『3人のステッキを合わせると魔法力が10倍になって、怪物をやっつけることができた』というのがあったんだけど、同じようにできないかなぁ」ユキは昔見たテレビ番組のことを言った。

「あ。あれでしょあたしも見てたわ」

「あ。あれね…」

「じゃあ。やってみる? 僕は魔法でステッキを空中に浮かせることができるけど…」

「あたしは普通に両手でステッキを手に持つことができるけど…」

 ユキとラミは、ミミの猫グローブを見た。


「ねえ。ミミちゃん。尻尾あるじゃない…」遠くからステッキごしに声が聞こえる。これはヒメルの声。

「そうだ。ミミちゃん。尻尾を手のかわりに使っているじゃない。ユキ君の背中をトントンしたり…」

ミアお姉さんの声。


「そうだわ。両手に意識がいって、尻尾のこと忘れてたわ…」ミミちゃんは尻尾をステッキの柄にまきつけて持ち上げる。

「あ。できたね」ラミちゃんはミミちゃんの尻尾を見て言う。

「ひょっとして、僕も尻尾でステッキを持ち上げることできたのかな」ユキは後ろの自分の尻尾を見ながら、尻尾を左右に動かす。


「ユキ君の身体のサイズだと、ステッキは大きくて扱うのは大変かも…」ミミちゃんはステッキをふりまわしながら言う。


「じゃあ。どうだっけ。『あたしたちの力をひとつにー』だっけ」ユキ君は魔法でステッキを浮かせながら言う。

「そう。じゃあ3人で合わせて言うわね」


「あたしたちの力をひとつにー」

「あたしたちの力をひとつにー」

「あたしたちの力をひとつにー」


 3人のステッキの光が強くなる。


「じゃあ。怪物よ消えろー」

「いけぇ」

「えいっ」

 3人は怪物に向かってステッキをふった。


 怪物は口をあけた。

「え"」

「あ"」

「う"」

ごばぁー。炎が3人をつつんだ。

 たっぷり20秒間炎に包まれて、3人は逃げ出した。


「あちちち。ふーふー」体はなんとかなったが、体から離れたところにあった尻尾の先が燃えていた。

「ぎゃー。あちぃ」ラミちゃんは耳の先が焦げていた。

「うわぁ。尻尾尻尾」ユキ君も尻尾の先が焦げていた。

 ミミちゃんは自分の尻尾とユキ君のしっぽめがけてふーふーしていた。

「あたしのもー」ラミちゃんは、ミミちゃんのそばに行く。ミミちゃんは尻尾とウサ耳をふーふしていた。


「あ"― ひどいめにあったわ…」

「きかなかったわね… あ。あれ?」


 怪物の姿がいつのまにか無くなっていた。


「どこ行ったのかな…」

「ねえ。みんな。あそこじゃない?」目がいいヒメルの声がステッキごしに聞こえる。


「どこ?」

「えっ」

「あ。あれ。あの小さいの…」


 怪物は普通サイズのウサギになっていた。魔法の力で小さくなったようだ。魔法が効く前に、炎を吐いたようだ。


ミミちゃんは、普通のウサギを抱っこするように、怪物だったものを抱っこして、ラミちゃんにお尻を見せる。


「えーと。小さくて押しにくいけど。ぽち。ぽち。ぽち」

 ラミちゃんはボタンを押した。


 ウサギは光に包まれて消えていった。


「ふっ。クリアしたようだな。では戻ってこい。次は高校生組だ…」


 ラミちゃんは自分のステッキと合わせて2人のステッキを持つ。ミミちゃんはユキ君を抱っこする。

 普通にあるいて、3人はみんなのところへ戻る。


☆☆☆


「あーつかれた」

 変身していた3人は元にもどった。ユキ君も普通の男の子になった。

「あー戻っちゃったのね。猫のままのユキ君も可愛かったのに…」


「じゃあ。あたしたちね」

「そうね…」

「そうだな…僕もユキみたいに動物になるのかな…」

 残っていたステッキを手に取る3人。


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