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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
14/138

触れ合い週間と、キラに連れて行ってもらう西暦4000年の未来

 ハーフとの触れ合い週間。


 けもの子ハーフの子がこの世に登場してから… 世間的に『ハーフとの触れ合い週間』というのが出来た。ふれあいを大切に、そしてふれあい週間が終わったあと、ハーフの子からホームスティ先の人間に感謝の気持ちを表すようなことをする。というのが浸透していった。


 ミミちゃんとラミちゃんは、おばあちゃんと一緒に買い物に行くことにした。


「今月はネコの日よね。おっさかな。おっさしみ。たのしっみ」

 ミミちゃんはふんふん。と歌を歌って上機嫌。


 スーパーへ到着。買い物かごを手に取るおばあちゃん。

さっそく魚介コーナーへ行く一行。

「やっぱり安いわね」

「そうね」

「これ。お刺身500円均一(ハーフの子がホームスティしている家庭限定)。ってあるわよ。買って」


 ミミちゃんは、お刺身500円均一のコーナーのトロのパックをじっと見ている。


「普段高いからね。買うかね」おばあちゃんは、トロのパックと上トロのパックを手にする。


「やっぱ。こっちがいい」すみに特上のトロのパックが一つだけ残っているのに気が付いたミミちゃん。


「特上ね。普段高いからね。じゃこっちにするかい」

トロのパックと特上のトロのパックをかごにいれた。


「あたし、野菜コーナーへ行ってくる」ラミちゃんはおばあちゃんに行ってから、1人歩いて行く。


「あれは無いと思うわよ…」ミミちゃんが後ろから言う。


 ラミちゃんは、頭の上の長いうさ耳で返事した。


☆☆☆


「やっぱりない」特別に取り寄せた各産地のニンジン。


 前のふれあい週間(ウサギの日)にはあった。次のふれあい週間(ウサギの日)まで待つしかないか。

 それか自分で取り寄せるか。でも高いんだよね。特別なにんじん。


「あった?」ミミちゃんは、上機嫌。尻尾も元気な感じ。

 ラミちゃんは、ちょっとがっかり、ラミちゃんの耳はしょんぼりと垂れてる。


☆☆☆


 買い物の帰り。ミアお姉さんが歩いてきた。その隣にはキラさん。

「やっほー。遊びに来たよ」キラは手を振っている。


 あとからみのるお兄さんとヒメルも歩いてきた。


 夕食まで時間があるので、ミアお姉さんの家に集まることにした。


「さて。夕食までの時間。何をしようかと思って考えていたんだけど。みんなを未来に招待しよう」

 キラは言った。先日の騒動(過去の地球に小惑星が衝突の危機)も落ち着いたからだ。


「社会見学だよ。僕のTMRを使って生身で君たちを移動させる。危険はないよ…

どうする?」


「夕食まで間に合うかな?」ユキは言った。


「そんなものTMRだよ。出発した30分後にでも、戻ってくればいいだろうに…」キラはあたりまえかのように言った。


「そっか」僕はなっとくした。


 キラは、ミアお姉さんの家の廊下の壁にTMRを向けた。

 自動ドアの形が現れた。

「さあ。入って入って」キラはみんなの背中を手で押して入り口まで誘導し、中に入らせる。


 キラは最後に自動ドアをくぐる。


☆☆☆


 場所がかわって、ここはクロとゆみ子がいる施設。


 ちょっと時間がすぎてから、床に円の光が2つ現れてシロとソラが具現化した。


「みんなおそろいね」

「あたしたちが一番最後?」

 背中に羽の生えたトリのハーフ娘達は言う。


 キラはみんなを見てから「ミアお姉さんは何回か来ていると思うけど、稼働型デバイスではなく、生身で来た未来だよ。違いは感じるかい?」


 キラはみんなに聞く「どうだろ」ミミちゃんは耳と尻尾を動かしながら言う。

 ラミちゃんはうさ耳を立てた。ミアお姉さんは「うーん。稼働型デバイスで来ているときと同じ…」


「ねえ。クロは?」ミアお姉さんはゆみ子に聞く。


「今日はお休みよ。有休休暇をとってるの」


「猫が有休休暇…」


「さすが未来ね」

 シロは言う。クロは脳改造された普通のクロネコだ。

 TMRデバイスを使って、床をタッチすると人と会話ができる猫だ。

 ちなみに、クロのTMRはこの未来の時代のもの。今現時点では猫ぐらいの大きさのものしか時間移動できない。


「さて、これが稼働型デバイスだよ。ミアお姉さんは何回か使っているよね…」キラは部屋の隅っこに置いてある金属製のものを見せた。

 乾電池の単一の型を大きくしたような円筒形のものがあった。

 キラは説明する。同期を開始すると金属が液体状になり変形する。金属が多ければ隣の金属にあまった部分は移動し、足りなければ隣の稼働型デバイスから部分をもらう。


 流動系の金属。半液体や固体。自由に形を変えることができ、有機体や服を構成する無機物はこの中に入っている。配線や電気回路はない。流動系の金属に、伝導体と非伝導体の部分があり、これ専用のDNAみたいな設計図により回路は自動構成される。

「後ろに単三電池を入れるような蓋があるでしょ。ここに記憶装置を入れると再構成されるのよ…」

 とゆみ子はキラに続いて解説をする。


 みんなは、ものめずらしいのでじっと見ている。


「ねえ。ここの建物を出て、外の町を歩いてみたい…」僕はキラに言う。


「だめかな。ここはあなたたちの住んでいる時間軸と近いからね。余計な影響を与えないためにやめとくかな。そのかわり、もっと未来に行きたくない? 僕の使っているTMRが現行バージョンの未来。

今とは違って1年に6回ソフトのバージョンが上がるようになってる。だから計算すると西暦4056年」


「なんか想像できない…」ミアお姉さんはウサ耳を立てて言う「楽しみね。あたしも見てみたい」


 キラはTMRを操作してからTMRを壁に向ける。自動ドアが表示される。


☆☆☆


「ここが4056年の日本?」移動したみんなはあたりを見る。


 でもそんなにユキが住んでいる日本とあまり変わらない。


「ここは4056年の日本なんだけど、街並みは2240年を再現している地域なのさ…」キラはあたりを見ながら言う。


「よく見ると違うよ。あれ。あのビル映像が立体になってる」都会で見るビルの側面。


 ビルの側面も有効活用しようということになり、ガラス張りのビルを外から見ると黒い色に見える。

 そこに看板の広告と同じように映像を映しているのは見たことがあった。


 でも、今見えているのは立体に浮かび上がってる映像。


「ねえ。ちょっと歩いてみましょう。あの角からそのビルを見てみましょ」ミミちゃんは上を見ながら言う。


 その言葉にキラは歩き出す。その後ろをついて歩く人達…


「あー。違う。見る角度によって、映し出される映像が切り替わっていく…」反対側から見た同じビル。


 さっきは清涼飲料水の広告動画が表示されていたが、今度は傘の広告になっている。


 横断歩道。車は走っていない。でも道路はある。


 交差点。信号が赤になった。


「うわあ」僕は地面を見ると地面の灰色が消えて映像が映り始めたのに驚いた。


 3丁目のスーパーの今の価格情報。夕方タイムセールが開催『500mlペットボトル飲料が1本198円』と表示が出ていた。


「ねえ。500mlペットボトルの値段。タイムセールで198円って、どんだけ値上がりしているのよ…」

 やっぱり未来だ。「ねえ。これって西暦2240年の値段? それとも西暦4056の値段?」


「ああ。それ? 西暦2240年の値段…」キラは言う。


「あれ。見て…」ミアお姉さんが言う。

 犬を散歩させている人?がいる。リードを握っているのは人ではなく二足歩行する何か。


「全身銀色のタイツを頭からかぶった人みたいね」ミミちゃんはそれを見てミアお姉さんに言う。


「あれ、稼働型デバイスの簡易型。当時のものを再現しているの。わんこの散歩を忙しくてできない人向け…」キラはいろいろ知っている。


「ふーん。なんか面白いわね。かわらないものもあるし。見たことがないものもあるし…」ラミちゃんはあたりを見ながら言う。


「ファーストフードのお店もあるし、コンビニもあるし、あたしたちの時代とそんなには変わってはいないわね…」シロ。


「まあ。急になくなるわけはないし…」ソラはシロの言葉に続けて言う。


「あれは、今の時代にはないわよね…」ミミちゃんは、しっぽでユキ君の肩をとんとんとする。


ユキはミミちゃんが、尻尾で指を指す方向を見る。

「自動ドアレンタル。および携帯型移動装置。タイムラグなしの超高域通信用端末の販売」


「ねえ。あれって…」僕はキラに聞いてみた。

「クロの時代で実用化している移動用の自動ドアと、通信装置。あなたたちのバスとか、スマホとかのようなもの…」キラは説明をする。


「タイムラグなしの超高域通信用端末ってなに?」


「この時代では宇宙へ人が進出しているんだけど、異なる星系の異星人ともやりとりがあるんだよ… 普通の電波や光を使う通信だと遅すぎるでしょう…

TMRでも使っている技術を使ってデータ通信網を時空間を飛ばしてやりとりしているんだ。

宛先の座標の他に、時間情報も付加する必要があるんだけど『いついつ』の『どこどこの場所』の『誰』を指定して電話をかけるようなもの…」 


「じゃあ。移動することにしよう。時間移動はなしだけど… 西暦4056年の地域へ…」

 キラはビルの壁に自動ドアを映し出して、みんなを移動させる。


☆☆☆


「ここが、西暦4056年の景色…」僕はあたりを見回す。

 さっきの都会とは景色が変わり公園のような光景が広がっている。


 歩道の横の木々。歩道の横のベンチ。小さい小川。日光もやさしい。


「西暦4056年の公園にでも移動したの?」ラミちゃんがキラに聞いた。


「いんや。ここは普通の地域だよ…

住民の家とか施設とか、そういうものは地下にあるよ。地上はビルとか建物。道路を解体して自然公園にしているんだ… 温暖化対策だよ。

むかし、温暖化で海面の位置がかなり上昇して、多くの地域が水没したんだ。


そのとき上に町を作るか、地下に作るかという話になって地下に作ったんだったと思うよ。

だから、地上は上の都市や構造物を解体して緑を増やし大部分を公園にした。

そのおかげで温暖化は解消して、海面の位置も自然に元の位置に戻っていったよ」

 キラの解説によるとそういうことだった。


「あれは?」円筒形の金属の建物。


「あそこから地下へ降りることができる。行ってみよう…」キラはみんなを案内する。

 円筒形の金属の建物の中に入りボタンを押す。エレベーターだ。


「ちん」音が鳴った。


外に出る。


「えっ」

「あっ」

「なにこれ…」


 地下のはず。でも上を見ると空が広がっている。


「あれは映像。本物の空ではないんだよ…。雨は夜中に降るし… 夜は暗くなって星も見える。

違うのは映像だからかなり星の数がいっぱい見えるんだよ」


 人はたまにしか見かけない。

 服装はさまざま。無地の生地に色がついているシンプルなもの。昔のスーツを着た人。見たことがない透明に近い服を着ている人。


「あそこのお店で飲み物買おう…」キラは建物を指さす。


 普通の建物。棚にいろいろな物がならんでいる。買い物袋がある。それにキラは物を入れていく。


 キラは数本の飲み物を入れて、その建物を出た。


「あ。お会計は?」僕はお金を払わずに出たキラに言う。


「これね。TMRデバイス。自動会計」未来ではTMRデバイスがスマホのようなものか。


☆☆☆


「飲み終わったら、底のノブを回すと不要になった容器が空中に溶けて消えるから…」

 キラが教えてくれた。


 飲料は250mlぐらい。底にノブのように回せるものがある。

 僕は飲み終わったので回してみた。


「うわあ。消えた」本当に空になった容器が空中に溶けて消えた。


☆☆☆


 僕たちは少し、このあたりを見てまわり、誰かのお腹がぐーと鳴った。


「あんたのお腹が鳴った?」ミミちゃんは、ラミちゃんのお腹を見ながら言う。


「あ。それあたし…」ミアお姉さんが言う。


「さてとお腹も空いてきたことだし帰るとしようか…」キラは言った。


☆☆☆


 キラのTMRにより、僕たちの時代に戻ってきた。


「あ。そういえば…ねえ。キラ。お願いがあるの…」ラミちゃんはキラにお願いをしていた。


「えーとなんだって。ひと月先の未来に行って、スーパーで各地域の特産ニンジンの袋を1つと、特選にんじんジュースを買ってきてって言うのかい?」キラはラミちゃんに言われたことを復唱した。


「うん。できる?」

「まあ。できるけど。やめといたほうがいいよ。まああれだTSIを使わない未来改変の結果を試してみるかい?」とキラはラミちゃんに言った。


「じゃあお願い…」ラミちゃんはキラにお願いをしたあと、キラはまた来るよと言った。

 その夜。無事にキラから地域の特産ニンジンとジュース1つをもらいラミちゃんは上機嫌になった。


☆☆☆


 一か月後。


 ラミちゃんのうさ耳がしおれてた。

「はあ」ため息をついてるラミちゃん。


 僕は元気がないラミちゃんに声をかけた「どうしたの?」


「それがね。今週はふれあい週間(うさぎ)なんだけど、スーパーにいつもは置いてあるはずの特産品のニンジンは売り切れて、置いてなかったの。それにジュースも売り切れ…」


「一か月前に手に入れてうきうきだったよね?」と僕はラミちゃんに聞いた。


「あると思ったのに…」しおれたうさ耳で言うラミちゃん。


「隣町は?」僕はラミちゃんに言ってみた。


「隣町は大きいから、すぐ売り切れるのよ。こっちは田舎だからあんまり買う人はいないし…

いつもだったらあるのに…」しょぼんとしているラミちゃん。


 壁に四角い光。

「やあ。遊びに来たよ…」キラが現れた。


「キラ…」僕は、うさ耳が垂れてしょんぼりしているラミちゃんのことをキラに話す。


「どうやら、今日は買えなかったみたいだね」キラは案の定そうなったか。という顔をしていた。


「なんでなんだろ…いつもはあるのに…」ちょっと赤くなった目でラミちゃんはキラに言う。


「それは、君が一か月前に手に入れていたからだよ。僕が買ったから無くなったんだ。それが運命さ…」とキラはラミちゃんの頭をなでながら言う。


「あんた。自分が育ててるニンジン。忘れているわよ。収穫できるんじゃない?」おばあちゃんが言う。


「そうね。もう大きくなったし。畑のニンジン収穫するか…」ラミちゃんは耳をみるかぎりちょっと元気になった。


「じゃあ。僕はヒメルとミアお姉さんのところに寄ってから帰るから…」とキラは部屋を出て行った。


「じゃあね」僕とラミちゃんはキラを見送った。


「僕も手伝うよ。畑の収穫」


「うん。おねがい…」


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