一時的に西暦4073年でショッピングをしたりして暮らす話(3) ... 月での買い物。
「ん」
目が覚めた。
朝。ちょっと早いけど、トイレに行きたくなった。
むくりと起き上がる。
一緒のベッドでキララと寝ていた。
キララはまだ寝ている。
キララを起こさないように起きて、トイレに向かう。
トイレは僕達の時代のものとあまり変わらない。
水は勝手に流れ、その後に自動でお掃除もされるが…同じだ。
キララが言ってたけど、キララが用をたすと音楽が流れるようだった。
性別を判断して女の子がお花をつんでいるときは、音楽が流れる。
外見が女の子みたいな子だと音楽が流れるのかな? それとも遺伝子レベルで性別を判断しているのかな。
僕はトイレを済ませてベッドに戻る。
部屋の気温はちょっと寒めになっている。
結構上空なせいもあるかも。空中に浮かんでいるマンションの部屋だし…
☆☆☆
僕は目をあけた。
「おはよ」
キララがじーと見ていた。
「あ。おはよ」
キララはちょっと前に起きて、僕の寝顔を見ていたようだ。
「んんーん」
伸びをした。
キララはベッドから出てカーテンを開ける。
そして暖房のスイッチを入れた。
暖房を入れると10秒ぐらいで部屋が温まる。
その後は部屋の保温モードに入る。
その後に僕がベッドの中にまだいるのを見て、ベッドの中にはいってきて、ぎゅっとだきついてきた。
「やっぱり朝。ゆっくりするのもいいね。それに誰もいないし…こうしてぎゅっと抱きついてもいいし」
キララが言う。
「うん」
起きたばかり。お布団の中は体温でまだ温かい。
僕はキララのしっぽをベッドのお布団の中でごわごわした。
☆☆☆
朝。一緒にシャワーをあびた。
2人で体をタオルで拭いたり、きららのしっぽをタオルで水分を吸収させてから専用のドライヤーで乾かしてあげた。
「ありがと。この時代でもしっぽは乾かすのに時間がかかるね」
「確かにね。出力をあげると、しっぽの毛が傷むからかも」
キララのしっぽをごわごわしながら、ドライヤーで乾かしてあげて、だいぶ良くなったところで浴室から出た。
ごはんは、手抜きして朝食セットの日本食を取り出してレンジで温める。
電子レンジではなくて別の仕組みを使っているようだった。
時間凍結の容器ではなく真空パックのような感じの容器に入っている。
ごはん部分を開けて、茶碗にどかっと落とす。
おかず部分も開けて、お皿に乗せる。
「あれ。思ったよりボリュームあるね」
見て言う。
「うん。容器は小さめだけどね。空間拡張を使ってて、普通の量の日本食が入ってる。1人用。2人用。3人用から…大家族向けまでいろいろそろってると思う。容器は回収ボックスに入れるとメーカーのところまで転送されるよ」
キララが言う。
たしかにここは未来だ。
パッと見僕達の時代と同じかと思ったら、改良されていて便利になっている。
☆☆☆
「今日は月に行ってみない? リゾート地だよ」
きららはミミをお手入れしながら言う。
大変だね。髪の毛の他、しっぽと毛の生えたお耳の中も乾かして、くしで手入れをする。
人間の女の子より大変。
「うん。いいよ」
どんだけ開発されているんだろう。
普通にTMRのゲートが町に設置されているので、お金を払って移動する。
ある企業の所有物となっていた。
通り抜けると、もう月である。
重力は違いがあるので、通路は重力制御されていて、0.95Gになっている。
「ちょっとだけ軽いね」
上のほうを見ると、真っ暗な中に浮かんでいる地球が見える。
地球は完全な丸ではなくて、欠けている。
「あっちに行くと、南国が再現されているんだって」
キララがしっぽを使ってあっちのほうを指さす。
「へー」
キララが歩き出すので、ついていく。
☆☆☆
かなり広いドームの中に小さいながらも、海と砂浜。ヤシの木がある。
小さいといっても、普通のビーチぐらいはある。
ドームも透明なもので覆われているらしいが、境目はわからない。
「ここはハワイだって」
僕は案内表示を見て言う。
本物のハワイは、西暦がうつりかわる中、温暖化で没したらしい。
小さい島国はかなり没したそうだ。
海面は元に戻ったが、住めなくなり人も少なくなり、自然のままとなっている。
これも、僕達が住んでいたころに、地球温暖化の問題に真剣に取り組まなかったかららしいんだけどね。
太陽は本物があるが、地球上と同じわけにもいかないが、気温は暑めになっている。
「暑いね…移動する? 中国とか」
キララが言い、ゲートを指さす。
なんで中国なのかなと思った。
☆☆☆
ゲートで違うドームの中へ移動する。
けっこうごみごみしたというか、雑踏な感じの街並み。
漢字の看板があるが、読めないものもある。
人はそれなりにいる。
見た感じ明らかに人と違う異星人もいる。
小さいお店が道のわきに立ち並ぶ。
「お土産買っていく?」
キララが言い、お店を見る。
小さい雑貨とか、櫛とかある。
「これ。買ってあげる」
キララが手にとっている櫛を見る。
お値段もお手頃。共通マネーで買える。
TMRで決済をする。
実に便利。どの時代でも、どの星系でも使える共通のシステム。
月にある中国っぽい町。
空を見ると、黒いし、地球も見えるから月だとわかるんだけど…ここに暮らしている人はそんなことは気にしていない。
「ねえ。隕石とか…大きいものがドームに落ちて来たらみんな死ぬの?」
とキララに聞いた。
「えーとどうだろう」
キララが言うが…そばにいた子供がぷっと吹いた。
「お兄ちゃん。何言ってるの? 空間転移で逆側に飛ばされるの知らないの?」
と言う。
「え? あ。そうなんだ。僕はちょっと遠くから来たから…」
と言う。
「へー。そうなの。ちなみにどこ?」
「え?」
えーとなんていうかな。
「うんとね。トエールミナの星系」
とキララが言った。
「へー。遠いね」
子供はわかるらしい。
聞いたことないけど。
「じゃあね」
と言って、子供はどこかに行ってしまった。
中国語でもないし、日本語しゃべってたけど。
TMRの自動翻訳か。あとで気が付いた。
でも看板の文字とか読めない。
道にならぶお店で、茶器を見たりして歩く。
おちょこみたいなちっちゃい入れ物と、急須がセットになっているものが売っている。
これ、僕達の時代にもある。この西暦4000年代でも同じものが売っている。
歴史が長い国だね。
「お客さん。買っていかない?」
中国茶の茶器のセットとお茶の葉のセットを見せてきた。
デザインがいい。カバンみたいなものにセットとして格納しているようだった。
「へー。安くしてくれる?」
キララがきくと。
「いいよ。付属品。ひとつなくしちゃったものだから、安くしておくよ。半額。いや1割でいいよ」
と言ってくる。
「1割って安くない?」
「じゃあ」
と言うことで買うことにした。
「まいどあり。これ。2000年ぐらい前からあるね。売れ残りってやつ。茶杯。同じの見かけたら買っておくといいよ」
茶杯は1つ足りなかった。
TMRの宅配ボックスに入れる。
中国茶の淹れ方も教えてもらう。
「次は…」
キララが見てる。
☆☆☆
あやしいキャラクターが書いてあるお土産があった。
「これ。買ってかない? 西暦3000年代当時のものだよ。めずらしいよ」
と言う店主。
ここだと西暦4000年代だから1000年前のものになる。
スケールが違うね。
見たことも聞いたこともないキャラクターがプリントされていた。
それは断り、別のお店に行く。
「これ。買ってかない? 西暦3900年代初期の当時のものだよ。めずらしいよ」
昔だけど…さっきのを見ると驚かない。
いろいろな店主が声をかけてくる。
にぎやかだ。
「これ見てかない? 当時のラーメンよ」
ラーメン?
見てみた。
「うわぁ。これ…ぜったいアンコだよ。上にのってる」
パッケージを見ると、異星人に人気の日本のラーメンと書いてある。
ラーメンの具の横にアンコが乗っている。
成分表は中国語なので良くわからないが、豆沙とあるのでアンコのことだろう。
キララがTMRで調べてみると、ある特定の異星人に人気だったらしい。
日本人とかは絶対食べなかった。ものめずらしいものが好きな人は食してみて、全部食べることができなかったという動画をキララが見せてきた。
「いやぁ。ちょっとこれはいらない。別の無いの?」
と店主に聞く。
「じゃ。こっちはどう?」
パッケージを見ると、昔流行ったラーメンのレトルト版。
時間凍結パッケージである。
パッケージには、普通のラーメンの上にアイスクリームを乗せているものだった。
「いらない」
手としっぽでいらないと言うキララ。
うわぁ。どんな味? でもね。牛乳とたまごで出来ているから…マイルドになるのかな。
でもせっかくのアツアツのラーメンが冷めちゃう。
「甘いものが好きで、猫舌というのかな。熱いものが苦手な人に人気だったのよ」
と言う。
「ねえ。普通のはないの?」
とキララが聞く。
普通の具のかわりに、カットフルーツが乗っている。
あたたかいフルーツ。うーむ。
「これもだめ」
としっぽをぱしっとしてキララが言う。
「じゃあこれは」
カップラーメンと賞味期限無限の時間凍結パッケージに入ったプリンがセットのラーメン。
別に食べるのかというと、違い、ラーメンの上にプリンをトッピングしてる。
続けて店主が言う「このラーメンじゃないと、プリンを乗せてもおいしくないね。騙されたと思って買うといいよ」
と言う。
まあ、一つだけ犠牲にして…おいしくなかったら別に食べればいいし。
どうしてもというので6個買うことにした。
☆☆☆
「いやぁ。変なものを買ってしまったね」
なんか、ここが西暦4000年代の未来で、地球ではなくて月の上ということを忘れそうだった。
面白いね。
未来でいろいろなところに行くの。
「次は日本の昔ながらの町を再現したところに行く?」
キララが言った。
ちょうどお昼どきだし。
「うん」
キララはTMRのゲートを指さした。