一時的に西暦4073年でショッピングをしたりして暮らす話(2)。
駅をはさんで向こう側へと移動する。
店舗がある。
三越と書いてあった。
「あれ。三越だって。僕達の時代にもあるよね。ずっとつづいていたんだ」
見て言う。
「そうだね。えーと」キララはTMRで調べているようだ。
僕はキララの様子を見ているとキララが言った。
「えーとね。いったん中国の会社に買収されて、その後、アメリカの会社へ吸収。その後、異星の会社と合併して、その後いろいろな会社を転々としたあと、結局日本の元三越の経営者の子孫が買い戻したみたい」とキララが言った。
「へー。そんなことあるんだ」
中へ入ってみると、1Fは化粧品とか女性ものになっている。きっと地下は食品とかなんだろう。
なんとなく、僕達の時代のデパートと変わっていないようだった。
違いは、実物とホログラム系のものが半々で置いてあり、空中に浮かぶディスプレイに広告が表示されていることである。
僕は空中に表示されている広告ディスプレイを指でちょんと押すと、指で押されて広告ディスプレイが移動した。これも粒子のようなもので出来ている。
「大昔の人がにぎわっていた時代のデパートを再現しているみたいだね」
キララが言う。
僕達のとあまり変わらないので、違和感はない。
ただ、エスカレーターは無くなってて、ゲートで上の階へと移動するようになっていた。
エレベーターもないようだった。
あと、トイレはそれぞれの体形ごとに用意されているような感じ。
ヒューマン用。小さい人用。それと大き目の人用。
デパートの天井は高めであった。
僕達は階を移動する。
2階。3階。4階は婦人服。
「ここも見て回ろう」キララが言った。
パッと見た感じは同じだが、他の星系の人用の服があった。
それと、デザインが地球人以外の人が考えたであろうもの。
見たことがない模様が入っている服があった。
背中に穴が空いているものとか、お尻のちょっと上に穴が空いているもの。
これはあれか。きつねっ子用とか、鳥のハーフの子用だろう。
でもデザインが見たことがないものとかある。どうみても固い素材でできているものとかいろいろある。
「僕も買っていこうかな」キララが久しぶりに僕と言った。
女の子だけど、キララがキラだったときの感じ。
見たことがない模様のワンピースっぽいもの。
でも、キララが手にとってこれはやめると言った。
わきばらのところにも穴が空いていて、地球以外の星系出身の人用のものだった。
「これはちょっと違ったね。あっちのにする」
生地がなんか違う。
服の裏にセンサーがついていて、指で押すと、生地の質感とか色が変化した。
あと、別のところを押すと、ちょっとだけ裾の形が変化した。
「これ面白いよ。ちょっとデザインが変わったり、色が変化するから飽きない服だね。これ買おう」
キララはそのままTMRで決済をする。
サイズは合わせなくてもいいの?と聞いたが大丈夫とキララが言った。
そのまま、めずらしいのでその階を見て回る。
その後上の階へ行くと、紳士服と子供服の売り場。
僕もせっかくなので、この時代の服を買うことにした。
着慣れた感じのデザインの服を選ぶ。
地球産だった。日本製。
腕に布の幅広のリストバンドを付けるのがこの時代の流行り。
他の星系の人がデザインしたリストバンドを付ける。
これも買う。
☆☆☆
上の階に行くとおもちゃ売り場とか本屋があるところに出た。
普通の紙の本は売ってなかった。
みんな電子化されているが、電子とは違う。
あの粒子状の物質を使った本であった。
制御用の板に格納したり、展開したりができる。
不要になったら廃棄もできる。
便利になったもんだ。
紙の本と電子化された本のハイブリッドといったところ。
本棚から手にとって、本を開いて中を見ることとか、読んだりできる。
文字が小さい場合は触ると、読みたい付近の行が拡大される。
本棚に並べておくこともできるし、制御用の板の中に入れておくこともできる。
「買ったら? 園芸用の本もあるし。人数分買って、電子データも追加で買って…」
とキララが言う。
「そうだね」
TMRで決済できるし…
未来のデパート。なかなか面白い。
ぱっと見た感じは同じように見えるけど、いろいろ違う。
未来の本を買う。そして電子データも買う。
宇宙関連の雑誌の過去10年分と、園芸雑誌。各星系にある植物の図鑑。
今年の裏路地にいるネコとウサギ。ウサギって路地にいるの?
世界のおいしい食べ物。近くの星系にある観光名所。とかの本。
キララは近隣の星系でやっているイベントとかコンサートの情報。
宇宙で聞けるクラシック関連の音楽とか、映像と演奏を組み合わせたイベントとかの本を買った。
TMRで調べることができるけど、プロが調べて編集してあるものなので見やすい。
☆☆☆
帰り道。きららのすそを引っ張る子がいた。
「おかあさん?」
見ると、お尻に太い尻尾と頭にきつね耳がある子がいた。
見たことがない子。
「あれ? 迷子? 私はおかあさんじゃないけどね。お家の人は?」
キララが優しく聞く。
「えーとね。わかんない。ずっと待ってるけど来ないの」
と言う。
見た目、5歳か6歳ぐらい。ちっちゃい。
どうしよう。と言う感じでキララが手をつなぐ。
「一緒にいたところは? 待っててと言われたの? それともはぐれたの」
とユキが聞く。
「うーんとね。あっち」
駅のほうを指さす。
「一緒に行こう」
キララが言う。
駅についたが、人はまばら。
この子のおかあさんはどんな人?
「ねえ。駅員の人に言って、探してもらう?」
僕が言うと、男の子は「おかあさん」と言って、キララのしっぽを手で握って離さなかった。
「あはは。ねえ。あなたのお母さんの外見って私に似てるの?」
とキララが聞くと。「えーとね。このしっぽ。同じ」と言った。
きつねっ子かな。
「じゃあ。僕がきつねっ子を探してくるよ。待ってて」
僕はキララを駅の中に残して行きそうなところを探してまわることにした。
普通に歩いて探すんだけど…なかなかきつねっ子はいなかった。
お店の中とか、改札の中を見てみるが、それっぽい人はいなかった。
☆☆☆
結局見つからなくて、キララの所へ戻ろうと思ったとき、誰かを探していそうな女の人がいた。
だがきつねっ子ではなくて、オオカミのしっぽをしていた。
色はキララのしっぽと似ている。
「あの…失礼ですが、男の子を探してるのでしょうか?」
と聞くと。
「え? うん。そうなの。5歳児ぐらいの男の子。見かけなかったかしら?」
と言うので…「えと。おかあさんとはぐれた男の子が僕の彼女と一緒にいるんだけど」
と話したら「きっと。そうね。案内してくれる?」
と言われるので、歩いてキララの所まで行く。
だけど、キララは待っているはずのところにいなかった。
「あれ? キララ?」
見回していると駅にあるトイレから2人が出てきた。
「ああ。良かった」僕が言うと。
「おかあさん」男の子が女の人のほうへ走っていって抱きつく。
「良かった。どこ行ってたの? お店の中で待っててと言ったのに」
とお母さんが言う。
「待ってたんだけど、お母さんのしっぽ見たから、ついて行ったら違う人だったの」
と男の子は言った。
「あはは。しっぽ違いだね。良くあるよ。子どもだと」
キララが言う。よくあるのね。
お母さんと男の子はキララと僕にお礼をいい、帰っていった。
「見つかって良かった」
「そうだね」
さて問題が解決したことだし…次は…まだ帰るのには早いかもと思ってたところ。
「ねえ。今日帰る場所はわかる? 地図はTMRに入れてあるからナビしてくれるし…
ユキ君にはミッションを与えて、僕はひとあしさきに帰って夕ご飯作ってるね。
いいころあいになったら帰ってきてただいまと言ってくれる?」
とキララが言いだした。
「え? どういうこと?」
と聞き返すと…
「未来で暮らしているカップルの設定にしたいの。ユキ君には観光名所で写真と映像を撮ってきて。あたしに見せてくれる? 場所はTMRに転送するから」
とキララに言われる。
「そっか。1人か。どうせなら2人で見て回りたい」
と言うと…
「夕食後。その写真とか映像を一緒に見ようね」
とキララが言う。
もう決定事項のようだった。
キララはあるポイントを指定した。
昔の水没したビルがある地点と自然が融合した観光名所であった。
「ビデオカメラが家電屋に売ってるから買ってから行くといいよ。自分の後を浮かんでついてくるカメラがあるからね」
とキララに言われる。キララは指を指して家電屋の位置も教えてくれた。
キララは「先に帰って料理つくって待ってるからね」といい、尻尾を左右にふりながら歩いて行った。
「なんか心細いかも」未来に1人というのもなんかなと思う。
だけど、暮らすという体験だと1人で歩いたり、観光名所へ行ったりというのもありかもしれない。
いつもだとキララと一緒だし。
僕は家電屋さんに言って、パンフレットを見て、カメラ売り場を探す。
最上階にあった。
カメラ売り場の横にはガラス張りの展望室が併設してあり、試しどりができた。
横には休憩用の喫茶店とレストランがあった。
僕はオーソドックスな機種を選び、使い方を店員に聞いた。
普通の人間の店員だったから聞きやすかった。
聞いたことがない日本語が混じっていたので、僕は過去から来たと言うと言い方を直してくれた。
僕は家電屋さんからでて、キララから聞いた場所を見てみることにした。
どうやらTMRで近くへ移動できる。
観光名所は公園になっていて、公園内はTMR禁止になっていた。
僕はTMRで移動することにした。
☆☆☆
公園の入り口につくと、買ったばかりのカメラのパッケージを取り出して説明書を読む。
説明書も粒子を使った手に持てるホログラムディスプイっぽいものなので、使いやすかった。
自分をカメラに登録し、好みの写真の撮影方法と、動画の撮影方法をセットしたら完了。
あとは勝手に写真に撮ってくれる。
というか動画撮影モードから写真を切り出すようだった。
ちょうどよい後ろのほうから空中に浮かんで僕の後をついてくるカメラ。
観光名所らしく、観光客もいる。
案内のとおりに進むと、海の底へ進む入り口があった。
海の中から、水没した過去の都市が見えるようだった。
何かの展示物を示すような案内と道。
途中にTMRによる空間移動用のゲートがあり2km先まで移動する。
左側が大きな窓、右側に壁があり説明書きがある通路。
通り道を歩き、下のほうへ行くと徐々に水没した都市が姿を現す。
かなり年月がたっているらしく、かなり海藻がついている。
作り物ではない、本物の水没した都市。
それと昔。水没する前の町の立体映像が通路の後ろの壁の近くに表示されていた。
「うわぁ」声を出してしまった。
海水は結構透明度は高い。
ライトアップされている海底に水没した都市。
綺麗だった。
写真をとっている人も結構いる。
地球人やハーフの人。それと地球外の星系から来たらしい人もいる。
僕は後ろをついてきているカメラのほうを見て、ほら見ての身振りをした。
あとで一緒に見るんだろう。
僕はさらに先に進み、水没した都市の中へ入ることにした。
バリアみたいなもので水は押しのけられているが、海底にある建物の中に入った。
ここは、大きな図書館みたいなところだった。
棚には紙の本は無く、電子書籍になっていたが、昔の端末が棚に残っていた。
もうすでに壊れているので表示させることはできない。
古びた木の本棚。カウンター。
かなり古ぼけたものに見える。
とはいっても、僕が生きている時代よりはるかに未来にできるはずのもの。
それが過去の物としてここにある。それに海底に没した滅んだもの。
展示物を見ると、温暖化で水没する前に、海上に都市の機能を移し移住したようだった。
被害があるかといえば無いものだが、新たな開発や移転に相当お金がかかったように見える。
僕は観光客の姿を見ながらいろいろ見て回る。
一番奥まで行ってから戻り、戻り道は展示物を中心に見て回る。
いついつに大きなイベントがあったという事が書いてあった。
大きな天変地異や災害。それと、都市の移転とか…地球からの他の星系への移住計画など。
知らないこと、というかこれから起こることも書いてあった。
僕が生きている間ではなく、ずっと先だけど。
通路を戻り、入り口付近まで歩いて行くと売店があった。
昔ながらの売店に似てる。
キララにお土産を買うことにした。
えーと何がいいかな。
ごく普通に、海底に水没した都市のイラストが入っているマグカップにした。
もちろんペアのカップ。
僕は公園の中も散歩して歩き、入り口まで戻るとカメラをTMRの宅配ボックスの中にしまった。
そしてTMRで元いた駅まで移動して、列車で僕達が泊まる場所まで移動する。
時間も夜。18時50分ごろ。もうちょっとで建物につく。
夜の雰囲気はどの時代でも変わらなかった。
でも、今のほうが静かだ。
車の音とかサイレンの音。町のざわめきなどは僕達が住んでいる町より静か。
移動がほぼ宇宙船かTMRになっているのも大きいんだろう。
環境破壊に関連する、二酸化炭素を出す乗り物は極力無くなったようだし…
で。見ながら歩くとやっとついた。
普通はマンションだったら上を見上げると電気がついているかがわかるが、1Fしかないマンション。
中に入り、2泊3日で借りている部屋を指定すると空間転移用ゲートでその階に移動した。
部屋の前。僕はノブに手をかけようとしたらかちといい、ロックが解除された。
どうやらTMRがキーになっているようで自動で解除された。
開けて言う。「ただいま」
すると、中からエプロンをつけたキララがお出迎えしてくれた。
「あなた。お帰り。ごはんにする? お風呂にする? それとも…」
と言ってきた。
あはは。
「えーとね」とだけ言うとキララは「ユキ君」とキララがいい、くちびるに軽いちゅーをしてきた。
「あ」不意打ちだった。
「ごはん。もうちょっとでできるから手を洗って待ってて」
と言われる。
エプロン姿のキララ。
それとマンションの玄関。
靴をぬいであがる。
なんか、こういうのもいいなと思った。
テレビをつけている。
明かりも普通。
カーテンは閉められている。
ごく普通の家。
僕はテレビとキララの後ろ姿が見える場所に座る。
座ったあと「手伝う?」と聞くと…キララは
「そうだね。お湯がわいているから、お皿とお椀にお湯をちょっとかけて温めておいて。あと。飲みものをコップに」とキララが言う。
以外にこだわってるね。
僕はお皿を用意すると、お湯をかけてお皿をあたためた。
あとあさりのお味噌汁をよそおった。
普通はグラタンだとお皿ごとオーブンとかで焼くんだけど…
今日は違った。
温めたお皿は、プレートにおかずがいろいろ乗せられるものだった。ミニハンバーグとか、ニンジンのバター煮とか、お野菜の付け合わせとかをキララが盛る。それと魚介のグラタン。そして小さいカップにチャーハンをおたまで盛り付けて、上を平らにならしてから、お皿に逆さまにカップを置いてぽんぽんした。
いい形のチャーハンができた。
なんかお子様ランチみたい。
エビフライとか、ホタテのフライも入れてくれた。
☆☆☆
僕はキララを見た。
「えーとね。使うお皿の数を減らしたいと思って、おかずをいろいろ乗せられるものにしたの。お味噌汁は別だけどね」とキララが言う。
「うん。こういうのもいいね。家だと大皿が数枚で、お皿に各自がとりわけるから」と言う。
家族がいっぱいいるとそうなる。
今日はキララと2人だけ。
「いただきまーす」
「いただきます」
手をあわせて、キララが作ってくれたごはんを食べる。
「うん。おいしい」
僕が言うと「あさりのお味噌汁も飲んで」と言われるのでお椀を手に取る。
「ん。おいしい」あさり。胃にしみわたるようだ。
「大人になったらね。お仕事終わらして。もしお酒が飲めるなら一緒にね。飲んで。あさりのお味噌汁を飲むの。胃にしみわたるよ。今より」
キララが言う。
「そうだね」
いろいろなおかずが乗ったプレート。
それとグラタン。結構魚介ベースのグラタンはおいしい。
家に帰ったら、ミミちゃんもいるし、作ってもらう? それとも一緒に作るかなと思った。
☆☆☆
夕食のあと、お片付けはない。
食洗器にセットして、1分ぐらいで終わる。お家の台所に備え付けだった。
未来だから実に便利になっている。
「で。どうだったの? 観光名所」
夕食後に聞いてくる。
「うん。買ったカメラがプロジェクタになるから一緒に見よう。ちょうど後ろの壁がいい感じだし」
後ろの壁は白くて窓もないからちょうどよかった。
僕は買ったカメラをセットして壁に撮影した映像を映し出した。
こういうのもいいなと思った。