高濃度な放射能に汚染されてしまった惑星のシェルターカプセルでラーメンの出前をとる話
シェルターカプセルの中でキララと一緒にすごしてしばらく何もないひとときが流れる。
ユキは電子書籍を読み、キララは何かのカタログを見ている。
そんなとき。
シェルターのどこかから呼び鈴の音が聞こえてきた。
「あれ?」
キララは顔をあげて立ち上がる。
「なんなの?」
ユキはキララを見る。
「訪問者? こんなところに人いるのかな? ちょっと待ってて見てくるから」
キララは入り口のほうへと歩いていく…
「どちら様?」
キララは日本語で言うが…
「どう?」
ユキもきららの隣で様子を見る。
「こんばんは。あのですね。酸素ボンベを交換したいと思って…ちょっとでいいので中にいれてくれない? あ。ついでにおトイレもしたい」
子供の声だ。
「んー? ま。まあいいけど…ちょっと待ってて外側を開けるから…中に入ったら放射能の除去を忘れずにね」
「うん」
キララはスイッチを押した。
☆☆☆
高濃度の放射能の除染が行われて、その人は防護服を脱いだ。
小柄な男の子だ。
身振りでOKをする。
キララは内側の扉を開けるボタンを押した。
「ありがとね。じゃ。トイレ借りるよ」
外観は地球人の男の子。10歳か11歳かに見える。荷物としては小さいバックも持っている。
男の子はカプセルの中のトイレの中に入って行った。
☆☆☆
「この防護服。ずいぶん古いものを使っているみたい。酸素ボンベも外付けだし…」
キララが男の子が脱いだ防護服を見て言う。
「たしかに。僕たちが使っていたのはボンベいらないタイプ?」
どう見ても形が違う。
「うん。僕たちの使っているのは去年のモデルだからね。去年と言っても未来での話」
「そっか」
いったん部屋の中に戻り、男の子がトイレから出てくるのを待つ。
水が流れる音がしてドアが開いた。
「あ。ありがとね。あと。すぐに出ていく予定だったけど…予想より遅くなってしまって…今晩ここに泊めてくれない? お礼はするから」
と男の子は言う。
じー。
きららは男の子のまわりを歩きながらじっと見る。
「な。なにかな? 僕怪しい?」
男の子はキララに聞く。
「い。いや…大丈夫そうかな…えーとね。もし変なことや盗みとか悪いことをしたらどこまでも追いかけていくから…過去でも未来でも…異世界以外なら…」
「えー。そんなことしないよ。あ。お姉ちゃんが僕を襲ったら訴えるからね」
「え?」
男の子に言われてキララは男の子をじっと見てから…
「えいっ」キララは男の子に抱きついた。
「うわぁ」
男の子はユキがララお姉さんに抱きつかれたときの反応をした。
ユキはその感じから見て悪い子ではないと思った。
「どうやら大丈夫そう…じゃあ…夕食の準備をするから…と言っても今夜は出前をとろう。地球のお店に電話して…メニューはあったかな」
キララは男の子から離れてTMRに出前のメニューの画面を表示させた。
「出前って。ここまで届けてくれるの?」
ユキはきららに聞いた。
「できたら通知が来るから…というかすぐにできるんだけど…こっちからTMRでとりに行くよ」
とキララが言いメニューを2人に見せる。
ユキはページをめくり、メニューの内容をひととおり見る。
その横で男の子も一緒に見ている。
ぐーと男の子のお腹から音がした。
「じゃあ…ぼくはラーメン。塩と醤油ラーメンのハーフで」
容器の真ん中で塩ラーメンと醤油ラーメンに分かれているもの。仕切りがないのにまざらないようになっている不思議な容器に入っている。
「じゃあ私もユキ君と同じのを…ねえ君はどれにする?」
キララは男の子に聞く。
「見たことない食べ物だけど。この黄色っぽいものとスープのを…」
男の子は指をさす。
「ああ。チャーハンとスープのセットね…あ。お代はいらないから…」
キララは念のため男の子に言う。
共通マネーは持ってなさそうだし…
「うん。ありがと。ちょうど共通マネーも残り少なくて…」
男の子は笑顔を見せた。
☆☆☆
キララはTMRを使って地球のインターネットに接続して注文した。
その後。すぐに出来上がりの通知を受ける。その間10秒。
「早いね」
僕はキララを見る。
「TMR使っているから…できあがりまでの通知を10秒にしているの。実際は20分ちょっとかかるよ」
とキララが言う。
TMRを使っていて、料理が出来上がったら注文から10秒後に通知されるようにしているとキララは付け加えた。
そっかTMRを使っていて待ち時間を節約しているのか。
「受け取りに行ってくる」
キララは壁に向かって自動ドアの映像を投影させ、キララは自動ドアの向こうに消えていった。
「すごいね。あのお姉ちゃん」
キララを見て言う。
「うん。便利だよね」
2人でソファに並んで座る。
「どこから来たの?」
男の子は聞いてくる。
「えーとね。太陽系の地球ていう第3惑星だよ」
「えーそれだけじゃわからないよ。太陽系も地球も第3惑星もいっぱいあるし…どこの銀河の?」
「えーと銀河系」
「なにそれ。銀河系の固有名詞は?」
とさらに聞いてくる。
「こ。固有名詞…」
ユキは困った。
ユキは続けて言った「えーとね。Milky Way Galaxy?」
たしかそんな名前だったかな。
「何それ…それもいっぱいあるよ」
「えー」
いっぱいあるのか。
と話しているとキララが戻ってきた。
地球で良く見るラーメンの容器を2つとチャーハンとスープのトレイを持っている。
「あ。重いでしょ。僕がラーメンをテーブルの上に置くよ」
ユキは一つずつラーメンを持ち、テーブルの上に置く。
「ありがと」
キララはテーブルの横に立ち、ユキが3つの食べ物の容器を置くまで待つ。
「手はこのおしぼりで」
キララはおしぼりとおしぼりを置く入れ物ごとテーブルの上に置いた。
辺境の惑星。
外は高濃度の放射能で汚染されている。
そんなところで出会った男の子と地球のラーメンとチャーハンのお食事。
「いただきまーす」
「いただきまーす」
男の子は僕たちを見て同じように「いただきまーす」と言った。
男の子はまず、スープを飲み…というかがっついた。
「あ」ユキは言いかけた。熱いスープだと思ったんだけど…
「おいしい」
男の子はすぐにスープを全部飲んでしまった。
キララは「あまり熱くないように少し冷ましてもらったから大丈夫だよね」
と…
きっとおなかが空いているだろうし、熱いスープも知らないかもと思ったんだろう。
それを見越してスープを冷ましてもらったみたい。
すっかり空になったスープの容器。
今度はチャーハンをスプーンですくって食べる子。
僕は空になったスープの容器をとり、自分のラーメンの麺をとりわけてスープも入れてあげる。
「ありがとお兄ちゃん」
ラーメンを入れたスープの容器を差し出すと笑顔で男の子は言う。
ユキは醤油のほうから食べ始める。
その後スープを飲んでから塩ラーメンのほうを食べる。
どっちもおいしい。
でも不思議。一つの容器に醤油ラーメンと塩ラーメンが入っていて容器には仕切りがないのに混ざらない。
あ。でも…ユキは塩ラーメンのスープをちょっとすくって、醤油ラーメンのほうに入れた。
そしてそのスープを飲む。
「あ。ちょっと味が変わるよ」
塩気が増した醤油ラーメン。
「じゃあ私も」キララは醤油のほうのスープをちょっとだけ塩ラーメンのほうに入れて飲む。
「どう?」
ユキは聞く。
「なんか味がかわるね。このラーメン。人気だって言ってたから…正解だね」
キララが言う。
「そうなんだ」
スープを飲んでラーメンを食べる。
男の子はチャーハンとスープの容器に入っているラーメンを食べる。
「あ。そうだ。僕たちのいる銀河系なんだけど。宇宙でもわかる固有名詞ってあるの?」
キララに聞いた。
「えー。ユキ君。そんなことも知らないのぉ?」とキララが言う。
「だって…」とユキが言うと…
「M23738W22銀河」
「えーそんなの知らないよ」とユキが言うと…
「まあ知らないよね。地球の人がつけたんじゃないもの…」
とキララが言う。
「ああ。あの辺ね…」と男の子が言う。
「わかるの?」
「うん。前にねM21338W1銀河にはいったことあるから…ここからはそんなに離れてないよね…」
と男の子が言うとキララは
「ねえ。何で行ったの? 宇宙船?」
「うん。団体の観光用宇宙船。お姉ちゃんが使っているTMRのようなもので空間転移をして移動するんだけど…観光用だからたっぷり20日かけて目的の星まで移動するの」
「そうなんだ」
どうやら、この子は無人になった星でめずらしい物を拾って雑貨屋さんに売って生計をたてているらしい。この星だと高濃度の放射能に汚染されているので除去が必要だが…
専用の機械を使って除去するとのことだ。
「あ。そうだ。お兄ちゃんとお姉ちゃんはいつまでここにいるの? お礼なんだけど…ここで拾った雑貨なんだけど…気に行ったら高濃度放射能を除去した後送ってあげるよ。TMRの宅配ボックス番号を教えてもらえばだけど…」
「そうだね。何かある? あまり高いものじゃなくてもいいよ。気持ち程度で…」
とキララが言うと…
「写真があるよ」
とポケットからデバイスを取り出して写真を見せてくる。
お。これは…見たことがある。
円柱状のホログラム再生装置。
「これ…たしか宇宙船のホログラムが再生できるものだよね」
ユキは興味津々で写真を見る。
「えーとどうだったかな。車や移動式の家だったかも…宇宙船だったらほしいの?」
「うん。すごく…」
ユキは写真を見る。
「じゃあ。宇宙船だったらこれあげるね。そこのお姉ちゃんは?」
デバイスをキララに渡す。
キララはデバイスを見て…「そうだね。じゃあこれは何?」
キララはデバイスを男の子に返して指をさす。
「ああ。たしか迷子になる子のための送信機と受信用のデバイスね。星系ごと離れていてもわかるものだよ」
「そう。これいいね。よしこれにする」
キララは言ってからユキのほうを見る。
「まさか僕につける気?」
ユキはキララを見て言う。
「いいじゃない。どこかに行ってしまったときのもしものためだよ」
「まあいいけど…」
この前のようにいきなり転送されてしまうこともあるし…
☆☆☆
その夜は男の子とユキが一緒に寝ることにした。
「さびしいなあ。あ。そうだ。別の部屋で寝るよ…今日は開放的に全裸で…」
とキララが言った。
「え?」ユキと男の子はびっくりする。
「だから入ってこないでね…防護服で窮屈だったから…開放的になりたくて…
おやすみ」
キララは隣の部屋へと入って行った。
☆☆☆
「ねえ。ねのお姉ちゃん。本当に全裸で寝るのかな」
男の子が言う。
「もしかしたら本気だったのかも…」
キララの姿を想像した。
だんだん顔が赤くなってきていたのか…
「顔赤いよ」男の子に言われてしまうユキ。
「あわわ。考えるのやめよ。さあ寝よう」
ユキは明かりを暗くする。全部は消さない。
☆☆☆
朝。
部屋にあった布団で寝ていたが…横を見るとキララがいた。
キララも一緒の布団に入っている。
「うわぁ」
ユキは一発で目が覚めた。
「全裸だよ」
キララが言った。
「えー」
と言った後目をあけた。
あれ。
キララは?
というか今まで寝てたから夢か…
隣を見ると男の子はまだ寝ている。
キララはいない。
なあんだ。
ユキはゆっくりと起きて、部屋から出る。
ユキはキララが用意してくれていた寝間着のまま。
大きな窓から外を見る。
夜明け直後で、ソラの色が不思議な感じになっている。
紫や水色。赤っぽいものも見える。
ちょうど日がのぼってきた。
ユキはカプセルの窓を背に、スマホで自撮り形式で写真を撮影した。
とやっていると…
後ろから抱きついてきたキララ。
「おはよ。私は今何も着ていないよ」
と言う…けれども抱きつくキララの肌触りから…
ユキは手だけを後ろにまわしてキララの体をさわる。
そしてしっぽも触って言う「服着ているよね…それに二人っきりじゃないからそんなことしないよね」
と言う。
「ああ。ばれちゃった。寝間着を着てから部屋を出てきた。昨日の夜は全裸で寝たけどね」
とキララ。
「本当に全裸で寝たの」
「うん。開放的だったよ。こういうときじゃないとできないし」
背中にキララの体温を感じながら考える。
うわぁ。また顔が赤くなりそうだ。
「地球のコンビニまで行って朝食を買ってくるけど…何がいいかな」
とキララが言う。
「えーとね。いつも食べているのは和食だけど…洋食というかパン系というかそういうの」
「わかった」
と言いキララはユキの背中にくっついていたが離れた。
キララの後ろ姿が見える。
きつね尻尾が見える。
TMRでドアを開けてキララは地球のコンビニへと買い物に行った。
ユキは窓から外を見る。
朝焼けは終わり、普通の朝の景色になっていた。
けれども空の色は不思議な色だ。
次はどこに行くんだろう。
ユキはキララが戻って来るまでの間に考えておくことにした。




