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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
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カザー星系の人工衛星とボスの悪だくみ(1)

 土曜日の午前中。10時30分ごろ。

 ユキはひさしぶりに携帯型のゲーム機でゲームをしていた。

 自分の部屋の床の上にクッションを置いて、寝っ転がってた。

 

「ゆーきくん。ねえ」

 ミミちゃんが部屋に入ってきた。

 手に飲み物が入ったコップ。紅茶。それにはちみつを入れて。さらにまたたびの実を一つ入れている。

 ミミちゃんは、テーブルに飲み物を置いてから、寝っ転がっているユキ君の上に乗ってきた。


「ミミちゃん。今ゲームしているの…」僕はひとなつっこく上に乗ってきたミミちゃんに言う。

「今日から触れ合い週間でしょ。にぼし持ってきたの。ユキ君の手で食べさせて…」


「今ゲームしているから後で…」


「えー。ちょっと中断してもいいでしょ」ミミちゃんは僕にミミちゃん自身の体をなすりつけてくる。


 やたらとくっついて、すりすりしてくるミミちゃん。

 きっとこれ。またたびの実のせいだ。


「ゲーム中断できないの。もうちょっと先にいかないとセーブできない…」

 ふー「わぁ。だめ。耳に息を吹きかけないで…」ミミちゃんは、僕の耳に息をふきかけてきた。


「ねえ。じゃ午後でいいよわよ。にぼし… 忘れないでね…」


「わかったよ…」僕がミミちゃんに返答したところだった。


 ラミちゃんが部屋に入ってきた「何しているの…」


「あたしはユキ君とじゃれているところ。ゲームをしていてかまってくれないの…」ミミちゃんは言う。


「今いそがしいから…」僕はさらにやっかいなことになりそうだったけど、ゲームに夢中で返事を手抜きする。


「いいわね。寒くなってきたところだし… あたしもユキ君にくっつきたい」

 とラミちゃんは、部屋の中に入ってくる。


「うぎゅ」ミミちゃんが声を出した。ラミちゃんがミミちゃんの上に乗ってきた。


「にゃにするのよ。くそ重いのよ」ミミちゃんが言う。


「あらら。じゃれている…あたしも参加しようかしら…」その声はミアお姉さん。


「だめよ…」ミミちゃんが言うが、一番下のユキ君はゲームがいいところなのか、何も言わない。


「ぐは」ミミちゃんが言った。

「重みょいんだから。ミアお姉さん。下りて…」ラミちゃんの上からさらに乗ったミアお姉さん。


「ねえ。ミミちゃん。この家に置いてあったあたしのニンジンスティック食べたでしょ」

「え”。そういえば、食べたけどラミちゃんのでないの?」ミミちゃんは心当たりがあった。

 ニンジンスティックは食べたんだけど、あれはラミちゃんのかなと思ったからだ。


「あたしのはいっぱい入っていたはずなんだけどな。聞いたらラミちゃんじゃないって言ってたし…」


「あ”―。ごめん。ミアお姉さんのだったの」


「あたしの食べちゃだめよ。もちろんラミちゃんもよ」


「わ”―かったわよ。あー。声が変。重すぎ。下りて。下りてくれないと死ぬ。死ぬわよ。ミアお姉さんとラミちゃん重すぎ… このままだと一番したのユキ君が潰れちゃう…」


「ぼ。ぼぐはまだ平気」一番したのユキは平気みたい。重心がずれているから平気のようだった。


「じゃあ覚えておいてね」ミアお姉さんは立ち上がる。

 立ち上がる前にラミちゃんの背中に両手を置いて立ち上がるときの支えにして、体重をかける。


「んぎゅ」ラミちゃんが言った。


「お姉さん重い”」


「ごめんね…」


「さてとあたしも行くかな。鉢植えのお水あげるの忘れてたわ」ラミちゃんも立ち上がる。

 ミミちゃんの背中に両手を置いて、立ち上がるときに体重をかける。


「んぎゅ」ミミちゃんが言った。


「くそ重かったわ。あたしも部屋に戻るわね…」ミミちゃんは、ユキ君の背中に両手をつかないようにして立ち上がった。そしてマグカップをとって、部屋を出て行ってしまった。


「やっと静かになった」ユキ君はゲームに集中ができるとつぶやいた。


☆☆☆


「ん?」僕はしばらくゲームを進めて、セーブした。

 すると、家の中がやけに静かすぎることに気が付いた。


 僕は立ち上がる。ついでにトイレに行こう。


 あれ。いない。ミアお姉さんも。ラミちゃんも。ミミちゃんもいない。


 出かけたのかな…


 僕はトイレに入ってすませてからふと、窓の外をみた。


「あれっ。ない」ラミちゃんが世話をしている家庭菜園。ニンジン畑がない。


 なんかいやな感じがする。


 僕はラミちゃんとミミちゃんの使っている部屋を見てみる。

「えっ」何もない。ラミちゃんとか、ミミちゃんが使っている部屋のはず。


 使わなくなった物が置いてあるだけだった。


「なんで…」


☆☆☆


「んあ?」

 僕は目をさました。がたんがたん。という音。


「あんた。またあたしを踏んでいこうとしたでしょ」とミミちゃんの声。


「そこに寝ているのがじゃまなのよ。青い絨毯の上に青いタオルケットをかけているから、絨毯かと思ったのよ」ラミちゃんの声。そのあとどすんどすんと聞こえる。


「わかるでしょ。人が寝ているのぐらい…」


「ウサギのハーフだから、目が悪いのよ… 見えなかったわ」


「うそでしょ。あんた視力がいいはずよ。この激重うさぎ…」


 どん。また、ラミちゃんが足を床に踏み下ろした音が聞こえてきた。


「激重とはなによ…」どんどん。また音がする。


いつものさわがしさ…「さっきの何だったんだろう」


 二人がいなかった世界? 夢見てた?


☆☆☆


「困ったことになった。どうする?」クロは床をタッチしてゆみ子に言う。


 カザー星系の親玉が怒っている。あたしたちの悪だくみがばれたみたい。


 4年前。エリス星系のリゾート地が格安で売りに出されてた。第3惑星には衛星が2つあり、7割ほどが海で覆われている。白い雲の下から見える大陸。7000メートルを超える山。でっかい湖や滝。自然の名所がある。


 目立たない場所にある物件だったが将来はリゾート地として開発すれば、商売としていい結果を生むのではというものだった。


 私たちとマトラ星系の人は、それを阻止しようとしてウソの噂を流したり、競売物件にあたしたちも入札して価格をだいぶつり上げた。


 結果としてカザー星系の親玉が購入してしまったのだが、そのときにあたしたちが価格を釣り上げたのが、今になってばれたのであった。


「通信が入ったよ」ゆみ子はクロに言った。


「お前らは。俺様の所有しているリゾート地の競売物件の購入前に、おまえたちが購入する気がないのに、入札して価格を釣り上げたようだな…」


「まあね。あたしじゃないけど。仲間が言ってたわね。あんたたちみたいな人に買わせる物件じゃないという話になって邪魔したのよ。悪い?」ゆみ子はボスに言う。


「くっ。最初の思惑なら30億クレジットぐらいで購入できるはずが、100億を超えてしまったではないか。わしからの提案だ。わしのところに、ミアとシロを向かわせるのだ。ミアは過去の人間だから、稼働型デバイスでもかまわないがシロは本人が来てもらう。日時と場所は指定する。来なかったら報復が待っているぞ。ではな…」ぷつっと通信が切れた。


通信が切れた後「シロとソラに連絡しよう」ゆみ子は言った。


☆☆☆


「というわけなんだ。ミアお姉さん。君に未来に来てもらう。また稼働型デバイスでなんだけど」

 クロは録音を再生した後、単三電池型の記憶装置に今の記憶を同期させる。


 必要な準備をしてから、クロは未来に帰っていった。


☆☆☆


「良く来たな」カザー星系。衛星軌道上に浮かぶ基地。


 体格がいい。男の年配の人。


「計画を進めろ」親玉は、部下に何かを命令する。


「お前はシロか? ソラではないな?」親玉はシロに問いかける。


「そうよ。おっさん。あたしはシロよ」背中の羽を少し動かしながら、敵意を見せながらシロは言う。


「そしてお前がミアか。稼働型デバイスだな」ボスは言う。


「そうよ」シロの隣に立つミアが言う。


「じゃあ。要求を言う。ミア。おっぱいを触らせてくれ…」ボスは突然言った。


「はっ?」シロはぽかんという顔をした。


「何言っているのよ…」急に変なことを要求されたのであせるミア。


「だめか」ボスはこっちを見ながら言う。


「だめに決まっているじゃない。ミミアに頼めば…」容姿がそっくりなミミアに頼めばいいのに…


「触らせてくれんのだ。ミミアに言ったことがあるが、断られた。どうだミア」


 ぷいっとするミア。


「じゃあ本当の要求を言う。ミアのDNAパターンと記憶がほしい。そしてシロ。

お前の使っているTMRだが…」


「何?あんたによこせとか言うの? あんたには使えないじゃない」シロはボスに言い、あっかんべーをした。


「くっ。そんなことは言わぬ。シロよ。TMRを廃棄しろ」ボスはにやっと笑った。


「な。そんなのだめよ。あたしは元の時代に帰れなくなっちゃう」そんなのダメよ。とシロは一歩下がる。


「ふっ。まあいい。それでミア。どうだ…」ボスは再びミアのほうを見る。


「なんであたしのDMAパターンがほしいの? あたしのおっぱいが目当て?」ミアは両腕で胸を隠して言う。


「わしの部下にミミアがいるのを知っているな。ミミアはDNAパターンを取らせてくれないのだよ。だからミアに頼んでいる」ボスは解説するんだけど、まだわからない。


「なんでその必要が…」ミアはボスに訪ねる。


「ミミアは有用な部下なのだよ。うり二つのミアのDNAパターンを取り、記憶も同期させる。そしてわしらの教育を受けさせて、有用な部下を数名作るのだ…」くっくっくと含み笑いをするボス。


「そんなのだめじゃない。ミミアと交渉すれば…あたしはだめ…」

 なんであたしが、あんたの言うことを聞かないといけないの…


「そうか…じゃあシロはどうなんだ…」再びボスはシロに向かって言う。


「あたしもだめ…」シロは帰りましょとミアに言う。


「わかった。では外を見よ」ボスは言う。


 いつのまにか窓の外には惑星が見えている。


 「あれは。マトラ星系の第4惑星…」基地からモニターしていたゆみ子はその惑星を見て言う。


 窓から見える惑星には見覚えがある。


「この場所は、宇宙に浮かぶ巨大な衛星だ。話をして気をそらせている間。移動させた。

 この巨大な衛星は廃棄する予定になっておる。この場所をあの惑星に落としたらどうなるかね…

直径20キロはあるだろう。大気圏に入っても燃え尽きぬ。

第4惑星には生き物が住んでいるんだろう…」ボスは悪役たっぷりの雰囲気で言う。


「くっ。それが交渉のための手段というわけね。本当にやる気なの?」ミアはボスに問う。


 ゆみ子から音声が入る「そんなの聞かなくていいから、こっちに帰ってきていいわよ。どうせやらないわよ」


 そんなことをしたら、安全を統治している機関にばれる。


 そうなったら、カザー星系の経営する企業や施設に立ち入り検査が入り、そしてボスも捕まるだろう。


「ふむ。3分だけ待ってやる…」ボスは椅子に座り、くるりと椅子を後ろに向け、背中を見せる恰好となった。


☆☆☆


「どうするのよ。これ。あたしには決められないわよ」


「あたしもよ。このまま帰っちゃったらどうなるんだろう」


「もしかしたら、最悪実行するわよ…」

 ミアとシロは小声で相談する。


 あーもう。なんて厄介なことに巻き込まれたんだろう。


 ああ。ユキ君とじゃれていたときがなつかしい。


 早く解決させて帰りたい。ミアは思った。


☆☆☆


「3分たったぞ。どうだ決まったか?」ボスの声。そしてくるりと椅子がこっちを向く。


「なっ。まだ2分しかたってない…」シロはTMRを見て、まだ2分しかたっていないのに気が付く。


「わしの時計では3分たったぞ。どうだ両名わしの言うことを実行するか?」


「…」

「…」


黙っている二人。


「じゃあ。やれ。この衛星を惑星に落とすのだ…」ボスの声に応じて、衛星が動き始める。


「や。やめ…あんたも死ぬのよ…」ミアは言う。この中で死なないのはミアだけ。

 ミアは稼働型デバイスだからだ。記憶の同期ができないだけ。


「ふっふっふ。この姿。実像だと思ったか、映像だよ。この場には実際にいない」

 一瞬ボスの姿が消えて。再び表示される。


「くっ。立体映像ね。わ。わかったわよDNAパターンをとらせてあげる」しょうがない。パターンぐらい。惑星に住んでいる人の命と比べれば…


「だめよ。ミア」ゆみ子は言う。

「あたしもTMRデバイスを破棄する。あなたの言うとおりにしたらやめてくれるんでしょ?」


 シロはミアの稼働型デバイスをシャットダウンし、単三型記憶装置を取り出す。

 そこに稼働型デバイスの姿、形を作り出すのに必要なDNAパターンも入っている。


 そしてシロはTMRを腕から取り外す。そしてボタンを押す。


「だめよ…」ゆみ子は言うが、間に合わなかった。

 シロのTMRデバイスは消えた。


「稼働型デバイスはシャットダウンしたわよ…」


「そうか。消えたな…では、ミアの記憶のほうはいい。じゃあやれ」

 ボスは部下に衛星の軌道を惑星へ自由落下させるように言う。


「なんで。あたしのTMRは破棄したじゃない…」このシロの問いかけには答えず。ボスの映像は消えた。


「これ。やばいわ」シロの使ってたTMRデバイスは、将来ソラに譲渡する予定になっている。


 とすると、ソラはこの時代にはもう来られなくなる。


 そして、この衛星は自由落下に入っている。


 衛星を止めなければ…

 

 どん。どん。2回爆発音がした。


 この部屋の扉。その向こうの渡り廊下が爆破された。


 この部屋から出ることができない。


 シロは稼働型デバイスを再起動させた。


「えーと何があったの?」起動した稼働型デバイスが目覚め、ミアが言う。


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