他の星系の惑星上でのキャンプをするユキとキララ(2)
キララはTMRの宅配ボックスから望遠鏡を取り出した。
でも…
「望遠鏡の見た目が違うね。未来だとこういうのなの?」
キララが手に持っている望遠鏡を見る。
筒状のものかと思ったら円盤系のもの。ひらべったい。
「ん? こういうのって。いろいろあるんだけど…これが性能が良かったから…筒状のが良かった?」
キララは望遠鏡の円盤を空に向けるように置いた。円盤の平面を空に向ける感じ。
「いや。どうやってみるのかなと…」
ユキはキララに聞く。
「えーとね。これ。両目にはめて…こっちのコントローラーを手にもって操作するの。倍率はかなりあるから、この惑星の衛星のクレーターとかだと、ズームしていくと、過去に衛星に降り立った人がいれば、足跡も見えるよ」
「えーそうなの?」
ユキはキララから目にはめるものを受け取り両目にあてる。
それから、コントローラーで操作する。
最初は肉眼で見た星空と同じだが、メニューをだして映像を調整すると見た目がかわった。
「うわぁ」思わず声が出る。
倍率がコントローラーのコロコロを回すと変化する。見る方向は自分が見た方向の星が見える。
で。この望遠鏡の円盤上には127個のレンズがついていて、見ているものに応じて合成して明るく、そして解像度が高い状態で見えるようになっている。4人まで同時に使える。
レンズは円盤にくっついているように見えなかったが、小さいからだという。
上を見て、この惑星の月を見る。
ころころを回してズームしていくとどんどん大きくなるが、すぐに月が移動してしまう。
「うーん。拡大がうまくいかない」
ユキが言うと。
「そうだよね。位置の追跡は自分でやるんだもの」
とキララが言う。
「じゃあ。明るく見える星を見よう」
ユキは別のものを見る。
目立つ感じの星に目を合わせてズームしていく。
座ったほうがいいかな。というか。夜の砂浜にあおむけになったほうがいいかな。
ユキはその場であおむけになる。
そしてさっき見ようとしていた星をさがしてからズームしていく。
「お。おお。あ。当たり。綺麗だよ」
ユキは言う。けれども同じ映像をキララに見せたい。
とユキが思ったとき。メニューに映像を『共有して見てみたい』というキララからのリクエストが来た。
ユキはコントローラーでOKを押すとキララの声が聞こえた。
「いいね。ズームしてみていい?」
「うん」
そばにキララが寄って来る。そしてキララが僕のすぐ隣に寝っ転がったのがわかった。
僕のお腹の上にキララのしっぽが乗っかる。
僕は片手でキララのしっぽをなでる。
そのまま星を見ている。
綺麗だ。
ズームすると、星の一点だと思っていたものが銀河だった。
その銀河で一番明るく見えているのが星として見えていたのだった。
ズームしていくと細部まで見えてきて、白い色以外にもオレンジ色の星も見えてきた。
「いいね。なんていう星なんだろ」
ユキが言うと…ぽこんと画面に表示が出てきた。
「あれは。HD2234552のβ恒星。いちおう若い星だね。もうちょっとズームしていくとね…」
キララが言いズームしていくと…かなり大きくなった。で。キララが映像のモードを変更すると、惑星が見えた。ガス惑星。
「この望遠鏡は高性能でね。遠くの星系にあるガス惑星ぐらいのものなら、所属している恒星の反射の光をとらえて、映し出してくれるんだよ。 明日になったら行ってみる? TMRの空間移動でちょっと寄ってからブラックホールの惑星に」
「うん。いいね」
しばらく綺麗な星をみていると、気分が良くなってきて眠くなってきた。
ふあーあとあくびをすると。
キララが起き上がった。
「もう寝ようか。寒くなると風邪ひいちゃうし」
キララは僕の手をとった。
片手で目にあてている表示装置をとり、起き上がる。
キララは円盤状の望遠鏡をTMRの中にしまう。
たき火の木を少しどけて炎を小さくする。
風はないけど念のため火を小さくしておく。
テントの中に入る。
そして寝袋の中へキララと一緒に入る。
「あったかい。ちょっと寒くなってきていたからいいね」
「うん。ぎゅっとして」キララが甘えてくる。
「うん」
キララの体をぎゅっとする。間にキララのしっぽをはさんでなんだけど…
ぎゅ。キララもくっついてきた。
「おやすみ」
「うん。おやすみ」
お互いの体温であったかくなる。
だんだんとろんとしてきた。
☆☆☆
「ん」ユキは目をさました。
横を見るとキララと目があった。
「おはよ」
キララが言う。
「いつ起きたの?」
僕は外を見る。明るくなってきている。
「うん。たった今。ユキ君は?」キララが聞いてくる。
「僕もたった今」
2人同時に起きたらしい。
「まだ早いからもうちょっと寝てもいいかな」
キララが言う。
「うん」
キララと寝袋の中で手をつないで再び寝る。
☆☆☆
ばたばたばた。
ばたばたばた。
テントが風でなびいて音をたてていた。
その音を聞いて目を覚ますユキ。
キララはまだ寝ていた。
ユキはそっと寝袋から出て、テントからも出る。
「あ」
外は曇っていて、少しだけ雨が降っていて顔にあたった。霧雨よりは強く普通の雨よりは弱い雨。
海は相変わらず穏やかな波の音をたてている。
たき火は消えそうになっていた。
じかんはどうだろう。朝の8時ぐらい?
ユキはテントの中にもどった。
☆☆☆
キララはテントの中に戻った時にちょうど起きたみたいだった。
その後、身支度やいそいで朝食すませる。雨になりそうな気配だったからだ。
雨の中テントを片づけるのもと思っていそいだ。
そしてたき火の木々を始末することにした。砂の中に埋めて火を消す。
ごみはキララが始末してくれた。携帯用ゴミ処理装置をTMRの中から出して中に入れる。
寝袋も片づけてテントも片づける。
「よし。じゃあ行こう。雨も気になるぐらいになってきたし…」
「うん」
ユキはパーカーの帽子をかぶった。
キララはTMRで宇宙船に向けて自動ドアを開く。
「いいよね。空中にTMRを向けても自動ドアが開けるなんて」
前に来ていた12歳のララちゃんに頼んで空中にもTMRの自動ドアを投影できるようにしてもらったのだった。
こういう惑星上で壁になるものを見つけるのも苦労する。
自動ドアをくぐると、もう宇宙船の中だ。
宇宙船の窓から見るとさっきまで居た惑星が見える。
「じゃあ出発。先にあのHD2234552のβ恒星がある星系に寄っていくよ。座標をセットするね」
キララは宇宙船の真ん中にあるコンソールへと歩いて行く。
ユキは階下に行くことにした。戸棚にカップがある。あたたかいスープが飲みたくなったからだ。
でも棚にあったスープじゃなくて小さいヌードルの袋を2つ手にして、マグカップに入れた。
そしてお湯を注ぐ。
ユキは上に持って行った。
キララは窓のそばのソファに座っていた。
「これ」
ユキは湯気がたっているマグカップをキララに渡す。
「ありがと。朝食は急いでとったから、ちょっと少な目だったよね」
キララはマグカップに入れるフォークを僕の手から受け取った後、マグカップにフォークを入れた。
そして飲む。
「あったまる」
キララはぽんぽんと自分の隣のソファを叩く。
僕はキララの横に座る。
「ちょうとカウントダウンして空間移動を繰り返してあの星系へ移動してるところ。もうちょっとで見えてくるよ」
キララが言う。
今は点にしかみえないが、だんだんと点ではなくて銀河が見えてくる。
そして銀河だったものの点がまばらになっていき、一番目立つ光が目にとまる。
「あ。そのまんまだよ」
昨日の夜望遠鏡で見たまんまの恒星が見えてきた。
「うーん。ちがうね。光の速度だとね過去の恒星の姿を見ていたことになるんだよ。えーとね。昨日見えていた恒星の姿から2万年後だね」
キララが言う。
「そうなんだ。空間移動ってすごいね。2万光年だっけ?光の速度でそのぐらいかかる距離でも、あっという間だね」
「うん。この技術がなかったらどうなっているんだろうね。宇宙はとてもじゃないけど移動できないよ」
だんだん恒星と他の恒星の間隔が広がり、太陽系で見るような感じになってきた。
かなり遠くに恒星の一点が見える。
で。ガス惑星が見えてきた。恒星の光に照らされている。
木星と似ているけど違うのがわかる。
大きさは木星よりは小さいのか、それとも大きいのか。
「もうちょっと内側に行くとね」キララが言い、立ち上がる。
コンソールのほうへ歩いて行くがキララはユキを手招きする。
「ん? なに?」
キララが見ているものを見る。
「あ。これって」
地球によく似た水があり、それと雲がある惑星が画面に表示されている。
「うん。生命が暮らせる地球型の惑星が3つあるんだよね。内側とその隣の惑星は地球より小さいけどね。3番目は地球より大きい惑星だよ。残念ながらこの惑星上には降りることができないんだよ。原子生命が住んでいてね。調査によって知的生命が誕生する可能性が高いからなんだけど…」
「へー綺麗だね」
しかも3つもあるとは…
「こういう星系は知的生命体が誕生するとね。近くにある惑星が気になって宇宙の産業が最初にさかんになるんだよ。戦争とかはなしにね」
「うん。いいね」
表示されている地球型の惑星の映像を見る。
「じゃあ、今日の目的地の星系に移動しよう。ゆっくりとこの星系から遠ざかるよ」
「うん」
ユキは3つの地球型惑星の映像を見てから窓のそばのソファに戻ることにした。
ユキはマグカップを片づける。
キララは今日の分の料理の下ごしらえをしているところだ。
ユキは目的の惑星につくまでの間。近くの星系について調べることにした。
ブラックホールが近くにある星系。
楽しみ。どんな光景なんだろう。
本体は見えないんだけど…ブラックホールに飲み込まれるものにより光輝いているのか。
☆☆☆
調べものをしている間にいつのまにか、目的の星系に到着していたようだ。
「あ。あれ」ユキは外を見た。
一部だけ真っ黒の円に見える箇所がある。
ブラックホールのまわりが光かがやいているということや、ブラックホールの上下から光のバーストが出ているということもない。
「変だよね。実は人口のブラックホール。兵器だよ」
「へ。兵器?」
キララが言った。兵器だと。
「うん。この星系で戦争があって。敵が住民が居住している惑星と別の惑星の間に設置していったの。そのせいでこの星系は壊滅的な被害をうけて、惑星の公転周期もめちゃくちゃになったの。まもなくこの惑星は飲み込まれる予定。今日はこの星に降りるからね」
「う。うん」
ブラックホールが兵器だったとは。たしかに住めなくなるよね。
☆☆☆
「じゃあ降りるよ」
キララはTMRの自動ドアを開けた。
降りると陸地と海の境目だった。
でも砂浜ではない。
水没した森みたいなところ。丘か山のてっぺんみたいなところに出た。
遠くには水面から棒のようなものが突き出ている。
「すごいね」
「うわぁ。なにこれ」
見上げて言う。
空に見える太陽。それは普通に見える。でも逆のほう。もう一つ輝くものが見えるが変だ。
キララが言う「あれはね。ガス惑星がブラックホールの重力の影響によって活性化して恒星みたいになったんだよ。その光。ちょうどそのガス惑星とこの恒星の間にブラックホールがあるから光が曲げられて変な曲線になって見えているんだよ」
「へー」
弓みたいにひん曲げられた光。すごく大きくはないが結構めだつ。
「それと海。変だよね。盛り上がってない?」
「うん。変だよ」
ブラックホールの引力により、海面が持ち上げられ盛り上がっている。実に不自然だ。
「夜になると、もっとすごいよ」とキララ。
「へー」
地球だとこういうのはないなあとユキは思う。




