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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
再びカザー星系とのやりとり
112/138

カザー星系の所有する観光用トレインの旅の終わりと次のキララとユキの二人だけの旅の計画

「ねえ。あそこにいるのシマ君とミケア・ミレイちゃんじゃない?」

 ユキはキララの肩をたたいて、横を見るように言った。


「あ。ほんとだ。仲良いね」


「気が付いてないみたい…うしろから近づいてみる?」

 ユキはそーとキララと一緒に、シマ君の後ろに忍び寄る。


 そー。


 そー。


 キララとユキがシマ君達が座っている椅子の後ろから近づいていって…

「食い逃げ犯だー」


「うわぁ」

 シマ君が飛び上がった。

「きゃ」飛び上がったシマ君にびっくりしてミケア・ミレイちゃんもびくっとする。

 ミケア・ミレイちゃんのきつねしっぽが太くなり毛が逆立つ。


「なんなのもう…」

 シマ君はキララとユキの姿を見た。


「いいところだったのに…あたしの国の刑務所に入れるよ」

 とミケア・ミレイちゃんが怒り、がるるるとミケア・ミレイちゃんが言う。

「ご。ごめん。そんなに怒るなんて…」しゅんとするユキ。


「びっくりしたんだから。やめてよね。それに食い逃げはもういいから…

あともう1回言ったら、ララお姉さんに言って、ユキ君を未来へ連れて行ってもらうから」

 と言う。


「そうそう。思う存分もふってもらうように言うからね」

 とミケア・ミレイちゃん。


「ごめん」


「ねえ。何読んでたの?」

 キララは話題を変えた。


「うーんとね。世界の図書館という本。いろいろあるね。キララちゃん所有の図書館も載っているよ」

 とミケア・ミレイちゃん。


「どれどれ」

 キララは本を覗き込む。


「ほんとだ。見たことがある」

 ユキも本の写真を見る。


「えーとね。キララちゃんの図書館に併設している水族館がデートスポットとして人気があるだって。でも…最近ここにも水族館ができたみたいで…そっくりってここに書いてあるんだけど、知ってる?」

 ミケア・ミレイちゃんがキララに聞く。


「え? 何それ…」

 知らないみたいだ。


 記事を読んで…キララは…

「うーん。気になる。そっくりにしていいと言った覚えはないし…そんな連絡もきてないし…

よし。ユキ君行こう」

 キララはユキの手をとる。


「うん」

 ユキはキララに手を引っ張られて、図書館のカウンターへと行く。


 オープン記念のため、チケットが無料で配られていると柱のポスターに書いてある。


☆☆☆


 TMRを使って場所を移動する。


 併設と言っても距離はあるからだ。

 実にTMRは便利だ。空間移動に使える。


 この惑星上の衛星軌道上にある水族館。


 入り口の雰囲気はキララの水族館とは違っていた。


「なあんだ違うんじゃない?」

 ぱっと見て違うからユキはキララに言う。


「うん。たしかにね…入ってみよう」

 キララはチケットを係の人に見せてから中に入る。


 ちょっと奥へと進む。


「やっぱり違うんじゃない?」


 水族館の中に展示されているものも違う。


「やっぱり思い過ごし?」


 しばらく進む。


 この惑星の水生生物が展示されている。展示と言っても生きたまま水槽の中を泳いでいる。

 ライティングなども違う。


 キララは後ろを振り返ってみた。

「あー」

 キララの声にユキは後ろを見た。


「あれ?」


 後ろを見ると似ている。キララの水族館の宇宙クラゲの前の順路。


 よく見てみると、順路が逆なだけで似ているのがわかる。


「ねえ。これ見てよ。僕の水族館。並べてみるとね…」

キララは自分の水族館を撮影した映像をユキに見せた。

 水槽の中に展示されているものは違うが、配置が似ているし通路の曲がり具合も似ている。


 そしてさらに進むと…

「クラゲの展示だ」


「宇宙クラゲだね」

 宇宙空間の星々や銀河を背景に照明を暗くした水槽が並んでいる。

 水槽の中を浮かんで泳いでいるクラゲに似た生き物。

 大きさもキララの水族館で展示しているクラゲと似ている。


 照明の感じも似ている。

 下から上のほうに照明がのびており、ただようクラゲを照らしている。

 それでいて、建物の外の銀河や星々が見えるように明かりが調整されている。

 これも似ている。


「もう。責任者を呼び出すよ」

 キララはぷんぷんして、水族館の順路をたどり、出口まで行く。


「ねえ。ここの責任者を出してよ」

 キララは怒って言う。


「ど。どうかされましたか? お客様」


「これなんだけど。僕所有の図書館に併設している水族館。通路とか宇宙クラゲとか似てるでしょ」


 と言う。


「そうですね。お呼びします」

 係の人は電話で呼び出す。


☆☆☆


 係の人は「ではこちらの通路の突き当りの応接室でお待ちください」

 と裏にある通路へと通してくれた。


 キララとユキは進み、応接室へと入る。


 中にはソファと水槽。

 それと本棚があった。


 テーブルには飲み物があり、自由に飲んでいいそうだ。


 しばらくすると人が入ってきた。


「どうかされましたか?」

 と紳士な感じの人。


「えーとね。これなんだけど…これが僕。いや。私が所有している図書館に併設している水族館。

そしてこれがさっき撮影したここの水族館の順路を逆から撮影したもの…

そっくりでしょ。パクったの?」

 と二つの映像を見せる。


「ふむ。確かに似てますな。でもこの水族館のデザインに共通特許保有権を申請してますかな」

 と紳士は言う。


「してないよ」とキララは言う。


「では設計書に複製禁止と書いてありますかな。もちろん設計書自体ではなくて、建物自体にですが…」


「いや。そんなこと…してないよ」とキララは言う。


「では…当社がデザインを依頼した会社が参考にしたのでしょう。よくあるんですよ。人気がある施設を参考にすることがね」


 どん。

 キララは飲み物が入っていたコップを勢いよくテーブルの上に置いた。


「パクリでしょ」


「でも申請はしてないのでしたな。では侵害になりませんな。それにそのまま参考にしたとは思いません。順路は逆ですし… 理想的な水族館を考えるとどうしてもこのようになる。

人気がある水族館にもルールがあるんですよ。いい感じの曲線。通路を曲がったときに見えてくるものなどを考えると似てくるかもしれません。いかがですかな」

 と言う。


「うーん。たしかに…申請してないし…でもね…うーん」

 とキララはむすっとしたまま紳士を見る。


「ねえ。どうしよう」ユキはキララを見る。


 その様子を見ている紳士。

「ではこうしたらいかがでしょう。姉妹関係を結ぶのです。相互にイベントをやり、こちらは似ているところを改変する。もちろん水槽の位置は無理ですが演出方法はいくらでもあるのです。

こちらのアイデアをいくつかお教えしますので参考にしてはどうでしょう。もちろん似すぎないように…それでいて兄弟や姉妹みたいに雰囲気が似ている感じにして…あなたの水族館には当館のポスターを、私の水族館にはあなたの水族館のポスターを貼りましょう。いかがですかな」


「ま。まあ。それなら…」

 とキララは納得した。


☆☆☆


 アイデアの電子データをもらい、TMRへ転送してもらった。


「へー。こんなのあるんだ」ユキはキララに見せてもらったものを見て言う。


「たしかにね。落ち続ける光るヒトデか」

 上からヒトデを水槽の中でゆっくり落として、3メートルほど底にあるところまで移動させる。

 数秒間後に再び空間転移させて、水槽の上に移動する。

 そのヒトデは発光性があり、暗いところで見ると光って見える。

ずっと落ち続けるとヒトデも疲れるだろうから、一定時間動かしたあと休ませる。

 というものだった。

 でも、この水族館でもこのアイデアはまだ採用していない。

「ねえ。キララ。見てみたい」ユキは言う。


「そうだね。デートスポットにいいね。発光性があるヒトデ…」

しっぽをぶんぶん動かし始めたキララ。


 ユキはキララにぎゅっと抱きつく。

「完成したら、一般へ開放する前にキララとデートしたい」

 ユキは言った。


「そうだね。何? ずいぶん積極的じゃない?」

 キララは抱きついてきたユキに言う。


「そうかな」

 キララのきつね耳をなでるユキ。

 すっかり機嫌が直るキララ。


☆☆☆


 ユキとキララはシマ君とミケア・ミレイちゃんがいる図書館にTMRで戻る。

 ユキはシマ君とミケア・ミレイちゃんの隣のソファに座る。

「じゃあユキ君は図書館で待ってて、ちょっと過去に行って水族館の人にアイデアを伝えてくる。

そして今日以降に僕の図書館と水族館にこの水族館のポスターを貼るように言うね。

きっとこの日から数えて1週間後ぐらいには出来ているよ」


「そう」

ユキはキララを見送ったあと、隣にいるシマ君のきつねしっぽを見る。

シマ君のしっぽがソファの横に投げ出されている。

 ユキはシマ君のしっぽをなでなでする。


「ん? 何?」

 尻尾をなでられてシマ君がユキのほうを見る。

「やっぱり尻尾をなでられたらわかるのかな?」

 疑問を言った。


「そりゃわかるよ。なんで?」


「みんな同じきつねっ子でもしっぽの感じが違うなって」

 ユキはシマ君のしっぽをもふりながら言う。


「そうだよね。どう? 僕のしっぽ」

 シマ君はミケア・ミレイちゃんの世界でエステもしているからいい毛並みだ。


「いいね」

 ためしにユキはシマ君のきつね耳のつけ根もこりこりしてみる。


「あー。そこ。そこそこ」

 シマ君は気持ちがいいらしい。


 ミケア・ミレイちゃんが立ち上がり、ユキのほうに来た。

 ユキを挟んでシマ君の反対側にすわると…

「あたしもやって?」

 と頭を見せてくる。


「いいよ」

 逆の手でシマ君と同時にきつね耳をこりこりする。


「あー。いいよ」

「ほんと。シマ君のこりこりよりうまいね」

 ミケア・ミレイちゃんが言う。


「やっぱり。キララにやってあげてるからうまくなったのかも」

 ユキは言う。


「うふふ」

 目の前をとおりすぎる人がちらっとこっちを見て言った。


「あ」ユキは恥ずかしくなってこりこりをやめる。


そのとき…後ろから…

「ゆーき君」

 ララお姉さんが抱きついてきた。


「うわぁ」

 後ろを見るとララお姉さん。


「いつのまに…」

「いつ来たの?」

 シマ君とミケア・ミレイちゃんがユキ君の代わりに聞く。


「ちょっと前。TMRで飛んできたの。ユキ君をもふりたくなって。ほーらすりすり」


「うわぁ。ちょっと」


「すーりすり」


 とやっていると。


「こら。ユキ君がいやがってるでしょ」

「いやがってるでしょ」

 12歳のララちゃんと、幼稚園児のララちゃんも後ろにいた。


「えー。思う存分もふろうと思ってたのに…なんで?」

 大人のララお姉さんは、12歳の自分と幼稚園児の自分に起こられていた。

12歳のララちゃんは異世界から来た子だけど。


 とやっているうちに、キララが戻ってきた。

「うわ。みんな… さてはユキ君をモフモフしに来たのかな?」

 とララお姉さんを見て言う。


「そうなんだけど。さっき怒られちゃった」

 とララお姉さんは幼稚園児のララちゃんと12歳のララちゃんを見る。


「ゆだんもすきもない。こんな大人になりたくない」

「なにそれ。また言う。あなたは私なのわかる?」

 とララお姉さんが言う。


「じゃあ勝負。負けたら二度とこのじだいに来ないこと」

 とララちゃんが言う。


「何それ。ひっどーい」


「こら。自分自身で喧嘩しないの」

 キララが言う。


 そういえば、キララの図書館で言い争いをして、変な世界に飛ばされたりしたこともあったっけ。

とユキは思い出す。


「ねえ。水族館に行った?」

 キララは喧嘩をおさめるためにララお姉さんとララちゃん達に言う。


「まだ」

「うん」


「じゃあ3人で行って来たらいいよ。ほら。チケット」

 キララは3人にチケットを渡す。


「じゃあ行ってくる」

「うん」

「じゃあいこ」


 うさ耳っ子達はララお姉さんのTMRを使って行ってしまった。


 やっと静かになった。


「せっかくだから何か本でも読みたい。でもどうせなら…キララと一緒に観光スポットとかデートすぽっととか探したいな…シマ君とミケア・ミレイちゃんみたいに…」

 とユキは言う。


 仲良くならんで本を見ている2人に向かって言う。


「たしかにね。じゃあ僕。いや私たちは本を捜しに行くから。あと水族館のチケット2枚あるから」

 とキララは2人にチケットを渡す。


「ありがと」

「あとで行ってみる」


☆☆☆


「ねえ。ユキ君。どういうところがいい? このトレインの旅が終わったら2人だけで遠くにいく?」

 キララが聞いてくる。


「そうだね。学年が上がる前に休みがあるからそのときにしない?

地球でゆっくりしたいし…」

 とユキはキララに言う。


「そう? 私はユキ君と二人っきりでどこかに行きたいな。途中で図書館と水族館に寄って…

邪魔が入らないところでデートの旅…」

 キララがユキに抱きついて腕を組んでくる。


「デートね」

 くっついてくるキララのぬくもりを感じながらユキはまわりを見る。

 ユキはある特集のあるコーナーを目にする。


「ねえ。キララ。各地の誰もいない滅んだ惑星と自然の神秘っていう本があるよ」


「廃墟? あそこのソファで一緒に読もう」

 キララは指でソファを示す。


☆☆☆


「へー」


 ユキはページをめくった。


 紅葉で美しい木々。

 けれども、滅んだ惑星のとおり、紅葉で美しい木々の合間に人口の建物が朽ちている風景が見える。


「なんか。自然の強さを感じるね」

 キララはユキの隣で言う。


 ぱらりとめくる。


 いろいろな場所を見るユキとキララ。


「ねえ」キララがユキに言う。


「なに?」


「やっぱりトレインの旅が終わって地球に戻ったらすぐに出発するよ」

 キララはユキにやたらとくっついてくる。


「すぐに?」


「そう。私の宇宙船で…」


「すぐに?」


「そう…なんかむらむらときちゃったの」


「むらむら…ね。なんかいかがわしい言い方?」


「え? そんな感じだった? でもぉ

私はユキ君と一緒に過ごしたいな…」

 くっついてくるキララ。


「学校は?」


「うん。TMRで戻って…2週間の旅だよ」

とキララ。


「うーん。じゃあ行く?」


「そうしよう…未来で買い物をしてからね」


とトレインの旅が終わってからまたキララと2人で旅をすることにしたユキとキララであった。








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