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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
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幼稚園時代のけもの子達…

 シロが22歳のときに生まれたソラ。

 そのソラも5歳。

 シロの時代には、ハーフの子が結婚しているということもめずらしいものではなくなった。


 ハーフの子との子供を作るときは、藤森工業社製のDNA試験機の改良型をもとに、両親のDNAを預けて、1年間自動で育成される。その後両親に引き渡す。


「幼稚園デビューね」シロがソラに言う。

「でびゅーってなに?」

「はじめてお披露目するってことよ…」

「おひろめ?」

「みんなの前に出て挨拶するのよ」

「そっか」


 シロの時代の5歳のときは、職員さんに連れられて幼稚園にみんなと行った。

 ソラの時代では、職員さんに連れられて幼稚園に行く子達と、あたしたちみたいに両親がいる場合がある。ホームスティ制度もある。シロの家の近くで別のハーフの子がいる家庭に預けられ、週末は元の両親と一緒に暮らす。


 幼稚園に行くソラ。

「あー。でっかい尻尾」

「あ。これ? でっかいでしょ」リスのハーフの子。リリスちゃんが言った。

「自慢の尻尾なのよ。でもちょっとじゃまなのね。寝るとき不便だし…」


 そのまま寝ると尻尾を下敷きにしてしまう。


 ホームスティ先の家では、特別に二段ベッドの上の段を改造してもらってる。尻尾があたるところには幅20cmの切れ目を入れてもらい、尻尾を下の段に向けて通している。仰向けになっても、寝返りをうっても尻尾を下敷きにしてしまわないようにしている。


 ほかの場所ではそういうのはないので、うつ伏せか、横向きに寝ている。横向きが多いかな。と言っていた。


「ねえリリスちゃん、あれやって」ソラがリリスちゃんの後ろに立つ。

 リリスちゃんがソラをお尻で突き飛ばすように、お尻を動かした。するとソラが後ろにふっとぶ。

 お尻でなくて、でっかい尻尾でふっとばすような感じ。でも尻尾があたる感触が好き。


「またやって。こんどはあたしをふっ飛ばした後に、尻尾で上に乗って…」


「うん。それっ」ドン。ふっとんで床にうつぶせになるソラ。ソラの上に、大きな尻尾を下にしてリリスちゃんが上に乗っかる。

「ぎゅ」尻尾。いい弾力がある。

「リリスちゃん。結構重いね」

「まあね。ウサギの子よりは軽いのよ…」

「尻尾。もふもふ」

「ちょっとくすぐったい…」

 ソラとリリスちゃんはじゃれて遊んでいる。


 お昼。ホームスティ先の家で作ってもらったお弁当。

「あーまたピーマンとか、トマトが入っている」

 ソラが言った。ピーマンにがいし…トマトはあの液状のところが嫌い…

「あたしに頂戴。これあげる」

 リリスはソラのおかずを交換する。


 夕食。ピーマンとか、ミニトマトが入っている皿がある。ほかにいんげんと春雨のそぼろ炒めがある。シロはさやいんげんを、これあげる。としんたろうにおすそわけする。

「あなた。さやいんげん好きでしょ。あげる」

「ありがと。これをお返しに豚肉の三色巻き一つ」


 また、お母さんとお父さん。おかずを交換している。お母さんはさやいんげんをいつもお父さんにあげている。


「ソラ。ピーマンとミニトマトあんまり食べてないわね…」

「んー。ピーマンにがい。それとトマトの中身嫌い…」


「お昼のお弁当は食べているじゃない…

さては。本当に食べているのかな…」

 じー。シロはソラをじっと見る。

 ソラはぷいっと目をそらした。そしてシロはお母さんに言った。

「お友達のリリスちゃんにあげてるの。お母さんも、さやインゲンあげているでしょ」

「これは、お父さんが好きだからおすそわけしているのよ。ねえ」

「ああ」


「おかあさんがさやいんげん嫌いなの知ってる。食べてみて、さやインゲン」

「そうきたか…」

お母さんのシロがさやいんげんを口に入れてから、すぐにお茶を飲む。

「食べたわよ…」


「むー。いやいや飲み込んだみたい…」


☆☆☆


 シロの5歳の時代。お昼。

「あーまたさやいんげん。入っているぅ」

 シロはお弁当のおかずのお野菜にさやインゲンが入っているのを見つけた。

「これあげる」シロはギンちゃんにさやインゲンをおすそ分けする。

「そなたはさやインゲンが嫌いか。なら、これをあげよう油揚げの肉詰めを二つじゃ」

「油揚げ。いいの? 好物?」

「いや。そんなに好物ではない。みんな油揚げが好きだと思っていたら大間違いじゃ。

油揚げは飽きたのじゃ」シロはギンちゃんとおかずを交換している。


☆☆☆


 別の日。

「ララちゃん。上に乗って。お腹のところ」シロがララちゃんに言う。

「またやるの。重いよ…」

「いいよ。ぎゅーてなって。声が変になるのが面白いから…」

「上に乗るよ…」うさぎのハーフのララちゃんが、シロのお腹の上に座る。

 ぎゅー。と体重がかかる。「あ”ー。変な声…」シロが声を出すと変な声になる。

 ララちゃんがシロのお腹の上でちょっとバウンドする。

「あ”。あ”。あ”。変な声…」


「上に乗ったらつぶれるでしょ」先生がララちゃんに言う。


「らいじょうぶ。う”。う”。う”」シロが言う。

 変なことをして遊んでいるわね。先生はシロとララちゃんを見て言う。


 ギンちゃんは人間の子を家来にして、一段高いところから言っている。

「そなたたち。このミミと尻尾を見よ。お狐様だぞ」

「ははぁ。お狐さま。この村の飢饉を救ってくださいまし…」

 また農民とお狐様ごっごをやっている。


☆☆☆


 ミミちゃんとラミちゃんがユキ君と出会う前。ミミちゃん達が5歳の時代。

「今日からあたらしいお友達になるミミちゃんとコタロちゃんよ。よろしくね」

 先生が黒い猫耳少女とウサギハーフの男の子のコタロ君を連れてきて言う。

 あたしラミは、クロネコ少女を見る。

「ちっ」クロネコ少女は言った。感じ悪い…


「あー。それあたしのおやつ…」食べないで最後にとっておいた、おやつ。

 ラミちゃんのおやつをミミちゃんが食べてしまった。

「あー。ごめんね。食べないのかと思って… ニンジンクッキー嫌いでしょ」

「そんなわけないじゃない。ニンジンが嫌いなウサギはどこにいるのよ…」


「あそこにいるわよ。ねえコタロ君」ミミちゃんはコタロ君に話しかけた。

「うん。僕。ニンジンきらい。これあげるよ」とうさ耳少年は、ラミちゃんにニンジンクッキーをあげた。

「えー。ニンジンが嫌いなの? 信じられない…」ムンクの叫びみたいな顔でラミちゃんが言う。

 コタロ君からニンジンクッキーをもらい、食べるラミちゃん。


☆☆☆


 次の日。おやつの時間。

 煮干しとピーナッツが入った小袋。

「あんた。煮干しきらいでしょ。あたしが食べてあげる…」ラミちゃんが、ミミちゃんの小袋をうばって、にぼしを食べてしまった。

「にゃにするのよ。あたしの煮干し」にゃんこ語になり、ミミちゃんが言う。

 そしてミミちゃんの耳がしおれる。

「あんた煮干しきらいでしょ」

「そんなわけないでしょ。どこに煮干しが嫌いなネコがいるのよ…」


「僕。にぼし嫌いだからミミちゃんにあげるね…」とネコミミの男の子が言う。

「な。にぼし嫌いなの」ムンクの叫びみたいな顔でミミちゃんが言う。


☆☆☆


 夕方。床に座って遊んでいるミミちゃん。

 尻尾が床の上を左右に動いている。


 どん。ラミちゃんが、足を尻尾の上に踏み下ろした。


「ぎゃー」ミミちゃんが、尻尾を見て言う。

「あたしの尻尾。尻尾がぁ」尻尾を両手で持って、ふーふしている。


「しっぽ。じゃまなのよね。踏んじゃったじゃない」ラミちゃんがミミちゃんに言う。

「人の尻尾。踏んじゃダメと先生に言われなかった?」ミミちゃんは、ラミちゃんのうさ耳をつかんでひっぱる。

「痛い」ラミちゃんは、ミミちゃんの尻尾をつかんで引っ張る。

「ぎゃー。尻尾が抜ける。ばか力でひっぱらないでくれる?」


「こらー。喧嘩しないの二人とも。保健所の人を呼んで連れて行ってもらうわよ…」

 二人とも、ネコミミとうさ耳がしゅんとしおれる。

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」


「みんな注目して。先生がお話ししてあげる」二人の喧嘩を見て先生が話始める。


「ねえ。野良猫はたまに外を歩いているのを見るけど、野良犬はあまり見ないわよね。なぜかわかる?」

「しらないー」

「しーらない」

「なんで」

「えーとね。野良犬なんだけど、人が野良犬にかまれると狂犬病という病気になることがあるの。

 それでね。保健所の人が見回って、野良犬がいないかを監視しているの。

 野良犬は捕まって、保健所の人が連れて行ってしまう」先生は写真を見せた。


 わんこ耳をつけている少女。それと本物の犬と猫が檻の中に入っている写真。

「これはつかまっちゃった子達」

 先生は次の写真を見せる。


「これは、この子が檻から出されるところ、この後ここの部屋に入るのよ…」

 金属で囲まれた部屋。

 さらに次の写真を見せる。

 さっきの女の子と一緒に、犬が床に横たわっている。

 犬耳の女の子は犬を抱っこしている。

 寝ているように見える。


「この部屋の壁に穴があるでしょ。ここから薬品が出てきて。この子は天国に行っちゃった後なの」

 えー。

 ぎゃー。

 あ”。

 がくがくぶるぶる。

 ぷるぷる震える子達。


「悪い子は殺処分されちゃうのよ…だから仲良くね…」


 しーん。


 その後の子達はかなりおとなしくなった。


☆☆☆


「あ。またあの写真を見せたのね…」先生の同僚の子が話しかけてくる。

 保健所の写真は、あたしが施設を見学したときの写真。

 檻の中に入っているところと、最後に殺処分になる檻の中に入って、

 わんこと一緒に入って寝ているところの写真。

 教育のため写真をとるように言われて、写真のモデルになっただけ。

 写真に写っているわんこは、あたしがひきとって、ホームスティ先の家で一緒に暮らしている。


「毎年。この話をしてあげないと、喧嘩が無くならないから… でもすぐにまた喧嘩するようになるんだけど… ほんと猫のハーフとウサギのハーフの子なんで仲が悪いのかしら…」


☆☆☆


「ねえ。ミミちゃん。床にしっぽ落ちてたわよ…」ラミちゃんが、黒い毛の生えた長いものを、ミミちゃんに手渡す。


「え。そう。ありがと… ってそんなわけにゃいじゃない… なんでしっぽが落ちるのよ…」


「よくみたら、一本ついているわね。あんた。化け猫じゃなかったっけ? しっぽ二本なかった?」


「ないわよ… って。このしっぽ。あたしのしっぽにそっくり…」ミミちゃんは、ラミちゃんからもらった尻尾みたいなものを手にして見てみた。


「100円ショップのわごんセールで売ってたの。毛並みも似ているし… だからわごんセールで売っていたのね… ぷっ」とラミちゃんが言う。


「だからってにゃによ。あたしの尻尾は普通よ。普通。あんたのほうはどうなのよ。足太すぎ…

そして体重。一番重いんだって… やーいみにぶたー」


 ミミちゃんは悪口を言う。


 ぷいっと、ラミちゃんは部屋を出て行ってしまった。


☆☆☆


 1週間後のお昼寝タイム。


 ミミちゃんは寝ていた。お腹に茶色のタオルケットをかけていた。


 ラミちゃんは、むくっと起き上がり、ミミちゃんをまたいで通るのかと思ったけど、ラミちゃんはミミちゃんのお腹の上に足をのせた。そしてぎゅむとふむ。


「ふんぎゃー」ミミちゃんは、踏まれたときに叫び。そしてラミちゃんが完全に踏んで乗った後、白目をむいて気絶した。


「あー。なにやっているのよ。ふんじゃだめでしょ…」幼稚園のお姉さんが注意する。


「ごめんなさい。寝ていると思わなかったから… おトイレ…」ラミちゃんは、簡単に謝ってから廊下に出て行った。


「ねえ。ミミちゃん大丈夫? 死んでない?」お姉さんはミミちゃんの安否を確認する。


 けもの子のハーフは、体が丈夫。だから踏まれてもなんともないはずだった。


 うさぎのハーフの子はかなり重たいので気絶しちゃったようだ。


 むくっと起き上がり、おなかをさするミミちゃん。

「あ"ー 死ぬところだった。あのウサギ。ねえ先生。今夜、あのウサギを殺って、うさぎ鍋にでもしない?」


「ウサギ鍋って… もどってきたら誤ってもらうからね」お姉さんは。ラミちゃんが戻ってくるのを待つ。


 そのとき、廊下でわん。と声がした。


「えー。なんなのー」先生は廊下に出る。


 幼稚園の廊下の窓は開いていて、犬が廊下に上がり込んできていた。


 そして、ラミちゃんは犬を見て、立ったまま気絶していた。


 別の先生も廊下に出て来て、わんこを外に追い払っていた。

「あー。ごめんなさい。なんか悪さした?」お姉さんがわんこのリードを持って走ってきていた。


 リードが外れて幼稚園の中に入ってしまったらしい。


 シベリアンハスキー。


 お姉さんは、わんこをリードにつないで、おわびを言って出て行ってしまった。


 先生は立ったまま気絶しているラミちゃんを見てから、抱っこする。


「あー。この子立ったまま白目をむいているわね… ほら…しっかりしなさい… ってこの子すごく重たいわね… ちょっと手伝って…」先生がラミちゃんを運ぶのを別の先生に手伝ってもらっている。


「ふーん。ラミちゃん。わんこが苦手なんだ… 立ったまま気絶しているし… まあ悪いことをした罰ね…」ミミちゃんは言いながら、見守っていた。実は心配で見ていたのだった。


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