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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
再びカザー星系とのやりとり
109/138

カザー星系の所有する観光用トレインの旅... 静かな湖面での宿泊(14)

 宿泊施設での朝。


 昨晩はみんな同じ部屋で一晩過ごした。

 ついてからすぐに夕食が出てきた。

 土地の幸がほとんどで、何かのお肉やお魚っぽいものと、キノコのようなものや、はてまた若い木が出てきた。その辺に生えている樹木をちっちゃくしたようなもの。

 皮はむいてあったが、食べてみると柔らかかった。

 タケノコのような感じかと思った。


「まぶしい」

 キララは目を覚ます。

カーテンの隙間からお日様の光がさし、キララの顔にあたる。


 キララは隣で寝ているユキ君を見る。ユキ君はキララのしっぽを抱き枕にしている。


 そっと手をほどいて、キララは起き、カーテンを少しだけ開き外を見る。


 すがすがしい朝。


 外は風がないので、宿泊施設を囲んでいる湖面は鏡のようだ。

 お日様が湖面に反射してお日様の道をつくっている。

 時間はまだ早い。

 おさんぽにでも行く?

 ユキ君やシマ君。ミケア・ミレイちゃんはまだ寝ている。


「うーん」

 ユキ君が寝がえりをうち、逆にいるシマ君のしっぽを手でまさぐり抱き寄せる。


 ユキ君はくいっとしっぽを引っ張る。

「んー」

 シマ君は目をさました。


 ユキ君はシマ君のしっぽをごわごわしていたが、ぽいっと横に捨てた。

 目をさましたシマ君はそれを見ていた。


 その後、ミケア・ミレイちゃんが寝ながらシマ君にだきついてきて、そのままシマ君の体の上に乗っかる。乗った後、逆側に落ちる。

 どすっと落ちてユキ君とシマ君の間にミケア・ミレイちゃんは移動する。


 また、ユキ君は寝ながらしっぽをまさぐっている。

 ミケア・ミレイちゃんのしっぽをつかむと抱き寄せる。

 ぎゅ。

 ミケア・ミレイちゃんのしっぽを抱いたままおちついたようだ。


 キララはそんな寝姿を見た後、部屋を出た。


☆☆☆


 キララが散歩から帰ってきたら、みんな起きていた。


「あ。キララ。おはよう」シマ君が言う。


「ねえ。キララちゃん。聞いてよ。ずっとあたしのしっぽを抱っこしていたんだよ。この子は…」

 ユキ君のあたまに手をのせてぐりぐりするミケア・ミレイちゃん。


「ねえ。ひどいんだよ。ユキ君。寝ている最中に僕のしっぽを引っ張るんだよ。そのあと、ユキ君は寝ぼけて僕のしっぽを抱き枕にしようとしたんだけど、途中でぽいっと横に捨てたんだよ。

ひどいよね」


「それ見てたよ…お日様のおこぼれが私の顔にあたって目がさめたんだよね。私が起きるときにしっぽを抱いていたんだけど、そっと起こさないように尻尾をユキ君の手から外したんだよね。でもよくわかるよね。ユキ君。私のしっぽじゃなくてシマ君のしっぽだったから横に捨てたんだね」


「えー見てたの」シマ君はしっぽを自分の前に置き、手ですく。

「男の子なのに毛並みいいよね」ミケア・ミレイちゃんはシマ君のしっぽを手でなでる。

 そのままなでていたが、くしゃくしゃにした。

「なにするの」シマ君はくしゃくしゃされたしっぽの毛並みを整える。


 じゃあ僕もという感じでミケア・ミレイちゃんのしっぽをくしゃくしゃにするシマ君。

 しっぽの付け根のほうもくしゃくしゃにする。


「シマ君のえっち」ミケア・ミレイちゃんが言う。いったんしっぽをひっこめる。そしてユキ君のほうに向かってしっぽを垂らす。

ユキ君にも触ってもらいたいらしい。

ユキはミケア・ミレイちゃんのきつねしっぽをもふもふする。

「毛並みいいね。でもキララのほうが毛が柔らかいと言うか、なんか違うんだよね」

 ユキが言う。


「ほんとそれ」ミケア・ミレイちゃんが立ち上がり、キララのほうへと歩いて行く。

「何。私のしっぽをもふるの?」

 キララがちょっと警戒する。


「いいじゃない。女の子だし…えい」

 ミケア・ミレイちゃんがキララのしっぽをもふもふする。


「あー。ほんとだ。柔らかい。若い人のしっぽみたい。幼稚園児とか…」


「本当? じゃあぼくも」シマ君ももふろうとする。


「シマ君はだめ」

「えーなんで。僕だけ…」


「ねえ。みんなでじゃれてないで外を散歩してきたら。すがすがしいし、景色もいいよ」


「そう…じゃあ行こうかな」

「あたしも」


 ユキ君は…

「ねえ。あとでキララと一緒に二人だけで行きたい」


「そっか。そうだよね。じゃああとで一緒に行こう」


 シマ君とミケア・ミレイちゃんは外へでかけていった。


 ユキ君はとなりを手でぽんぽんする。

「ユキ君も私のしっぽもふるのかな?」

 キララはユキ君の隣に座り言う。


「ふっふっふ。こうだよ」

 ユキ君はキララにだきついて自分のあたまをキララの胸にすりすりした。


キララはユキ君の上半身を抱きかかえる。

「そうきたか… じゃあわたしも…」

 キララは自分のあたまをユキ君の頭にすりすりする。

 きつね耳を頭にこすりつける。


「じゃあ。今度は…」

 ユキ君とキララは一緒にじゃれる。


 で。

「ねえ。じゃれているよ」

「ほんとだね」

 という小声。


「え?」

「あ?」

 部屋の入り口を見ると、シマ君とミケア・ミレイちゃんがいる。

「なんで」ユキ君は恥ずかしくなった。


「景色が綺麗だからスマホを部屋に忘れてとりにもどったんだけど…おふたりで…」

「じゃれていたからね…」

 シマ君の後にミケア・ミレイちゃんが言う。


「じ。じゃれてないよ。グルーミングだよ」

 ユキ君が言う。


「ぐるーみんぐ?」

「いいよ。気にしないでやってて。ヒメルとみのるお兄さんみたいに、まわりを気にせず…ラブラブとか」

「そうそう」

 と言い、シマ君は自分のとミケア・ミレイちゃんのスマホを取り、部屋を出て行った。


☆☆☆

「あーびっくりした。戻ってくると思わなかった」

「そうだね。ちゅーとか、押し倒さないでよかった」

 キララが言う。


 じー。ユキ君がキララを見る。

「なに。僕を押し倒す気だったの?」と言う。

「まあね。ユキ君は私を押し倒したいと思わない?」


「え? いや。あー。その…たまにはね…」

「男の子だよね。ユキ君はおとなしいんだから… 私は…そうだね。肉食になっちゃおうかな。きつねのハーフだし…いちおう捕食者だからね。ふっふっふ」

 キララは言うが…


「元トリのハーフでしょ」

 とユキ君は言う。


「まあね。でもこの姿にもだいぶなれちゃった。この耳とかしっぽ。背中に羽がないのも」

 じぶんのきつねしっぽをごわごわしてなでるキララ。


「このしっぽ。ふかふかで柔らかくてすきだよ」

 ユキ君もキララのしっぽをなでる。


 ユキ君はきららの太ももをぽんぽんする。

「ひざまくら? あとプラスでしっぽ付きかな?」

 キララはユキ君が膝に頭をつけるのを待つ。

 その後、ユキ君の上にしっぽを乗せる。


 ユキ君は目を閉じた。

 キララはユキ君の頭をなでる。


☆☆☆


「あ。寝てるよ。ふたりとも…」

「気持ちよさそう。あれやって僕にも…」


「うん。いいよ。じゃあそっちで…まだ早いしね…」

 朝食の時間まではまだある。

 シマ君とミケア・ミレイちゃんの組も膝枕あんどしっぽ付きをしてみることになった。


☆☆☆


「朝食の準備ができました」

 女の人が部屋の中に声をかける。

「あら」

 膝枕をされて寝ている男の子2人。

 正座してこっくりこっくりしている女の子2人。


 メモをテーブルの上に置いてそっと出て行った。


☆☆☆


「あ」

 ユキ君が起きた。

 そのあとすぐにキララも目をさます。


 そして…そばを見て、シマ君とミケア・ミレイちゃんを見る。

 同じようにミケア・ミレイちゃんに膝枕をされて、しっぽを布団にして寝ている2人。


「おほん。おほん」キララがわざとらしくせきをする。


 ミケア・ミレイちゃんが先に目をさます。

「あ」あわてて足をずらし、腰をうかせたミケア・ミレイちゃん。

 案の定。シマ君の頭が床の上に落ちる。

 ごん。

 いきなり頭を落とされて目を覚ますシマ君。

「なんだよ。あ」

 シマ君はユキ君と目が合う。


「仲いいね」ユキ君は言う。


「君たちもね」シマ君はユキ君とキララの2人を見て言う。


 立ち上がったミケア・ミレイちゃん。

「ねえ。テーブルの上にこんなものがあるよ」

『朝食はテラスにご用意してあります』というメモだ。


 ぜんぜん気が付かなかった。


☆☆☆


 外のテラス。

 散歩の時よりお日様は高くなり、うっすらと出ていた霧もなくなっている。


「おいしそう」

 暖かいスープのほか。何かの卵っぽいものと、パンのようなものがある。

 それと小さいお肉とキノコ。


 静かな湖面の上。他には何も聞こえない。

 鳥のような生物がたまに空をよこぎっていく。


 緑色の冷たいのみものも飲む。

 緑茶かと思ったが味はちがった。ほのかに塩味がする。


朝食を全て平らげて、食後の飲み物を飲みながら静かな鏡のような湖畔を見て過ごす。

ユキ君は一口飲み物を飲んで「この後はどうするの?」とキララに聞く。


「そうだね。ずっとここにいたいんだけど…トレインに戻らないとね」

「そっか。トレインの旅の途中だもんね。行きたいところはある?

あ。でもこの先に何があるかあんまり知らないんだけどね」

 シマ君はキララに聞く。


「えーとね。行きたいところがあるんだよね。巨大施設とか、巨大おもちゃ展とか、巨大農産物展とかが途中で経由する惑星にあるんだけど…衛星軌道上に図書館と水族館も併設していて…惑星上をぐるりと囲んでいるんだって。そこに行ってみたいと思っているんだけど…どうかな…」


「じゃあ行こ。デートだね」ミケア・ミレイちゃんはユキ君の隣に移動して腕をとる。


「浮気」シマ君はミケア・ミレイちゃんに言う。


「そっか。じゃああたしはシマ君とデートしようかな」キララは言い、シマ君の腕に抱きつく。


「もー。浮気…」言いながらユキは立ちあがって、キララのきつね耳の中に指をつっこむ。


「うわぁ」かなりびっくりして2メートル近く飛び上がるキララ。


「うわ。そんなに飛び上がるとは思わなかった。キララごめん」


「私は怒ってるんだよ。耳の中に指はいれないでと言ったよね。もう」


 キララは席を立ち、部屋の中へと入って行く。


「あ。まって。キララごめん」


 部屋の中へ入る。


 キララはこっちを見ず。後ろを向いている。


「ねえ。キララ?」

 そっとかたを叩く。


「えーい」

 キララはユキにとびかかり押し倒した。続けてキララは「こうしてやる」とユキ君の髪をくしゃくしゃにした。そして脇腹をこちょこちょ。


「あはは。だめ。そこはだめ…」


「耳に指をつっこんだ罪は重いんだよ。重いつながりで上に乗っちゃう」

 キララはユキのお腹の上に乗る。

そのままこちょこちょ。


「キララごめん。本当にごめん」


「まだまだ。わきばらをこちょこちょ」


「ひゃはは。だめ。そこだめ」

 じたばたする…


「ねえ。あれ。きっと私たちがいるの忘れてるよ」

「そうだね…」

 後ろからシマ君とミケア・ミレイちゃんが見ていた。


「おほん。おほん」わざとシマ君が咳払いをする。


「あ」

「あ」

 ユキとキララが気が付く。


 キララはユキ君の上から降りる。

「ごめんね」

「いやこっちこそ」

 ユキはキララのきつね耳をなでる。


「さてと出発の準備をしよう」

「そうだね」


 何事もなかったかのように言う。


 宇宙のトレインへ戻ることになる。


 鏡のように静かな水面の湖畔といい景色。

 これも見納め。


 トレインの旅もいいものだ。

「じゃあ行くよ」キララはみんなに言った。



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