カザー星系の所有する観光用トレインの旅... 静かな湖面に星空が浮かぶところでの列車の旅(13)
ユキとキララ。シマ君とミケア・ミレイちゃんはトレインの旅を楽しんでいた。
カザー星系と地球の危機が解消されたことは知らない。
イベントが終わり、とある惑星上へと降り立った。
時間は午後3時ぐらい。
でも日が暮れて、星空が見え始めている。
そういう地域だった。
それと…
「すごいね…」
でっかい湖があり水面は鏡のようだ。
だんだん星空が見えはじめている。
「ここからトレインに乗るよ」
でっかい湖のほとりにある小さな駅。
ここから目的地の宿がある場所へ列車でゆっくり移動する。
「でっかい湖の上を通っている線路をずっと走るんだよ。午後の8時ごろに宿泊施設に到着だって」
キララがユキ君に言う。
宇宙を走るトレインもいいけど、惑星上を走るトレインもいい。
それに夜。大きくて非常に浅い湖の上を通っていく。
キララとユキ・シマ君とミケア・ミレイちゃんは地球人に合いそうな座席がある車両を渡り歩く。
5つぐらいの車両を乗り移り、やっとちょうどいい座席がある列車を見つけた。
大きな窓があり、窓のほうに向けてテーブルが置いてあり、窓が見えるように椅子が置いてある。
「ここにしよう」
キララが言い椅子に座る。座り心地はちょうどいい固さで地球の列車の座席みたいな感じ。
ユキもその隣に座り、シマ君とミケア・ミレイちゃんはちょっと離れたところに座る。
座席はジグザグに設置してあり、テーブルと椅子が左寄りにある場所もあれば、テーブルと椅子が右よりにあるところもあり、椅子の隣は通路になっている。
じりりりり。ベルが鳴った。
がたんごとんと、列車がゆっくり動き始める。
列車が走り始める。
「列車内の明かりを暗くするよ」キララは壁のスイッチを押した。
「うわぁ。すごい…」
ユキは窓から外を見た。
満天の星空。それと鏡のように水面が綺麗で遠浅の湖。
水面に星がうつりこんでいる。
地上を走る列車だが、星空の中を走っているみたいだ。
でも…実際の星空を走っている列車から見る星空とは違い、ゆらゆら星がゆれている。
列車はゆっくり走っている。
がたんごとん。
がたんごとん。
レールのつなぎ目もあり定期的な音がする。
「なんかいいね。すごく綺麗だし…」
ユキ君はキララの隣で、水面に反射して見えている星空を見ながら言う。
「こういうところでプロポーズとか、告られたらイチコロだね」
キララが言いユキ君のほうを見る。
「え?」
「だから…こういうところでプロポーズとか…なんだけど…催促しているように思っちゃうかな?」
キララが言い、じっとユキ君の顔を見る。
「え。あー。そうだね…えーとキララ。僕と…」
「僕と?」
「これ以上言うのは恥ずかしい…んだけど…キララが好き…だよ」
「私も…」
キララはユキの隣に座っているが、ちょっとだけさらに近づいた。
ちょっと離れた席では…
ミケア・ミレイちゃんがシマ君の手をとって立ち上がる。
「シマ。僕と結婚してくれ…。この水面にうつっている星空も僕たちを祝福してくれているよ…
なんてね…
なんであたしにプロポーズしてくれないの?」
「えー。いや。結婚することはもう決まっているし… まだプロポーズするには早いかなと…」
「ふーん。早いんだ…あたしはもういつでもというか…いつでもいいんだけどな…とくにこういうロマンチックなところで…近くにはユキ君とキララちゃんしかいないし…
というか…きっと聞いているよ」
「え?」シマ君がユキとキララのほうを見る。
キララがユキ君の手をとって立ち上がった。
「ユキ。僕と結婚してくれ…。この水面にうつっている星空も僕たちを祝福してくれているよ…」
キララが真似して言い…続けて…ユキが…
「ありがと…きっと今日言ってくれると思ってた。よろしくお願いします。えへへ…
ぷっ」最後まで言い切らずにユキはふいた。
「くそぉ。じゃあ…
ミケア・ミレイちゃん。僕と…」
「僕と?」ミケア・ミレイちゃんがキララの声真似をして言う。
「これ以上言うのは恥ずかしい…んだけど…君が好き…だよ」
「あ。ありがとう…あたしも好きだよ」
ミケア・ミレイちゃんはシマ君のほっぺたにチューをした。
2人でちらっとユキとキララを見る。
「もー。なんだよ…僕のセリフを改ざんして…
す。すごく…恥ずかしいよ…」
ユキはキララのしっぽを、もふりはじめた。
ミケア・ミレイちゃんはそれを見て…キララのそばへと歩いていき、キララの耳元で言う。
そして…
キララがミケア・ミレイちゃんの手をとって言う。
「僕は君が好きだ。結婚してくれ… この水面にうつっている星の数より君が好きだ」
「あたしはここで言ってくれるのを待っていたんだよ…よろしくお願いします」
ミケア・ミレイちゃんは…顔を赤らめて言い、ちらっとシマ君のほうを見る。
「これよりいいのを期待しているからね…シマ君」
「これよりいいのを期待しているからね…ユキ君」
と2人は言った。
「えー」
「えー」
ユキ君とシマ君はそろって言った。
そんなやりとりをしていると…
列車の連結部分の壁に自動ドアが開き、誰かがやってきた。
誰かと思ったが…見覚えのある姿。
「やあ。ユキ君。それとキララちゃん。それにシマ君もいるね」
異世界から来た男のキラだった。
「なんでここに?」ユキはキラに聞いた。
「いやあ。ちょうどこの世界に用事があって、ある人を異世界へ届けてきた。
でね。君たちはきっとこの列車に乗っているだろうと思ってきちゃった」
「そうなんだ」
キラはユキ君とシマ君をじっと見てから。
「ところで…君たちに渡したいものがあるんだ…隣の車両へ来てくれるかな…」
とキラが言ったとき…
また列車の連結部分の壁に自動ドアが開き、誰かが入ってきた。
誰かと思ったが…見覚えがある人。
「やあ。ユキ君。それとキララちゃん。シマ君もいるね」
異世界から来た女のキラだった。
「え? 君も来たの?」ユキは女のキラに聞いた。
「うんそうだよ。この世界ではないんだけど…ある人をこの世界へ送り届けて…
でね。君たちはきっとこの列車に乗っているだろうと思ってきちゃったんだけど…
男の僕もいるとはね…」
女の子のキラと男のキラは見つめあう。
そして女の子のキラが言う「君が持っているものはあれだね…
私の方はキララとミケア・ミレイちゃんに渡そうと思って持ってきたものなんだけど…
ちょうど良かったね」
男のキラも女の子のキラを見て言う。
「たしかにちょうどいいね。じゃああなたはあっちの車両へ連れて行って。
僕はこっちの車両に行くから…」
「というわけで…キララちゃんとミケア・ミレイちゃんは向こうの車両へあたしと一緒に来てくれる?」女のキラは言う。
「うん。いいけど」
「何くれるの?」
キララとミケア・ミレイちゃんは女の子のキラの後へついて行く。
ユキとシマ君は男のキラの後について隣の車両へ…
そこで見たものは…
「これか…」
「うわあ…すごいね」
女の子の服だった。
「異世界でね。女の子のユキに会ってね。そこの子が着ていたのと同じ服を手にいれたから君に着てもらおうと思って。ついでにシマ君のも…ボーイッシュな感じの女の子の服を見つけたから…」
「ねえ。どうしても着ないとだめ?」
ユキはキララに言う。
「うん。ちょうどいいし。ちなみにキララちゃん達は男ものの服をキラは持ってきたみたいだから、逆プロポーズごっこをしよう…僕も見てみたいし」
ユキはキラの顔を見る。
もらってくれないの? という顔を少し見せながら見ている。
「ありがと。来てみるよ。前のイベントで着てたし…だよねユキ君」
シマ君が言い、さっそく服を脱ぎ始める。
で。
「げっ。これも?」シマ君は服の下からパンツとブラが床に落ちたのを見た。
「そうだよ。本格的にね。ちなみにブラはパッド入りにしたからね」
「うわぁ。これはちょっと…」
とユキは言うが…
「だめ。ほら…せっかく異世界から来てプレゼントをもらってくれないと泣いちゃう」
男のキラは言う。
イケメンのキラが泣きまねをする。
「うう。パンツはだめだけどブラだけ」
シマ君は言い、なにも気にしないで着替える。
それを見てユキも観念した。
☆☆☆
「ちょっとだけ待っててね。向こうの準備ができたら行くよ」
「うん」
ユキはシマ君を見た。
シマ君はユキ君を見た。
「すごいレベル高いね。ハーフのSランクの子と並んで歩いていても気にならないよ」
「うん。君も。お姫様の隣にいてもその子のお姉さんに見える感じだよ」
「じゃあ行こうか」
キラが元々いた車両へのドアを開ける。
「あ」
「あ」
「お」
「いいね」
それぞれ言う。
双方かなりレベルが高い。
キララが早歩きでユキのそばへ来る。
キララは背がちっちゃくはないので様になっている。
「やあ。見てごらん。この水面に映っている星の数。そして空。あの星ひとつひとつが、僕たちの出会いを祝福しているよ。君を一目見た時から気になっていた。どこの時代どこの世界にいるときもずっと君のことを考えていたよ…
僕と結婚してくれないかな。こんな僕で良ければ…」
とユキ君の手をとっていきなり言う。そしてユキ君をぎゅっと抱きしめた。
「あ。えーと。その… はい」
とだけやっと言う。
「なんか顔が赤いね。ユキ君。男前のキララを見てどきっとしちゃったのかな?」
「うん」
うつむいて恥ずかしそうに言うユキ…
それを見てキララは…
「うっ。かわいい」
キララはさらにユキ君をぎゅっと抱きしめる。
「じゃああたし。というか僕ね…
…。
…」
「え?」
何も言わないミケア・ミレイちゃん。
「ごめん。君に見惚れていたよ。いろいろ言おうと考えていたんだけど…
君の前では頭が真っ白になるね。
見てごらん。水面に反射して見える星たち。あの星一つひとつが君を照らす照明だよ。
あたしは君に命を助けてもらったときからずっと気になっていたよ。
再び出会えることができてうれしい。
好きだ。結婚してくれ」
「あ」
シマ君も驚いている。
「ぷっ。何赤くなっているの? あたしも恥ずかしいんだけどね…
結婚して」
最後に付け加える。
「え?」
「だから結婚して…逆プロポーズでもいいし…でも正式発表のときには考えてきてね」
「うん。よろこんで」
逆プロポーズが成立した。
「はい。これが正式な逆プロポーズね。取り消しは認められないからね。
あとは…あたしの世界でね」
きつねしっぽをぶんぶん振って気持ちを表すミケア・ミレイちゃん。
「うん」うんとしか言わないシマ君。
「なに。逆プロポーズ受けちゃってこのこの」
ユキはシマ君の隣で腕をつっつく。
「うう」シマ君はユキ君を見た。
そして…
「ユキ。綺麗だね」
と真面目な顔で言う。
「え?」
「君が好きだ。結婚はできないけど…一生そばにいてくれ」
と言った。
「ぷっ」キララがふいた。
「まだまだだねー」ミケア・ミレイちゃんも言う。
「びっくりしたけど…まだかな?」ユキまでも言う。
「じゃあ。僕にやってくれるかな?」女の子のキラが言う。
「え?」
「だから僕にやってくれるかな」
手招きする女の子のキラのほうへ歩いていき…
キラの手を取る。
ユキはじっとキラの瞳を見つめてから「あなたのことが好きです。ずっと前から思ってました…」
純粋な瞳で見つめながら言うユキ。
「う。こ。これは…結構な破壊力だよ。君も受けてみるかい?」女の子のキラは男のキラに言う。
「そうかい。じゃあ。こっちおいで…」男のキラが言う。
男のキラ。キララとキラは元々同じ人物で、男のキラは異世界からの出身だからやりやすい。
じーと男のキラの瞳を見つめて…少し何もいわずためてから…
「あなたのことが好きです」
どストレートに言った。
「う。こ。これはレベル高いね。本物の女の子に告られたみたい」
男のキラはユキの頭をなでる。
抱きしめようとしたがやめる。
「ねえ。僕。いや私にも言ってくれる? どんなものか気になる」
キララも言う。
「うん」
ユキはキララの前に立つ。
じっとキララの瞳を見つめて無言でためる。
そして…「キララ。私はあなたのことが好きです」
どストレートに言う。
「う。本物の女の子から告られるのより破壊力が高いよ…これは。
ちょっとまって…」
言いながらそばの席に座り込んでしまう。
「どうしたの?」心配そうな顔でキララの顔を覗き込むユキ。
じーとキララを見るユキ。
「うわあ。はずかしい。心臓がばくばくする」
本気で破壊されたみたい。
ユキはキララの横に座る。
「うう」キララは言っていたが、ちらっとユキを見て…
「本当に大丈夫?」ユキはキララの顔を覗き込んだとき。
がばっ。
キララがユキ君を押し倒した。
そしてちゅー。
「あ」
キララはユキ君の手をとった。恋人つなぎ。
「ん」
…
「うわあ。ごめん。つい」
あわててキララは起き上がる。
「う。びっくりした」
「うわぁ。本当に押し倒しちゃった」シマ君がミケア・ミレイちゃんを見る。
ミケア・ミレイちゃんがシマ君にちょっと膝を曲げて頭の高さを低くしてと言う。
シマ君がちょっとだけしゃがんだとき…
ちょっとだけ背伸びをしてミケア・ミレイちゃんがシマ君のくちびるにちゅーをした。
「あ」シマ君もびっくりしている。
「くちびるうばっちゃった。えへへ」ミケア・ミレイちゃんは椅子に座る。そして手を隣の席へぽんぽんとする。
それをキラ達は見て…
「じゃあ。そろそろ帰るね…お邪魔かもね」
「そうかもね。ねえ。せっかくだからあたし達でどこか行かない?」
「まあ。そうだね。自分だし気が合うかもね。じゃあブラックホールに飲み込まれている最中の恒星系へ行って星系の最後を見ながらお酒を呑むのはどう?」
「そうだね…ちょっと。気をまぎらわしたいね。世界の終わりを見ながら…あと。その後観光地巡りでもして…」
「いいねえ。じゃあ。ごゆっくり」
と言いキラ達は自動ドアを開けて出て行ってしまった。
☆☆☆
「着替えようかな」
「僕も」
ユキとシマ君は着替えることにした。
「やっぱり落ち着かない?」
「かわいいのに」
キララとミケア・ミレイちゃんが言う。
「うん。もうそろそろ宿泊施設に到着しそうだし…このままだと女の子のお客さんになっちゃうし」
「いいんじゃない?」
「えー。お風呂とかどうするの? 女の子のほうに入っていいの?」
シマ君が言う。
「それはこまるというか。貸し切りとかないの? 一緒にはいる?」
ミケア・ミレイちゃんがキララに言う。
「湖面に作られたお風呂はあるね。水着着用だからね」
「そっか。入ろうね。ユキ君。シマ君」
ミケア・ミレイちゃんが言う。
列車の建物から宿泊施設が見えてきた。
水上に建物がある。
湖面には星が反射して見えているのは同じ。
列車が停止し、湖面の上の桟橋みたいなところに降りる。
そのまま宿泊施設につながっている。
ユキはまわりを見た。
線路と宿泊施設以外には何もない。
かなり遠くに陸地が見える。
ここから見ると、星の海の真っただ中に建物があり…なんともロマンチック。
「ミレイちゃん」言いながらシマ君は手を取る。
「なにかな」ミケア・みれちゃんはシマ君を見上げる。
「綺麗だね」ミケア・ミレイちゃんの顔を見ながら言う。
「それってどっち? あたし? それともこの景色?」
じーと見ているミケア・ミレイちゃん。
「どっちも…君もかわいいし…」
言いながらミケア・ミレイちゃんの髪を手でさわる。
「ありがと」
僕たちのことは忘れているみたいだ。
まるでヒメルとみのるお兄さんみたいだ。
「ごほん」
「んん」
空咳をするキララとユキ。
「あ」
「あ」
慌てて僕たちもいることを思い出す。
「入るね」キララはユキとミケア・ミレイちゃん。そしてシマ君に言った。




