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【連載版】しっぽのとなり  作者: しっぽと羽
けもの耳の子達とのふれあいとSFちっくな日々
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ぽわぽわの日

 夏休みも終わり、少し涼しくなってきたころ。

 学校の行事が行われる。

 学校祭。けもの子も通っている学校なので、ちょっとした名物になっている。

 それに今年は特別だ。

 ハリウッドスターのスーちゃんが来日し、この学校で歌声を披露するという。

 スーちゃんは二十歳。政府からの発表のときに鳥のハーフとして紹介された子だ。


 その後、綺麗な歌声とS2ランクの容姿の綺麗さから映画に天使役や子役として出演し、有名になっていた。この学校にもS1ランクの鳥のハーフの子はいる。先輩なんだけど、とっても美人だ。


「先生の独断でみんなにはアニマル喫茶をやってもらう」

 ひげを生やした先生は言った。

「俺はいいぜ。アニマル喫茶」

「あたしも賛成。ねえ、あたしみたいなノーマルの人間も、けもの耳を付けたらだめなのかな…」

「先生はいいと思うぞ」

「やった。何やろうかな」

 さっき発言した女子が言う。結構かわいい子だから何やっても似合うんだろうな。たぶんネコかな。

 ユキはその子を見て思った。

「ウサギのハーフはそのままバニーガールで。猫耳の子は猫耳メイドで。犬耳っ子はわんこのメイドか執事で。狐耳の子は巫女さんでOK?」

「OK」

「OK」

「OK」

とクラスの人が認めた。

でも。

「えー。あたしやだ。バニーガール以外をやりたい。犬耳とか…」

ラミちゃんが言う。

「なんだ。お前バニーガールいやなのか? 天然のうさ耳少女なのに…」

「だって…似合わないし…」

ラミちゃんが耳をしょぼんとした感じで言う。

「お前だけ特別にというのは無しだ…。はいそれじゃ必要なものを決めるぞ…」


 ラミちゃんはバニーガールをすることに決定してしまった。

 「なーに。そんなに嫌だったの? 先生に抗議してミニブタの恰好でもすれば…」

 どん。

 ラミちゃんは、ミミちゃんの足を踏もうとして、足を床に踏み下ろす。

「また喧嘩してる…おばあちゃんに言うよ。夕食のニンジンとか鰹節とか減らしてもらうから…」

「それはだめ」

「それはだめ」

 二人そろって言う。

「ちっ。覚えてなさいよ…」

 ラミちゃんは廊下の方に歩いていき、教室を出て行ってしまう…


☆☆☆


 夕食の時間。

 ラミちゃんは大好きなニンジンのグラッセを食べずに、ため息をついていた。

 よっぽどいやなんだな。ユキはラミちゃんを見て思った。よし、明日先生に言ってみよう…


 当日。ユキはラミちゃんに服を渡した。

「えっこれって…」

 うさ耳メイド用のメイド服だ。バニーガールからうさ耳メイドに変更してもらった。

 僕が先生に頼んで、クラスの女子に服の寸法をラミちゃんに合うように修正し、尻尾の穴もあけてもらった。


「ユキ君。ありがと…」

 ラミちゃんは目を指でぬぐった。涙が出そうになっていたからだ。


「よかったわね」

 ミミちゃんがこっちに来る。

「あれ。その恰好…」

 ミミちゃんは、クロネコの猫耳少女のはず…

「カレーを盛大にこぼしちゃったのよ…余っていたバニーガールの衣装しかなかったから着ているの…」

猫耳の他に、さらにウサギの耳のカチューシャを付けている。それにあみあみのバニーガールのタイツ。なんか似合わない。

「あんた。似合わないわねぇ。足が細すぎるのよ… 胸もぺったんこだし。ネコがウサギの恰好って何よ。変ね」

「悪かったわね。あんたより似合っていると思うわよ… ネコだけどね」

 ラミちゃんはミミちゃんのバニーガールの恰好を見る。

「ぐっ。それは否定できない…」

 本当にバニーガールが似合うのはミアお姉さんぐらいだろう。完璧なバニーガール。


「よいしょっと。こっちだっけ。A2番?」

 危なっかしい感じでララちゃんがメイドの恰好をして飲み物を運んでいる。

「かわいい」

「かわいい」

「かわいい」

「かわいい」

4人組の女子の隣のクラスの子がそろって言う。

「あの耳と尻尾かわいいね」


 ちびっこのけもの子を見ているとほんわかする。


「はい。どうぞ…お兄ちゃん」

 シロが飲み物をテーブルの上に置く。

「あ。ありがとう…」

「きゃー。なにあれ…羽がちょっと光ってない? 天使よ天使」

 女子がシロを見て言う。

 シロは天使の恰好をしていた。シロも特別にお手伝い。

 シロが歩くと羽からキラキラしたものが降り注ぐんじゃないかと思う感じできらきらとしている。

「ねえ。あの子のタグを見た? 銀色よ。銀色」


「ほれ。こーひーじゃ」

 と大きなふかふかの尻尾を見せながら、小さい巫女さんがコーヒーをテーブルに置いた。

 ギンちゃんもお手伝いをしていた。

「ねえ。お願いがあるんだけど、尻尾さわっていい?」

 女子数名に言われる。


「そんなにわらわの尻尾をさわりたいのか。まあよかろう。ほれ」

 ふかふかのしっぽを女子に見せる。

「きゃー。なにこれ。ふっかふか」

「ほんとだ。ふっかふか」

「あたしも。あたしも…」

 偉そうな感じで、人間に尻尾をさわらせてやっているという感じで、狐っ子のギンちゃんが、ふかふかの尻尾を人間にもふられている。


「みんな人気だね…」

 ユキはミミちゃんに言う。

「まあ。そうね。やっぱり本物ってのがいいんじゃない?」

 たしかに、人間がバニーガールの恰好をしたり猫耳をつけたり尻尾をつけたりしても、偽物の耳は動かないし…

 それに本物の、けものっ子の場合は、ミミや尻尾を触ると動くし体温であったかい。

 恰好を見ているだけでもラブリーだ。


「ねえ。ララちゃん。かわいいからあたしの家の子にならない?」

「シロちゃんも。うちに来ない?」 

数名の人から言われる。

「うーん。どうだろ。あたしは今のところが気に入っているから…

お姉ちゃんたちも、ハーフの子のホームスティの申請をしてみたら…」

 ララちゃんは言う。

「あたし、お母さんに相談してみようかな… ねえ写真とらせて…」

「いいよ…」

「あ。どうせなら、あたしの膝の上に座って…」

「いいの?」ララちゃんはその子に言う。

「いいって。さぁ。ばっちこい」と女の子は友達に自分のスマホを渡す。

ララちゃんを見ながら膝の上をぽんぽんとする。


ぎゅ「ほんとかわいい。このうさ耳もさわるとあったかいし…

じゃ。写真とって…」

数名の女子から写真や、膝の上に座ってと頼まれるけもの子達。


「ねえ。ラミちゃん?」男子から声がかかった。


「何?」

「えーと。僕もあんな風に、君に僕の膝の上に座ってほしいな…」

「えー。それは…どうなんだろう…」


「いいわよ」女子の学級委員長が言う。

「この子あたしの知り合いだし…おとなしいから変なことしないのは保証するわね。

この子は昔ウサギを飼っていたことがあるの。でも野犬に襲われて亡くしちゃったのよ」


 そうなんだ。野犬。あたしも怖い。

「わかった。でもあたし、かなり重たいわよ…」

「うん大丈夫…」


「じゃあ。失礼して…」ラミちゃんが男子の膝の上にそっと座る。

 男子は後ろからラミちゃんを抱きしめてぎゅっとした。


 ラミちゃんは男子が言っている言葉を聞いた。

 とっても小さい声だったけど、『さくら』は天国に行けたかな…

 と言ってた。

 ラミちゃんは小声で、『大丈夫。きっと天国で見守ってくれてるわよ』と言った。


☆☆☆


 放送が入る。

「チケットをお持ちの方や、Aランク以上のハーフの子は講堂にお集まりください。

これから特別講演を実施します…」


 喫茶店も休憩時間に入り、ユキ君達は講堂に向かった。

 前には鳥のハーフの先輩が歩いている。S1ランクなんだけど、かなり美人さんだ。

 シロはS2ランク。


 ユキ君達は前から二列目の位置に座った。鳥のハーフの先輩はユキ君の前の列に座った。


 お客さんが講堂に集まり、大部分の人が座ったころ。入り口が開いてミアお姉さんやみのるお兄さん、そしてヒメルが入ってきた。その後からも鳥のハーフの子が二人入ってきた。


「こんにちは。遊びに来ちゃった」

「あたしもはるばる来ちゃった」

 シロとソラと紹介された。二人はユキ君のそばに座った。

 なんか鳥のハーフの子ばかり僕の近くにいる。

 ユキは座席が限られているということもあって、シロちゃんを膝の上に抱っこする感じで座っている。ヒメルを見た。Aランク。先輩を見た。S1ランク。シロちゃんを見た。S2ランク。そして、シロさん?タグを見ると銀色だった。そしてソラ。金色のタグ。金色はS3ランク? 初めて見た。


 そしてスーちゃんが壇上に姿を現した。

 なんか綺麗。天使のようだ。羽がうっすらと光っているように見える。

 そして、ソラを見た。そらはもっと羽が綺麗。うっすらと水色がかっている羽。ほとんど白に近い。ソラもスーちゃんと比べるとソラのほうもかなりのレベルだということがわかる。


 挨拶をすませてから。スーちゃんの歌を聞いた。

 ざわざわとしている会場がスーちゃんが歌いだすと、シーンとなった。

 みんな聞いている。ヒメルもそうなんだけど歌声が綺麗。

 歌も中盤が過ぎて、最後のほうになったとき…


 ばたん。と音がした。数名倒れたようだ。隣にいる子が助け起こして椅子に座らせる。


 「ぱん」

 手を叩く音がした。

 「はい。終わり。みんな息をするのを忘れてない?」

 という声が聞こえてきた。

 「え?」息。

 息。あ。ああ。

 そういえば苦しい。

 息をするのも忘れて歌に聴き入っていた。


「みんな大丈夫? あたしの歌はどうだったかな…

じゃあ特別ゲスト。あたしの大親友。キラちゃん」

 スーちゃんが横を見ると、キラちゃんが姿を現した。


 半分透き通っている白い大きな羽の子が出てきた。

「僕は、キラです。よろしくね。スーちゃんは僕の昔からの親友だよ…

ちなみにあたしはS3ランク。見たことあるかな… 見たことがある人は手を挙げて…」

とキラは言った。見た感じはボーイッシュな女の子。イケメン女子だ。


 僕は手を挙げた。そしてソラやシロ(お姉さんのほう)も手を挙げた。

「あ。あそこに鳥のハーフの子達がいっぱいいるね。こっちのほうに上がってきてくれるかな?」キラは言う。

 ソラやシロ(お姉さんのほう)、ヒメル、シロ(小さいほう)、そして先輩が壇上に上がる。


「小さい子もいるね。こんにちは…」

「こんにちは、お嬢ちゃん」キラとスーちゃんは言う。


「こんにちは。あたしシロ。そしてこっちのお姉さんもシロ」


「こんにちは…」

「あたしはソラ… よろしくね…」と水色がかった羽を持つ美少女が握手をする。

「あら。あなたのタグ。金色ね」キラはソラを見て言う。

「まあ。そうだね。元は銀色だったんだけど、S3ランクに再認定されたの…」

「そう… あっ。これって…」キラはソラのTMRデバイスを見た。

「えーとね。ただのネコ用の首輪…」ソラは言い訳をした。


キラはソラの耳元で言った「TMRデバイス。僕も持っているよ。ちなみにバージョンは2130」

「えっ」ソラはキラの腕を見た。たしかにTMRデバイスだ。バージョンは2000番台。


「ふーん。あたしもあるよTMRデバイス」シロが言う。

3人はそれぞれTMRデバイスを見せる。

「これはあたしたちの秘密ね。スーちゃんも知らないから…」とキラは言った。


「はい。みなさん。あたしの他にAランク、S1ランク~S3ランクの子が来てくれました。せっかくなのであたしたちはみんなで手をつなぎます。そうしたら部屋を暗くしてくれる?」

スーちゃんは言った。

 ヒメルや小さいシロも含めて、S1ランクの先輩も一緒に手をつなぐ。

 部屋の照明が静かに暗くなっていく。

 ぽわぁ。と光る羽。

 S3ランクの子が一番光が強かったが、だんだんみんなの羽の光が強くなっていく。

「これは羽の共鳴現象。S3ランクの子の光が手を通じて移ったのよ…

 心がなんかぽかぽかしてこない?」

 スーちゃんが言う。

「うん。たしかに…」

 S1ランクの先輩が言う。


「あとね。あたしスーの気力も分けてあげる。幸運のスー&戦場のキラとよばれているの…

わかる?

キラはこの世界の紛争地帯に足を運んで、敵と味方を説得して戦争をなるべくさせないように活動をしているの…

危険なんだけどね。キラは銃弾が飛んでいる地域に行っても怪我ひとつしないの…

まるで銃弾が避けて通るみたい…

そして、あたしスーはこうして手をつないだ仲間たちの運気を上げる。と言われているわ。

あなた、モデルとかオーディションは受けたことがある?」

S1ランクの先輩にスーは聞いてみた。

「まだないわね。あたしでも大丈夫かしら…」

「大丈夫よたぶん」


「あなた。ソラと言ったわね。あなたに幸運をあげるわ…」

「ありがとう…」

「そして、シロとシロちゃん。人々に幸せを…」

「うん」


「じゃあ。もうそろそろ時間」

スーは、一人ひとりぎゅっとハグをした。


☆☆☆


「はー。なんかすごかった」ソラとシロは言った。

 先輩も席に戻ってきた。

「なんか。まだぽわぽわする…」ちびっ子シロが言う。

「なんかすごかったわね。あたしもSランクに生まれたかったわ」

「あたしも…」ミミちゃんとラミちゃんが言う。

 スーちゃんに、ぎゅっとハグされた人は、みんなぽーとしている。

 会場のみんながぽわぽわ。ふわふわする雰囲気となり、そんな余韻が残るなか。会場を後にする人たち。


「ゆーき君?まだぽわぽわしてる?」後ろからミアお姉さんが抱きついてきた。


「うん。ぽわぽわする…」

「さてと、帰りに駄菓子屋寄っていく? アイス食べない?」ミアお姉さんは言う。


「あたしも賛成」

「いいよ」

「シロもー」

 とみんなで駄菓子屋に寄ってから帰ることになった。

 今日はなんか特別な日。思い出に残るだろう。


「えいっ」シロ(小さいほう)はギンちゃんの後ろを歩いていたが、ギンちゃんの尻尾をつかむ。

「こら。急に何をするのじゃ。この尻尾はおもちゃではないぞ…」

「ふっかふか」シロは言った。


 ぽわぽわ感は、少し和らいだ。

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