はじまり
僕はソファに座ってゲームをしている。
とんとん。肩を叩かれた「ねえ。あのさ…」という女の子の声。
うるさいなあ。今いいところなのに… と思う。ユキは携帯型のゲーム機(少し古めのタイプ)でゲームをしているところだ。
とんとん。また肩をたたかれた。手で肩を叩かれているのではなく、尻尾でとんとんと僕の肩を叩かれているのである。
「ねえってば…」
「ちょっと待って。今セーブするから…」
「もう…行くよ」僕の肩を叩いていたのは、猫と人とのハーフで名前をミミと言う。世の中ではハーフと呼ばれているが、遺伝子的に猫の割合はかなり少なくてほぼ人間だ。
ミミちゃんは2023年生まれの14歳。僕と同じ年だ。ミミちゃんは僕とは違い、猫のような耳と尻尾があり、下半身や上半身が黒い猫のような毛でおおわれている。身長は156cmで細身のネコミミ少女である(毛並みが黒いのでクロネコだ)。性格や食べ物の好みは猫っぽいところもある。
「ねえ? ユキ君。おばあちゃんと買い物行くよ」今度はラミちゃんが部屋の入り口からこっちを見て言う。ラミちゃんも同じく2023年生まれの14歳。身長は157cmで普通の体形よりちょっと太めの、ウサギと人とのハーフのバニーガールである。頭には白い耳とお尻には丸い尻尾がついている。
ちなみにラミちゃんは、本物のバニーガールだが、ラミちゃんにバニーガールのコスプレをさせると全く似合わない。体形はスレンダーでもなく、お腹はちょっとだけぽっこり出ており、足はほんのちょっと太い。体重はウサギと人のハーフのためかなり重い(見た目は50kgありそうに見えるが、実際は60kg超えているようだ)。
ユキはゲーム機を置いて、耳につけていたイヤホンを外し出かける準備をする。
☆☆☆
新しいものをこの世に生み出そう。
高齢化社会となり、若い人達の人口が減っているのがわかる。政府は対策をいろいろ実施するがうまくいかず…
国産の古くからある企業もアジア系の企業に買収されることも多くなり、元気がなくなったように思える。
小さい企業や商店街で経営している小さい昔ながらのお店。
店舗を畳む店も目立ち、景気低迷のことをニュースで特集を組むようになった。
これではダメだと政府が思い切ってある政策を打ち出した。
今までなかったものがこの世に出現すれば、ビジネスチャンスも生まれ活気がつくだろう。
新しいものを生み出すための研究や開発に太っ腹な補助金が出るようになって数年の時が過ぎた。
そしてある事件が起きた。ペットビジネスに着目し、ペットのDNA関連の調査をしている研究機関での出来事。猫や犬、ウサギ、小鳥、ハムスター、フェレット、リス。
ポピュラーなペットの遺伝子にちょっと細工を加えて実験をしているはずだった。
でも、間違って届けられたDNAサンプル。
藤森工業社製のDNA試験機にペットのDNAデータと一緒に、間違って届けられた人のDNAデータを入れてしまった。その後DNA試験機で完全自動化の育成が始まり、人とペットのハイブリッドな生き物が生まれてしまった。
数年後。日本政府からの重大発表が実施される。
「こんばんは。日本のみなさんに向けて、非公開で数年前から進めていた計画について、公表の場とさせていただこうと思っております。先に話しておきますがこれは真実です。ではこちらに連れてきてください…」
首相、自ら原稿を読み上げてだれかが来るのを待っている。テレビ番組も通常の放送を中断し、すべての局が同じ中継の画面となった。
画面には幼稚園児ぐらいの子供が五名出てきた。みんな帽子をかぶっている。
「ではみなさん。帽子をとってください」
幼稚園児ぐらいの子供が帽子を取っていく。
「えっ?」
記者たちが声を上げた。
アニメや秋葉原ではよく見かける、けもののような耳を付けた人である。
「我々は以前。新しいものを生み出すための研究や開発に補助金や助成金を出すということをしました。この子達は研究の途中。誤って人のDNAとペットのDNAを使い、DNA試験機で完全自動化育成機により、1歳まで育てられて生まれてきてしまった子供達になります。
その後4年間。非公開の政府の施設でこの子達を育ててきました。
この子達が5歳となったため政府も公表することとしたのであります。ではご挨拶を…えーとサミちゃんでよかったかな?」
「え。あ。はい。サミです」
ウサギのような耳をつけている、とってもかわいらしい子供が挨拶をする。
お辞儀をすると耳が前のほうに垂れる。
「えーと。サミです。ウサギとのハーフです。せいかくにはハーフではないというのを聞きました。よろしくおねがいします」
「ありがとう。しっかりしていますね。では次のシロちゃん」
「はい。私はシロです。猫とのハーフです。よろしくお願いします」
シロが返答をする。白猫とのハーフであることは明らかだ。
どう見ても本物である。作り物ではない。首相も本人だし。
秋葉原のビルの前のモニターで信号待ちをしていた人も信号を渡らずにモニターを見ている。
「本物きたーー」信号待ちをしている人達から声が上がった。
メイド喫茶でもテレビを見ていた人から声が上がる。
「なにあの猫耳の子。かわいい…。コスプレ? あ。でも耳が動いたわよ…
本物なの?
首相も出てるわよね。何なの?」女性達からも声が上がる。
「では最後にスーちゃん」首相がスーちゃんに挨拶をするように指示する。
「私はスーです」とってもきれいな澄んだ声で言う。
「とてもきれいな声ですね。さあ続けてくれるかな」首相は優しい感じでハーフの子に言う。
「私は鳥とのハーフです。私だけランクがS2というものらしいです。
これからお見せします。びっくりしないでくださいね」スーちゃんは上着を脱ぐ。
すると鳥のような羽が見えた。そしてスーちゃんは真っ白な羽を広げる。
「あっ」首相は手にしているマイクを床に落とした。
ごっ。という音が聞こえる。
さっきまでざわざわしていた記者会見の会場がしーんとなった。
うっすらと羽が光っているようにも見える。
「失礼しました」
マイクを拾って首相が言い始める。
「えーと。私は『S2ランク』の子は初めて見たものでありまして、ランクというのは遺伝子の選別の際の基準らしいです。私は専門的なことはわからないのですが、たとえると和牛のA5ランクとかと考えていただければわかりやすいと思います。あと、羽がうっすらと光っているのはSランクの子達には、判別するために発光する生物の遺伝子も入れてるとのことであります」
にこっと。スーちゃんは微笑んだ。
「はい。そうです。羽が光っているのは発光する生物のいでんしというのが入っているからです」
かわいい。とっても綺麗なかわいい声でスーちゃんは言う。
首相はまた話し始める。
「ありがとうございました。この子達の姿を見た人はわかると思いますが、人とちょっと外見は違います。ですがほんのちょっとです。生物学的には人間です。遺伝子的にも99%以上は人間と同じです。
そして、いまここにいるのは五名ですが、もっと多くのハーフの子達がいます。今後はもっと増えていくことでしょう。正確な人数については公表を控えさせていただきますが、数年後にはあなたの町のあなたの家にもホームスティという形。あるいは小学校や中学校に転校生というふうにこの子達のような動物とのハーフ子達を迎え入れてあげることになるでしょう」
と首相はしめくくった。
「質問があります」と記者の一人が手を挙手して発言する。
「発言を許します。どうぞ」
「私はNNNの山田と言います。なんでこの子達のようなハーフの子が増えていくのですか?
実験により誤ってこの世に生まれてきたのであれば増えることはないのではと思いますが…」
「それはですね。この子達を守るためです。まだわかっていないのですが、人とサルが一緒になって子孫を残せないということを考えたときに、この子達の子孫を残そうと考えたのであります。そのため、生物種を絶やさないようにするにはと考えたときに、ある数まではDNA試験機で完全自動化育成を進めて数を増やす。という決定をしたのであります。答えになってますか?」
「あ。はい。ありがとうございます」
その後も数名からの質問があり中継された。
☆☆☆
その記者会見から十五年。けもののような外見を備えている人とのハーフの子達。
ちょっとずつ世の中に浸透していっている。外国人の子が日本の家庭にホームスティするようにちょっとずつ関わりが増えていった。CMやアイドル。仕事の場。最初のハーフの子が成人となり学校以外にも社会の場にも関わりが増えていく…