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2 接触 【vs スケルトンウォーリア】

戦闘回は苦手です。

「まずは作戦を決めましょう」

「作戦て、もうすぐ其処まで来てるよ! どうするのティア?」

「アルベルト様は家族と一緒に馬車に居てもらって、私とアーシアで前に出るしか無いわね」

「吾輩も戦うのであるぞ?」

「「ダメです!」」


 アーシアとティアの二人に否定され、おっさんの髭が垂れ下がっている。


「アルベルト様は馬車で家族を守って下さい」

「もしもの時は、私が時間を稼ぐので、アルベルト様はそのまま馬車で逃げて下さい」

「うむ……しかしであるな……」

「アナタ、此処は経験豊富な冒険者様の意見を聞きましょう、私達の我儘で困らせてはいけないわ」


 リサさんに諭されて、渋々納得したようだが……


「なぁ、スケルトンウォーリアってそんなに強いのか?」


 俺の疑問に、アーシアとティアは、「知らないの?」って顔でこっちを見てくる


「強いってもんじゃないよ! スケルトンウォーリアって言ったら大人が五人のパーティーで挑む相手だよ! 騎士団も出る事があるぐらいなのに」


 当たり前の様に言われても知らねぇよ!


「ブラスさんはアルベルト様と一緒に居て下さいね」

「もう接敵するね、ティア、ボクは先に行くよ」


 アーシアはスケルトンウォーリアと戦う為に前の方に出ていった。


「ブラスさん、もしもの時は私が囮になるわ、その時はアーシアを連れて逃げてくれるかしら?」


 ティアにそんな事を言われるが、どうも逃げる気にはなれなかった。


「お願いねブラスさん」


 そう言ってティアもアーシアの所に駆けて行った。


「もしもの時は、アレを使えばなんとかなるか」


 俺は馬車に連結されている荷車と、荷台のマジックバックを見ていた。



 ────



「ティア? ブラスと何か話してたの?」

「逃げてって言っただけよ」

「そか、ボク達が巻き込んじゃったもんね」

「いくよ、ティア」

「アーシア、気をつけるのよ」


 逃げてくる二人の女性がアーシアとティアの脇をすり抜ける。


「そのまま馬車のそばへ! 早く!」


 アーシアは、そう言ってスケルトンウォーリアの前に立ち塞がる様に立ち位置を変え、スケルトンウォーリアと対峙した。

 そのまま此方に逃げてきた美女と美少女が俺の腕にしがみついてきた。

 押し付けられるおっぱいがやわらかい。


「ご安心ください、魔王様(・・・)! あのスケルトンウォーリアは危害を加えません」


 ぼそっと小さな声で話しかけてくる。

 その言葉に警戒する。

 普通ならば俺を魔王と知っているはずがない。


「君達は?」

「貴方様の下僕でございます、リリスとお呼びください。」

「チャムと申します、お見知りおきを」

「お迎えに上がりました」

「魔族……なのか?」

「はい」


 なるほど、なんとなく状況は理解した。

 どうやって知ったか知らないが、魔王である俺を迎えに来たと言う事は、何処かに連れて行くつもりなんだな。

 問題は、俺を迎えた後どうするつもりなのかだ。

 それに、俺は街に行ってみたい。

 行動を制限されるのはどうしても避けたかった。


「行くつもりは無いとしたら?」

「今はそれでも構いません、お言葉に従います」


 無理やり連れて行くつもりは無いようだ。

 連れて行かれた後は自由に動けなくなるかもしれないので、正直あまり行きたくはない。


「後ほど詳しくお話いたします、今は、合わせて(・・・・)くださいませ」

「今戦ってる二人を殺しはしないんだな?」

「はい、ある程度戦って逃げる手筈です」

「解った……」


 どこまで信用出来るのか解らないが、今は状況を見守るしか無い。

 緊迫した状況だが、茶番だとわかれば安心して見ていられる。

 戦闘前にティアにアーシアを連れて逃げるようにお願いされたが、その必要はないだろう。

 まずはアーシアの方から動き出した。

 大きく剣を薙ぎ払う様に斬りかかる

 しかし、スケルトンウォーリアはそれを飛んで躱し、アーシアに向かって剣を振り下ろす


「アーシア! 上!」


 上からの斬撃を盾で受けるものの、勢いを殺しきれず、アーシアは地面に叩きつけられた。

 凄い! 生戦闘だ! さすがは中級狩場のモンスター、骨とは思えない動きである。

 ティアはスケルトンウォーリア着地のスキを突き、メイスで殴り掛かる

 しかし、スケルトンウォーリアは盾を下からすくい上げるようにティアにぶつけ、ティアはそのまま吹っ飛ばされる。


「ティア!」

 

 スケルトンウォーリアは盾や鎧の厚い部分を攻撃して大きな怪我をさせないように上手く無力化していた

 それにしても、アーシアとティアを一撃で倒すなんて、この世界の戦力バランスとかどうなっているんだ?

 スケルトンウォーリアは、そのまま起き上がろうとするアーシアに詰め寄ろうとするが……


「させないのである!」


 いつの間にかアルベルトのおっさんが距離を詰め、拳を放つ!

 スケルトンウォーリアはなんとか盾を構えて防ごうとするが、その盾ごと天高く吹っ飛ばされていた。

 ガシャン! と大きな音を立てて地面に叩きつけられるスケルトンウォーリアに更にもう一撃!

 おっさんの正拳突きが決まり、スケルトンウォーリアが此方に吹き飛ばされてきた。

 地面に金属が叩きつけられる大きな音を立てながらスケルトンウォーリアが俺の足元に転がった。


「すげ……」

「「なっ!」」


 リリスとチャムは驚愕の顔を見せていた。

 それもそうだろう、俺もアルベルトのおっさんがあんなに強いとは思わなかったし。


「し、仕方ないわ、予定変更です! スケルトンウォーリア、貴方は此処で滅びなさい! 魔王様の糧となるのです!」


 リリスはボソボソと小声で足元に転がっているスケルトンウォーリアに話しかける。

 どんなシナリオか知らないが、スケルトンウォーリアが倒されるのは予定に無かった筈だしな。

 スケルトンウォーリアは起き上がると此方に向き直った。


「む! しまったのである」

「ブラス! 逃げて!」


 おっさんとアーシアが此方に駆けてくる。


「トドメを……」

「お願いします」


 リリスとチャムはそっと呟くと俺の腕を離し離れた。

 武器は取り上げられているので殴るとかしか攻撃方法がないんだけど良いのか? 勢い良くスケルトンウォーリアを殴ると、ボロボロと骨が崩れ、スケルトンウォーリアの身に着けていた武具だけが残った。

 


「ブラスー、大丈夫だった?」

「俺よりもティアを」

「そうだ! ティア!」


 倒れたまま動かないティアが心配だ。

 急いで倒れているティアの下に向かう。


「ティア大丈夫?」

「大丈夫よ……ちょっと動けないだけだから」


 心配するアーシアを安心させる様に答える。

 

 とくに外傷は見当たらないが、人が吹っ飛ぶほどの勢いだ、車に当てられたような衝撃なんじゃないかな?

 ティアは盾で叩きつけられた痛みで動けなかっただけの様だった。


「ティア~」

「情けない声をだすな、とりあえず、馬車に寝かせておこう」

「うむ、もう少し進めば、今日の目的地であるしな、其処ならばゆっくり休めるのである」


 俺とおっさんでティアを馬車に寝かせて、そのまま旅を再開した。

 馬車が一台しかないので、リサとマリアベルとティアが馬車に乗って、ニーナとベルは屋根の上、そして他のメンバーは全員徒歩である。

 食料など荷物が多いから仕方ないとは言え、おっさん一番偉い立場だよな? 何で歩いてるんだよ! マリアベルが申し訳無さそうな顔してるぞ!


「助けて頂き有難う御座います、私はリリスと申します。連れているのは妹のチャムです。」

「チャムと申します、助けて頂きありがとうございました」

「うむ、吾輩はアルベルト・レーヴェン・ヴァルシュタッド・ハインリーヴである」


 すると、馬車の屋根からぴょこぴょこと二つの頭が飛び出した。


「ニーナ・レーヴェン・ヴァルシュタッドです」

「ほぉーりーべる・しゃーりぃーです」


 道中なので挨拶は簡易版だ、あの年齢で良く教育されているなぁと感心する。


「あぁ、私を助けてくれた貴方様のお名前もどうかお聞かせ下さい」


 白々しい演技をしながら俺の名前を聞いてくる。


「ブ……ブラスだ」

「まぁ、ブラス様!素敵なお名前です」


 リリスは目を輝かせて俺を称えるが、そんなやり取りをアーシアは納得の行かない顔で見ていた。


「ブラス、普通はリサ様を先に紹介するものだよ」


 あぁ、身分って言う物があるよな、リサ様をチラッと見てみると、なんでもなさそうにニコニコとしていた。


「大丈夫よブラスさん、私はリサ、隣りにいるのはマリアベルよ!」


 紹介されたマリアベルがペコリとお辞儀をする。


「そしてボクがアーシア、馬車で寝ているのがティアだよ」


 すると馬車からティアが顔を出してきた。


「アーシア、急がないと野営の準備をする前に暗くなってしまうわ、ただでさえ遅れているのだから急がないと」

「うむ、細かい事は目的地に着いてからで良いのであるな、ちょっと遅れているゆえ急ぐのである」


 その後は、あまり話す事もなく、目的地まで馬車を走らせた。

 


 ────



 森の近くで少し開けた場所があった、どうやら此処が目的地らしい。

 もう陽は落ちていて暗くなり始めている、馬車を止めると、ティアが降りてきた。


「ティア! 降りてきて大丈夫なの?」

「十分休んだから平気よ、心配かけたわね」

「無理はしない方が良いのである」

「野営の準備は俺達がするから休んでてくれ」


 そう言って俺はリリスとチャムを連れて森にある水源に水を汲みに行く。

 森に入ってすぐに湖があったが、この水は飲料に向かない。水源の場所はちゃんとティアに説明を受けているのでもう少し奥に進んでいく。

 聞いてた場所に行くと、チョロチョロと水が湧き出る小さな滝があった

 俺は木製のバケツを置いて水を汲みながらリリスとチャムに話しかける。


「さて、話を聞こうか」


 此処ならば誰もいないのでゆっくりと話ができる。


「はいブラス様、チャム皆を此処へ……」

「はい、リリス様」


 そう言うとリリスとチャムは影から黒ずくめの姿をした魔族を二体呼び出した。

 呼び出された魔族は人の形をしており、黒いフードを被っており顔は仮面のようなもので隠されてて見えない

 姿勢を正すと四人ともその場で跪いた。


「私は、四百年前に魔王様より生み出された魔族、リリスと申します。隣りにいるのは夢魔のチャム、後ろに控えますは、シャドウアサシンでございます。此処より少し離れた場所にてスターリィーワイザーとアルヴィスが控えております。かつての魔王様の残された指輪が新たな魔王様の誕生を知らせ、急いで駆けつけました。」

「指輪?」


 そう言ってリリスは赤い宝石の付いた指輪を差し出してきた。

 うわ、なんか黒いモヤモヤのエフェクトが掛かってるんだけど……。

 俺は指輪を摘んで翳すようにして良く目を凝らして見てみる。

 指輪の中をカラフルな光の様なものが指輪の中を規則正しく巡って、それがまるで幾何学模様みたいで綺麗だった。


「黒いモヤモヤなのは不気味だが、なんか綺麗な模様が見えるな」

「黒い……モヤモヤですか?」


 あれ? リリスには見えてない?


「リリスにはこれがどう見える?」

「はい、赤い宝石の付いた指輪に見えます」


 チャムやシャドウアサシンも同様らしい。

 俺だけにしか見えないのか……体に悪い物じゃないよな?

 そんな考え事をしてると、妙な気配を感じた。


「ブラス様、配下の者が到着したようです」


 リリス達の後ろ、森の影の中から二体の魔物が出現した。

 まず現れたのは、赤い瞳に二本の立派な角、青い体に翼の生えた巨大な魔物、完全に姿を現すと、体のサイズを小さく変え人の形を取った。

 オールバックでメガネの貴族の様な格好をしてその場で跪いた。


「アークデーモンがアルヴィス、只今参上いたしました。」


 続いて登場したのは、豪華な黒いローブを纏った髑髏の魔物、死神とかエルダーリッチ等の部類だろう、多分。

 ローブの中は漆黒の何かに満たされていて良く見えない、赤い光を目に宿しじっと此方を見ている。

 暗い森の中だからその姿がめちゃくちゃ怖い。

 やがてゆっくりと跪く。


「我が名はスターリィーワイザー、御身の前に参上いたしました」


 総勢6名の魔族が俺の前で跪いてる、俺の言葉を待っている様だが、威圧感が物凄くてこの沈黙が重い。

 先に沈黙を破ったのはリリスだった。


「僭越ながら発言よろしいでしょうか?」

「……許す」


 つい、許すなんて言っちゃったけど、僭越ながらとか初めて言われたよ。


「ブラス様の今後の予定と方針をお聞かせくださいませ、我らがすべき事はございますでしょうか?」


 そんな大層な事は考えてはいないんだが、まぁ正直に話すしか無いよな。


「俺は目的の為に情報を集めている、街に向かうのもその為だ」

「目的とは何でしょうか?」

「目的は……」


 目的か……、女神様にエネルギー不足で世界が滅びそうとか言われて、魔王の役割(ロール)を与えられて転生してきたんだけど、どう説明しようかなと思い始めた時、俺の体の中から黒い気配が震える感じがして、間の抜けた声が脳内に響いてきた。


「ぶらすさぁ~ん、聞こえますかぁ~?」


 女神の声だ、何? この大事な会議中に電話がかかってくる様な気まずい感覚は。

 会議を抜け出して通話に早く出ないといけないような気まずい気持ちになってくる。

 とりあえず、この魔族との会話は一旦切り上げてしまおう。


「目的とは、『世界の管理』だ」


 まぁ、エネルギー不足でどうにかするって簡単に言うと管理だよな

 節約したり効率良くしたりそんな感じかな?

 代替エネルギーとか見つけれたら良いんだけど、世界を維持するエネルギーって何だ?

 ちょうど女神様から通話が来てるし聞けばいいかな。


「俺の邪魔をしない様にしてくれれば問題は無い、用事があるので俺は少し離れる」

「……はい」

「リリスは汲んだ水を持って戻っておいてくれ」


 そう言って俺は女神様と通話する為にその場を離れた。




 ────




 ブラスの気配を感じなくなって、その場に残されたリリスたちは重圧から開放された。

 まずはスターリィーワイザーがゆっくりと立ち上がる。


「フッ、フハッ……フハハハハハハハハ……」

「な、何がおかしいのですか!」


 ブラスを侮辱したと思ったのだろう、リリスは立ち上がり、スターリィーワイザーを睨む。


「これが笑わずに居られるか、なぁアルヴィスよ……」


 アルヴィスもゆっくりと立ち上がるが、その顔には汗が滲んでいた。


「えぇ、リリスは何も感じなかったのですか?」

「魔王様に相応しい凄い貫禄だったわ、それ以外に何を感じたと言うの? スターリィーワイザー!」

「リリスでさえこう(・・)なのだ、魔族共が従うと思うか? アルヴィスよ」

「従わない……でしょうね」

「な、何を……」

「魔王は人間! それも魔王紋すら開いておらぬではないか! それで魔族共が従うと思うのか?」

「な! ブラス様を侮辱するのですか!」

「違うのですよリリス、逆です」


 憤慨するリリスをなだめるようにアルヴィスは言う。


ブラス様(・・・・)は貴方の問に『世界を管理する』と仰言られました、魔王の領地どころではなく『世界全て』をと! まるで世界を征服したかのように!」

「問題はその時に垣間見せたブラス様(・・・・)本当の御力(・・・・・)よ! 闇より暗い! 深淵より深い! 光よりも眩しい! 何だあれは!」


 スターリィーワイザーは、ブラスが黒電話で女神と通じたのをそう感じたようだ。


「それに『邪魔をしなければ良い』と言いおった……まるで我等など歯牙にも掛けてはおらぬではないか! まるで我等など不要とでも言うように! 七千年……我が生まれて七千年だぞ! 実につまらぬ世界であったが、これほど面白いことに巡り合うとは……」


 スターリィーワイザーは興奮した様子で、しかし淡々と語る。


「リリスよ! チャムよ! あの御方の御力が解らぬならばそれで良い! そうで無くては成らぬ! そうでなくてはあの御方には仕えられぬ!」


 リリスはスターリィーワイザーが何を言っているのか理解出来無い様子で、アルヴィスに助けを求めるように振り向いた。


「リリス、チャム、貴方達がブラス様の側で支えるのに向いているとスターリィーワイザーは言っているのですよ」

「そ、そんなの当たり前じゃない! スターリィーワイザーはいつも難しく言いすぎなのよ!」

「荒れるぞ! 魔族だけでは無い! 世界全てがだ!」




 そんなやり取りが有った事は知らず、ブラスはちょっと電話しに行くような感覚で女神との通話をしに行くのだった。


 ────

早く料理無双まで勧めたいですが、じっくり物語を進めます。

登場人物や細かい設定などは徐々に覚えて行って頂けたらと思います。

今回はアルベルト様が強くて素敵ですね。

スターリィーワイザーとアルヴィスは色々勘違いしちゃってます。



PCが不調の為か、エラーで更新できなくて焦りました。

PCの不調の問題が収まるまでは不定期連載にしたいと思います。

週に3話ぐらいは進めたいなーっと思っています。

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