入部
「ようこそ、DGS部へ。あなたの悩みは何かしら?」
突然、目の前の女子が放った言葉だ。
俺は女子が苦手な為、少し怖かった。
けれども意味不明なこの状況を打破すべく、
「き、君は、い、一体何者なんだ」
声が震えており上ずった声になってしまった。少し恥ずかしい。
「私の名前は睦月蒼葉だ。そして、この『DGS部』の部長だー!」
は?DGS部?なんだそれ、こんな部活があるのか?
少し戸惑ったが、すぐに冷静になった。これはアニメでもよくあることだと思ったからだった。
すぐに思考を切り替えて、
「3つ、質問していいか?」
「いいだろう」
「まず1つ目、どうして俺を誘拐したんだ。」
少し怯えながらも、それを悟られないよう質問した。
そして返ってきた答えは、
「たまたま、目の前を通りかかった人を拉致しただけだけど、それ以外に理由ある?」
たまたまだと⁉︎そいつたまたまで人を誘拐するのか!
待て、ここは冷静にだ。
「では2つ目、この『ディージーエス部?』と言う部活は何をする部活なんだ?」
ここは重要である。もしくは、それに誘拐した理由があるかもしれない。
「この『DGS部』は
D、大好きな
G、学園を
S、支える
部活、と言う建前目で活動している。」
建前目と言うことは、本当の意味があるのだろう。
「本当は?」
俺は真実を知る為聞いてみた。
しかし、それを口にした途端、嫌なか予感がしてきた。
「D、ダラダラ
G、ゴロゴロ
S、する
部活。と言うのが本当の意味である!」
こいつ言い切りやがった。
この部本当何なんだよ。何がしたいんだよ。
俺は呆れ果てていた。
まぁ、3つ質問すると言った手前後には引けず、
「じゃあ、3つ目ダラダラゴロゴロする部活なのに、何で俺の悩み事を聞いたんだ?」
俺はもとから予想していた。
この部が真面目に部活をするとは思えない、と。
そしてその答えが
「それはね、悩みを月に2回解決しないとこの部は解散されちゃうからだよ。だから君の悩みを聞いて、ノルマクリアって言うことなんだよ。」
そう睦月蒼葉が答えたのと同時に部室のドアが空いた。
「早いね、部長。もう、1人確保したんですね。」
そこにいたのはさっきの入学式で在校生代表で発表していた
水無月楓だった。
「遅いよ、カエ。この人が入部希望者です!」
「入部希望なんてしてねーよ!」
急に入部希望者扱いしてきたのでつい突っ込んでしまったのと、タメ口になってしまった。
「ほほう、入部しないだと、新入り。私は柔道黒帯に、合気道や空手も全国レベルだぞ。売られた喧嘩は買おうじゃないか。」
そう水無月楓が、鬼のような顔、いやもはや鬼が睨んできた。
内臓を鷲掴みにされてるみたいでメッチャ怖い。
「い、い、いや、けけ喧嘩なんて売ってないですよ。」
「そうか、ならいい。で、当然この部に入るよな。」
笑顔を作っているけど笑ってない。
「い、いやー、入る気はないです。」
俺はこんな面倒くさい部活に入るなんてありえないと思っている。
それに女子が、この部にいる女子が、メッチャクチャ怖い。
「あ、悩みを言えば解放してくれんですか?」
冒頭にあった悩みは何かしら、と言う質問があった。
だからそれを達成すれば解放してくれると思った。
「まぁ、悩み事を解決すれば解放してやっても良いだろう。」
そう部長が答えた。
「俺の悩みは、今捕まっていることです。」
俺はこの悩み事を解決すると言うことは、俺を解放すると言うことである、と考えてそう発言したのだが、
「それは無理だ。その悩みは今できた悩みではないか。昔からの悩みを言ってごらん。」
この水無月楓は厳しい。
昔からの悩みは、ある。
けれどこれを言うのは少し抵抗があったのだが、言うしかないみたいだな。
「俺の悩みは・・・女子が苦手なことだ!」
俺はそう答えると、そこにいた部長や水無月楓が口を開けて呆然と立ち尽くしていた。
そしてそのあと、俺に聞こえないよう2人で会議をしているようだった。
「それは多分、1日では解決しないだろう。だから、この部に入ってみたらどうだ。部員も全員女子だ。君の悩みを解決できるかもしれない。」
俺は断ろうとしたが、それを言った部長の顔と声に何も言い返せなかった。
顔はとても真剣な顔だった。
真っ直ぐに俺の方を向き、それが最善の一手だと言ってるようだ。
声もさっきまでのふざけた感じではなく、俺に寄り添って考えくれてるようだった。
俺はそう言ってくれる部長が少し嬉しくもあり、少し怖いと思ってしまったことに自分が嫌いになりそうだった。
「俺・・・この部に入ります。」
それを言った俺の眼の前で2人は大喜びした。
「ありがとう!入ってくれてとても嬉しいよ。」
と、部長が言ってくれた。
「君をこの部に歓迎するよ、後輩くん。」
その次に水無月さんがそう言ってくれた。
2人がそう言ってくれて内心ホッとした。
と言う訳で俺はこの
『DGS部』に入ることになった。