2話︰特売
時刻は午前10時55分。自転車を駐輪場に置き、スーパーへ入店した。
さすがに日曜日なだけあって客が多い。
ここ、"マイニチ"という店はそこまで大きなスーパーではないが他の店より格安な商品が多いせいなのだろう。特売コーナーでは既に行列が出来ていた。
白兎は列の最後尾に並び、11時になるのを待った__。
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「よし、こんなもんかな。」
特売の商品も難なく手に入り、今日買う予定だったものは全て買い物カゴに入れた。あとは会計をすればそれで終了だ。
そう思ったときだった。白兎にとって想定外のことが起こってしまったのだ。
『只今より、無告知特売を開始しまーーす!特売商品はこのキャベツ!超お買い得ですよ!!』
しまった。
"マイニチ"は他店では有り得ないほどの特売を無告知で行うことがあり、それ目当てで来る客も大勢いる。数量は限られており、少しでも出遅れてしまうと特売商品の購入は不可能となる。
走れ。
白兎は店員の声がする方向へ走った。
この出遅れ方は良くない‥。
売り切れてしまったか‥。
頼む‥間に合ってくれ!!
!!!
よかった。残り僅かではあるが、激安キャベツはまだ残っている。
喜びを秘め、真剣に走った。
キャベツが残り5玉、4玉、3玉、2玉…
届け!届け!俺の手!!
白兎は必死にキャベツに手を伸ばした。
そして、指先がキャベツに触れ、勝利を確信した。
「よっしゃあ!!ラスイチゲッ…」
キャベツを持ち上げたその時だった。
白兎は手に持っていたキャベツをポロッと落としてしまった。
落としたキャベツを慌てて掴もうとするも、落下する前に自分ではない手がキャッチし、そのままスタスタと去っていく。
キャベツは一瞬にして横取りされてしまった。
一瞬の油断がキャベツ入手不成功となってしまったことが悔しくて。
悔しくて悔しくて悔しくて。
横取りされてから僅かしか経過してないはずの時間が、不思議と長い時間のように感じた。
そんな、長いような一瞬の中、白兎は悔しさが頭のなかで渦を巻き、嵐となった。
沸々と怒りが込み上げてきたのだ。
横取りしたのは誰だ。どんな奴だ。
あれを先に掴んだのは俺だ。
許せない。貧乏生活してる人にとって、特売をゲットできないことがどれほど辛いことか…。
「許さない」
頭の中の言葉が思わず口に出た。
キャベツを横取りしスタスタと逃げ去るその人を、白兎は追いかけた。
いた。あの赤色のコートを来た奴だ。
「へっ、覚えやすい服着やがって」
別人でないことを確信している白兎はようやくその人に声をかけた
「そこの赤いの!ちょっと止まれぃ!!」




