わたしのたいせつなお友達
ことばって言うのは不自由だね
言いたいことの十分の一も一千万分の一も伝えてくれないよ
私はいま両手をYとTの間ぐらいに広げて
ふわふわと軽い、
ほんとうに抱えているのかどうかさえよくわからないほど軽い何かを貴女に渡そうとしているの
貴女に渡そうと投げつけたら、ふんわりしたそれはぽすんと弾んで、
渡せたのか渡せてないのかやっぱりよくわからない
でも、貴女はYの字に手を広げてのけぞってすこし後退をして
その後愉快そうに笑い転げたから、これはたぶん渡せたのかなあ
私が投げちゃえ! って思ったふわふわは、
ほとんど透き通って見えないほど淡く白い、ハートの形をしているふわふわなんだ、多分。
見えない物をどう表現しよう
聞こえない物をどう表現しよう
触れない物をどう表現しよう
わたしが今生きている何分の一かは、間違いなくあなたのおかげさま
親に産んでもらって、育ててもらって、
あなたやいろんな人や生き物から命を分けてもらって
生かしていただいて、育てていただいて、今を生きています
若くてひねててまだ料理もろくにできなかった頃の私を、
根気強く食べさせてくれたね、ありがとう
私はその頃まだ、ほんの少しお金を出すだけだったね
ご飯を作れるようになりたいと思えるようになったのも
みんな貴女のおかげです
貴女の好物の鰺丼をまた作って一緒に食べたい
たっぷり豆乳を加えたコーヒーも一緒に飲みに行きたいです
あなたのことが大好き! って色んな人に楽に言えるようになったのも
みんな貴女のおかげです
貴女を通して世界が、ほんの少し親しみ易く、興味深いものになったの
私が貴女にどれだけ感謝しているかなんて、わかってくれなくても良いは良いけれど
いつかふわふわの色や形が一緒にみられたら良いね
食べると桃かいちごの味がするって決めたよ?
貴女はたいせつなお友達。