第6話
翌朝・・・物凄く寝起きが悪かった俺は、身体についた塵や埃をほろっていた。
村のほうを見ると、いつの間にか赤々と灯っていたたいまつは全て消えている。
雰囲気が完全に別物だ。
「起きたか〜。よ〜し、いよいよ村に行こうか〜。」
チャージが伸びをしながら言う。
いよいよって・・本当なら昨日の時点で村に入ってたはずなんだけどな・・。
(ふう・・・)
テュールも同じ事を考えたのか、ため息をつく。鞘の中で快適そうじゃないかお前は・・。
近づくと、俺が想像していた不気味さだとか、そんなものはどこにもないような普通の村
だった。まぁ、夜はおどろおどろしいものが無いともいえないが。
「まだ朝だからな〜。朝は・・神殿で礼拝かな。」
どおりで、人影が見当たらない。
しかし、何でそんな習慣まで知ってるんだこいつは。
やはり普段が普段だけにこいつの知識の量には驚かされる。
中央の建物に近づくと、なにやらやけに低いトーンの声が聞こえる。何を言っているかはわからない
が、この様子だと宗教的な内容だろう。
中を覗くと、中央に一段高くなっている所があり、その上で裾の長い、フード付きのローブを
身にまとった男が何かを読み上げている。
そのまわりでは、やはり裾の長いローブを着た人々が頭を垂れ、黙々と言葉に聞き入っている。
前言撤回。思いっきり不気味だよこれ!
とんでもない所にきてしまったもんだ・・。
(フフフ・・なるほど・・これは古代語だ・・)
テュールは興奮しきっている。
チャージはチャージで、いつものこいつには似つかない真面目な顔しちゃってるんだなぁ・・。
・・ピタリと声が止んだ。
「それでは今日も信仰に尽くすように。」
今度は俺にも聞き取れる、はっきりとした標準語で男が言った。
「やべぇ!」
ゾロゾロと礼拝を終えた人々が神殿から出て、こっちへ向かってくる。
「やばい事なんて何にもないだろ〜大体こいつらと接触しなきゃ駄目なんだしよ〜」
・・む、確かに、そーだった。俺の勇者としての性がこいつらを敵とみなしていたようだ。
俺は思い切って話し掛ける。
「あの〜」
すると、フードの中に顔を隠した男は、慌てて走り去った。
何だってんだあいつ・・あ
俺は自分の姿がどうであるかを考え直した。サルじゃん、俺。
びびって当然か・・。俺はまたまたため息をついた。
「なぁ、チャージ、俺こんな姿だからコミュニケーション取れねぇよ〜、頼む、話つけてくれよ。」
「しょ〜がないな〜」
するとチャージは早速男に話を持ちかけた。チャージよりも年下の男だ。
「お〜い、こいつの家に来いってさ〜、いろいろ詳しい人がいるそうだぞ〜」
あら、意外に簡単に話しつけたな、あいつ。呪術師の村とは言えそんなムチャクチャな話
簡単に信じて、これだから最近の・・・。
(協力者は心強いな。)
まぁ、テュールの言うとおり、あーだこーだ言う前に行動だな。俺はその男(名前はロルトと言うらしい)の家に案内してもらった。